古物台帳の書き方|その都度書く5項目と3年保存
目次
古物台帳は、古物商が取引のたびに書く帳簿です。ほかの業法の帳簿と違うところが2つあります。相手方の年齢まで書くことと、なくしたら警察署へ届け出る義務があることです。
この記事では、古物台帳を、いつ書くのか、5つの記載事項、3年という保存期間、なくしたときの届出の順に整理します。台帳を止めないコツは、取引が終わった時点でその場の人が書く**形にしておくことです。後からまとめて書く運用にすると、特徴の欄と本人確認の区分から先に空欄になります。売却の記録は、販売システムから台帳へ流す仕組みにしておくと抜けません。
書かなくてよい取引の範囲は国家公安委員会規則で定められています。自社の扱いは営業所の所在地を管轄する警察署(生活安全課)に確認してください。**
結論:受け取ったときと引き渡したとき、その都度
古物営業法16条で、古物商は、売買もしくは交換のため、または売買もしくは交換の委託により、古物を受け取り、または引き渡したときは、その都度、次に掲げる事項を帳簿等に記載し、または電磁的方法により記録しておかなければならないとされています。
| 内容 | |
|---|---|
| 根拠 | 古物営業法16条(古物商)、17条(古物市場主) |
| 書くタイミング | その都度 |
| 対象 | 受け取ったとき(仕入れ)と、引き渡したとき(売却) |
| 様式 | 帳簿、または国家公安委員会規則で定めるこれに準ずる書類 |
| 保存 | 最終の記載をした日から3年間(法18条) |
「受け取り、または引き渡したとき」の両方が対象です。買ったときだけ書く運用になっていると、売ったときの記録が丸ごと抜けます。買取の伝票は残っているのに台帳の引き渡し欄が空、という形がいちばん多く見つかります。
そして、条文にはただし書きがあります。15条2項各号に掲げる場合と、記載の必要のないものとして国家公安委員会規則で定める古物を引き渡した場合は、この限りでないとされています。すべての取引を書くわけではありません。
5つの記載事項
古物営業法16条が挙げているのは次の5つです。
| 記載事項 | |
|---|---|
| 1 | 取引の年月日 |
| 2 | 古物の品目及び数量 |
| 3 | 古物の特徴 |
| 4 | 相手方の住所、氏名、職業及び年齢 |
| 5 | 本人確認のためにとった措置の区分(一定の措置は区分及び方法) |
4つ目の「職業及び年齢」が、ほかの帳簿には無い項目です。労働者名簿にも従業者名簿にも「職業」「年齢」は出てきません。古物営業法が盗品の流通を防ぐための法律であることが、この欄に表れています。
「古物の特徴」に何を書くか
品目ごとに書く項目をあらかじめ決めておくと、担当者によって粒度が変わりません。台帳の凡例に「時計はメーカー・型番・刻印」のように書いておけば、新しく入った人も同じ粒度で書けます。
いちばん手が止まるのが3つ目です。品目と数量だけでは特定できないので、個体を識別できる情報を書きます。
| 品目 | 特徴として書くもの |
|---|---|
| 時計・貴金属 | メーカー、型番、刻印、シリアル番号 |
| 自動車・オートバイ | 車台番号、登録番号 |
| カメラ・パソコン | メーカー、型番、製造番号 |
| 衣類・バッグ | ブランド、色、サイズ、型番 |
| 書籍・ゲーム | タイトル、版 |
製造番号やシリアル番号がある品目は、それを書くのが確実です。あとで品触れを受けたときに、自社が扱ったものかを照合できるのは、この欄だけになります。
本人確認の区分も書く
5つ目は、相手が誰かを確かめた方法を記録する欄です。古物営業法15条1項で、買い受けるときなどに相手方の確認をすることが求められていて、その措置の区分を台帳に残します。
一定の措置については、区分に加えて方法まで書くこととされています。非対面の取引が増えているぶん、ここの運用は複雑になっています。どの方法を使ったかを社内で記号にして、凡例を台帳に添えておくと書きやすくなります。
保存は最終の記載から3年
古物営業法18条1項で、帳簿等を最終の記載をした日から3年間、営業所もしくは古物市場に備え付けることとされています。電磁的方法による記録の場合は、記録をした日から3年間、営業所において直ちに書面に表示することができるようにして保存するという書き方です。
| 持ち方 | 起算日 | 求められること |
|---|---|---|
| 紙の帳簿 | 最終の記載をした日 | 営業所に備え付ける |
| 電磁的記録 | 記録をした日 | 営業所で直ちに書面に表示できる |
