電子帳簿保存法基礎2026.09.16 公開DK-01

電子帳簿保存法の要件|3つの区分の切り分け方

目次

電子帳簿保存法は、法律の名前が1つなので1つのルールに見えますが、中身は3つの区分に分かれていて、義務なのはそのうち1つだけです。ここを分けずに読むと、やらなくてよいことまで抱え込むか、やらなければならないことを見落とすかのどちらかになります。

この記事では、電子帳簿保存法を、3つの区分義務なのはどれか真実性と可視性という2つの軸どこから手を付けるかの順に整理します。電子帳簿保存法は改正が続いている法律です。最新の内容は国税庁の特設サイトか所轄の税務署で確認してください。

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結論:3つの区分のうち、義務は1つだけ

電子帳簿保存法の中身は、次の3つに分かれているとされています。

区分対象義務か任意か
電子帳簿等保存自分がパソコンで作った帳簿や決算関係書類任意
スキャナ保存紙で受け取った・紙で渡した書類をスキャンしたもの任意
電子取引データ保存メールやWebでやりとりした取引の電子データ義務

義務なのは3つ目だけです。1つ目と2つ目は、やりたい事業者が要件を満たして行うもので、やらなければ紙のまま保存すればよい、という位置づけになっています。

電子取引データ保存は、2024年(令和6年)1月1日から完全義務化されているとされています。所得税法・法人税法上の保存義務者であれば、法人か個人事業か、規模の大小にかかわらず対象です。

ここを分けておくと、話が一気に軽くなります。「電子帳簿保存法への対応」と言われたときに、まず見るのは3つ目だけでよい、ということになります。

3つの区分は、書類の出どころで分かれる

どの区分に当たるかは、その書類がどこから来たかで決まります。

どこから来たか区分
自社がパソコンで作った(会計ソフトの仕訳帳、総勘定元帳、決算書)電子帳簿等保存
取引先から紙で受け取った(請求書、領収書、契約書)スキャナ保存(紙のまま保存してもよい)
自社が作って紙で渡した控えスキャナ保存(同上)
メール添付、Web明細、EDI、ECサイトの領収書電子取引データ保存(義務)

同じ「請求書」でも、紙で来たのかデータで来たのかで扱いが変わります。ここが実務でいちばん混乱するところです。取引先ごとに、紙かデータかを一覧にしておくと整理できます。

義務は電子取引だけ電子帳簿等保存任意スキャナ保存任意電子取引データ保存義務
3つの区分のうち義務は電子取引だけ

電子取引に当たるものを取りこぼさない

国税庁の「電子取引データ保存要件チェックシート」では、電子取引について、取引に関して、注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書などに相当する電子データを受領または交付することと説明されています。

具体的には、次のようなものが挙げられています。

  • いわゆるEDI取引
  • インターネット等による取引
  • 電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルの場合を含む)
  • インターネット上にサイトを設け、そのサイトを通じて取引情報を授受する取引

自社が「電子取引はしていない」と思っていても、該当していることがほとんどです。同チェックシートでは、次のようなものが電子取引に当たるとされています。

見落としやすいもの
取引先からメール添付で届く請求書
ECサイトで購入した商品の請求書・領収書
インターネットでのみ確認できるクレジットカードの明細
ネットバンキングの取引明細
水道光熱費などの電子明細

クレジットカードの明細と、水道光熱費の電子明細が、いちばん多い取りこぼしです。紙の請求書が届かなくなっている契約は、気づかないうちに増えています。

紙に出力して保存するのは、原則として認められない

2024年1月以降、電子取引のデータはデータのまま保存するのが原則とされています。印刷して紙で保存し、データを消す形は、原則としては認められません。

ただし、猶予措置が設けられています。要件に従って保存できなかったことについて相当の理由があり、税務調査等の際にデータのダウンロードの求めと、出力した書面の提示・提出の求めに応じることができる場合は、要件を満たさなくてもデータの保存が認められる、とされています(電子帳簿保存法施行規則4条3項)。

相当の理由の例として、システム等の整備が間に合わない、人手不足、システム整備の資金不足などが挙げられています。

猶予措置でも、データ自体は残します。紙に出して消してよい、という措置ではないところが要点です。詳しくは電子取引データの保存にまとめています。

気づかず電子取引になっているメール添付ECサイトカード明細ネット銀行電子明細電子取引
気づかず電子取引になっているもの

真実性と可視性という2つの軸

電子帳簿保存法の要件は、ばらばらに並んでいるように見えますが、2つの軸に整理されています。

何を担保するか具体的な要件の例
真実性の確保データが後から書き換えられていないことタイムスタンプ、訂正削除の履歴が残るシステム、事務処理規程
可視性の確保求められたときに読めることディスプレイ・プリンタの備付け、システム概要書、検索機能

