スキャナ保存の要件|解像度と入力期間の決まり
目次
スキャナ保存は、要件の数が多いので難しく見えますが、そもそも任意の制度です。やらなくても違反にはなりません。紙のまま保存していれば足ります。それでも検討する価値があるのは、読み取ったあとに紙を捨てられるからです。
この記事では、スキャナ保存を、任意であること、重要書類と一般書類の分かれ方、入力期間・解像度・タイムスタンプ、検索と見読の要件、始めるときの順番の順に整理します。要件は改正が続いています。最新の内容は国税庁の特設サイトか所轄の税務署で確認してください。
結論:スキャナ保存は任意。得られるのは紙の廃棄
スキャナ保存は、電子帳簿保存法の3つの区分のうちの1つで、紙で受け取った書類や、紙で渡した書類の控えを、スキャナやスマホで読み取って電子データで保存する制度とされています。
| 内容 | |
|---|---|
| 対象 | 取引相手から紙で受け取った書類、自分が作って紙で渡した書類の写し(決算関係書類を除く国税関係書類) |
| 義務か任意か | 任意 |
| 得られること | 読み取った後の紙を廃棄できる。ファイリングと保管場所が不要になる |
| 始めるための手続 | 原則として不要(過去分重要書類は事前に届出書が必要とされている) |
「対応しないといけない」と言われているのは電子取引データ保存のほうで、スキャナ保存ではありません。ここを分けておくと、検討の順番を間違えずに済みます。3つの区分の整理は電子帳簿保存法の要件にまとめています。
国税庁のパンフレットでは、メリットとして、紙のファイリング作業や保存スペースが不要になることと、紙で受け取った領収書をスマホで読み取って経理担当へ送れば、受け渡しから保存までデータだけで完結し、経理担当もテレワークがしやすくなることが挙げられています。
始めるタイミングは自由
事前の承認は、2022年1月の改正で廃止されているとされています。任意のタイミングで始められます。期首でなくても構いません。
ただし、スキャナ保存を始めた日より前に作成・受領した重要書類(過去分重要書類)をスキャナ保存する場合は、あらかじめ税務署に届出書を提出する必要があるとされています。「今日から先の分だけ」なら届出は要りません。
重要書類と一般書類で要件が変わる
スキャナ保存の要件表を読むときに、まず押さえるのが書類の区分です。2つに分かれていて、要件の厳しさが違います。
| 区分 | 説明 | 例 |
|---|---|---|
| 重要書類 | 資金や物の流れに直結・連動する書類 | 契約書、納品書、請求書、領収書 |
| 一般書類 | 資金や物の流れに直結・連動しない書類 | 見積書、注文書、検収書 |
一般書類のほうは、いくつかの要件が緩められています。
| 要件 | 重要書類 | 一般書類 |
|---|---|---|
| 入力期間の制限 | あり | 制限なく入力できる |
| カラーでの読み取り | 必要 | 白黒(グレースケール)でよい |
| 帳簿との相互関連性 | 必要 | 不要 |
| 見読可能装置 | カラー | グレースケールで読んだものはカラー対応不要 |
ただし、一般書類向けのルールを採用する場合は、事務の手続(責任者、入力の順序や方法など)を明らかにした書類を備え付ける必要があるとされています。国税庁の特設サイトにサンプルが掲載されています。
実務としては、最初は重要書類だけを対象に始めるのが分かりやすい形です。領収書と請求書がいちばん量があり、紙を減らす効果も大きいためです。
入力期間の制限
スキャナ保存で運用がいちばん試されるのが、いつまでに読み取るかです。重要書類には期限があります。方式は2つとされています。
| 方式 | 期限 |
|---|---|
| 早期入力方式 | 書類を作成または受領してから、速やか(おおむね7営業日以内)にスキャナ保存する |
| 業務処理サイクル方式 | 業務処理サイクルの期間(最長2か月以内)を経過した後、速やか(おおむね7営業日以内)にスキャナ保存する |
業務処理サイクル方式を採れるのは、事務の処理規程を定めている場合のみとされています。規程が無い状態では、早期入力方式(おおむね7営業日以内)だけになります。
7営業日は、受け取った側が動かないと間に合わない期間です。営業担当が月末にまとめて領収書を出す運用のままだと守れません。
現実的な回し方
一般には、業務処理サイクル方式を採って、月次の締めの流れに載せる形が取られています。
- 事務の処理規程で、業務処理サイクルを「1か月」と定める
- 締めの翌営業日から7営業日以内に、その月の分を読み取る
- 読み取りが終わってから紙を廃棄する
「規程を作ってから始める」という順番になります。規程が無いまま月末まとめの運用をすると、期限を外します。
