出勤簿の書き方|記号の付け方とハンコの扱い
目次
出勤簿は、来た日にハンコを押す紙として続いている職場が多くあります。ただ、出勤簿に求められているのは「来たかどうか」ではなく「何時から何時まで働いたか」です。ハンコだけの出勤簿は、出勤した事実は残っても、労働時間の記録にはなりません。
この記事では、出勤簿を、何を書く書類なのか、必要な項目、記号の付け方、ハンコだけで足りるのか、誰が記入するのか、保存期間の順に整理します。労働時間の把握については通達やガイドラインで運用が定められています。自社の扱いは所轄の労働基準監督署に確認してください。
結論:出勤簿には決まった様式がない
出勤簿は、法定三帳簿の1つに数えられますが、労働基準法に「出勤簿」という条文はありません。労働者名簿は107条、賃金台帳は108条に条文がありますが、出勤簿だけは名前が出てこない、という形になっています。
では何を根拠に作るのかというと、次の2つとされています。
| 根拠 | 求められること |
|---|---|
| 労働基準法109条 | 「賃金その他労働関係に関する重要な書類」として保存する |
| 労働安全衛生法66条の8の3 | 労働時間の状況を、客観的な方法その他適切な方法で把握する |
条文に名前が無いということは、国が定めた様式も無いということです。タイムカードでも、Excelの月次シートでも、勤怠システムの画面でも、紙の出勤簿でも構いません。
決まった形が無いぶん、何を残すかは自社で決めることになります。逆に言えば、「この様式でなければならない」という制約が無いので、自社の働き方に合わせて作れる書類でもあります。
名前は出勤簿でなくてよい
勤怠記録、勤務表、タイムカード集計表。呼び方はどれでも構いません。中身が労働時間の記録になっていれば、名前は問われません。
一般には、タイムカードを打刻の記録として使い、月末に集計した表を出勤簿としている事業所が多くあります。この形なら、打刻のデータが客観的な記録になり、集計表が賃金台帳への入口になります。
出勤簿に必要な項目
様式は決まっていませんが、労働時間の記録として使えるために入れておく項目は決まってきます。
| 項目 | 理由 |
|---|---|
| 氏名 | 誰の記録か |
| 出勤日 | 労働日数を数えるため |
| 始業時刻・終業時刻 | 労働時間を出すため |
| 休憩時間 | 労働時間から差し引くため |
| 労働時間数 | 賃金台帳の欄に入れるため |
| 時間外労働の時間 | 割増賃金の根拠 |
| 休日労働の日と時間 | 同上 |
| 深夜労働の時間 | 同上 |
| 有給休暇を取った日 | 年次有給休暇管理簿とそろえるため |
いちばん抜けるのが休憩時間です。始業と終業だけを記録して、休憩は「1時間」と決め打ちにしている職場が多くありますが、実際に休憩を取れなかった日があると、その分の労働時間が記録から消えます。
始業・終業・休憩の3つがそろってはじめて、その日の労働時間が出せます。ここが埋まっていれば、賃金台帳の時間の欄はそのまま作れます。書き方は賃金台帳の書き方にまとめています。
月の合計欄を置いておく
日ごとの記録に加えて、月の下に合計の行を置いておくと、給与計算がそのまま進みます。
- 出勤日数
- 総労働時間数
- 時間外労働時間数
- 休日労働時間数
- 深夜労働時間数
- 有給取得日数
この6つが、賃金台帳と年次有給休暇管理簿へそのまま渡る数字です。合計欄が無いと、毎月電卓で足すことになります。
出勤簿の記号の付け方
日ごとのマスに何を書くかは、自社で決めて構いません。ただ、決めた記号を紙の上に書いておくことがポイントです。凡例が無いと、作った人以外に読めない書類になります。
一般に使われている記号を挙げます。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| ○ または 出 | 出勤 |
| 有 | 年次有給休暇 |
| 欠 | 欠勤 |
| 休 | 所定休日 |
| 法 | 法定休日 |
| 特 | 特別休暇(慶弔など) |
| 代 | 代休 |
| 振 | 振替休日 |
「休」を分けておくと後で効きます。所定休日と法定休日を同じ記号にしていると、休日に働いてもらったときに、割増率が35%なのか25%なのかが台帳から判断できません。
有給と欠勤は必ず分ける
年次有給休暇を取った日と、欠勤した日を同じ扱いにしている出勤簿があります。この2つは分けます。
- 有給休暇は、賃金が支払われる日で、労働日数からは外れる
- 欠勤は、賃金が支払われない日で、やはり労働日数からは外れる