どの区分の話をしていても、この2つに分けて読むと構造が見えます。新しい要件の説明を見たときに、真実性の話なのか可視性の話なのかを分けるだけで、何のための要件かが分かります。

点検表テンプレート
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真実性のほうは、4つの方法のどれか1つを選ぶ形になっています。全部やる必要はありません。

  1. タイムスタンプが付与されたデータを授受する
  2. 受領したデータにタイムスタンプを付与する
  3. 訂正・削除の履歴が残るシステム等でデータを授受・保存する
  4. 改ざん防止のための事務処理規程を策定し、運用し、備え付ける

4番目は、システムを買わずに済む方法です。国税庁のホームページに事務処理規程のサンプルが掲載されているとされていて、それをもとに自社の規程を作る形になります。

可視性のほうは、すべて満たす必要があります。ディスプレイとプリンタの備付け、システム概要書の備付け、検索機能の確保の3つです。検索機能については条件付きで不要になるルートがあり、検索要件の3つにまとめています。

要件は2つの軸で読む真実性の確保4つから1つ選ぶ書き換えられない規程でも満たせる可視性の確保すべて満たす求められたら読める画面・説明書・検索
要件は真実性と可視性の2軸で読む

どこから手を付けるか

電子帳簿保存法への対応を一度に全部やろうとすると止まります。義務のところから順に見ていくのが現実的な進め方です。

順番やること
1電子取引に当たるものを洗い出す(取引先・サービスごと)
2真実性の4つのうち、どれを採るかを決める
3保存する場所(フォルダかシステム)を1つに決める
4検索の条件を満たすか、満たさないルートに乗るかを判定する
5決めたことを事務処理規程か手順書に書く
6スキャナ保存をやるかどうかを、あとで判断する

6を先にやらないことがポイントです。スキャナ保存は任意なので、紙のまま保存していれば違反にはなりません。義務の部分を先に片づけてから、紙を減らしたいかどうかを判断します。

1のやり方

洗い出しは、支払いの側から辿ると漏れにくくなります。

  • 銀行の出金明細を1か月分見る
  • 支払先ごとに、請求書が紙で来るかデータで来るかを確認する
  • クレジットカードの明細に載っている経費も同じように見る
  • サブスクリプションやクラウドサービスは、ほぼデータで来ている

取引先の一覧から始めると、単発の取引が漏れます。お金が出ている先から辿ると、単発のものも拾えます。

優良な電子帳簿という別の仕組み

3つの区分とは別に、優良な電子帳簿という仕組みがあります。一定の要件を満たす電子帳簿について、あらかじめ届出を出しておくと、後で修正申告等になった場合の過少申告加算税が軽減される、というものとされています。

これは義務ではなく、メリットを取りにいく仕組みです。義務の部分が回り始めてから検討するもので、最初に考える話ではありません。

義務の部分から順に1洗い出す電子取引を2方法を選ぶ4つから1つ3場所を1つに決める4規程に書く決めたこと
義務の部分から順に手を付ける

改正が続いている法律

電子帳簿保存法は、ここ数年で何度も改正されています。古い記事を読むと、すでに廃止された要件が書いてあることがあります。

時期主な変更
2022年(令和4年)1月税務署長の事前承認が廃止。適正事務処理要件が廃止
2024年(令和6年)1月電子取引データ保存が完全義務化。猶予措置が設けられた
令和7年度税制改正請求書等を帳簿に自動連携する仕組みに対応した制度が新設されたとされている

「税務署への事前承認が必要」と書いてある説明は古いものです。スキャナ保存も電子帳簿等保存も、いまは承認なしで始められるとされています(過去分重要書類のスキャナ保存には届出が必要とされています)。

令和7年度税制改正による見直しについては、国税庁の特設サイトに資料が出ています。自社に関係するかどうかは、特設サイトか所轄の税務署で確認してください。

事務処理規程を作って運用する

真実性を確保する4つの方法のうち、システムを買わずに済むのが事務処理規程です。国税庁のホームページに、法人用と個人事業者用のサンプルが掲載されているとされています。

規程に書くのは、おおむね次のような内容です。

項目書く内容
適用範囲どの取引データを対象にするか
管理責任者誰が管理するか
データの保存どこに、どういう名前で保存するか
訂正・削除の原則禁止原則として訂正・削除をしない
訂正・削除を行う場合の手続申請書を出し、承認を得て、記録を残す

要点は、訂正・削除を原則禁止にして、どうしても必要な場合の手続を決めておくことです。サンプルをそのまま使うのではなく、自社の担当者名や保存場所に置き換えます。

そして、規程は作るだけでなく運用します。訂正が発生したときに申請と承認の記録が残っていない状態だと、規程があるだけで運用されていないことになります。訂正がめったに起きないなら、それが正常な状態です。

