法定三帳簿とは?3つの帳簿と保存期間の数え方
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法定三帳簿は、人を雇ったら作るものとして名前だけは知られていますが、3つの帳簿で記載事項も保存期間の起算日も別々になっています。同じ「3年」でも数え始める日が違うため、退職者の書類をまとめて同じ日に処分すると、1つだけ期間が足りない状態になります。
この記事では、法定三帳簿を、どの3つを指すのか、誰が対象になるのか、それぞれの記載事項、保存期間と起算日の違い、1つにまとめてよいのかの順に整理します。保存期間は改正の経過措置が続いている項目です。自社の扱いは所轄の労働基準監督署に確認してください。
結論:3つで1組、保存は5年(当分の間3年)
法定三帳簿は、労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の3つを指します。根拠の条文は次のとおりとされています。
| 帳簿 | 根拠 | 様式 | 保存期間 |
|---|---|---|---|
| 労働者名簿 | 労働基準法107条 | 様式第19号 | 5年(当分の間3年) |
| 賃金台帳 | 労働基準法108条 | 様式第20号・第21号 | 5年(当分の間3年) |
| 出勤簿 | 条文に名前はない。109条の「重要な書類」 | 定めなし | 5年(当分の間3年) |
ポイントは、出勤簿だけ法律に名前が出てこないことです。労働基準法に「出勤簿を作りなさい」という条文はありません。労働時間を記録した書類が109条の「賃金その他労働関係に関する重要な書類」に当たるため、結果として作成と保存が必要になる、という形になっています。
ここが効いてくるのは、様式を探したときです。労働者名簿と賃金台帳には国が定めた様式(第19号・第20号)がありますが、出勤簿には決まった様式がありません。タイムカードでも、Excelの月次シートでも、勤怠システムの画面でも構わないとされています。決まった形が無いぶん、何を残すかは自社で決めることになります。
保存期間は、2020年4月の改正で3年から5年に延びました。ただし経過措置として、当分の間は3年が適用されるとされています(労働基準法附則143条)。厚生労働省の「改正労働基準法等に関するQ&A」にも、現行の3年から5年に延長されるが当分の間は3年、と同じ説明が載っています。
実務としては5年で運用しておくのが扱いやすいです。経過措置がいつ終わるかは決まっていないため、3年で処分する運用にしていると、終わった年から急に足りなくなります。保存の場所が紙なら場所の問題が出ますが、電子で持っているならコストはほとんど変わりません。
誰が法定三帳簿の対象になるか
法定三帳簿は、労働者を1人でも雇った事業所に作成と保存の義務があるとされています。一般には、正社員だけの帳簿だと思われていることが多いのですが、パート・アルバイト・契約社員も同じように対象です。
| 働き方 | 法定三帳簿の対象 |
|---|---|
| 正社員・契約社員・パート・アルバイト | 対象 |
| 日々雇い入れられる人 | 労働者名簿は対象外。賃金台帳は様式第21号で対象 |
| 役員のみで従業員がいない | 労働者がいないため対象外 |
| 同居の親族のみを使用する事業 | 労働基準法の適用外とされている |
「役員だけだから要らない」という状態は、アルバイトを1人雇った時点で変わります。雇う前に3つの様式をそろえておくと、後から遡って作り直す手間が消えます。1人目を雇う準備として、雇用契約書と一緒に用意しておくのが無駄がありません。
派遣で人を受け入れている場合、派遣労働者の法定三帳簿は派遣元が作るのが原則とされています。受入側が作るのは派遣先管理台帳で、別のルールになります。自社の従業員と派遣の方が同じ職場にいると混ざりやすいところです。
事業場ごとに作る
法定三帳簿は、会社単位ではなく事業場(事業所)単位で作るものとされています。本社と営業所があるなら、それぞれの事業場に、そこで働く人の分を置く形です。
一般には、給与計算を本社で一括して行っている会社が多くあります。その場合でも、調査で見せるのは事業場に置いてある分になるため、営業所にも出力した控えを置くか、その場で画面に出せる仕組みのどちらかが要ります。
クラウドの勤怠・給与システムを使っているなら、営業所の担当者にも閲覧の権限を渡しておくのが手数の少ない形です。紙で置くと、本社で更新したときに営業所の控えが古いまま残ります。
法定三帳簿の記載事項を並べて見る
法定三帳簿の記載事項は、3つで重なっている部分がほとんどありません。並べて見ると、どこを埋めていないかが分かります。
| 労働者名簿 | 賃金台帳 | 出勤簿 | |
|---|---|---|---|
| 氏名 | 必要 | 必要 | 必要 |
| 性別 | 必要 | 必要 | 不要 |
