勤怠と休暇手続き2026.09.16 公開KT-03

36協定の届出と管理|上限規制と時間外の数え方

目次

36協定は、結んで届け出れば残業をさせてよくなる、という理解で止まっていることが多い書類です。ただ、届け出たあとに続く「数える仕事」のほうが実務の本体になります。月45時間、年360時間、特別条項の年720時間。この3つは、毎月数えていないと超えたことに気づけません。

この記事では、36協定を、何のための協定か上限規制の数字特別条項の4つの条件届出の手順毎月の数え方の順に整理します。上限規制は業種によって適用の時期が違い、様式も改正されます。自社の扱いは所轄の労働基準監督署に確認してください。

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結論:届け出てはじめて残業させられる

労働基準法32条で、労働時間は1日8時間、1週40時間までとされています。これを超えて働かせると、それだけで法律違反になります。

その例外をつくるのが36協定です。労働基準法36条に基づいて、労使で協定を結び、所轄の労働基準監督署長に届け出ることで、協定の範囲内で時間外労働・休日労働をさせられるようになるとされています。条文の番号から36協定(さぶろくきょうてい)と呼ばれています。

段階やること
1過半数労働組合、または過半数代表者を決める
2協定を結ぶ
3所轄の労働基準監督署長へ届け出る
4労働者に周知する
5協定の範囲内で運用し、時間を数える

3の届出が抜けると、協定そのものの効力が生じないとされています。結んだだけで出していない状態は、協定が無いのと同じ扱いになります。作って机の中にある、という形がいちばん危ない状態です。

協定があっても、払うものは払う

もう1つの誤解が、36協定を結べば割増賃金が要らなくなる、というものです。36協定は「働かせても罰せられない」ようにするもので、賃金の話とは別です。

時間外労働に対する割増賃金は、労働基準法37条に基づいて支払うことになります。協定の有無にかかわらず変わりません。

届け出てはじめて効力が生じる1代表者を選ぶ2協定を結ぶ書面で3届け出る労基署へ4周知する掲示か交付
届け出てはじめて効力が生じる

上限規制の数字は3つの層になっている

2019年4月から(中小企業は2020年4月から)、時間外労働に罰則つきの上限が設けられているとされています。数字は3つの層で整理できます。

上限
原則(限度時間)月45時間・年360時間
1年単位の変形労働時間制の場合月42時間・年320時間
特別条項を結んだ場合後述の4つの条件の範囲内

まず押さえるのは、原則の月45時間・年360時間です。ここに収まる見込みなら、特別条項は要りません。様式も簡単なほうで済みます。

年360時間というのは、月平均で30時間です。月45時間まで使える月があっても、年間では平均30時間に収めないと届かない、という形になります。繁忙期に多く使うなら、閑散期は減らす必要があります。

建設・運送・医師にも適用されている

上限規制には適用が猶予されていた業種がありましたが、建設事業、自動車運転の業務、医師などについても2024年4月から適用されているとされています。業種によって上限の内容に特例が残っているものがあります。

自社の業種に特例があるかは、所轄の労働基準監督署か、厚生労働省の上限規制に関する資料で確認してください。「うちは対象外」という理解が古いままになっていることがあります。

上限は3つの層で決まる上限の層延長できる時間特別条項年720時間以内原則の限度時間月45時間・年360時間1年単位の変形月42時間・年320時間
上限は3つの層で決まる

特別条項の4つの条件

臨時的に限度時間を超える必要がある場合は、特別条項を結ぶことができるとされています。ただし、超えられる範囲にも上限があります。一般に、次の4つをすべて満たす必要があるとされています。

条件
1時間外労働が年720時間以内
2時間外労働+休日労働が単月100時間未満
3時間外労働+休日労働の2〜6か月平均が80時間以内
4時間外労働が月45時間を超えられるのは年6か月まで

2と3だけ、休日労働を足して数えるところが間違えやすい点です。1と4は時間外労働だけで数えますが、2と3は休日労働も合算します。同じ月について、2種類の数え方をすることになります。

数え方対象
年720時間・年6か月時間外労働のみ
単月100時間未満・複数月平均80時間時間外労働+休日労働

「2〜6か月平均」は5通り数える

3の条件がいちばん手間のかかるところです。2か月平均、3か月平均、4か月平均、5か月平均、6か月平均のすべてで80時間以内である必要があります。

つまり、ある月について判定するには、その月を含む直近2か月から6か月までの5通りの平均を出すことになります。1つでも80時間を超えたら条件を満たしません。

月ごとの累計を表にしておけば、この計算は足し算で済みます。Excelで月の行を並べて、右に2か月平均から6か月平均までの5列を置く形にすると、毎月1行足すだけで判定できます。

