検索要件の3つ|範囲指定と組み合わせ検索とは
目次
検索要件は、電子帳簿保存法の要件のなかでいちばん作業が発生しそうに見えるところです。ファイル名を全部付け直すのか、専用のソフトが要るのか、という話になりがちですが、条件を満たせば丸ごと不要になるルートが用意されています。
この記事では、検索要件を、3つの内容、不要になる2つのルート、自前で満たすときのやり方、スキャナ保存との違いの順に整理します。要件は改正が続いています。最新の内容は国税庁の特設サイトか所轄の税務署で確認してください。
結論:3つあるが、全部不要になる道がある
検索要件は、次の3つとされています。
| 要件 | 根拠(電子取引の場合) | |
|---|---|---|
| 1 | 取引年月日・取引金額・取引先の3つの記録項目で検索できること | 規則2条6項5号イ |
| 2 | 取引年月日または取引金額について、範囲を指定して検索できること | 同号ロ |
| 3 | 2以上の任意の記録項目を組み合わせて検索できること | 同号ハ |
そして、電子取引データの保存については、次のどちらかに該当し、かつ税務調査等の際にダウンロードの求めに応じることができる場合、3つとも不要とされています(規則4条1項)。
| 条件(いずれか) |
|---|
| 基準期間(2年(期)前)の売上高が5,000万円以下 |
| 電子取引データを出力した書面を、取引年月日および取引先ごとに整理された状態で提示・提出できるようにしている |
多くの中小企業は、1つ目でこのルートに乗ります。売上高が5,000万円を超えていても、印刷した書面を日付と取引先ごとに整理してファイルしておけば、2つ目で乗れます。
まず自社がどちらかに当てはまるかを見てください。当てはまるなら、ファイル名を付け直す作業は要りません。
判定の順番
国税庁の「電子取引データ保存要件チェックシート」は、次の順で判定する形になっています。
- 3つの記録項目で検索できるか
- できる → 2へ - できない → 4へ
- 範囲指定検索と組合せ検索ができるか
- できる → 要件を満たしている - できない → 3へ
- ダウンロードの求めに応じることができるか
- できる → 要件を満たしている - できない → 猶予措置の判定へ
- 売上高5,000万円以下、または出力書面を整理して提示・提出できるか
- どちらかに該当し、ダウンロードの求めに応じられる → 要件を満たしている - 該当しない → 猶予措置の判定へ
分岐は2か所だけです。3項目の検索ができるかどうかで大きく分かれ、そのあとはダウンロードの求めに応じられるかで決まります。
ダウンロードの求めとは
どのルートでも出てくるのが「ダウンロードの求めに応じることができる」という条件です。チェックシートでは、税務調査等の際に税務職員から電子取引データのダウンロードの求め(データの提示・提出の要求)があった場合に、求めに応じることができるようにしておく必要があると説明されています。
特別な仕組みは要りません。保存しているデータを、求められたらそのまま渡せる状態であれば足ります。
引っかかるとすれば、データがどこにあるか分からない状態です。各担当者のメールボックスの中に散っていると、求められてもすぐには出せません。1か所に集めておくことが、この条件を満たす前提になります。
範囲指定検索と組み合わせ検索
2つ目と3つ目の要件は、言葉だけでは分かりにくいところです。具体的に何ができればよいのかを見ます。
| 要件 | できるようにすること | 例 |
|---|---|---|
| 範囲指定検索 | 日付か金額を「いくつからいくつまで」で絞れる | 2026年8月1日から8月31日までの取引を抽出する |
| 組合せ検索 | 2つ以上の項目を同時に条件にできる | 取引先が株式会社○○で、かつ金額が10万円以上 |
フォルダの検索機能だけでは、範囲指定は難しいのが実情です。ファイル名に日付を入れておけば「2026年8月」で絞ることはできますが、「10万円以上」のような金額の範囲指定はできません。
そのため、自前で満たそうとすると、索引簿(一覧表)を作る形になります。
自前で満たす2つのやり方
不要になるルートに乗らない場合、自前で検索できる形にします。やり方は大きく2つです。
ファイル名で満たす
保存するファイルの名前に、3つの記録項目を入れる方法です。
20260831_株式会社ショウジン_110000.pdf 20260831_ショウジン商事_55000.pdf 20260905_合同会社サンプル_220000.pdf
| 部分 | 内容 |
|---|---|
| 先頭8桁 | 取引年月日(西暦8桁) |
| 中央 | 取引先 |
