派遣先管理台帳の書き方|月1回の通知が本体
目次
派遣先管理台帳は、派遣スタッフを受け入れている側が作る台帳です。派遣会社が作るものではありません。ここを取り違えて「うちは派遣会社ではないから関係ない」と考えてしまうのが、最初のつまずきどころです。
そして、この台帳には他の帳簿にない義務が付きます。記載した内容を、月1回以上、派遣元へ通知することです。作って置いておくだけでは終わりません。この記事では、派遣先管理台帳を、誰が作るのか、記載事項、月1回以上の通知、3年の保存の順に整理します。記載事項は法改正で追加されてきた項目です。自社の扱いは所轄の労働局(需給調整事業部門)に確認してください。
結論:受け入れる側が、派遣労働者ごとに作る
労働者派遣法42条1項で、派遣先は、派遣就業に関し、派遣就業をする事業所その他派遣就業の場所ごとに派遣先管理台帳を作成し、当該台帳に派遣労働者ごとに厚生労働省令で定める事項を記載しなければならないとされています。
| 内容 | |
|---|---|
| 根拠 | 労働者派遣法42条 |
| 作る人 | 派遣先(受け入れる会社) |
| 作る単位 | 事業所その他派遣就業の場所ごと、派遣労働者ごと |
| 様式 | 法令上の定めなし(厚生労働省が記入例を公開) |
| 通知 | 1か月に1回以上、一定の期日を定めて派遣元へ通知 |
| 保存 | 派遣終了の日から3年間 |
「作る人」がいちばん間違えられるところです。派遣会社から「台帳を作ってください」と言われて、派遣元用の様式を渡されることもあります。派遣元管理台帳は派遣会社、派遣先管理台帳は受け入れる会社。名前が似ているぶん、社内で取り違えが起きます。
| 派遣元管理台帳 | 派遣先管理台帳 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 法37条 | 法42条 |
| 作る人 | 派遣元事業主 | 派遣先 |
| 通知の義務 | なし | 月1回以上 |
| 保存 | 派遣終了から3年 | 派遣終了から3年 |
派遣会社側の台帳は派遣元管理台帳の書き方にまとめています。
記載事項
派遣元管理台帳と項目が重なるので、どちらの台帳の話をしているかを社内で明確にしておきます。転記のときに相手の様式を使ってしまうと、必要な欄が足りない台帳ができあがります。
派遣先管理台帳に書くのは、おおむね次のような項目です。派遣元管理台帳と重なる項目もありますが、派遣先の側でしか分からない情報が中心になります。
| 区分 | 項目 |
|---|---|
| 本人 | 派遣労働者の氏名 |
| 区分 | 協定対象派遣労働者であるか否かの別 |
| 区分 | 無期雇用か有期雇用かの別 |
| 区分 | 60歳以上の者であるか否かの別 |
| 派遣元 | 派遣元事業主の氏名または名称、事業所の名称、所在地 |
| 業務 | 業務の内容、責任の程度 |
| 場所 | 就業した事業所の名称・所在地、組織単位 |
| 期間 | 派遣就業をした日、始業・終業の時刻、休憩時間 |
| 苦情 | 苦情の申出を受けた年月日、内容、処理状況 |
| 教育訓練 | 教育訓練を行った日時・内容 |
| 責任者 | 派遣先責任者・派遣元責任者の氏名 |
| 期間制限 | 期間制限のない業務である場合はその旨 |
「派遣就業をした日、始業・終業の時刻、休憩時間」が、この台帳の中心です。派遣先でしか分からない情報なので、これを記録して派遣元へ通知することが制度の目的になっています。
苦情の欄は派遣先にもある
「協定対象派遣労働者であるか否かの別」は、同一労働同一賃金の仕組みに関わる欄です。派遣元が労使協定方式を採っているかどうかで、待遇の決め方が変わります。派遣先が自分で判断する項目ではないので、契約のときに派遣元から示された内容をそのまま書きます。
苦情の申出を受けたときの記録は、派遣元と派遣先の両方に記載事項として置かれています。派遣スタッフが派遣先の担当者に苦情を言った場合、派遣先の台帳に記録し、派遣元と連携して処理する形になります。
「言われていないから空欄」で構いません。書くことが無いのが正常な状態です。ただし、苦情の申出先と処理の方法は契約の段階で決めておく項目なので、そちらは埋まっている状態になります。
月1回以上の通知が本体
労働者派遣法42条3項で、派遣先は、厚生労働省令で定めるところにより、派遣先管理台帳の記載事項のうち一定のものを、1か月に1回以上、一定の期日を定めて、派遣元事業主に通知しなければならないとされています。
| 内容 | |
|---|---|
| 頻度 | 1か月に1回以上 |
