書類の保存年数一覧の作り方|起算日の列を持つ
目次
書類の保存年数を一覧にしようとすると、たいてい「年数」の列だけを作って止まります。年数が分かっても、いつから数えるのかが分からないと処分の判断ができないからです。
一覧に必ず入れるべき列は、年数ではなく起算日です。この記事では、書類の保存年数一覧を、なぜ年数だけでは足りないのか、入れる5つの列、束の単位の決め方、処分の回し方の順に整理します。保存年数は改正で変わります。個別の書類の扱いは、所轄の労働基準監督署・税務署など、それぞれの所管に確認してください。
結論:年数の列だけでは処分できない
「何年持つか」は調べればすぐ分かります。実務で時間を取られるのは、目の前の束がその年数を過ぎているかどうかの判定のほうです。一覧の役目は、その判定を速くすることにあります。
保存年数の一覧でいちばん多いのが、書類名と年数の2列だけの表です。これだと、目の前の束を捨てられるかどうかが判断できません。
同じ「5年」でも、数え始める日がこれだけ違います。
| 書類 | 年数 | 起算日 |
|---|---|---|
| 賃金台帳 | 5年(当分の間3年) | 最後の記入をした日(支払期日が遅ければ支払期日) |
| 労働者名簿 | 5年(当分の間3年) | 退職・解雇・死亡の日 |
| 宅建業の帳簿 | 5年 | 各事業年度の末日に閉鎖した後 |
| 産業廃棄物の帳簿 | 5年 | 1年ごとに閉鎖した後 |
| マニフェストの写し | 5年 | 交付した日/送付を受けた日 |
| 委託契約書 | 5年 | 契約終了の日 |
6つとも5年で、6つとも起算日が違います。しかも賃金台帳には「支払期日が遅ければそちら」という条件まで付きます。年数の列だけを見て同じ箱に入れると、処分のときに1つずつ調べ直すことになります。
入れる5つの列
列を増やしたくなりますが、更新されない一覧はゼロと同じです。担当者が変わっても埋められる数に絞っておきます。足すなら「置き場所」の1列だけにします。
一覧に必要なのは次の5つです。これ以上増やすと更新されなくなります。
| 列 | 内容 |
|---|---|
| 1. 書類名 | 社内で呼んでいる名前 |
| 2. 根拠 | 法律・条文。社内規程なら規程名 |
| 3. 保存年数 | 年数。経過措置があれば併記 |
| 4. 起算日 | 「いつから数えるか」を文で書く |
| 5. 束の単位 | 年度ごと/人ごと/契約ごと |
4と5が入っていない一覧は、実務で使えません。
起算日は文で書く
条文の言葉を書いておくと、根拠の列と合わせて読めるようになります。調べ直すときに、条文のどこを見ればよいかが分かる状態になります。
「退職日」「完結の日」のような短い言葉だと、担当者が変わったときに解釈がぶれます。条文の言葉をそのまま書くのが確実です。
- 賃金台帳 … 「最後の記入をした日。ただし賃金の支払期日がそれより遅いときは支払期日」
- 労働者名簿 … 「労働者の死亡、退職または解雇の日」
- 宅建業の帳簿 … 「各事業年度の末日に閉鎖した日」
長くなっても構いません。この列は読む列であって、集計する列ではありません。
束の単位で、管理の重さが決まる
人ごと・契約ごとの書類は、そのイベントが起きた日に処分できる年を書き込むのがコツです。退職の手続き、契約の終了処理の中に1行入れておけば、あとから遡って調べる必要がなくなります。
5つ目の「束の単位」は、実務の重さを決めます。
| 単位 | 例 | 管理の重さ |
|---|---|---|
| 年度ごと | 宅建業の帳簿、産廃の帳簿 | 軽い(年1回の判断) |
| 月ごと | 宿泊者名簿 | 中 |
| 人ごと | 労働者名簿、賃金台帳、警備員名簿 | 重い(退職のたびに判断) |
| 契約ごと | 委託契約書、派遣の台帳 | 重い(契約終了のたびに判断) |
年度ごとに閉じる書類がいちばん楽です。判断が年1回にまとまるためです。人ごと・契約ごとの書類は、そのイベントが起きたときに処分できる年を書き込む手順にしておきます。
年数を3つに寄せる
寄せるのは管理のためであって、法令が変わるわけではありません。長いほうに寄せるのは安全側の運用なので問題になりませんが、短いほうに寄せると保存義務を満たさなくなります。
書類ごとに年数を管理すると、管理そのものに手間がかかります。束ごとに、そこに含まれるいちばん長い年数へ寄せるのが実務的です。
| 束 | 寄せる年数 | 含まれるもの |
|---|---|---|
| 労務のファイル | 5年 | 労働者名簿、賃金台帳、出勤簿、年休管理簿、36協定 |
