宿泊者名簿の書き方|連絡先の追加と3年保存
目次
宿泊者名簿は、2023年12月13日の改正で記載事項が変わりました。「連絡先」が追加され、「職業」が削除されています。古い様式を使い続けていると、要らない項目を集めたまま、要る項目が抜けている状態になります。
もう1つ間違えやすいのが保存期間の起算日です。3年の起算日は「宿泊日」ではなく「作成の日」とされています。この記事では、宿泊者名簿を、根拠と記載事項、2023年の改正、3年の起算日、代表者だけでよいのか、民泊との違いの順に整理します。運用は自治体で細かく違います。自社の扱いは施設の所在地を管轄する保健所に確認してください。
結論:氏名・住所・連絡先が軸
旅館業法6条1項で、営業者は、厚生労働省令で定めるところにより旅館業の施設その他の厚生労働省令で定める場所に宿泊者名簿を備え、これに宿泊者の氏名、住所、連絡先その他の厚生労働省令で定める事項を記載し、都道府県知事の要求があったときは、これを提出しなければならないとされています。
| 内容 | |
|---|---|
| 根拠 | 旅館業法6条、同法施行規則4条の2 |
| 備える場所 | 施設、または営業者の事務所 |
| 軸になる記載事項 | 氏名・住所・連絡先 |
| 保存 | 作成の日から3年間 |
| 提出 | 都道府県知事の要求があったときは提出する |
宿泊者の側にも義務があります。同条2項で、宿泊者は、営業者から請求があったときは、前項に規定する事項を告げなければならないとされています。名簿の記載を求めるのは、宿泊者への協力のお願いではなく、法律上の根拠がある行為だということになります。
これは実務で効きます。記帳を断られたときに、「法律で決まっているので」と説明できる根拠がここにあります。
2023年12月の改正で変わったところ
厚生労働省のパンフレット「令和5年12月13日から 旅館業法が変わります!」で、宿泊者名簿の記載事項として「連絡先」が追加され、「職業」が削除されたことが案内されています。
| 改正前 | 改正後 | |
|---|---|---|
| 氏名 | 必要 | 必要 |
| 住所 | 必要 | 必要 |
| 職業 | 必要 | 削除 |
| 連絡先 | なし | 追加 |
| 国籍・旅券番号(日本国内に住所を有しない外国人) | 必要 | 必要 |
「職業」を集め続けている様式が、いまも出回っています。要らなくなった個人情報を集めている状態になるので、様式を差し替えます。
逆に、「連絡先」が抜けている様式も残っています。こちらは記載事項を満たしていない状態です。手元の様式に職業欄があるなら2023年12月より前のもの、と考えて見直すのが早い判断になります。
改正の前後で作った名簿が混ざります。2023年12月より前の分は職業欄が埋まっていて、それ以降の分は連絡先が埋まっている、という状態になります。束の表紙に年月を書いておけば、どちらの様式かは見れば分かるので、過去の分を作り直す必要はありません。
保存場所も見直された
あわせて、保存の場所と期間についても整理が行われています。施設、または営業者の事務所に保存する形です。複数の施設を持っている場合、各施設に置くか、事務所にまとめるかを決めておきます。
自治体によって案内の表現が違うところがあるため、施設の所在地を管轄する保健所に一度確認しておくと確実です。
3年の起算日は「作成の日」
旅館業法施行規則4条の2で、宿泊者名簿は作成の日から3年間保存することとされています。
起算日を「宿泊日」だと思っている運用が多くあります。チェックイン日を一律の起算日にすると、実際の作成日とずれることがあります。
| 帳簿 | 保存期間 | 起算日 |
|---|---|---|
| 宿泊者名簿 | 3年 | 作成の日 |
| 古物台帳 | 3年 | 最終の記載をした日 |