| 期日 | 一定の期日を定めて |
| 内容 | 就業状態など、台帳の記載事項のうち定められたもの |
| 方法 | 書面の交付等(ファクシミリ・電子メール等も含む扱い) |
「一定の期日を定めて」という書き方がポイントです。気が向いたときに送るのではなく、毎月◯日までに送る、と決めておくことが求められます。
契約の段階で期日を決める
期日を決めるときは、自社の勤怠の締め日より後にします。締め日と同じ日にすると、集計が終わる前に通知の期限が来ます。締め日の3〜5営業日後に置くのが現実的です。
通知の期日は、労働者派遣契約を結ぶ段階で決めておくのが実務的です。派遣元は受け取った通知で自社の台帳を埋めるので、期日が決まっていないと派遣元の台帳も止まります。
- 契約書か覚書に「毎月◯日までに前月分を通知する」と書く
- 通知の様式を決めておく(派遣元の指定様式があることが多い)
- 送った記録を残す(メールなら送信済みを保存)
3つ目が抜けがちです。通知したかどうかを後から確かめられるのは、送信の記録だけになります。
請求の締めに合わせる
通知の内容は、派遣元の台帳の欄に合わせておくと転記が要りません。派遣元がどの様式で受け取りたいかを先に聞いておくと、双方の手間が減ります。
一般には、派遣料金の締めと同じタイミングで通知する形が取られています。就業時間の集計は請求のためにどのみち行うので、同じデータを通知に使えます。
別々にやると、数字が食い違います。請求は勤怠システムから、通知は手入力で、という形にすると、月末に2つの数字が出てきて照合が発生します。
3年の保存と、起算日
同じ人が契約更新を重ねている場合、どの契約期間の分がいつまでかを追うのが難しくなります。契約の単位で束を分けておけば、終了した束から順に処分できます。
保存期間は、派遣終了の日から3年間です。派遣元管理台帳と同じ年数・同じ起算日になっています。
| 書類 | 保存期間 | 起算日 |
|---|---|---|
| 派遣先管理台帳 | 3年 | 派遣終了の日 |
| 派遣元管理台帳 | 3年 | 派遣終了の日 |
| 労働者名簿(自社の社員) | 5年(当分の間3年) | 退職・解雇・死亡の日 |
「派遣終了の日」は、その派遣が終わった日です。契約が更新され続けているあいだは起算日が来ません。同じ人が長く来ている場合、台帳は伸び続けることになります。
実務としては、契約の単位で区切って持つほうが管理しやすくなります。更新のたびに新しい期間の欄を作り、終了したときにその束を閉じる形です。
労働基準法の帳簿を5年で運用しているなら、派遣関係も5年に合わせておくと処分の判断が1つで済みます。保存年数の一覧の作り方は書類の保存年数一覧の作り方にまとめています。
期間制限とセットで見る
期間制限は、台帳の欄を埋めるだけでは守れません。抵触日を別表で管理して、期限の前に手続きをするところまでが運用になります。
派遣先管理台帳に「組織単位」を書くのは、期間制限を数えるためです。派遣には2つの期間制限があります。
| 制限 | 内容 | 台帳のどこで見るか |
|---|---|---|
| 事業所単位 | 同一の事業所に派遣できるのは原則3年(意見聴取で延長可) | 事業所の名称・所在地 |
| 個人単位 | 同一の組織単位に同一の派遣労働者を派遣できるのは3年 | 組織単位 |
事業所単位の延長には、過半数労働組合等への意見聴取が必要とされています。期限が来る前に手続きをする必要があるため、抵触日を別で管理しておくのが確実です。
抵触日の数え方と管理のしかたは抵触日管理表の作り方にまとめています。
派遣先責任者と事業所単位
派遣先管理台帳には派遣先責任者の氏名を書く欄があります。この責任者は、台帳を作るだけの役ではありません。
| 派遣先責任者の役割の例 |
|---|
| 派遣労働者の就業に関する事項を統一的に管理する |
| 派遣先管理台帳の作成・記載・保存 |
| 派遣元への通知 |
| 苦情の処理 |
| 派遣可能期間の管理 |
台帳・通知・苦情・期間制限が1人に集まる形になっています。逆に言えば、この4つが別々の人に散っていると、どこかで止まります。
選任の要件や人数の目安は定められています。受け入れる人数が増えたときに、責任者の人数が足りているかを見直す必要があるため、人数の基準を1回確認しておきます。
事業所その他派遣就業の場所ごと
条文は「事業所その他派遣就業の場所ごと」としています。本社でまとめて1つ、という作り方はできません。
- 本社で3名受け入れ … 本社の台帳
- 工場で5名受け入れ … 工場の台帳
- 現場に常駐 … その就業場所の台帳
