固定資産台帳|金額の線で扱いが分かれる
目次
固定資産台帳は、作ったあとに放っておかれやすい帳簿です。買ったものは載るのに、捨てたものが消えません。何年か経つと、台帳にはあるのに現物が無い資産が並びます。
この記事では、固定資産台帳を、何を載せるか・金額でどう分かれるか・現物とどう合わせるかの3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社の台帳を見直せる状態を目指します。
結論:減価償却の計算の土台になる帳簿
固定資産台帳とは、会社が持っている固定資産を1つずつ記録した帳簿のことです。買った日、金額、耐用年数、これまでいくら償却したか。
この台帳が要るのは、減価償却の計算をするためです。決算のときに、どの資産をいくら償却するかは、この台帳から出します。
見る先は1つではありません。法人税や所得税の計算、償却資産の申告、現物の管理。3つの用途が同じ台帳を見ています。
ポイントはここです。用途が3つあるのに、担当が1人しかいないことが多い。経理が作って、経理だけが見ている状態になりがちです。現物を使っている部署とつながっていないと、台帳と実物がずれていきます。
一般には、会計ソフトの機能で台帳を持っている会社が多くあります。ソフトが計算してくれる分、中身を見る機会が減るのが、ずれが起きる理由の1つです。
金額の線で扱いが分かれる
固定資産台帳でいちばん迷うのが、買ったものを台帳に載せるかどうかです。金額で扱いが分かれます。
線は3つあります。
10万円未満のものは、買った年に費用として処理する形が基本です。台帳には載せません。
10万円以上20万円未満のものは、一括償却資産として3年で均等に費用にする形が選べます。
30万円未満のものは、中小企業などが使える特例で、買った年に全額を費用にできる形があります。使えるのは青色申告をしている一定の規模の法人などとされていて、年間の限度額も定められています。
ここで実務が分かれます。一括償却資産は、固定資産台帳には載せないのが一般的です。代わりに、取得の年度ごとの合計額と、償却が済んだ額、残っている額を別に管理します。
30万円未満の特例を使った資産は、台帳に載せます。償却の方法の欄を即時償却としておく形が案内されています。
なぜ扱いが違うのか。償却資産の申告での扱いが違うからです。一括償却資産は申告の対象外とされていて、特例を使った資産は対象になります。台帳の載せ方が、翌年の申告に効いてきます。
判断に迷ったら、顧問の税理士か所轄の税務署に確かめます。自社でどの形を選ぶかを決めて、毎年同じ判断をするのが大事です。
台帳に書く項目
固定資産台帳に書く項目は、用途から決まります。減価償却の計算に要るものと、現物を探せるものです。
計算に要るのは5つです。
1つ目は、取得した年月日です。償却を始める月が決まります。
2つ目は、取得価額です。本体の価格だけでなく、据付や引取りにかかった費用が含まれる形があります。
3つ目は、耐用年数です。資産の種類ごとに定められています。
4つ目は、償却の方法と償却率です。定額法か定率法か。
5つ目は、期末の帳簿価額です。これまでの償却の累計を引いた残り。
現物を探せるようにするには、設置している場所と、管理している部署を書いておきます。ここが空欄の台帳は、棚卸しのときに使えません。
資産の名前の書き方も決めておきます。パソコン、と書くだけでは何台目か分かりません。型番か、社内で振った管理の番号を書いておくと、現物と結び付けられます。
管理の番号をシールで現物に貼っている会社もあります。台帳の側と現物の側に同じ番号があると、突き合わせが数分で終わります。
現物と合わなくなる理由
固定資産台帳がずれるのは、ほとんどが出ていくときの記録です。
ずれる形は4つあります。
1つ目は、捨てたのに台帳に残っている場合です。現場で壊れて処分したことが、経理に伝わっていません。
2つ目は、売ったのに残っている場合です。代金は入っているのに、台帳の側が動いていません。
3つ目は、場所が変わった場合です。別の事業所に移したのに、台帳の設置場所が古いまま。
4つ目は、使わなくなったまま置いてある場合です。現物はあるので気づきにくい形です。