点検表テンプレート
様式をさがす

実際に使える様式が必要な方へ

月ごとの時間外労働を累計する様式を使いたい方は、商い屋をご覧ください。

商い屋で様式をさがす
2から6か月平均は5通り2か月80時間3か月80時間4か月80時間5か月80時間6か月80時間5通りすべてで80時間以内である必要がある
2から6か月平均は5通りすべてで判定する

届出の手順と様式

36協定の届出には、様式が定められています。

状況様式
限度時間の範囲内で結ぶ場合様式第9号
特別条項を結ぶ場合様式第9号の2

特別条項を結ぶと、様式が1枚増えます。第9号の2は2枚組で、2枚目に特別条項の内容(限度時間を超える具体的な事由、超えられる回数、健康福祉確保措置など)を書く形になっています。

届出は、事業場ごとに所轄の労働基準監督署長へ行います。本社と営業所があるなら、それぞれの事業場から届け出るのが原則です。一定の要件を満たす場合に本社で一括して届け出られる仕組みもあるとされているので、事業場が多いなら所轄の労働基準監督署に相談してみてください。

電子申請にも対応しているとされています。窓口へ行かずに出せるので、事業場が離れているときは負担が減ります。

過半数代表者の選び方

労働組合が無い事業場では、労働者の過半数を代表する者と協定を結びます。この代表者の選び方に条件があります。

  • 労働基準法41条2号に該当する管理監督者でないこと
  • 36協定を締結する者を選出することを明らかにして実施される、投票、挙手等の方法による手続で選ばれること
  • 使用者の意向によって選出された者でないこと

会社が指名した人ではだめというのが要点です。一般には、社内で「36協定を結ぶ代表者を選びます」と周知したうえで、立候補や推薦を募り、投票か挙手で決める形が取られています。

選出の経過を1枚の記録に残しておくと、後から聞かれたときに説明できます。協定書と一緒に綴じておくのが扱いやすい形です。

有効期間と、毎年の更新

36協定の有効期間は、1年間とすることが望ましいとされています。毎年結び直して届け出る形になります。

期間が切れていることに気づかないまま残業させている、という状態がいちばん多い形です。有効期間の終わりの1か月前にリマインドを置いておくと、切れずに回ります。協定の起算日を事業年度や給与の締めとそろえておくと、数える期間もそろって管理が楽になります。

特別条項だと様式が1枚増える限度時間の範囲内様式第9号1枚で足りる数える項目も少ない特別条項あり様式第9号の22枚組になる健康福祉確保措置も
特別条項を結ぶと様式が1枚増える

毎月の数え方を決めておく

36協定は、届け出たあとの運用が本体です。毎月数える仕組みが無いと、超えたことに年度末まで気づけません。

数えるときの手順は次のようになります。

  1. 月次の勤怠を締めて、時間外労働時間数と休日労働時間数を人ごとに出す
  2. 年度の累計(時間外のみ)を更新する
  3. 月45時間を超えた人の回数を数える
  4. 時間外+休日の合計で、単月と2〜6か月平均を出す
  5. 上限に近い人を抜き出して、翌月の予定を調整する

5が入っていないと、数えているだけで手が打てません。上限の8割に達した人を抜き出す、というルールにしておくと、超える前に気づけます。

月の途中でも見る

月が終わってから数えると、その月は戻せません。月の中日に1回、累計を見る運用にしておくと、残りの半月で調整できます。

勤怠システムを使っているなら、この集計は設定でできることが多くあります。手作業でも、上限に近い人だけを抜き出す形なら、全員分を見る必要はありません。労働時間の把握のしかたは労働時間の把握にまとめています。

協定に何を書くか

36協定で決めるのは「残業させてよい」ということだけではありません。協定書と届出の様式に書く項目が定められていて、ここがそのまま運用のルールになります。

書く項目中身
時間外労働をさせる必要のある具体的事由「業務の都合」だけでは足りない
業務の種類職種や作業の単位で書く
労働者数対象になる人数
延長できる時間1日・1か月・1年のそれぞれ
休日労働をさせる必要のある事由と、労働させる休日休日労働をさせるなら
有効期間1年とすることが望ましいとされている

「具体的事由」の欄がいちばんあいまいになりやすいところです。受注の集中、決算業務、機械のトラブル対応、といったように、実際に起きる場面を書きます。ここを広く書きすぎると、協定の実態が見えなくなります。

延長できる時間は、上限いっぱいで書かないほうが運用しやすいという面があります。協定で月45時間と書けば、社内のルールも45時間になります。実態が月20時間なら、25時間と書いておくほうが管理のしやすい数字になります。上限まで書いておかないと足りなくなる、という心配は、特別条項で対応できます。

周知まで含めて1セット

36協定は、労働者に周知することが求められているとされています(労働基準法106条)。届け出て受付印をもらった控えを、事業場の見やすい場所に掲示するか、書面で交付するか、社内のネットワークで見られるようにする形です。