就業場所が分かれれば台帳も分かれます。責任者も場所ごとに置くことになります。通知も場所ごとの内容になるので、集計の単位を最初から場所で分けておくと後が楽です。
通知が止まると、相手の台帳も止まる
派遣先の通知は、派遣元管理台帳の就業状態の欄の入口になっています。通知が来ないと、派遣元は自社の台帳を埋められません。
| 止まる場所 | 起きること |
|---|---|
| 派遣先が通知しない | 派遣元の台帳の就業状態が空欄のまま |
| 通知の期日が決まっていない | 毎月催促の連絡が発生する |
| 通知の様式がばらばら | 派遣元が転記に時間をかける |
「毎月催促される」状態になっているなら、期日が決まっていないサインです。契約書か覚書に期日を書くだけで消えます。
派遣元から様式を指定されている場合は、それに合わせるのがいちばん早く済みます。自社の勤怠システムから出せる形式と合わないときは、契約の段階ですり合わせておくと、毎月の手作業が減ります。
通知したことを残す
監査や調査で聞かれるのは「通知したか」であって「台帳を作ったか」だけではありません。送信の記録が実質的な証拠になります。
通知の義務があるので、やったことを示せる形にしておきます。
- メールなら送信済みフォルダを残す
- 書面なら控えに送付日を記録する
- システム経由なら送信ログを保存する
台帳とセットで保存すると、後から探しやすくなります。台帳の保存は派遣終了から3年なので、通知の記録もそれに合わせておけば判断が1つで済みます。
よくある質問
派遣会社ではありませんが必要ですか
派遣スタッフを受け入れているなら必要です。派遣先管理台帳は受け入れる側が作るものです。1人でも受け入れていれば対象になります。
様式は決まっていますか
法令上の定めはありません。厚生労働省が記入例を公開しているので、それに沿って自社で作るのが確実です。派遣元から様式を指定されることもあります。
通知はメールでよいですか
書面の交付のほか、ファクシミリや電子メール等による方法も認められる扱いがあります。送った記録が残る形にしておくのがポイントです。詳しい方法は所轄の労働局に確認してください。
短期間の受け入れでも作りますか
日数が短くても、派遣就業をさせるなら作成の対象です。記載事項は同じなので、契約時に埋まる項目をあらかじめ入れた雛形を用意しておくと早く済みます。
就業時間は誰が記録しますか
派遣先が記録します。派遣スタッフの勤怠を把握しているのは派遣先なので、自社の勤怠システムで打刻してもらう形が一般的です。その集計を台帳へ入れ、派遣元へ通知します。
派遣先責任者は誰がなりますか
派遣労働者の就業に関する事項を統一的に管理できる立場の人が選ばれます。台帳・通知・苦情・期間制限の4つを回せる人である必要があるので、現場の状況が見えて、かつ事務の手続きもできる位置の人が向いています。要件は所轄の労働局に確認してください。
苦情を言われたとき、派遣元にも伝えますか
苦情の処理は派遣元と派遣先が連携して行う仕組みになっています。派遣先の台帳に記録したうえで、派遣元にも共有するのが一般的な形です。処理の結果まで台帳に残します。
派遣元管理台帳と両方作るのですか
自社が派遣会社でもある場合は両方です。受け入れているだけなら派遣先管理台帳だけになります。ファイル名に「派遣元」「派遣先」を入れて分けておくと取り違えません。
まとめ
派遣先管理台帳は、労働者派遣法42条に基づいて派遣スタッフを受け入れる側が作る台帳です。派遣会社が作るのは派遣元管理台帳で、別の書類になります。
記載の中心は、派遣就業をした日、始業・終業の時刻、休憩時間です。派遣先でしか分からない情報を記録して、それを派遣元へ渡すことが制度の目的になっています。
この台帳の本体は、1か月に1回以上、一定の期日を定めて派遣元へ通知することです。作って置いておくだけでは終わりません。期日は労働者派遣契約を結ぶ段階で決めて、送った記録を残します。
派遣料金の締めと同じタイミングで通知するのが、いちばん手数の少ない形です。就業時間の集計はどのみち請求のために行うので、同じデータを使えます。
保存は派遣終了の日から3年です。契約が更新され続けているあいだは起算日が来ないため、契約の単位で区切って持つほうが管理しやすくなります。
台帳・通知・苦情・期間制限の4つは、派遣先責任者のところに集まります。この4つが別々の人に散っていると、どこかで止まります。受け入れる人数が増えたときは、責任者の人数が足りているかもあわせて見直します。
記載事項は法改正で追加されてきた項目です。自社の扱いは、所轄の労働局(需給調整事業部門)に確認してください。