| 経理のファイル | 10年 | 国税関係帳簿書類、会計帳簿、計算書類 |
| 業法のファイル | 法律ごと | 宅建・古物・警備・宿泊・産廃 |
年数を3つに絞ると、処分の判断が「この束はどれか」だけになります。書類名を1つずつ照合する作業が消えるので、年1回の処分が半日で終わるようになります。
労働基準法の帳簿は5年(当分の間3年)ですが、経過措置の終わりが決まっていないため、5年で組んでおくほうが後で変えずに済みます。詳しくは法定帳簿の保存期間にまとめています。
業法のファイルは寄せられない
業法の帳簿は、そもそも自社にかかるものが何かを把握しているかが先になります。許可や届出をしている事業の一覧と突き合わせて、対応する帳簿がそろっているかを1回確認しておきます。
業法の帳簿だけは、寄せると危険です。年数も起算日も法律ごとにばらばらで、しかも短いものがあるからです。
| 書類 | 年数 | 起算日 |
|---|---|---|
| 警備員名簿 | 1年 | 退職の日 |
| 古物台帳 | 3年 | 最終の記載をした日 |
| 宿泊者名簿 | 3年 | 作成の日 |
| 宅建業の帳簿 | 5年(新築住宅は10年) | 事業年度の末日に閉鎖した後 |
| 宅建業の従業者名簿 | 10年 | 最終の記載をした日 |
1年から10年まで開きます。業法のファイルだけは、書類ごとに束を分けて、表紙に処分できる年を書く形にします。
表紙に書くのは「処分できる年」
電子で持っている場合も同じです。フォルダ名に処分できる年を入れます。「2026年度_宅建業帳簿_処分可2032-04」のようにしておけば、名前を見るだけで判断できます。
一覧ができたら、箱やフォルダの表紙に書くのは起算日ではなく処分できる年にします。
| 表紙に書くもの | 判断の速さ |
|---|---|
| 起算日だけ | 毎回、年数を足す計算が発生する |
| 処分できる年月 | 見るだけで判断できる |
計算は最初の1回で終わらせます。「2026年度 宅建業帳簿/閉鎖 2027-03-31/処分可 2032-04以降」のように書いておけば、次に開く人は計算しません。
処分の日を年1回決める
処分の日は、年度末の繁忙期を外して決めます。書庫の前に立って箱を見る作業なので、落ち着いてできる時期にしないと、結局やらずに終わります。
処分は、思い出したときにやると永遠に溜まります。年1回、日を決めます。
- 年度末に、書庫の箱の表紙を見る
- 処分できる年を過ぎているものを抜き出す
- 係争中・調査中のものが無いかを確認する
- 溶解処理か細断で処分する
- 処分した年月と対象を1行残す
3つ目の確認を入れておきます。未払賃金の請求や労災の申請が進行しているなら、期間が過ぎていても残します。
5つ目の記録が、いちばん効きます。後から「あの年の分はどこか」と聞かれたときに、処分したのか紛失したのかが分かるのはこの1行だけです。
最初の一覧は30行で足りる
全部の書類を網羅しようとすると終わりません。実際に処分の判断が発生する書類だけを並べれば、30行ほどで足ります。
| 区分 | 並べるものの例 |
|---|---|
| 労務 | 労働者名簿、賃金台帳、出勤簿、年休管理簿、36協定、雇用契約書、健康診断個人票 |
| 社会保険 | 雇用保険・健康保険・厚生年金の関係書類 |
| 税務 | 総勘定元帳、仕訳帳、請求書、領収書、契約書、決算書 |
| 業法 | 自社にかかるものだけ |
| 社内 | 議事録、稟議書、規程の改訂履歴 |
「自社にかかるものだけ」が要点です。他社の一覧を借りてくると、この絞り込みが効きません。業法の帳簿は、自社が持っている許可・届出の分だけを載せます。関係のない法律の行があると、一覧そのものが読まれなくなります。
作る順番
2の「根拠と年数を調べる」で止まることがあります。分からないものは「未確認」と書いて先に進みます。空欄にすると調べたのかどうかが分からなくなりますが、「未確認」なら次に調べる対象だと分かります。
- 書庫と棚を見て、実際にある束を書き出す
- それぞれの根拠と年数を調べる
- 起算日を条文の言葉で書く
- 束の単位を書く
- 表紙に処分できる年を書いて回る
1から始めるのがコツです。法令の一覧から作ると、自社に無い書類まで並びます。目の前にある束から始めれば、必ず使う一覧になります。
保存年数が長いものほど、読めなくなる
10年という期間は、担当者が2回は変わる長さです。作った人がいなくなることを前提に、一覧と置き場所の情報だけは残る形にしておきます。
10年保存の書類は、保存期間の途中でシステムや担当者が変わります。紙より電子のほうが、この問題が大きく出ます。