| 生年月日 | 必要 | 不要 | 不要 |
| 住所 | 必要 | 不要 | 不要 |
| 履歴 | 必要 | 不要 | 不要 |
| 賃金計算期間 | 不要 | 必要 | 不要 |
| 労働日数・労働時間数 | 不要 | 必要 | 必要 |
| 時間外・休日・深夜の時間数 | 不要 | 必要 | 必要 |
| 賃金の種類ごとの額 | 不要 | 必要 | 不要 |
| 控除した額 | 不要 | 必要 | 不要 |
| 雇入れ・退職の年月日 | 必要 | 不要 | 不要 |
3つに共通しているのは氏名だけです。同じ人の情報を3か所に分けて持つ形になるので、名前の表記(旧姓・新姓、ミドルネーム)がずれると、後から突き合わせるときに別人に見えます。表記は1つに固定しておくと後が楽です。
抜けやすいのは2か所
法定三帳簿で空欄のまま残りやすいのは、労働者名簿の「履歴」と、賃金台帳の「労働時間数」です。
履歴は、法律に「どこまで書くか」の定めがありません。定めが無いので空欄でよい、という運用になりがちですが、記載事項として挙がっている以上は何か書いてある状態にしておくのが安全です。社内の異動歴だけでも構いません。
賃金台帳の労働時間数は、給与明細から数字を転記すると消えます。明細に載っているのは割増後の金額なので、時間数の欄が空欄のまま台帳ができあがるためです。労働時間数は金額ではなく実際の時間数を書くものとされているので、勤怠の集計側から持ってくる必要があります。
欄ごとの書き方は、労働者名簿の書き方、賃金台帳の書き方、出勤簿の書き方にそれぞれまとめています。
法定三帳簿の保存期間は、起算日が3つとも違う
ここが法定三帳簿でいちばん実務に効くところです。保存期間は3つとも同じでも、数え始める日が3つとも違うとされています(労働基準法施行規則56条1項)。
| 帳簿 | 起算日 |
|---|---|
| 労働者名簿 | 労働者の死亡、退職または解雇の日 |
| 賃金台帳 | 最後の記入をした日 |
| 出勤簿(重要な書類) | その完結の日 |
さらに同条2項で、賃金の支払期日が上の日より遅い場合は、支払期日を起算日にするとされています。末日締めの翌月25日払いなら、最後の記入日ではなく翌月25日から数える形です。
同じ日に捨てると1つだけ足りなくなる
3月31日に退職した人の書類を、退職日の3年後にまとめて処分したとします。労働者名簿は退職日が起算日なので足りていますが、賃金台帳は翌月の給与支払日が起算日になるため、1か月足りない状態で捨てたことになります。
退職者の書類は、いちばん遅い起算日にそろえて1つの束にするのが扱いやすい形です。退職した人ごとに、最後の給与を払った日を封筒か台帳に書いておき、その日を基準に処分の年を決めます。
もう1つ気をつけたいのが、在職中の人の賃金台帳です。在職中は「最後の記入をした日」が毎月更新されるので、保存期間が始まりません。年度で区切って古い年の分を捨ててしまうと、まだ期間が来ていないものを処分したことになります。詳しくは法定帳簿の保存期間にまとめています。
法定三帳簿を1つにまとめてよいか
まとめてよいとされています。労働基準法施行規則55条の2に、年次有給休暇管理簿・労働者名簿・賃金台帳はあわせて調製することができるという定めがあります。
一般には、3つのファイルを別々に持っている事業所が多くあります。人数が少ないうちはそのほうが分かりやすいのですが、人ごとに3か所を開く形になるため、退職のときに1つだけ更新が抜けます。
| 持ち方 | 向いている場面 |
|---|---|
| 3つを別ファイルで持つ | 人数が多く、担当者が分かれている |
| 人ごとに1枚にまとめる | 人数が少なく、1人で全部見ている |
人数が20人までなら、1人1シートにして名簿と有給管理簿を同じシートに置くほうが、更新漏れが起きにくくなります。賃金台帳は毎月行が増えるため、別シートに分けるのが扱いやすいです。
まとめるときに1つだけ注意があるのが、保存期間の起算日が違うまま同じ紙に載ることです。1枚にまとめた結果、いちばん長く残すものに引きずられて全部を長く持つことになりますが、短いほうに合わせて捨てるよりは安全側です。
労働基準監督署の調査で最初に見られる
法定三帳簿は、労働基準監督署の調査(臨検監督)で最初に提示を求められる書類とされています。一般には、そろっていないこと自体よりも、帳簿の数字と実態が合っていないことが問題になります。
| 見られ方 | よく指摘される形 |
|---|---|
| 出勤簿と賃金台帳を突き合わせる | 出勤簿の残業時間と、台帳の時間外労働時間数が合わない |
| 賃金台帳の労働時間数を見る | 割増後の金額だけがあり、時間数が空欄 |
| 労働者名簿の人数を数える | 名簿に載っていない人が出勤簿にいる |
| 保存期間を確認する | 退職者の分がすでに処分されている |
