法定帳簿管理2026.09.16 公開SC-05

法定帳簿の保存期間|5年と当分3年、起算日の違い

目次

法定帳簿の保存期間は「3年」と覚えられていることが多いのですが、いまの条文は5年で、経過措置によって当分の間だけ3年が適用されるという状態になっています。そして、3年か5年かという年数よりも、実務で効いてくるのはどの日から数えるかのほうです。

この記事では、法定帳簿の保存期間を、労働基準法の5年と当分3年帳簿ごとに違う起算日労働・税務・社会保険の一覧処分するときの決め方の順に整理します。保存期間は改正と経過措置が動く項目です。自社の扱いは所轄の労働基準監督署や所轄の税務署に確認してください。

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結論:条文は5年、いまは当分の間3年

労働基準法109条で、労働者名簿、賃金台帳、雇入れ・解雇・災害補償・賃金その他労働関係に関する重要な書類を5年間保存することが定められているとされています。

ただし、同法附則143条3項に経過措置があり、当分の間、この5年は3年と読み替えるとされています。厚生労働省の「改正労働基準法等に関するQ&A」にも、施行日以後は現行の3年から5年に延長されるが、経過措置として当分の間は3年が適用される、という説明が載っています。

年数
労働基準法109条(本則)5年
附則143条3項(経過措置)当分の間3年

年次有給休暇管理簿も同じ形です。労働基準法施行規則24条の7で5年間の保存が定められ、同規則71条の経過措置で、当分の間「五年間」は「三年間」と読み替えるとされています。

実務は5年で組むほうが安い

経過措置がいつ終わるかは決まっていません。「当分の間」としか書かれていないため、終わる時期を待って運用を変えることができません。

3年で処分する運用にしていると、経過措置が終わった年から急に足りなくなります。最初から5年で組んでおけば、終わっても何も変えずに済みます。

紙で持っている場合は場所の問題が出ますが、電子で持っているなら3年と5年でコストはほとんど変わりません。紙は5年分を置く場所を先に決めておくか、電子に移してしまうかの二択になります。

条文は5年、いまは当分3年本則(労基法109条)5年2020年4月の改正で3年から5年にいま(附則143条3項)当分の間3年まだ適用されない終わる時期は決まっていない
条文は5年、経過措置で当分の間3年

起算日は帳簿ごとに違う

ここが法定帳簿の保存でいちばん間違えやすいところです。年数が同じでも、数え始める日が帳簿ごとに違うとされています(労働基準法施行規則56条1項)。

書類起算日
労働者名簿労働者の死亡、退職または解雇の日
賃金台帳最後の記入をした日
雇入れまたは退職に関する書類労働者の退職または死亡の日
災害補償に関する書類災害補償を終わった日
賃金その他労働関係に関する重要な書類(出勤簿など)その完結の日

さらに同条2項に、賃金台帳と重要な書類については、その記録に係る賃金の支払期日が上の日より遅い場合、支払期日を起算日とするという定めがあります。

月末締めの翌月25日払いなら、3月分の賃金台帳は3月31日ではなく4月25日から数えることになります。締めと支払いが離れているほど、ずれが大きくなります。

起算日は書類ごとに違う書類起算日労働者名簿退職・解雇・死亡の日賃金台帳最後の記入をした日出勤簿などその完結の日どれも支払期日が遅ければその日
起算日は書類ごとに違う

同じ日に捨てると、1つだけ足りなくなる

具体的に数えてみます。2026年3月31日に退職した人がいて、最後の給与を4月25日に払ったとします。保存期間を3年として数えると次のようになります。

書類起算日保存期間の終わり
労働者名簿2026年3月31日2029年3月31日
賃金台帳2026年4月25日(支払期日)2029年4月25日
出勤簿2026年4月25日(支払期日)2029年4月25日

退職日から3年でまとめて処分すると、賃金台帳と出勤簿が1か月足りません。帳簿ごとに日を数え直すのは現実的ではないので、いちばん遅い起算日にそろえて1つの束にするのが扱いやすい形です。

在職者の帳簿は期間が始まらない

もう1つ見落とされるのが、在職中の人の扱いです。賃金台帳は「最後の記入をした日」が起算日なので、在職中は毎月更新され、保存期間が始まりません。

一般には、年度が終わると古い年のファイルを片づける運用をしている事業所が多くあります。このとき在職者の賃金台帳まで処分してしまうと、まだ期間が始まっていないものを捨てたことになります。

処分の判断は、退職して最後の給与を払ったあとに行う形にします。在職者のファイルと退職者のファイルを分けておくと、この判断が自動的に分かれます。

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労働関係の書類の保存期間一覧

労働関係の書類は、根拠の法律ごとに年数が分かれています。同じ勤怠の記録でも、根拠が違うと年数が変わることがあります。

書類期間根拠
労働者名簿5年(当分3年)労基法109条
賃金台帳5年(当分3年)労基法109条
出勤簿・タイムカード5年(当分3年)労基法109条
年次有給休暇管理簿5年(当分3年)労基則24条の7・71条
36協定などの労使協定5年(当分3年)労基法109条
雇用契約書・労働条件通知書5年(当分3年)労基法109条
労働時間の状況の記録3年安衛則52条の7の3
健康診断個人票5年安衛則51条
労働保険の徴収に関する書類3年徴収則
雇用保険の被保険者に関する書類4年雇保則143条
健康保険・厚生年金保険に関する書類2年健保則・厚年則