規程を採るか、システムを採るか

どちらが向いているかは、扱うデータの量と、担当者の人数で変わってきます。

事務処理規程訂正削除の履歴が残るシステム
初期の費用ほぼかからないかかる
向いている規模月の件数が少ない件数が多い
弱いところ運用が人に依存する費用と、乗り換えのときの書き出し

月に数十件なら規程で十分回ります。件数が増えて、フォルダを探すのに時間がかかるようになってから、システムを検討する順番で問題ありません。

真実性は4つから1つ方法どんなとき付与済みタイムスタンプ相手が付けている自社でタイムスタンプ仕組みがある履歴が残るシステムソフトが対応事務処理規程費用をかけない
真実性は4つのうち1つを選べばよい

保存する場所を1つに決める

要件の話より先に効いてくるのが、データをどこに置くかを1つに決めることです。置き場所が分かれていると、どの要件を満たしているかの判定そのものができません。

よくあるのは、次のように分かれている状態です。

  • 経理担当者のメールボックスの中(添付のまま)
  • 各自のパソコンのダウンロードフォルダ
  • 会計ソフトに取り込んだもの
  • 共有サーバーの年度フォルダ

まず1か所に集めてから、要件を満たすかを考えます。集める場所は、共有のフォルダでもクラウドストレージでも構いません。

集めるときのファイル名の付け方も決めておきます。検索要件を自前で満たすなら、「取引年月日_取引先_金額」の形にしておくと、フォルダの検索機能で3項目の検索ができるとされています。詳しくは検索要件の3つにまとめています。

決めること
置き場所共有フォルダの「電子取引」直下
年の分け方事業年度ごとのフォルダ
ファイル名20260831_株式会社○○_110000
誰が入れるか受け取った人がその場で入れる

「受け取った人がその場で入れる」が、続くかどうかの分かれ目です。経理が後からまとめて集める形にすると、集める作業が毎月発生します。

まず1か所に集めるいまの状態メールボックスの中各自のPC会計ソフト共有サーバー判定ができない1か所に集める共有フォルダ年度で分ける名前を決めるここから要件を見る
まず1か所に集めてから要件を考える

よくある質問

電子帳簿保存法に対応しないとどうなりますか

義務なのは電子取引データ保存です。要件に従った保存も猶予措置もできていない状態は、保存義務を果たしていないことになります。青色申告の承認取消しの対象になり得るとされていますが、直ちに取り消されるわけではないという説明が国税庁から示されています。まずは保存できる形にすることが先になります。

紙で来た請求書はどうすればよいですか

紙のまま保存して構いません。スキャナ保存は任意です。スキャンして紙を捨てたい場合だけ、スキャナ保存の要件を満たす必要があります。詳しくはスキャナ保存の要件にまとめています。

小さい会社でも対象ですか

所得税法・法人税法上の保存義務者であれば対象とされています。ただし、検索要件については、基準期間の売上高が5,000万円以下なら不要になるルートがあるとされています。規模で楽になる部分はありますが、保存そのものは対象です。

メールの本文に金額が書いてある場合は

取引情報が含まれているなら、そのメール自体が電子取引のデータに当たるとされています。添付ファイルだけが対象ではありません。本文に金額や取引内容が書かれているメールは、本文ごと保存する形になります。

会計ソフトを入れれば対応できますか

ソフトによります。JIIMA認証を受けたソフトかどうかが1つの目安になるとされています。ただし、認証はソフトの機能についてのもので、運用まで含めて要件を満たすかは別です。詳しくはJIIMA認証とはにまとめています。

まとめ

電子帳簿保存法は、電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引データ保存の3つの区分に分かれています。義務なのは電子取引データ保存だけで、残る2つは任意です。

電子取引は、メール添付の請求書だけではありません。ECサイトの領収書、インターネットでのみ確認できるクレジットカードの明細、ネットバンキングの取引明細、水道光熱費の電子明細も含まれるとされています。「うちは電子取引をしていない」はほとんど当てはまりません。

要件は、真実性の確保と可視性の確保の2つの軸で整理されています。真実性は4つの方法から1つを選ぶ形で、事務処理規程を作って運用する方法なら、システムを買わずに始められます。可視性はすべて満たす必要がありますが、検索機能には条件付きで不要になるルートがあります。

進め方は、電子取引の洗い出しから始めて、真実性の方法を決め、保存場所を1つにし、検索の判定をして、決めたことを規程に書く、という順になります。任意であるスキャナ保存を先にやらないのがコツです。

この法律は改正が続いています。最新の内容は、国税庁の特設サイトか所轄の税務署で確認してください。

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