出勤簿と賃金台帳が合っているかは、毎月そろえておくほうが楽です。給与計算のときに、集計した残業時間をそのまま台帳の時間数欄に入れる運用にすると、後から突き合わせる作業が消えます。
「名簿に載っていない人が出勤簿にいる」は、入社した月に名簿を作り忘れたときに起きます。入社の手続きで、雇用契約書・労働者名簿・賃金台帳の3つを同じタイミングで作る形にしておくと防げます。
是正勧告を受けたときの直し方
そろっていない場合は、作れる範囲で遡って作り、いつの分から整えたかを添えて出すのが一般的な形です。過去の分をすべて復元できないことはあるため、復元できる資料(給与計算の記録、タイムカード、銀行の振込データ)から積み上げます。
その場で全部そろえようとして、実態と違う数字を入れないことが大事です。復元できない期間は復元できないと書いて、以降どう運用するかを添えるほうが、後で食い違いが出ません。
法定三帳簿を電子データで持つときの線
法定三帳簿は、紙でなくても構わないとされています。Excelやクラウドの勤怠システムで持っている事業所が一般的です。ただし、求められたときにすぐ出せる状態であることが条件になります。
- 事業場ごとに、画面で見られるか、その場で印刷できる
- 労働者ごと・期間ごとに取り出せる
- 改変されていないことが説明できる
- システムを解約したあとも、保存期間のあいだ読める形で残っている
いちばん見落とされるのは最後の1つです。勤怠システムや給与システムを乗り換えると、前のシステムのデータが読めなくなることがあります。解約する前に、保存期間が残っている分をPDFかCSVで書き出しておきます。書き出したファイルは、誰が見ても中身が分かるようにフォルダ名に年と事業場名を入れておきます。
なお、ここでいう電子化は労働基準法の話で、国税関係の帳簿書類にかかる電子帳簿保存法とは別のルールです。労働基準法のほうには、解像度やタイムスタンプといった要件はありません。電帳法のほうは電子帳簿保存法の要件にまとめています。
よくある質問
法定三帳簿がないとどうなりますか
労働基準法で作成と保存が義務づけられているため、調査で指摘され、是正勧告の対象になるとされています。罰則も定められています。それ以上に、残業代の請求や労災の認定で、記録が無いと会社側が実態を示せなくなるという影響が大きくなります。記録が無い場合、労働者側の申告した時間が前提になることがあります。
法定四帳簿という言い方も見かけます
年次有給休暇管理簿を加えて4つと呼ぶことがあります。年次有給休暇管理簿は2019年4月から作成が義務づけられた書類で、労働基準法施行規則24条の7が根拠とされています。書き方は年次有給休暇管理簿の書き方にまとめています。
役員だけの会社でも作る必要がありますか
労働者がいなければ対象外とされています。ただし役員が労働者としての性格も持つ場合(使用人兼務役員など)は扱いが変わることがあるため、所轄の労働基準監督署に確認するのが確実です。
1人でもアルバイトを雇ったら要りますか
必要とされています。雇用形態や労働時間の長さで対象から外れることはありません。週1日の短期アルバイトでも、労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の3つが対象になります。
履歴書を労働者名簿の代わりにできますか
履歴書は労働者名簿の記載事項をすべて含んでいないため、そのままでは代わりになりません。ただし履歴書を綴じておくと「履歴」欄を書くときの元資料になります。詳しくは労働者名簿の書き方にまとめています。
退職した人の分は、いつ捨ててよいですか
起算日から保存期間が過ぎたあとです。労働者名簿は退職の日、賃金台帳は最後の記入をした日(賃金の支払期日がそれより遅ければ支払期日)から数えます。3つの起算日のうち、いちばん遅い日にそろえるのが安全です。
まとめ
法定三帳簿は、労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の3つです。保存期間はどれも労働基準法109条で5年とされ、経過措置で当分の間は3年が適用されるとされています。
そして、数え始める日は3つとも違います。労働者名簿は退職や死亡の日、賃金台帳は最後の記入をした日、出勤簿は完結の日で、賃金の支払期日がそれより遅いときは支払期日から数えます。まとめて同じ日に処分すると、1つだけ期間が足りない状態になります。
3つを人ごとに1枚にまとめることは、労働基準法施行規則55条の2で認められています。人数が少ないうちは、まとめたほうが退職時の更新漏れが減ります。
調査で見られるのは、そろっているかよりも、出勤簿の時間と賃金台帳の時間数が合っているかです。給与計算の流れの中で台帳の時間数欄まで埋める運用にすると、後から突き合わせる作業がなくなります。
記載事項と保存期間は改正が入る項目です。自社の扱いは、所轄の労働基準監督署に確認してください。