| 末尾 | 取引金額(円、カンマなし) |
3項目の検索(要件1)は、これでフォルダの検索機能から行えるとされています。日付を8桁にしておくと、並べ替えたときに時系列になるのも扱いやすい点です。
ただし、範囲指定と組み合わせ(要件2・3)はファイル名だけでは苦しいところです。ダウンロードの求めに応じられるなら、この2つは不要になるので、多くの場合はファイル名だけで足ります。
索引簿で満たす
Excelで一覧表を作り、ファイルと対応させる方法です。
| 連番 | 取引年月日 | 取引先 | 取引金額 | ファイル名 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 2026/08/31 | 株式会社ショウジン | 110,000 | 0001.pdf |
| 2 | 2026/08/31 | ショウジン商事 | 55,000 | 0002.pdf |
| 3 | 2026/09/05 | 合同会社サンプル | 220,000 | 0003.pdf |
Excelのフィルタ機能で、範囲指定も組み合わせもできます。3つの要件をすべて自前で満たしたい場合は、こちらになります。
ファイル名は連番でよくなるので、保存するときの手間は減ります。そのぶん、一覧表への転記が毎回発生します。件数が多いなら、この転記のほうが負担になります。
| ファイル名で満たす | 索引簿で満たす | |
|---|---|---|
| 満たせる要件 | 1(3項目検索) | 1・2・3すべて |
| 保存のときの手間 | 名前を付ける | 連番+一覧表に転記 |
| 向いている件数 | 少ない〜中 | 中〜多い |
スキャナ保存の検索要件とは少し違う
同じ検索要件でも、スキャナ保存と電子取引では、不要になる条件が違います。ここは混ざりやすいところです。
| 電子取引データ保存 | スキャナ保存 | |
|---|---|---|
| 3項目検索 | 売上高5,000万円以下等のルートで不要になり得る | 必要 |
| 範囲指定・組合せ | ダウンロードの求めに応じられれば不要 | ダウンロードの求めに応じられれば不要 |
スキャナ保存には、売上高で検索要件が丸ごと不要になるルートがありません。3項目での検索は必要になります。
これは、スキャナ保存が任意の制度であることと表裏の関係にあります。義務である電子取引のほうには小規模の事業者向けの緩和があり、任意で選ぶスキャナ保存にはその緩和が無い、という形です。
スキャナ保存の要件全体はスキャナ保存の要件に、電子取引の要件全体は電子取引データの保存にまとめています。
検索要件が効いてくる場面
そもそも、なぜ検索できることが求められているのかを押さえておくと、どこまでやればよいかの判断がしやすくなります。
税務調査の場面で、必要なデータをその場で取り出せることが目的とされています。紙のファイルなら、綴じられている順に繰れば見つかります。データは、検索できないと山の中から探すことになります。
| 求められる場面 | 何が起きるか |
|---|---|
| 特定の取引先との取引を全部見たい | 取引先で検索できないと、1件ずつ開くことになる |
| ある月の取引をまとめて見たい | 日付で絞れないと、フォルダを目で追うことになる |
| 一定額以上の取引を確認したい | 金額で絞れないと、全件を見ることになる |
「その場で出せるか」という基準で考えると、どこまでやるかが決めやすくなります。要件の文言を満たすことだけを考えると作業が膨らみますが、目的から見ると、自社の件数で無理なく探せる形であればよい、という判断ができます。
件数が少ないなら、そもそも困らない
月に10件程度なら、フォルダを開いて目で見れば足ります。それでも要件として求められているので、ファイル名だけは整えておくのが落としどころです。
- 件数が月10件程度 … ファイル名に日付と取引先を入れるだけ
- 件数が月50件程度 … ファイル名に3項目すべてを入れる
- 件数が月100件以上 … 索引簿か、対応ソフトを使う
件数が増えてから仕組みを変えるのでよいという点は押さえておきたいところです。最初から索引簿を作ると、埋める作業だけが残ります。
途中でやり方を変えるとき
ファイル名だけで運用していて、件数が増えたので索引簿に移りたい、というときに気をつけるところがあります。
過去の分を全部作り直す必要はありません。期の途中で切り替えるのではなく、事業年度の区切りで切り替えると、どこからどちらの方式かがはっきりします。
| やり方 | |
|---|---|
| 切り替える時期 | 事業年度の初日から |
| 過去の分 | そのままの方式で保存を続ける |
| 記録に残すこと | いつから方式を変えたか |