同じタイムカードが、労働基準法では5年(当分3年)、労働安全衛生規則では3年という形になります。長いほうに合わせておけば、どちらの話であっても足ります。

健康診断個人票は労働安全衛生規則51条で5年とされ、経過措置の対象ではありません。最初から5年です。特殊健康診断は物質によってさらに長い期間が定められているものがあります。詳しくは健康診断個人票の書き方にまとめています。

根拠が違うと年数が変わる書類根拠年数タイムカード労基法109条5年同じもの安衛則52条の7の33年健診個人票安衛則51条5年雇用保険の書類雇保則143条4年
同じ書類でも根拠が違うと年数が変わる

税務と会社法の保存期間は別の数え方

法定帳簿の話をしていると、経理側の保存期間と混ざることがあります。労働関係と税務関係は、年数も起算日も別のルールです。

書類期間起算日の考え方
国税関係帳簿書類(法人)原則7年事業年度の確定申告書の提出期限の翌日
欠損金の繰越控除を受ける事業年度の帳簿書類10年同上
会計帳簿および事業に関する重要な資料10年会社法432条2項
計算書類および附属明細書10年会社法435条4項

税務の起算日は「申告期限の翌日」で、労働基準法のように書類ごとに変わりません。3月決算なら、その事業年度の帳簿は5月末日の翌日から数えることになります。

ここで実務上のポイントは、賃金台帳が両方に関係することです。労働基準法上は5年(当分3年)ですが、給与は法人税の損金なので、その根拠資料としては帳簿書類の保存期間がかかってきます。結果として、長いほうに合わせて持つことになります。

税務関係の帳簿書類を電子データで持つ場合は、電子帳簿保存法のルールが別にかかります。詳しくは電子帳簿保存法の要件にまとめています。

迷ったら「いちばん長いもの」に寄せる

書類ごとに年数を管理すると、管理そのものに手間がかかります。一般には、書類の束ごとに、そこに含まれるいちばん長い期間で持つのが実務的な形です。

  • 労務のファイル … 5年で統一する
  • 経理のファイル … 10年で統一する
  • 退職者のファイル … 最後の給与の支払日から5年

年数を3つに絞ると、処分の判断が「この束はどれか」だけになります。

束ごとに1つの年数へ寄せる経理の書類10年労務の書類5年退職者の分支払日から5年
束ごとに1つの年数へ寄せる

処分するときに決めておくこと

保存期間が過ぎた書類は、残しておく義務がありません。ただ、個人情報が入っているので、処分のしかたは決めておきます。

  • 紙は、溶解処理か細断。まとめて出す前に中身を確認する
  • データは、バックアップ側にも残っていないかを見る
  • 処分した年月と対象を、1行の記録として残す
  • 処分の担当と承認者を決めておく

3つ目の「処分した記録」が抜けやすいところです。後から「あの年の分はどこにあるか」と聞かれたときに、処分したのか紛失したのかが分かりません。1行でよいので、いつ何を処分したかを残します。

保存期間が過ぎても残すもの

期間が過ぎても、係争になっているものや、その見込みがあるものは残します。未払賃金の請求、労災の申請、解雇をめぐる争いなどが進行しているときに、関係する帳簿を期間どおりに処分すると、後から実態を示せなくなります。

賃金請求権の消滅時効は、労働基準法115条で5年とされ、附則143条3項で当分の間3年と読み替えられているとされています。保存期間の経過措置と、消滅時効の経過措置は、同じ方向で動いています。このため、保存期間を5年で組んでおくと時効の期間ともそろいます。

保存期間を運用に落とす3つの置き方

保存期間を条文で覚えておくのは大変なので、書類を置く場所のほうにルールを持たせるのが続けやすいやり方です。一般には、次の3つのどれかで運用されています。

置き方向いている規模弱いところ
年度ごとに箱を作る人数が少ない起算日が年度と合わない書類がずれる
退職者は人ごとに封筒出入りが多い在職者の分が別管理になる
電子で1か所にまとめる事業場が複数システム乗り換えのときに書き出しが要る

どれを選んでも構いませんが、選んだ理由を書き残しておくのがポイントです。担当者が変わったときに、なぜこの分け方なのかが伝わらないと、次の人が別の分け方を足して二重になります。

