派遣元管理台帳の書き方|記載事項と3年の保存
目次
派遣元管理台帳は、派遣会社が派遣労働者ごとに作る台帳です。記載事項が多く、しかも契約のときに決まる項目と、就業してから随時足す項目が混ざっています。この2つを分けずに1枚で埋めようとすると、毎月どこを直すのか分からなくなります。
この記事では、派遣元管理台帳を、記載事項の全体像、契約時に転記するものと随時更新するもの、派遣先管理台帳との違い、3年の保存の順に整理します。記載事項は法改正で追加されてきた項目です。自社の扱いは所轄の労働局(需給調整事業部門)に確認してください。
結論:派遣労働者ごとに作る。記載事項は多い
派遣元管理台帳は、労働者派遣法37条に根拠があります。派遣元事業主は、派遣就業に関し、派遣労働者ごとに派遣元管理台帳を作成し、派遣労働者の氏名その他厚生労働省令で定める事項を記載しなければならないとされています。
| 内容 | |
|---|---|
| 根拠 | 労働者派遣法37条 |
| 記載事項 | 法37条1項1号〜13号ほか、施行規則31条 |
| 作る単位 | 派遣労働者ごと |
| 様式 | 法令上の定めなし(厚生労働省が記入例を公開) |
| 保存 | 派遣終了の日から3年間 |
様式は定められていません。厚生労働省が記入例を公開しているので、それに沿って自社で作る形になります。事業所ごとに作成し、備え付けます。労働局の調査で提示を求められる書類です。
記載事項は改正で増えてきました。古い様式を使っていると、追加された項目が欠けます。とくに派遣労働者の同一労働同一賃金に関する改正(2020年4月施行)で、協定対象派遣労働者であるか否かの別などが加わっています。
記載事項を2つに分けて考える
台帳が埋まらない理由は、性質の違う項目が1枚に並んでいることです。分けると手が動きます。
この分け方を様式の側にも反映しておくと楽になります。上半分に契約時の項目、下半分に随時更新の欄という形にしておけば、毎月開いて下半分だけ埋めることになります。
契約が決まったら転記するもの
派遣先との労働者派遣契約と、本人との雇用契約から写す項目です。契約開始時に一度埋めれば、原則としてそのままです。
| 項目 |
|---|
| 派遣労働者の氏名 |
| 協定対象派遣労働者であるか否かの別 |
| 無期雇用派遣労働者か有期雇用派遣労働者かの別 |
| 60歳以上の者であるか否かの別 |
| 派遣先の氏名または名称 |
| 派遣先の事業所の名称・所在地、組織単位 |
| 業務の内容 |
| 責任の程度 |
| 派遣期間と就業する日 |
| 始業・終業の時刻、休憩時間 |
| 派遣労働者から申出を受けた苦情の処理に関する事項 |
| 紹介予定派遣に係る事項(該当する場合) |
| 派遣元責任者・派遣先責任者の氏名 |
| 期間制限のない業務である場合はその旨 |
60歳以上の者であるか否かの別は、期間制限の例外に関わる項目です。60歳以上の派遣労働者は事業所単位・個人単位の期間制限の対象外とされているため、この欄が空欄だと期限の判定ができません。契約時に埋める項目のなかでも、あとから効いてくる欄になります。
就業してから随時足すもの
毎月、あるいは事実が起きたときに書き足す項目です。ここが止まると台帳が使えなくなります。
| 項目 | 書くタイミング |
|---|---|
| 就業状態(就業した日、始業・終業の時刻、休憩時間) | 毎月 |
| 派遣労働者から申出を受けた苦情の処理状況 | 苦情があったとき |
| 教育訓練を行った日時・内容 | 訓練を実施したとき |
| キャリアコンサルティングを行った日・内容 | 実施したとき |
| 雇用安定措置の内容 | 措置を講じたとき |
| 派遣先で労働・社会保険に加入していない場合はその理由 | 該当するとき |
教育訓練とキャリアコンサルティングの記録が、いちばん抜けます。実施したこと自体は覚えていても、台帳に転記する手順が無いと残りません。研修の受講記録から月次で台帳へ写す流れを作っておきます。
就業状態は月1回以上の通知とセット
派遣元管理台帳の「就業状態」の欄は、派遣先からの通知が元になります。
労働者派遣法42条3項で、派遣先は派遣先管理台帳の記載事項のうち一定のものを、1か月に1回以上、一定の期日を定めて派遣元事業主に通知しなければならないとされています。
| 役割 | |
|---|---|
| 派遣先 | 派遣先管理台帳に就業状態を記載し、月1回以上派遣元へ通知する |
| 派遣元 | 通知を受けて、派遣元管理台帳の就業状態の欄を埋める |
つまり、派遣元の台帳が埋まらない原因は、派遣先からの通知が来ていないことにある場合があります。通知が来ていないなら、まず派遣先に求めるところから始まります。