掲示して終わりにしないことがポイントです。新しく入った人が見ていない状態になりやすいので、入社時の書類一式に含めてしまうほうが確実です。

協定に書く項目36協定に書く項目事由受注の集中・決算業務経理・営業人数12人延長月30h 年200h期間1年上限いっぱいで書かない社内のルールになる
協定に書く項目がそのまま運用のルールになる

健康福祉確保措置を決める

特別条項を結ぶ場合、限度時間を超えて働く労働者に対する健康福祉確保措置を協定に定めることが求められているとされています。様式第9号の2の2枚目に書く欄があります。

一般に、次のような措置から選んで定める形が取られています。

  • 医師による面接指導
  • 深夜業の回数を制限する
  • 勤務間インターバル(終業から次の始業までの時間を確保する)
  • 代償休日または特別な休暇を与える
  • 健康診断を実施する
  • 連続した年次有給休暇の取得を促進する
  • 心とからだの相談窓口を設ける
  • 配置転換を行う
  • 産業医等による助言・指導や保健指導を受けさせる

選んだら、実際に回す形まで決めておきます。協定に書いたのに一度も実施していない状態は、調査で指摘されるところです。いちばん回しやすいのは、すでに仕組みのあるもの(健康診断、相談窓口)に紐づける形です。

健康診断の記録の扱いは健康診断個人票の書き方にまとめています。

回せるものを選ぶ回しやすい健康診断相談窓口年休の取得促進すでに仕組みがある決めても止まる勤務間インターバル深夜業の回数制限配置転換運用まで決めておく
健康福祉確保措置は回せるものを選ぶ

よくある質問

36協定を届け出ていないとどうなりますか

協定の効力が生じないとされています。その状態で法定労働時間を超えて働かせると、労働基準法32条違反になります。結んだだけで出していない状態は、協定が無いのと同じ扱いです。

残業が無い月でも届け出は必要ですか

将来にわたって残業や休日労働が一切ない見込みなら、届出は必要とされていません。ただし、実際に1時間でも法定労働時間を超えさせるなら、その前に届出が要ります。年に数回でも起きるなら、結んでおくほうが安全です。

過半数代表者は誰でもよいですか

管理監督者に当たる人は代表者になれないとされています。また、投票や挙手などの民主的な方法で選ばれることと、使用者の意向で選出された者でないことが求められます。会社が指名する形は避けます。

特別条項は毎年使わなければいけませんか

使わなければならないものではありません。限度時間の範囲に収まる見込みなら、様式第9号だけで済みます。特別条項を結ぶと数える項目が増えるので、必要がなければ結ばないほうが運用は軽くなります。

協定はいつまで保存しますか

労働基準法109条の「重要な書類」として、5年(当分の間3年)とされています。届出の控え(受付印のあるもの)とあわせて保存します。保存期間の全体像は法定帳簿の保存期間にまとめています。

アルバイトも36協定の対象ですか

法定労働時間を超えて働かせるなら対象です。雇用形態で外れることはありません。協定の対象となる労働者の範囲に、パート・アルバイトを含めて書いておきます。

事業場が複数あります。本社でまとめて出せますか

一定の要件を満たす場合に、本社で一括して届け出られる仕組みがあるとされています。ただし事業場ごとに過半数代表者が必要など条件があるので、まとめて出せるかどうかは所轄の労働基準監督署に確認してください。電子申請を使うと、事業場ごとに出す場合でも窓口へ行かずに済みます。

有効期間が切れていたことに気づきました

切れている期間に法定労働時間を超えて働かせていたなら、その分は協定の無い状態での時間外労働になります。まず新しい協定を結んで届け出て、その時点から正しい状態にします。過去の分の扱いについては、所轄の労働基準監督署に相談するのが確実です。次から切らさないよう、有効期間の1か月前に通知が出る形にしておきます。

まとめ

36協定は、労働基準法36条に基づいて労使で結び、所轄の労働基準監督署長へ届け出ることで、時間外労働と休日労働をさせられるようにするものです。届け出てはじめて効力が生じるとされていて、結んだだけの状態は協定が無いのと同じ扱いになります。

上限は3つの層になっています。原則は月45時間・年360時間、1年単位の変形労働時間制なら月42時間・年320時間、特別条項を結ぶ場合は年720時間以内・単月100時間未満・2〜6か月平均80時間以内・月45時間超は年6か月まで、という4条件をすべて満たす必要があります。

単月100時間未満と2〜6か月平均80時間だけ、休日労働を足して数えます。同じ月について2種類の数え方をすることになるので、月ごとの累計表を作っておくと計算が足し算で済みます。

そして、36協定の実務は届出のあとに続きます。月45時間を超えた回数、年間の累計、複数月の平均を毎月更新して、上限の8割に達した人を抜き出す運用にしておくと、超える前に手が打てます。

上限規制は業種によって適用の時期や特例が違い、様式も改正されます。自社の扱いは、所轄の労働基準監督署に確認してください。

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