箱に書いておくのは「捨てられる年」

保存期間を管理する方法として、いちばん手数が少ないのは、箱やフォルダの名前に「捨ててよい年」を書いておくことです。

  • 「2029年4月以降 処分可」のように、年と月まで書く
  • 起算日ではなく、処分できる日を書く
  • 迷ったら、いちばん遅い起算日から数える

起算日を書いておくと、処分のたびに年数を足す計算が発生します。最初の1回だけ計算して、その結果を書いておくほうが、後の判断が速くなります。

箱に書くのは処分できる年箱のラベル中身2026年 退職者起算日2026年4月25日処分可2031年5月以降書くのは処分できる計算は最初の1回だ
箱には起算日ではなく処分できる年を書く

事業場が複数あるときの持ち方

法定帳簿は事業場ごとに備えるものとされているため、保存も事業場ごとになります。本社に集めて一括で保管する形にすると、その事業場に無い状態になります。

一般には、本社で作成・計算をして、控えを各事業場に置いている会社が多くあります。紙で回すと、本社で更新したときに事業場の控えが古いまま残るのが弱いところです。

電子で持って、事業場の担当者に閲覧の権限を渡す形にすると、この問題が消えます。求められたときにその場で画面に出せるか印刷できれば、事業場に備えていると扱われるとされています。

やり方更新のずれ求められたときの出し方
紙の控えを各事業場に置く出やすいその場で出せる
電子で1か所、権限を配る出ない画面か印刷で出す

事業場を閉じるときは、閉じる前にその事業場の分を書き出して、どこへ移したかを記録します。閉鎖のあとに書類の所在が分からなくなるのは、よくある形です。

電子で1か所にすると古くならない紙の控えを配る本社で更新する控えは古いままずれが出る電子で1か所権限を配る画面か印刷で出すずれが出ない
電子で1か所にして権限を配ると控えが古くならない

よくある質問

保存期間の経過措置はいつまでですか

終わる時期は定められていません。「当分の間」としか書かれていないため、いつ終わるかを前提にした運用は組めません。5年で運用しておけば、終わっても何も変えずに済みます。

電子データで持っていれば期間は変わりますか

年数は変わりません。紙でもデータでも、労働基準法上の保存期間は同じです。ただし、データの場合は「読める状態で残っているか」が問題になります。システムを解約する前に書き出しておきます。

タイムカードは何年持ちますか

労働基準法上は5年(当分の間3年)、労働安全衛生規則52条の7の3の記録としては3年とされています。長いほうに合わせて5年で持つのが迷わない形です。

退職者の書類だけ先に捨ててよいですか

起算日から保存期間が過ぎていれば処分できます。退職者の書類は起算日が確定するので、在職者より先に期間が満了します。ただし帳簿ごとに起算日が違うので、いちばん遅い日にそろえて判断します。

税務の7年と労働の5年、どちらで持てばよいですか

その書類がどちらの目的にも使われるなら、長いほうです。賃金台帳は労務の書類であると同時に、給与を損金にした根拠でもあります。判断に迷う書類は、所轄の税務署と所轄の労働基準監督署のそれぞれに確認するのが確実です。

事業場を閉じたら、その分はどこで持ちますか

閉じたあとも保存期間は続きます。一般には、本社など存続する事業場へ移して保管する形が取られています。移したこと自体を記録に残しておかないと、数年後に所在が分からなくなります。移す前に、電子で書き出しておくのが確実です。

帳簿を電子で持つとき、バックアップも保存に数えられますか

求められたときに読める状態であることが条件なので、バックアップしかない状態でも、そこから出せるなら問題にはなりにくい形です。ただし、バックアップの世代が短いと保存期間を満たせません。世代の保持期間が保存期間より短くないかを確かめておきます。

まとめ

法定帳簿の保存期間は、労働基準法109条で5年とされ、附則143条3項の経過措置により当分の間は3年が適用されるとされています。年次有給休暇管理簿も、施行規則24条の7で5年、同規則71条の経過措置で当分の間3年という同じ形です。

そして、数え始める日は書類ごとに違います。労働者名簿は退職・解雇・死亡の日、賃金台帳は最後の記入をした日、出勤簿は完結の日で、賃金の支払期日がそれより遅いときは支払期日から数えます。退職日から一律に数えると、賃金台帳と出勤簿が足りなくなります。

在職者の賃金台帳は、毎月更新されるため保存期間が始まりません。年度で区切って古い年を処分する運用にしていると、期間の来ていないものを捨てることになります。在職者と退職者のファイルを分けておくと、この判断が自動的に分かれます。

税務と会社法の保存期間は別のルールで、起算日も申告期限の翌日という別の考え方です。書類の束ごとに、そこに含まれるいちばん長い期間へ寄せるのが、管理の手間がいちばん少ない形になります。

処分するときは、いつ何を処分したかを1行残しておきます。後から「あの年の分はどこか」と聞かれたときに、処分したのか紛失したのかが分かるのは、この1行だけです。係争になっているものは、期間が過ぎていても残します。

保存期間は改正と経過措置が動く項目です。自社の扱いは、所轄の労働基準監督署や所轄の税務署に確認してください。

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