一般には、月次の請求業務と同じタイミングで通知を受け取り、そのデータで台帳を更新する運用が取られています。請求の締めと台帳の更新を同じ日にすると、片方だけ進む状態が消えます。
派遣先管理台帳との違い
名前が似ているので混同されますが、作る人も根拠の条文も違います。
| 派遣元管理台帳 | 派遣先管理台帳 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 労働者派遣法37条 | 労働者派遣法42条 |
| 作る人 | 派遣元事業主(派遣会社) | 派遣先(受け入れる会社) |
| 作る単位 | 派遣労働者ごと | 派遣労働者ごと |
| 通知の義務 | なし | 月1回以上、派遣元へ通知 |
| 保存 | 派遣終了の日から3年 | 派遣終了の日から3年 |
人を受け入れている側が作るのは派遣先管理台帳です。自社が派遣会社でなく、派遣スタッフを受け入れているだけなら、作るのは派遣先管理台帳のほうになります。
どちらも派遣が終わった日から3年という同じ保存期間です。ただし起算日は「派遣終了の日」なので、契約が更新され続けているあいだは始まりません。
自社が派遣会社であり、かつ派遣を受け入れてもいる場合は、両方を作ることになります。名前が似ているので、ファイル名に「派遣元」「派遣先」を必ず入れて分けておくと、取り違えが起きません。
労働者名簿や賃金台帳とも別
派遣元事業主は、派遣元管理台帳に加えて、労働基準法の法定三帳簿も必要です。派遣労働者は派遣元の労働者なので、労働者名簿・賃金台帳・出勤簿は派遣元が作ります。
| 書類 | 作る人 | 根拠 |
|---|---|---|
| 派遣元管理台帳 | 派遣元 | 労働者派遣法37条 |
| 派遣先管理台帳 | 派遣先 | 労働者派遣法42条 |
| 労働者名簿 | 派遣元 | 労働基準法107条 |
| 賃金台帳 | 派遣元 | 労働基準法108条 |
| 出勤簿 | 派遣元 | 労働基準法109条 |
5つになります。労働基準法の側は法定三帳簿とはにまとめています。台帳をまとめてよいかは条文に明文が無いため、実務では別に持つのが一般的です。
保存は派遣終了から3年
保存期間は、派遣終了の日から3年間とされています。労働基準法の帳簿(5年・当分の間3年)とは根拠が違うので、年数がそろっているのは偶然です。
| 書類 | 保存期間 | 起算日 |
|---|---|---|
| 派遣元管理台帳 | 3年 | 派遣終了の日 |
| 労働者名簿 | 5年(当分の間3年) | 退職・解雇・死亡の日 |
| 賃金台帳 | 5年(当分の間3年) | 最後の記入をした日 |
「派遣終了の日」は、その派遣先への派遣が終わった日です。本人が派遣元を退職した日ではありません。同じ人が複数の派遣先へ行った場合、派遣先ごとに終了の日が違います。
そのため、台帳は派遣先ごと・契約ごとに区切って持つほうが管理しやすくなります。1人1枚に全部の派遣先を書き足していくと、どの行がいつまで必要なのかが分からなくなります。
労働基準法の帳簿は5年で運用するほうが安全なので、派遣元管理台帳も5年で持っておくと、処分の判断を1つにまとめられます。保存期間の全体像は法定帳簿の保存期間にまとめています。
毎月触るのは4か所だけ
記載事項を並べると多く見えますが、契約時に埋めた項目は原則そのままです。毎月の作業は4か所に絞れます。
| 毎月触る欄 | 元になる資料 |
|---|---|
| 就業状態(就業日・始業終業・休憩) | 派遣先からの月次通知 |
| 苦情の処理状況 | 苦情の受付記録 |
| 教育訓練の日時・内容 | 研修の受講記録 |
| キャリアコンサルティングの日・内容 | 面談の記録 |
4か所とも、元になる資料が別にあります。台帳に直接書き込もうとすると止まるので、元の資料から月次で写す形にします。
派遣先からの通知が来ないときは、派遣先管理台帳が作られていない可能性があります。受け入れ側の義務なので、契約の段階で通知の期日(毎月◯日まで)を決めておくと、毎月催促する手間が消えます。
月次の流れに載せる
- 派遣先から就業状態の通知を受け取る(月1回以上)
- 請求データを作る
- 同じデータで台帳の就業状態を更新する
- その月に実施した研修・面談を台帳へ写す
- 苦情があった分を台帳へ写す
請求と同じ日にやるのが要点です。請求は必ずやる作業なので、そこに乗せると台帳だけ止まることがなくなります。
契約が更新されたときは、契約時に埋める項目のうち期間・組織単位・業務の内容が変わっていないかを見ます。同じ派遣先でも部署が変わると組織単位が変わります。
期間制限との関係
