健康診断個人票の書き方|様式第5号と保存5年
目次
健康診断個人票は、健診機関から届いた結果をファイルしておけば済むと思われがちですが、結果そのものとは別に作る書類です。様式が定められていて、医師の意見を書く欄まで含めて1枚になっています。
この記事では、健康診断個人票を、何のための書類か、様式と書く項目、医師の意見聴取の欄、対象になる人、保存期間の順に整理します。健康情報の取扱いには別の指針があります。自社の扱いは所轄の労働基準監督署に確認してください。
結論:様式第5号で、保存は5年
健康診断個人票は、労働安全衛生規則51条で、健康診断の結果に基づき、様式第5号により作成して5年間保存することが定められているとされています。
| 内容 | |
|---|---|
| 根拠 | 労働安全衛生規則51条 |
| 様式 | 様式第5号 |
| 保存期間 | 5年間 |
| 作る単位 | 労働者ごと |
保存期間の5年には、労働基準法のような経過措置がありません。法定三帳簿は5年(当分の間3年)ですが、健康診断個人票は最初から5年です。同じファイルにまとめて3年で処分すると、こちらだけ足りなくなります。
そして、健診機関から届く「健康診断結果報告」と健康診断個人票は別のものです。結果の書類をそのまま綴じただけでは、個人票を作成したことになりません。様式第5号には、結果のほかに医師の意見を書く欄があるためです。
個人票は年ごとに積み上げる
健康診断個人票は、1人につき1枚を作って、毎年の結果を行として足していく形になっています。人ごとに1枚で、年ごとに1行です。
この形になっているのは、同じ人の数値の推移が1枚で見られるようにするためです。今年の値だけを見るのではなく、去年と比べてどう動いたかを見る、という使い方が想定されています。
一般には、健診機関の結果票をそのまま人ごとのフォルダに入れている事業所が多くあります。結果票は残したうえで、様式第5号を1枚作って年ごとに転記するのが、求められている形になります。
健康診断個人票に書く項目
様式第5号に並んでいるのは、大きく4つのかたまりです。
| かたまり | 書く内容 |
|---|---|
| 本人の情報 | 氏名、生年月日、年齢、性別、雇入年月日 |
| 健診の情報 | 健康診断の実施年月日、業務歴、既往歴、自覚症状・他覚症状 |
| 検査の結果 | 身長・体重・腹囲・視力・聴力、血圧、血液検査、心電図、胸部エックス線など |
| 事後の措置 | 医師の診断、医師の意見、意見を聴いた年月日、事後措置の内容 |
最後のかたまりが、健診結果の書類には無い部分です。ここを埋めるために個人票が要る、という構造になっています。
定期健康診断の検査項目
労働安全衛生規則44条による定期健康診断の項目は、一般に次の11とされています。
- 既往歴および業務歴の調査
- 自覚症状および他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
- 胸部エックス線検査および喀痰検査
- 血圧の測定
- 貧血検査
- 肝機能検査
- 血中脂質検査
- 血糖検査
- 尿検査
- 心電図検査
一部の項目は、年齢や医師の判断によって省略できるとされています。省略した項目は空欄になりますが、省略した理由が説明できる状態にしておくと、後から聞かれたときに困りません。
医師の意見を聴く欄が本体
健康診断個人票でいちばん埋まっていないのが、医師の意見の欄です。
労働安全衛生法66条の4で、健康診断の結果、異常の所見があると診断された労働者について、健康を保持するために必要な措置について医師の意見を聴かなければならないとされています。
| 段階 | 誰が何をするか |
|---|---|
| 1 | 健康診断を実施する |
| 2 | 結果を本人に通知する(安衛法66条の6) |
| 3 | 異常の所見がある人について、医師の意見を聴く(66条の4) |
| 4 | 意見を個人票に記載する |
| 5 | 必要に応じて、就業場所の変更や労働時間の短縮などの措置をとる(66条の5) |
3が飛ばされていることが多くあります。結果を本人に渡して終わりにすると、個人票の医師の意見欄が空欄のまま残ります。
意見を聴く相手は、産業医がいる事業場なら産業医です。産業医の選任義務が無い事業場(常時50人未満)でも、意見を聴くこと自体は求められます。地域産業保健センターで、無料で医師の意見を聴ける仕組みがあるとされています。
意見の書き方は3区分が基本
医師の意見は、一般に次の3つの区分で示されます。
| 区分 | 意味 |
|---|---|
| 通常勤務 | 通常の勤務でよい |
| 就業制限 | 勤務に制限を加える必要がある |
| 要休業 | 勤務を休む必要がある |