もう1つのやり方が、受け取った人がその場でスマホで読み取る形です。この場合は早期入力方式で足ります。経費精算のアプリを使っている職場では、こちらのほうが自然に回ります。
読み取りの要件
読み取りそのものにも決まりがあります。数字が出てくるのはここです。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 解像度 | 200dpi相当以上で読み取ること |
| カラー | 赤色・緑色・青色の階調がそれぞれ256階調以上(24ビットカラー)で読み取ること |
| 一般書類の場合 | 白黒階調(グレースケール)で読み取ることもできる |
200dpiと24ビットカラーの2つだけです。いまのスマホのカメラや複合機なら、標準の設定で満たしていることがほとんどです。
以前は、解像度や階調の情報、大きさに関する情報を保存することが求められていましたが、2024年1月以降は不要とされています。古い説明にはこの要件が残っていることがあります。
タイムスタンプ
入力期間内に、総務大臣が認定する業務に係るタイムスタンプを、一の入力単位ごとのスキャナデータに付すこととされています。
ただし、入力期間内にスキャナ保存したことを確認できる場合には、このタイムスタンプの付与要件に代えることができるとされています。つまり、訂正・削除の履歴が残るシステムで、いつ保存したかが分かる形になっていれば、タイムスタンプを別に買う必要はありません。
市販のソフトを使う場合、この部分をソフト側が満たしていることが多くあります。JIIMA認証を受けたソフトかどうかが1つの目安になります。詳しくはJIIMA認証とはにまとめています。
ヴァージョン管理と相互関連性
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ヴァージョン管理 | 訂正・削除の事実やその内容を確認できるシステム等、または訂正・削除を行うことができないシステム等を使用すること |
| 帳簿との相互関連性 | スキャナデータと、関連する帳簿の記録事項との間で、相互に関連性を確認できるようにしておくこと(一般書類は不要) |
相互関連性は、伝票番号のような共通の番号でつなぐのが一般的な形です。会計ソフトの仕訳に付いている番号を、スキャナデータのファイル名か管理項目に入れておけば足ります。
見読と検索の要件
保存したデータを、求められたときに読める形で出せることが可視性の要件です。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 見読可能装置等の備付け | 14インチ(映像面の最大径が35cm)以上のカラーディスプレイ、カラープリンタ、操作説明書を備え付けること |
| 速やかに出力 | 整然とした形式、書類と同程度に明瞭、拡大・縮小して出力できる、4ポイントの大きさの文字を認識できること |
| システム概要書等の備付け | システム概要書、システム仕様書、操作説明書、スキャナ保存の手順や担当部署を明らかにした書類を備え付けること |
14インチという数字が出てくるのがこの要件です。いまのノートパソコンならほぼ満たしますが、タブレットだけで運用している場合は足りないことがあります。
検索機能については、次の3つとされています。
- 取引年月日その他の日付、取引金額、取引先での検索
- 日付または金額に係る記録項目について範囲を指定しての検索
- 2以上の任意の記録項目を組み合わせての検索
税務職員によるダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、2と3の要件は不要とされています。詳しくは検索要件の3つにまとめています。
始めるときの順番
スキャナ保存は要件が多いので、全部そろえてから始めようとすると動き出しません。対象を絞って、小さく始めるのが現実的です。
| 順番 | やること |
|---|---|
| 1 | 対象にする書類を決める(まずは領収書か請求書だけ) |
| 2 | 早期入力方式か業務処理サイクル方式かを決める |
| 3 | 業務処理サイクル方式なら、事務の処理規程を作る |
| 4 | 使うソフトを決める(タイムスタンプかヴァージョン管理を満たすもの) |
| 5 | 帳簿とつなぐ番号の付け方を決める |
| 6 | 1か月試して、紙を捨てずに並行運用する |
| 7 | 問題がなければ、紙の廃棄を始める |
6の並行運用を1か月入れるのが要点です。いきなり紙を捨て始めると、読み取りが失敗していたときに戻せません。1か月分をデータと紙の両方で持ち、データだけで仕事が回るかを確かめます。
つまずくのは運用の側