見た目はどちらも「来ていない日」ですが、給与の計算が変わります。そして、有給の取得日数は年次有給休暇管理簿に載せる数字でもあります。分けておかないと、年5日の取得ができているかを確かめられません。書き方は年次有給休暇管理簿の書き方にまとめています。
半日・時間単位の有給をどう書くか
半日単位や時間単位の年次有給休暇を認めている場合は、記号だけでは足りません。「有0.5」「有2h」のように、記号と量をセットで書く形にします。
年5日の取得義務の数え方では、半日は0.5日として数えますが、時間単位で取った分は含まれないとされています。記号のところで量まで残しておかないと、後から数え直せません。
ハンコを押すだけの出勤簿で足りるか
出勤簿にハンコを押す運用は、長く使われてきた形です。出勤した日を記録するという意味では機能します。ただ、いまの労働時間の把握の考え方からすると、それだけでは足りません。
理由は単純で、ハンコからは始業時刻も終業時刻も分からないからです。
| ハンコだけの出勤簿で分かること | 分からないこと |
|---|---|
| その日に出勤したこと | 何時に始めたか |
| 出勤した日数 | 何時に終わったか |
| 休憩を何分取ったか | |
| 残業があったか |
労働安全衛生法66条の8の3と労働安全衛生規則52条の7の3で、労働時間の状況を客観的な方法その他適切な方法で把握し、記録を作成して3年間保存することが定められているとされています。厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」でも、原則は使用者による現認か、タイムカード・ICカード・パソコンの使用時間の記録といった客観的な記録とされています。
いまのハンコを残したまま直せる
ハンコの運用をやめる必要はありません。ハンコの欄の隣に、始業・終業・休憩の3列を足すだけで、記録として成立します。
- ハンコ欄はそのまま(本人の確認の印として機能する)
- 始業時刻・終業時刻・休憩時間の3列を足す
- 月の下に合計欄を置く
用紙を刷り直すだけで済み、運用のしかたは変わりません。押す習慣がすでにあるところに欄を足すほうが、まったく新しい仕組みを入れるより定着します。
誰が記入するのか
出勤簿を作る義務は使用者(会社側)にあるとされています。本人が書く形にしていても、内容が正しいことに責任を持つのは会社です。
厚生労働省のガイドラインでは、原則として次の2つが挙げられているとされています。
- 使用者が、自ら現認して記録する
- タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録など、客観的な記録を基礎として確認し、記録する
本人の自己申告による把握は例外的な方法という位置づけで、採る場合には、対象者への十分な説明、実態調査、申告を阻害する措置を設けないことなどが求められるとされています。
自己申告のままにしないための1つの工夫
自己申告を続けるなら、入退館の記録やパソコンのログと突き合わせる日を決めておくのが現実的な形です。毎日やる必要はありません。
- 月に1回、申告と客観的な記録が大きくずれている人がいないかを見る
- ずれている人には、理由を聞いて記録を直す
- 見たこと自体を、日付とともに残しておく
「見ている」という記録が残っていることが、自己申告を採る場合に効いてきます。詳しくは労働時間の把握にまとめています。
出勤簿の保存期間
出勤簿の保存期間は、労働基準法109条の「賃金その他労働関係に関する重要な書類」として5年とされ、経過措置により当分の間は3年が適用されるとされています(同法附則143条)。
起算日は、労働基準法施行規則56条1項5号でその完結の日と定められています。さらに同条2項で、賃金の支払期日がそれより遅い場合は支払期日が起算日になるとされています。
なお、労働安全衛生規則52条の7の3による「労働時間の状況の記録」は3年間の保存とされています。同じ勤怠の記録でも、根拠が違うと年数が変わることがあります。長いほうに合わせて残しておくのが迷わない形です。
詳しくは法定帳簿の保存期間にまとめています。
出勤簿でよく起きる4つのずれ
出勤簿そのものは作れていても、他の書類と数字が合わないという形で問題になることがあります。調査で見られるのもここです。よく起きる形を4つ挙げます。
| ずれ | 起きる理由 | 直し方 |
|---|---|---|
| 出勤簿の残業時間と賃金台帳の時間外労働時間数が違う | 給与計算のときに手で入れ直している | 集計をそのまま台帳へ渡す |
| 出勤簿にいる人が労働者名簿にいない | 入社の月に名簿を作り忘れた | 入社手続きで3つ同時に作る |