区分だけでなく、具体的な内容も書いておくほうが、その後の措置につながります。「就業制限:深夜業を月2回までとする」のように、実際に運用できる形にします。
対象になる人と、実施の時期
健康診断の対象は、常時使用する労働者とされています。正社員だけではありません。
パート・アルバイトについては、一般に次の2つを両方満たす場合に対象になるとされています。
- 期間の定めのない契約、または1年以上使用される見込みがあること
- 1週間の所定労働時間が、同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上であること
4分の3が目安になりますが、2分の1以上であれば実施することが望ましいとされています。ここは判断が分かれるところなので、所轄の労働基準監督署に確認するのが確実です。
実施の時期は、健診の種類で分かれています。
| 種類 | 時期 | 根拠 |
|---|---|---|
| 雇入時の健康診断 | 雇い入れるとき | 安衛則43条 |
| 定期健康診断 | 1年以内ごとに1回 | 安衛則44条 |
| 特定業務従事者の健康診断 | 配置替えの際と、6か月以内ごとに1回 | 安衛則45条 |
深夜業を含む業務に常時従事する人は、特定業務従事者に当たり、年2回になります。一般の定期健康診断だけを年1回実施していて、深夜業のある人が年1回のまま、という形が見落としやすいところです。
費用は、実施が事業者に義務づけられているため、事業者が負担するのが原則とされています。
特殊健康診断は保存期間が長い
有害な業務に従事する労働者については、特殊健康診断が定められていて、個人票の保存期間が一般の健診より長くなっているものがあります。
| 健診の種類 | 個人票の保存期間 |
|---|---|
| 一般の定期健康診断 | 5年 |
| 有機溶剤等健康診断 | 5年 |
| 鉛健康診断 | 5年 |
| 特定化学物質健康診断 | 5年(特別管理物質は30年) |
| 電離放射線健康診断 | 30年 |
| 石綿健康診断 | 40年 |
| じん肺健康診断に関する記録 | 7年(じん肺法) |
30年や40年という期間が出てくるのが、特殊健康診断の特徴です。健康被害が出るまでに時間がかかる物質があるためとされています。
一般の健診と同じファイルに入れて5年で処分すると、取り返しがつかない形で消えます。該当する業務がある事業所では、特殊健診の個人票だけ別のファイルに分けて、表紙に保存年数を書いておくのが確実な形です。
自社の業務にどの特殊健康診断がかかるかは、所轄の労働基準監督署に確認してください。取り扱っている物質によって細かく分かれています。
1年の流れに落とす
健康診断は、年に1回しか触らない仕事なので、毎年ゼロから思い出すことになりがちです。流れを一度決めてしまうと、翌年からは同じ手順で回せます。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 2か月前 | 対象者を確定する(新入社員、4分の3の要件に入った人を含める) |
| 1か月前 | 健診機関を予約し、受診案内を配る |
| 実施月 | 受診状況を確認し、未受診者に再案内する |
| 結果到着後 | 結果を本人へ通知する |
| その後 | 異常の所見がある人について医師の意見を聴く |
| 意見受領後 | 個人票に記載し、必要な措置をとる |
| 50人以上の事業場 | 定期健康診断結果報告書を所轄の労働基準監督署へ提出する |
いちばん止まりやすいのは「医師の意見を聴く」のところです。結果が届いた時点で仕事が終わった気持ちになるためです。結果の到着を、意見聴取の依頼を出す合図にしておくと止まりません。
未受診者をどう追うか
受診率が100%にならないのが、実務の悩みどころです。一般には、受診状況の一覧を1枚作って、未受診の人だけを追うやり方が取られています。
- 対象者の一覧に、受診日を記入する列を置く
- 実施月の終わりに、空欄の人を抜き出す
- 再案内を出し、日程を個別に決める
- 案内した日付を記録に残す
案内した記録が残っていることが大事です。受診は労働者にも義務があるとされていますが、会社として実施の機会を用意し、案内したことは示せる状態にしておきます。
健康情報の置き場所を分ける
健康診断個人票は、人事の書類の中でも取扱いの範囲が狭い書類です。労働者名簿や賃金台帳と同じ場所に置かないほうが、範囲を絞りやすくなります。
| 書類 | 見てよい範囲の例 |
|---|---|
| 労働者名簿・賃金台帳 | 人事・給与の担当者 |
| 健康診断個人票 | 産業保健の担当者、産業医 |
一般には、健康情報の取扱いについて社内のルールを定めておくことが求められています。誰が扱うか、どこに置くか、どこまで共有するかを決めて、書いておく形です。