派遣元管理台帳には、期間制限に関する項目が入っています。ここが台帳を「記録」から「管理の道具」に変えるところです。
| 制限 | 内容 |
|---|---|
| 事業所単位 | 同一の派遣先事業所に派遣できるのは原則3年(意見聴取で延長可) |
| 個人単位 | 同一の組織単位に同一の派遣労働者を派遣できるのは3年 |
台帳に「組織単位」を書くのは、個人単位の3年を数えるためです。組織単位が変われば個人単位の期間はリセットされる扱いなので、台帳の組織単位の欄が正確でないと、いつ3年になるのかが分かりません。
一般には、台帳に抵触日(期間制限に抵触することとなる最初の日)を1列足しておく運用が取られています。法令上の記載事項ではありませんが、足しておくと期限を切らさずに済みます。
雇用安定措置の記録
個人単位の期間制限に達する見込みの派遣労働者には、雇用安定措置を講ずることが求められます。台帳にはその内容を記載します。
厚生労働省の記入例では、実施した措置の日付・内容とその結果を記載し、派遣先に直接雇用の依頼を行った場合は派遣先の受入れの可否も記載する、とされています。
- 派遣先への直接雇用の依頼(受入れの可否まで書く)
- 新たな派遣先の提供
- 派遣元での無期雇用
- その他雇用の安定を図るための措置
「依頼した」で止めず、結果まで書くのが要点です。断られた事実も記録になります。
よくある質問
様式は決まっていますか
法令上の定めはありません。厚生労働省が記入例を公開しているので、それに沿って自社で作るのが確実です。記載事項が多いので、抜けを防ぐために既成の様式を使う事業者も多くあります。
電子データで持ってよいですか
構わないとされています。求められたときに出せる状態であることが条件です。派遣元管理台帳は労働局の調査で提示を求められる書類なので、事業所ごとに出せるようにしておきます。
派遣スタッフを受け入れている側です。何を作りますか
派遣先管理台帳(労働者派遣法42条)です。派遣元管理台帳は派遣会社が作るものです。あわせて、月1回以上、就業状態を派遣元へ通知する義務があります。
教育訓練の記録はどこまで書きますか
行った日時と内容を記載します。キャリアアップに資する教育訓練の実施は派遣元事業主の義務とされているため、実施したことを示せる記録が要ります。研修の受講記録から台帳へ転記する流れを作っておきます。
1人で複数の派遣先に行っています
派遣先ごとに記載します。「派遣終了の日」が派遣先ごとに違うため、契約単位で区切って持つほうが管理しやすくなります。
抵触日はどう数えますか
事業所単位と個人単位で別に数えます。事業所単位は派遣先の事業所への受入開始から、個人単位は同一の組織単位への派遣開始からそれぞれ3年です。数え方に迷う場合は、所轄の労働局(需給調整事業部門)に確認してください。台帳の組織単位の欄が正確でないと、個人単位の数え直しができません。
日雇いの派遣でも台帳は必要ですか
派遣労働者ごとに作成するものなので必要です。日数が短くても記載事項は同じです。件数が多くなるため、契約時に埋まる項目をあらかじめ入れた雛形を用意しておくのが現実的です。
苦情の欄は何も無ければ空欄でよいですか
苦情の申出が無ければ書くことはありません。ただし、苦情の処理に関する事項(申出先や処理の方法)は契約時に決めて記載する項目です。処理の「状況」の欄が空欄でも、処理の「方法」の欄は埋まっている形になります。
まとめ
派遣元管理台帳は、労働者派遣法37条に基づき、派遣元事業主が派遣労働者ごとに作る台帳です。様式は定められておらず、厚生労働省の記入例に沿って自社で作ります。
記載事項が多いのは、契約時に転記するものと就業してから随時足すものが1枚に並んでいるからです。分けて考えると、毎月触るのは就業状態・苦情の処理状況・教育訓練・キャリアコンサルティングの4か所だけになります。
就業状態の欄は、派遣先からの月1回以上の通知が元になります。台帳が埋まらないときは、通知が来ていないことが原因の場合があります。請求の締めと同じ日に更新する運用にすると止まりません。
派遣先管理台帳とは、作る人も条文も別です。受け入れる側が作るのは派遣先管理台帳で、そちらには月1回以上の通知義務が付きます。
保存は派遣終了の日から3年です。労働基準法の帳簿を5年で運用しているなら、こちらも5年に合わせておくと処分の判断が1つで済みます。
台帳に抵触日を1列足しておくと、期間制限の管理まで同じ1枚でできます。法令上の記載事項ではありませんが、組織単位を書く目的が個人単位の3年を数えることなので、そこまで書いておくほうが台帳が働きます。
記載事項は法改正で追加されてきた項目です。自社の扱いは、所轄の労働局(需給調整事業部門)に確認してください。