| 有給の日数が年次有給休暇管理簿と合わない | 出勤簿で有給と欠勤を分けていない | 記号を分ける |
| 締め日と賃金計算期間の月がずれている | 支払月で台帳の行を並べている | 計算期間の月で並べる |
4つとも、出勤簿を直すというより「渡し方」を変えると消えます。出勤簿は他の書類の入口なので、集計の数字がそのまま次へ流れる形にしておくと、突き合わせの作業自体がなくなります。
締め日をまたぐ深夜労働
もう1つ、月の境で起きやすいのが深夜労働です。月末の日に残業して日付が変わった場合、午前0時をまたいだ分の扱いを決めておかないと、月の集計が人によって変わります。
一般には、始業した日の労働として通して扱う運用が多く取られています。翌日の欄に分けて書くと、1日の労働時間が2つの日に割れて、8時間を超えた判定ができなくなるためです。どちらの扱いにするかを決めて、出勤簿の凡例に書いておきます。
出勤簿を紙からデータに移すとき
紙の出勤簿からExcelや勤怠システムへ移すときに、つまずきやすいところがあります。移すこと自体は問題ありませんが、切り替えの前後で記録が途切れないようにします。
- 切り替えた月を決めて、その前後でどちらを正とするかを書き残す
- 紙の分は、保存期間が残っているあいだ処分しない
- システムの出力に、始業・終業・休憩・時間外が入っているかを確かめる
- 事業場ごとに見られる権限を渡す
いちばん多いのは、3つ目の確認漏れです。勤怠システムの標準の出力が「出勤日数と総労働時間」だけになっていて、始業と終業の時刻が入っていないことがあります。出力の設定を見て、足りなければ項目を追加します。
システムを解約するときに書き出す
勤怠システムを乗り換えると、前のシステムのデータが読めなくなります。解約する前に、保存期間が残っている分をPDFかCSVで書き出しておきます。
書き出したファイルは、年と事業場名をフォルダ名に入れておきます。数年後に見る人が、何のデータかを開かずに判断できる状態にしておくのがポイントです。
よくある質問
手書きの出勤簿は違法ですか
手書きであること自体が違法とされているわけではありません。ガイドラインでは客観的な記録が原則とされていますが、手書きでも、始業・終業の時刻が実態どおりに記録され、使用者が確認していれば記録として機能します。問題になるのは、実態と違う時刻が書かれている場合です。
出勤簿とタイムカードは両方必要ですか
両方そろえる決まりはありません。タイムカードの打刻と月次の集計表があれば、それが出勤簿の役割を果たします。二重に作ると、どちらが正しいのかが分からなくなるので、片方を正として決めておきます。
残業がない職場でも始業と終業を書きますか
書いておくほうが安全です。残業が無いことを示せるのは、始業と終業が記録されている場合だけです。「残業は無い」という前提で時刻を書いていないと、後から残業の申告があったときに反証する材料がありません。
出勤簿は事業場ごとに置きますか
事業場ごとに備えるものとされています。本社で一括して集計している場合でも、その事業場で見られる状態にしておきます。クラウドの勤怠システムなら、事業場の担当者に閲覧の権限を渡しておくのが手数の少ない形です。
直行直帰や在宅勤務の日はどう書きますか
始業・終業の時刻を、本人からの連絡(メール、チャット、システムの打刻)で受けて記録します。連絡そのものを残しておくと、客観的な記録に近い形になります。在宅勤務でパソコンを使うなら、ログの時刻とそろえておくと説明しやすくなります。
まとめ
出勤簿は、労働基準法に条文も様式もありません。労働基準法109条の「重要な書類」として保存が必要になり、労働安全衛生法66条の8の3で労働時間の状況の把握が求められている、という形で成り立っています。
様式が無いぶん、入れる項目は自社で決めます。氏名・出勤日・始業時刻・終業時刻・休憩時間の5つがあれば労働時間が出せ、そこに時間外・休日・深夜と有給の取得日を足すと、賃金台帳と年次有給休暇管理簿にそのまま渡せます。
記号は自由ですが、所定休日と法定休日を分けることと、有給と欠勤を分けることの2つは押さえておきます。分けていないと、割増率と年5日の取得状況が後から判断できません。
ハンコだけの出勤簿は、出勤した事実は残りますが労働時間は残りません。ハンコ欄の隣に始業・終業・休憩の3列を足すだけで記録として成立するので、いまの運用を変えずに直せます。
保存期間は5年(当分の間3年)で、起算日は完結の日です。労働安全衛生規則による労働時間の状況の記録は3年とされているので、長いほうに合わせて残すのが迷わない形です。
労働時間の把握は通達とガイドラインで運用が定められています。自社の扱いは、所轄の労働基準監督署に確認してください。