要件そのものより、誰がいつ読み取るかで止まることのほうが多くあります。
| つまずき | 直し方 |
|---|---|
| 営業が領収書を月末にまとめて出す | 受け取った人がその場でスマホで読み取る形にする |
| 読み取りの担当が1人に集中する | 部署ごとに読み取って、経理は確認だけにする |
| ファイル名がばらばらで探せない | 名前の付け方を決めて、ソフト側で自動化する |
| 読み取り漏れに気づかない | 月次で件数を突き合わせる |
4つ目が抜けやすいところです。紙を捨てたあとに読み取り漏れが分かると、書類そのものが無くなります。月次で、仕訳の件数とスキャナデータの件数を突き合わせる工程を入れておきます。
スキャナ保存をやらない判断
任意の制度なので、やらないという判断も成り立ちます。判断の材料になるのは、次のあたりです。
| 見るところ | やる方に傾く | やらない方に傾く |
|---|---|---|
| 紙の量 | 月に何百枚もある | 月に数十枚 |
| 保管場所 | 場所に困っている | 棚に余裕がある |
| 働き方 | テレワークや拠点が複数 | 1か所に全員いる |
| 経理の人数 | 複数人で分担している | 1人で回している |
| ソフト | すでに対応ソフトを使っている | これから選ぶ |
紙が月に数十枚で、1か所に全員いて、棚に余裕があるなら、急いでやる理由はありません。義務である電子取引データ保存の対応を先に終わらせて、そのあとで考えれば足ります。
逆に、拠点が複数あって紙を郵送しているなら、効果が大きく出ます。読み取って送るだけで済むようになり、郵送の時間も費用も消えます。
やらない判断をした場合でも、紙の保存期間は変わりません。国税関係帳簿書類は原則7年、欠損金の繰越控除を受ける事業年度は10年とされています。保存期間の全体像は法定帳簿の保存期間にまとめています。
よくある質問
スマホで撮影したものでもよいですか
構わないとされています。国税庁のパンフレットでも、スマホで読み取る方法が紹介されています。解像度200dpi相当以上と24ビットカラーを満たしていれば、スキャナでなくても差し支えありません。
読み取った紙はすぐ捨ててよいですか
要件を満たして保存したことを確認してから廃棄します。読み取りが失敗していないか、文字が読めるかを確かめる工程を入れておくのが安全です。一度捨てると戻せないので、確認を経てから廃棄する手順にします。
電子取引のデータもスキャナ保存の対象ですか
対象ではありません。スキャナ保存は紙の書類が対象です。メールで届いたPDFは最初から電子取引のデータなので、印刷してスキャンし直す必要はありません。詳しくは電子取引データの保存にまとめています。
過去の分もスキャンしてよいですか
スキャナ保存を始めた日より前に作成・受領した過去分重要書類については、あらかじめ税務署に届出書を提出する必要があるとされています。手続きの詳細は、所轄の税務署に確認してください。
領収書だけスキャナ保存にできますか
書類の種類ごとに始めて構わないとされています。領収書と請求書だけを対象にするのは、実務でよく取られている形です。量が多く、保管場所を取る書類から始めると効果が分かりやすくなります。
読み取りに失敗していたことに後から気づきました
紙が残っていれば読み取り直せます。残っていない場合は、取引先に再発行を依頼することになります。並行運用の期間を設けるのと、月次で件数を突き合わせるのは、この事態を避けるためのものです。
事務の処理規程はどこかにサンプルがありますか
国税庁の特設サイトに、各種規程等のサンプルが掲載されているとされています。そのまま使うのではなく、自社の担当者名・保存場所・業務処理サイクルの期間に置き換えて使います。
まとめ
スキャナ保存は任意の制度です。やらなくても、紙のまま保存していれば違反にはなりません。得られるのは、読み取ったあとに紙を廃棄できることです。
要件を読むときは、まず重要書類と一般書類の区分を押さえます。一般書類のほうは、入力期間の制限がなく、グレースケールでよく、帳簿との相互関連性も不要とされています。ただし、事務の手続を明らかにした書類の備付けが必要になります。
運用でいちばん試されるのが入力期間です。重要書類は、おおむね7営業日以内(早期入力方式)か、最長2か月の業務処理サイクルの後おおむね7営業日以内(業務処理サイクル方式)とされていて、後者を採るには事務の処理規程が要ります。月次の締めに載せるなら、規程を作ってから始めます。
読み取りの数字は、200dpi相当以上と24ビットカラーの2つです。解像度や大きさの情報を保存する要件は、2024年1月以降は不要とされています。
要件は改正が続いています。最新の内容は、国税庁の特設サイトか所轄の税務署で確認してください。