台帳に残ったままだと、償却資産の申告に載り続けます。使っていないものに税金を払うことになります。ここが金額として効いてくるところです。
防ぎ方は1つです。捨てるときに伝える流れを作ること。難しい仕組みは要りません。処分の依頼を経理にも回す、というだけで拾えます。
何を捨てたか分からない場合は、棚卸しで見つけます。年に1回、台帳を印刷して現物を見に行きます。管理の番号が付いていれば、確かめる時間は短くなります。
見つからなかったものは、その場で消さずに一度印を付けておきます。別の場所に移っているだけのことがあるためです。全部の場所を回ってから、それでも見つからないものを処分として扱います。
処分したときの記録も残します。処分した日、処分の方法、依頼した先。引き取りの証明書や写真が材料になります。記録が無いと、いつの時点で無くなったのかを後から説明できません。
償却資産の申告とのつながり
固定資産台帳がもう1つ効いてくるのが、償却資産の申告です。
1月1日の時点で持っている償却資産を、1月31日までに市区町村へ申告するとされています。土地と建物は対象外で、機械や器具備品などが対象になります。
ここで、さきほどの金額の線がまた出てきます。一括償却資産は申告の対象外とされていて、30万円未満の特例を使った資産は対象になります。台帳の載せ方が、そのまま申告の内容に効きます。
一定の金額を下回る場合には課税されない扱いもあります。対象になる資産の合計が少ない会社では、申告しても税額が出ないことがあります。それでも申告そのものは求められる形があるので、市区町村の案内で確かめます。
除却の記録が申告に効くのもここです。前の年の申告に載っていた資産を処分したなら、減った分を申告します。台帳が古いままだと、減らす材料がありません。
申告の時期は、法定調書や給与支払報告書と重なります。1月は経理の仕事が集中する月なので、台帳の整理は年内に済ませておくと楽になります。
買ったときに、台帳に入れるまで
台帳が崩れるのは出ていくときですが、入るときの取りこぼしも起きます。買った記録が経理に届かない形です。
起きやすいのは3つです。
1つ目は、部署が立て替えて買った場合です。経費精算で処理されると、費用として流れてしまい、資産として台帳に載りません。金額の線を超えているのに、消耗品費で落ちている形です。
2つ目は、リースと購入が混ざる場合です。契約の形によって扱いが変わります。契約書を見るまで判断できないことがあります。
3つ目は、同じものを複数まとめて買った場合です。1台あたりでは線を下回っても、まとまりで判断する形があります。机と椅子のセット、パソコンと周辺機器。
防ぐ方法は、金額で止めることです。1件あたりの支払いが一定の額を超えたら、経理が内容を見る。線を10万円に置いておけば、資産になりうるものは全部通ります。
経費精算の様式に、何を買ったかを書く欄があると拾いやすくなります。品名だけでなく、型番や台数。ここが空欄だと、金額だけでは判断できません。
買ったときに管理の番号を振る流れにしておくと、台帳に載せる作業と現物にシールを貼る作業が1回で終わります。後からまとめてやろうとすると、どれがどれか分からなくなります。
年に1回の見直しを決める
固定資産台帳は、放っておくとずれる帳簿です。見直しの時期を決めておくのがいちばん効きます。
決めるのは4つです。
1つ目は、棚卸しの時期です。年に1回、台帳と現物を突き合わせます。決算の前か、年末が多い形です。
2つ目は、処分のときの流れです。誰が誰に伝えるか。現場から経理へ1本通します。
3つ目は、名前と番号の付け方です。新しく買ったときに、どう書くか。管理の番号を振るなら、その決まり。
4つ目は、金額の線の判断です。10万円、20万円、30万円のどれを使うか。自社で選んだ形を書いておくと、毎年同じ判断ができます。
この4つを1枚にまとめておくと、担当が代わっても台帳が崩れません。台帳は、作るより保つほうが難しい帳簿です。
まとめ
固定資産台帳は、持っている固定資産を1つずつ記録して、減価償却の計算の土台にする帳簿です。法人税などの計算、償却資産の申告、現物の管理の3つが同じ台帳を見ています。