人事評価や配置の判断にそのまま使わないのが要点になります。就業上の措置が必要な場合は、医師の意見を踏まえて、必要な範囲の情報だけを判断に使う形が求められるとされています。
紙で保管する場合は施錠できる場所に、データで持つ場合はアクセス権を絞ります。5年(特殊健診はさらに長期)持ち続ける書類なので、担当者が変わったときの引き継ぎ方まで決めておくと、置き場所が分からなくなりません。
よくある質問
健診結果の書類を綴じておけば個人票になりますか
なりません。健康診断個人票は様式第5号で作るものとされていて、医師の意見を記載する欄が含まれます。健診機関の結果票には、この欄がありません。結果票は残したうえで、個人票を別に作る形になります。
常時50人未満の事業場でも個人票は要りますか
必要とされています。労働安全衛生規則51条に人数の条件はありません。産業医の選任義務や、定期健康診断結果報告書の提出義務が常時50人以上とされているので、そこと混ざりやすいところです。
定期健康診断結果報告書はどこへ出しますか
常時50人以上の労働者を使用する事業場は、労働安全衛生規則52条により、様式第6号で所轄の労働基準監督署長へ報告するとされています。個人票の作成とは別の手続きです。
退職した人の個人票はいつまで持ちますか
保存期間は5年とされています。労働基準法の経過措置(当分の間3年)は適用されません。法定三帳簿と同じファイルに入れて3年で処分すると、こちらだけ足りなくなります。保存期間の全体像は法定帳簿の保存期間にまとめています。
健康診断個人票は誰が見てよいですか
健康情報なので、取扱いの範囲を決めておくことが求められます。必要な範囲の担当者に限るのが基本で、労働安全衛生法104条や関係する指針で取扱いのルールが定められているとされています。人事評価に使わないこと、本人の同意なく共有しないことが要点になります。
パートの健診を実施していませんでした
4分の3の要件を満たす人が対象から漏れていた場合は、気づいた時点で実施の案内を出します。次の定期健康診断のタイミングを待たずに、雇入時の健康診断に準じて受けてもらう形が一般的です。対象者の判定は週の所定労働時間で決まるので、契約の変更があったときに見直す運用にしておくと漏れません。
本人が受診を拒んだ場合はどうしますか
健康診断の受診は労働者にも義務があるとされています(労働安全衛生法66条5項)。受診を勧めた記録を残しておくことが実務上は重要になります。本人が指定の医療機関以外で受けた結果を提出する形も認められているとされています。
雇入時の健康診断は、入社前に受けたものでよいですか
医師による健康診断を受けた後3か月を経過しない者が、その結果を証明する書面を提出したときは、その項目について省略できるとされています。入社直前に受けた健診の結果を提出してもらえば足りる場合があります。項目が雇入時の健康診断の項目を満たしているかを確かめてください。
個人票は電子データで持ってよいですか
構わないとされています。求められたときに出せることと、健康情報として範囲を絞って管理できることの2つが条件になります。健診機関のシステムで見られるだけの状態にしていると、契約が終わったときに読めなくなるので、書き出したものを手元に持っておきます。
まとめ
健康診断個人票は、労働安全衛生規則51条により様式第5号で作成し、5年間保存するものとされています。健診機関の結果票をファイルしただけでは、個人票を作成したことになりません。
個人票の本体は、医師の意見の欄です。異常の所見がある人について医師の意見を聴くことが労働安全衛生法66条の4で求められていて、その意見を書く場所が個人票になっています。産業医の選任義務が無い事業場でも、意見を聴くこと自体は求められます。
対象は常時使用する労働者で、パート・アルバイトも、1年以上使用される見込みがあり、週の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上なら含まれるとされています。深夜業がある人は特定業務従事者に当たり、6か月以内ごとに1回です。
保存期間は5年で、労働基準法のような経過措置はありません。法定三帳簿と同じファイルに入れて3年で処分すると、こちらだけ足りなくなります。特殊健康診断は、特別管理物質で30年、石綿で40年と長いものがあるため、別のファイルに分けて表紙に年数を書いておきます。
年に1回しか触らない仕事なので、対象者の確定から報告書の提出までを1枚の流れにして残しておくと、翌年からは同じ手順で回せます。止まりやすいのは結果が届いたあとの意見聴取なので、そこだけ合図を決めておきます。
健康情報の取扱いには別の指針があります。自社の扱いは、所轄の労働基準監督署に確認してください。