| 起きること | 対策 |
|---|---|
| 会計システムを乗り換えた | 解約前に書き出す |
| クラウドの契約が終わった | 同上。書き出しの費用も先に確認 |
| ファイル形式が古くなった | PDFなど、長く読める形式にする |
| 担当者が変わって置き場所が分からない | 一覧に置き場所の列を足す |
「置き場所」の列を足しておくと、引き継ぎの資料がそのまま完成します。紙なら書庫の棚番号、電子なら共有フォルダのパスを書きます。
一覧の5列に「置き場所」を足して6列にするのは、増やす価値があります。探す時間がいちばん長く発生するのがこの情報だからです。
電子で持つときの書き出し
書き出しにかかる費用と手間は、契約する前に確かめておくほうが安全です。解約のときに有料だと分かると、乗り換えの判断そのものが縛られます。
システムを解約する前にやることは3つです。
- 保存期間が残っている分を書き出す
- 書き出したファイルを、年と書類名が分かる名前にする
- 一覧の「置き場所」の列を新しい場所に書き換える
3つ目を忘れると、書き出したこと自体が分からなくなります。
よくある質問
年数はどこで調べますか
書類ごとに所管が違います。労務は厚生労働省・労働基準監督署、税務は国税庁・税務署、業法はそれぞれの所管(都道府県、警察、保健所など)です。一覧の「根拠」の列に条文を書いておくと、次に確認するときに早く済みます。
電子で持っていれば年数は変わりますか
変わりません。紙でもデータでも保存年数は同じです。ただし、データは「読める状態で残っているか」が問題になります。システムを解約する前に書き出しておきます。
経過措置はいつ終わりますか
労働基準法の帳簿は「当分の間3年」とされていて、終わる時期は定められていません。5年で運用しておけば、終わっても何も変えずに済みます。
迷ったら長いほうでよいですか
基本は長いほうです。ただし個人情報が含まれる書類を必要以上に長く持つのは、別の面でリスクになります。業法の帳簿のように短い年数が定められているものは、その年数で処分するほうが筋の通った運用になります。
一覧は誰が持ちますか
総務が持つのが一般的です。ただし経理・人事・現場で書類が分かれている場合は、担当ごとに自分の分を見る形にして、一覧は共有の場所に1つ置きます。2つ作ると片方が古くなります。
保存期間が過ぎても捨てられない書類はありますか
係争になっているもの、その見込みがあるもの、調査が進行しているものは残します。未払賃金の請求、労災の申請、解雇をめぐる争いなどが該当します。期間が過ぎたからという理由だけで処分すると、実態を示せなくなります。
契約書はいつから数えますか
多くは契約終了の日からです。契約が続いているあいだは起算日が来ないため、長く持つことになります。契約が終わった時点で終了日を書き込む手順にしておかないと、いつから数えるのかが分からなくなります。
紙と電子が混ざっています
一覧の「置き場所」の列に、紙なら棚番号、電子ならフォルダのパスを書きます。同じ書類が両方にある場合は、どちらが正かを決めて書いておきます。両方を正とすると、片方だけ更新された状態が生まれます。
処分した記録はどこに残しますか
一覧と同じファイルに「処分の記録」のシートを足すのが扱いやすい形です。処分した年月・対象・担当者・承認者の4列で足ります。
まとめ
書類の保存年数一覧は、年数の列だけでは使えません。同じ「5年」でも起算日が違うためです。賃金台帳は最後の記入をした日、労働者名簿は退職の日、宅建業の帳簿は事業年度の末日に閉鎖した後、マニフェストは票を受け取った日。数え方が全部違います。
一覧に入れるのは5列です。書類名・根拠・保存年数・起算日・束の単位。とくに起算日は、条文の言葉をそのまま文で書いておきます。短い言葉にすると解釈がぶれます。
管理を軽くするには、束ごとにいちばん長い年数へ寄せるのが有効です。労務は5年、経理は10年の2つに寄せれば、判断は「この束はどれか」だけになります。
ただし、業法の帳簿だけは寄せられません。警備員名簿の1年から宅建業の従業者名簿の10年まで開きがあり、起算日も法律ごとに違います。書類ごとに束を分けます。
そして、箱の表紙に書くのは起算日ではなく処分できる年にします。計算は最初の1回で終わらせ、次に開く人が見るだけで判断できる形にしておきます。
作るときは、法令の一覧からではなく、棚にある束から始めます。目の前にある書類だけを並べれば30行ほどで足り、必ず使う一覧になります。列に「置き場所」を足しておくと、そのまま引き継ぎの資料になります。
保存年数は改正で変わります。個別の書類の扱いは、それぞれの所管に確認してください。