「直ちに書面に表示することができる」という条件が付いているのが、電子で持つ場合の要点です。クラウドのシステムで管理していても、営業所ですぐ印刷できる状態であれば足ります。
起算日がほかの帳簿と違う
年度で区切ってファイルを分けること自体は構いません。その場合も、起算日はそのファイルに最後に書いた日です。年度末で閉じて数え始める宅建業や産廃の帳簿とは、ここが違います。取り違えると3年が足りなくなります。
同じ「業法の帳簿」でも、起算日の考え方はばらばらです。
| 帳簿 | 保存期間 | 起算日 |
|---|---|---|
| 古物台帳 | 3年 | 最終の記載をした日 |
| 宅建業の帳簿 | 5年(自ら売主の新築住宅は10年) | 各事業年度の末日に閉鎖した後 |
| 宅建業の従業者名簿 | 10年 | 最終の記載をした日 |
| 産業廃棄物処理業者の帳簿 | 5年 | 1年ごとに閉鎖した後 |
古物台帳は「閉鎖」という考え方を取りません。年度で区切らず、最後に書いた日から数えます。年度ごとにファイルを分けている場合でも、そのファイルに最後に書いた日が起算日になります。
保存期間の全体像は書類の保存年数一覧の作り方にまとめています。
なくしたら警察署へ届け出る
古物台帳にだけある義務です。古物営業法18条2項で、帳簿等または電磁的方法による記録をき損し、もしくは亡失し、またはこれらが滅失したときは、直ちに営業所または古物市場の所在地の所轄警察署長に届け出なければならないとされています。
| 起きたこと | やること |
|---|---|
| 紙の台帳を破損した | 直ちに所轄警察署長へ届出 |
| 紛失した | 同上 |
| 火災・水害などで失われた | 同上 |
| データが消えた(電磁的記録) | 同上 |
「直ちに」とされています。ほかの帳簿には無い義務なので、社内の事故対応の手順に入れていないことが多いところです。
データで持っている場合は、バックアップの有無が実務上の分かれ目になります。復元できるなら滅失には当たらないと考えられますが、判断は所轄の警察署に確認してください。
バックアップを取っているかは、電子で持つなら先に決めておきます。復元できる状態なら、データが消えても滅失に当たらないと考えられますが、そこも含めて所轄の警察署に確認しておくと、事故のときに迷いません。
品触れは別に6か月保存
台帳とは別に、品触れの書面にも保存の定めがあります。古物営業法19条2項で、品触れを受けたときは書面に到達の日付を記載し、その日から6か月間保存することとされています。
- 品触れの書面 … 到達の日付を記載して6か月保存
- 古物台帳 … 最終の記載から3年保存
2つは別のファイルで持ちます。期間も起算日も違うので、同じ綴りに入れると処分のときに迷います。
台帳を止めないための決めごと
「その都度」書く帳簿なので、後からまとめて書く運用にすると必ず崩れます。
| 決めること | 決め方の例 |
|---|---|
| 誰が書くか | 受け取った人・引き渡した人がその場で |
| いつ書くか | 取引が終わった時点 |
| どこに書くか | 営業所ごとに1つ(複数の営業所で1つにしない) |
| 特徴の書き方 | 品目ごとに書く項目を決めておく |
| 本人確認の区分 | 記号と凡例を決めておく |
営業所ごとに備えるのが条文の求めるところです。営業所を増やしたときは、その営業所の台帳を新しく起こします。本店で一括管理する形にすると、営業所に備え付けていない状態になります。
一般には、買取と販売で帳簿を分けている事業者もあります。分けても構いませんが、どちらも「その都度」であることと、3年の保存が必要であることは同じです。
書かなくてよい取引の確認を先にする
ただし書きで、記載の必要のない古物が国家公安委員会規則で定められています。自社が扱う品目がこれに当たるかを先に確認しておくと、毎回迷わずに済みます。
金額の基準が設けられている品目もあるとされています。該当するかどうかは品目と金額の組み合わせで決まるため、扱う品目の一覧を持って、営業所の所在地を管轄する警察署(生活安全課)に確認するのが確実です。
非対面の取引で変わるところ
インターネットを使った買取が増えて、相手方を目の前で確認できない取引が実務の中心になっている事業者もあります。古物営業法15条1項は、相手方の確認の方法をいくつか定めていて、非対面向けの措置も含まれています。
台帳の側で変わるのは、5つ目の欄です。どの措置を使ったかの区分に加えて、一定の措置については方法まで書くことになります。
| 取引の形 | 台帳に残すこと |
|---|---|
| 対面で買い受けた | 確認した書類の種類と区分 |
| 郵送で送ってもらった | 措置の区分と方法 |
| 本人限定受取郵便を使った | 同上 |