載せるかどうかは金額で分かれます。10万円未満、10万円以上20万円未満の一括償却資産、30万円未満の特例。一括償却資産は台帳に載せずに別で管理し、特例を使った資産は台帳に載せる形が案内されています。
台帳がずれるのは、出ていくときの記録です。処分、売却、移動、遊休。台帳に残ったままだと、使っていないものに償却資産の税金がかかり続けます。
防ぎ方は、捨てるときに経理へ伝える流れと、年に1回の棚卸しです。管理の番号を現物に貼っておくと、突き合わせが早く終わります。自社の取扱いは、顧問の税理士や所轄の税務署、市区町村に確かめるのが確実です。
よくある質問
Q. 固定資産台帳に決まった様式はありますか。 A. 定められた様式はありません。減価償却の計算ができる項目がそろっていることが要点です。会計ソフトの台帳をそのまま使っている会社が多くあります。
Q. 10万円未満のものも載せますか。 A. 買った年に費用として処理する形が基本なので、載せないのが一般的です。現物の管理のために別の台帳に載せるのは別の話です。
Q. 一括償却資産は台帳に載せますか。 A. 固定資産台帳には載せないのが一般的です。取得の年度ごとに、合計額・償却済みの額・残りを別に管理する形が取られています。
Q. 30万円未満の特例を使った資産はどうしますか。 A. 台帳に載せます。償却の方法の欄を即時償却としておく形が案内されています。償却資産の申告の対象になります。
Q. 特例は誰でも使えますか。 A. 青色申告をしている一定の規模の法人などが対象とされていて、年間の限度額も定められています。自社が対象になるかは税理士か所轄の税務署に確かめます。
Q. 取得価額には何を含めますか。 A. 本体の価格のほか、据付や引取りにかかった費用が含まれる形があります。何を含めたかを台帳の備考に書いておくと、後から確かめられます。
Q. 捨てた資産はどうしますか。 A. 除却の処理をして、台帳から外します。処分した日と、処分したことが分かる記録を残します。写真や処分の証明書が材料になります。
Q. 台帳に残っていると何か困りますか。 A. 償却資産の申告に載り続けるため、使っていないものに税金がかかります。現物が無いことに気づくまで、毎年続きます。
Q. 棚卸しはどうやりますか。 A. 台帳を印刷して、現物を見に行きます。設置場所の順に並べ替えると回りやすくなります。管理の番号を現物に貼っておくと早く終わります。
Q. 事業所の間で資産を移しました。 A. 台帳の設置場所を直します。償却資産の申告は市区町村ごとなので、市区町村をまたぐ移動は申告の内容にも効いてきます。
Q. 償却資産の申告はいつですか。 A. 1月1日の時点で持っている資産について、1月31日までに市区町村へ申告するとされています。法定調書や給与支払報告書と同じ時期に重なります。
Q. 資産が少ない会社でも申告は要りますか。 A. 一定の金額を下回る場合に課税されない扱いがありますが、申告そのものは求められる形があります。市区町村の案内で確かめます。
Q. 資産の名前はどう書きますか。 A. 何台目か分かる形にします。型番か、社内で振った管理の番号を書いておくと、現物と結び付けられます。
Q. 台帳の保存は何年ですか。 A. 帳簿として保存の年数が定められています。電子で保存する場合は要件があるので、電子帳簿保存法の取扱いと合わせて確かめます。
Q. 部署が立て替えて買った備品が、台帳に載っていませんでした。 A. 経費精算で費用として流れてしまう形です。1件あたりの支払いが10万円を超えたら経理が内容を見るようにすると、資産になりうるものが通ります。
Q. 机と椅子をセットで買いました。1つずつで判断しますか。 A. まとまりで判断する形があります。通常1組で使うものは、組で見る扱いが案内されています。判断に迷うときは税理士か所轄の税務署に確かめます。
Q. リースで使っている機械は台帳に載せますか。 A. 契約の形によって扱いが変わります。契約書を見るまで判断できないことがあるので、契約のときに経理へ写しを回す流れにしておきます。
Q. 棚卸しで見つからないものがありました。 A. その場で消さず、印を付けておきます。別の場所に移っているだけのことがあります。全部の場所を回ってから、処分として扱います。