「いつから変えたか」を1行残しておくのが要点です。事務処理規程を作っているなら、そこに追記します。作っていない場合も、フォルダにメモを1つ置いておけば足ります。
対応ソフトに移す場合は、過去のデータを取り込むかどうかを決めます。取り込まずに、古い年度はフォルダのまま残す形でも構いません。取り込む場合は、取り込んだあとに件数が合っているかを確かめます。
よくある質問
3つの記録項目は、この3つでなければいけませんか
条文では取引年月日その他の日付、取引金額、取引先とされています。この3つで検索できることが求められるので、ほかの項目を足すのは自由ですが、置き換えることはできません。
売上高5,000万円はいつの売上ですか
チェックシートでは基準期間(2年(期)前)の売上高とされています。前期ではありません。法人なら2期前の事業年度、個人事業なら2年前の年の売上高で判定する形になります。判定に迷う場合は、所轄の税務署に確認してください。
出力書面を整理するとは、どこまでやればよいですか
チェックシートでは、取引年月日および取引先ごとに整理された状態で提示・提出することができるようにしているとされています。日付順に綴じて、取引先ごとにインデックスを付けたファイルであれば、この形に当たると考えられます。データを消さないことが前提です。
会計ソフトに取り込んでいれば検索要件は満たしますか
ソフトによります。取引年月日・取引金額・取引先で検索でき、データそのものを出力できるなら満たしている可能性が高い形です。JIIMA認証を受けたソフトかどうかが1つの目安になります。詳しくはJIIMA認証とはにまとめています。
ファイル名の日付は和暦でもよいですか
検索できれば形式は問われないと考えられますが、西暦8桁にしておくほうが並べ替えと範囲の指定がしやすくなります。和暦だと元号をまたいだときに並び順が崩れます。
索引簿とファイル名、両方やるべきですか
どちらか片方で足ります。両方やると更新の手間が二重になり、片方だけ直された状態が生まれます。件数が少ないうちはファイル名、増えてきたら索引簿、という順で移るのが無理のない形です。
検索要件を満たせない場合はどうなりますか
猶予措置の判定に進みます。保存できなかったことに相当の理由があり、ダウンロードの求めと出力書面の提示・提出の求めに応じられるなら、要件を満たさなくてもデータの保存が認められるとされています。どの道でもデータ自体は残します。
取引先の名前は正式名称で書きますか
検索できることが目的なので、社内で表記を1つに固定しておくことのほうが大事です。株式会社を前に付けるのか後ろに付けるのか、略称を使うのかを決めて、そろえます。表記が揺れていると、取引先で絞ったときに一部が漏れます。
1つのPDFに複数の取引が入っている場合は
月締めの請求書のように、1枚に複数の取引が載っていることがあります。一般には、その書類の日付・取引先・合計金額で1件として扱う形が取られています。判断に迷う場合は、所轄の税務署に確認してください。
保存したデータを間違えて消してしまいました
取引先に再発行を依頼するか、メールの送受信履歴から復元できないかを確かめます。消してしまったこと自体より、消せる運用のままになっていることが問題になります。改ざん防止の措置として、訂正・削除の履歴が残る形か、事務処理規程で手続を決めた形にしておきます。
まとめ
検索要件は3つあります。取引年月日・取引金額・取引先での検索、日付か金額の範囲指定、2以上の項目の組み合わせです。
ただし、電子取引データの保存については、基準期間の売上高が5,000万円以下か、出力した書面を取引年月日と取引先ごとに整理して提示・提出できる場合で、かつダウンロードの求めに応じられるなら、3つとも不要とされています。
まず自社がこのルートに乗るかを見てください。乗るなら、ファイル名を付け直す作業も索引簿を作る作業も発生しません。
自前で満たす場合は、ファイル名に「取引年月日_取引先_取引金額」を入れる方法と、Excelで索引簿を作る方法があります。ファイル名だけでは範囲指定と組み合わせが苦しいところですが、ダウンロードの求めに応じられればこの2つは不要になります。
スキャナ保存のほうには、売上高で検索要件が丸ごと不要になるルートがありません。同じ「検索要件」という言葉でも、2つの区分で緩和の条件が違います。
そして、検索できることの目的は、税務調査でその場でデータを取り出せることです。要件の文言だけを追うと作業が膨らみますが、目的から見ると、自社の件数で無理なく探せる形であれば足ります。件数が増えてから仕組みを変えるので構いません。
要件は改正が続いています。最新の内容は、国税庁の特設サイトか所轄の税務署で確認してください。