| 電子的な方法で確認した | 同上 |
記号だけにすると、あとで何をしたか分からなくなります。凡例を台帳の先頭に置いて、記号と実際の措置を対応させておきます。
社内で記号を決めておく
毎回文章で書くのは続きません。一般には、次のように記号を決めておく形が取られています。
- 対面で運転免許証を確認 → A1
- 対面でマイナンバーカードを確認 → A2
- 本人限定受取郵便 → B1
- 電子的な確認 → C1
凡例は台帳と同じファイルに入れておきます。別紙にすると、台帳だけが3年残って凡例が消えます。区分の付け方が変わったときは、いつから変えたかも残しておきます。
立入検査で見られるところ
古物台帳は、警察の立入検査で提示を求められる書類です。そろっているかよりも、取引の実態と合っているかが見られます。
| 見られ方 | 指摘されやすい形 |
|---|---|
| 在庫と台帳を突き合わせる | 台帳に無い品物が店にある |
| 特徴の欄を見る | 「腕時計」だけで個体が特定できない |
| 本人確認の区分を見る | 空欄、または全部同じ記号 |
| 引き渡しの記録を見る | 仕入れだけ書いて売却が無い |
2つ目と4つ目が多い形です。特徴の欄は、品目ごとに書く項目を決めておけば埋まります。売却の記録は、レジや販売システムから台帳へ流す仕組みにしておくと止まりません。
品触れを受けたときに照合できるのも、特徴の欄が埋まっている場合だけです。盗品が自社を通っていないかを自分で確かめられるという意味で、この欄は自社を守る欄でもあります。
よくある質問
買ったときだけ書けばよいですか
いいえ。条文は「受け取り、又は引き渡したとき」としています。仕入れも売却も対象です。買取専門で販売をしない事業者でも、引き渡す場面があれば書きます。
エクセルで作ってよいですか
構わないとされています。古物営業法16条は「帳簿若しくは国家公安委員会規則で定めるこれに準ずる書類に記載をし、又は電磁的方法により記録をしておかなければならない」としています。営業所で直ちに書面に表示できる状態にしておきます。
相手方の年齢はどこまで確認しますか
記載事項として「職業及び年齢」が挙げられています。本人確認の措置と結びつく部分なので、確認した書類にもとづいて記載するのが基本です。運用は所轄の警察署に確認してください。
3年を過ぎたら捨ててよいですか
最終の記載をした日から3年を過ぎていれば、法令上の保存義務は満たしています。ただし個人情報が並ぶ帳簿なので、処分のしかたは決めておきます。処分した年月を1行残しておくと、後から所在を聞かれたときに答えられます。
営業所が複数あります
営業所ごとに備え付けるものとされています。本店で一括して作成していても、その営業所で出せる状態にしておきます。電磁的記録なら、営業所から表示できるようにしておけば足ります。
古物市場主も同じ台帳ですか
記載事項が少し違います。古物営業法17条で、古物市場主は16条1号から3号まで(取引の年月日・品目及び数量・特徴)と、取引の当事者の住所及び氏名を記載するとされています。職業と年齢は挙がっていません。保存期間は同じ3年です。
買取の金額は台帳に書きますか
古物営業法16条の記載事項に金額は挙がっていません。ただし会計・税務の側では取引の記録が必要なので、実務では金額欄を足している台帳が多くあります。足すこと自体は問題ありません。
台帳を見せてほしいと言われました
立入検査では提示を求められます。取引の相手方からの閲覧に応じる定めは、古物営業法にはありません(宅建業の従業者名簿にはあります)。求められた場合の対応は、所轄の警察署に確認してください。
まとめ
古物台帳は、古物営業法16条に基づいて、古物を受け取ったときと引き渡したときのその都度書く帳簿です。買ったときだけの運用になっていると、売却の記録が抜けます。
記載事項は5つ。取引の年月日、品目及び数量、古物の特徴、相手方の住所・氏名・職業及び年齢、本人確認の措置の区分です。職業と年齢が入るのは、盗品の流通を防ぐという法律の目的が表れている部分になります。
保存は最終の記載をした日から3年間で、営業所に備え付けます。電磁的記録なら、記録をした日から3年間、営業所で直ちに書面に表示できる状態にしておきます。「閉鎖」という考え方を取らないところが、宅建業や産廃の帳簿と違います。
そして、古物台帳にだけなくしたときの届出義務があります。き損・亡失・滅失したときは、直ちに所轄警察署長へ届け出るとされています。社内の事故対応の手順に入れておきます。
書かなくてよい取引の範囲は国家公安委員会規則で定められています。自社の扱いは、営業所の所在地を管轄する警察署(生活安全課)に確認してください。