| 宅建業の帳簿 | 5年 | 各事業年度の末日に閉鎖した後 |
| 警備員名簿 | 1年 | 退職の日 |
同じ3年でも、古物台帳とは起算日が違います。古物は「最終の記載」、宿泊は「作成」です。どちらも扱っている事業者は多くありませんが、保存年数の一覧を1枚にまとめるときに必ずぶつかります。1冊にまとめて綴じている事業者はいないと思いますが、保存年数の一覧を作るときは起算日の列を必ず持たせます。
実務としては、日ごと・月ごとにまとめて綴じて、その束の作成日を表紙に書く形が扱いやすくなります。1件ずつ起算日を管理するのは現実的ではありません。
都道府県知事の要求があったときは提出するという条文なので、「その場で見せる」だけでなく「出す」ことまで求められます。電子で持つなら、印刷かデータで渡せる形にしておきます。
電子で持つ場合
紙でなければならない定めはありません。予約管理システムやPMSで持っている施設が一般的です。ただし、
- 都道府県知事の要求があったときに提出できる
- 3年分が読める形で残っている
- 施設または事務所から出せる
3つ目が、システムを乗り換えるときに問題になります。解約の前に、保存期間が残っている分を書き出しておきます。
代表者だけでよいのか
団体客や家族連れのときに、代表者1名だけ書けばよいのかが実務でいちばん迷うところです。
条文は「宿泊者の氏名、住所、連絡先」としています。宿泊する人についての名簿なので、同行者も含めて記載するのが原則という整理になります。
| 場面 | 一般的な扱い |
|---|---|
| 家族4人で1室 | 4人とも記載する |
| 団体10名 | 10名とも記載する |
| 乳幼児 | 自治体により扱いが異なる |
| 同行者の連絡先 | 代表者と同じでよいかは自治体の案内による |
名簿の欄を代表者の行と同行者の行に分けて用意しておくと、現場の判断が「何人分書くか」だけになります。空欄が残っていれば聞き漏らしだと分かるので、埋め忘れも見つけやすくなります。
乳幼児や同行者の連絡先の扱いは、自治体によって案内が違います。大阪府、秋田県、青森市、中央区など、各自治体が記載の徹底についてのリーフレットを出しているので、施設の所在地の案内を1回見ておくのが確実です。
乳幼児まで書くかどうかは、自治体の案内で扱いが分かれるところです。名簿の欄に「同行者」の行をあらかじめ用意しておくと、書く・書かないの判断だけで済みます。
外国人宿泊者の追加項目
旅券の写しを保存する場合は、その保存期間も名簿と同じ3年として扱っておくと管理が1本になります。名簿の束と一緒に綴じておけば、処分の判断も同じ日にできます。
日本国内に住所を有しない外国人については、国籍及び旅券番号の記載と、旅券の写しの保存が求められる扱いがあります。テロの防止や感染症対策の観点から、記載の徹底が繰り返し案内されている項目です。
- 日本国内に住所がある外国人 … 日本人と同じ項目
- 日本国内に住所が無い外国人 … 国籍・旅券番号を追加
「日本国内に住所があるか」で分かれます。在留カードを持っている居住者は追加項目の対象外という整理になります。国籍で分けるのではないところが、間違えやすい点です。判断に迷う場合は保健所に確認してください。
民泊(住宅宿泊事業)は別の法律
旅館業と民泊の両方を営んでいる事業者は、どちらの名簿かが分かる形にしておきます。施設ごとにファイルを分け、表紙に根拠の法律を書いておけば取り違えません。
同じ「宿泊者名簿」という名前でも、旅館業法と住宅宿泊事業法(民泊新法)は別の法律です。
| 旅館業 | 住宅宿泊事業(民泊) | |
|---|---|---|
| 根拠 | 旅館業法6条 | 住宅宿泊事業法8条 |
| 届出・許可 | 都道府県知事等の許可 | 都道府県知事等への届出 |
| 名簿の保存 | 3年 | 3年 |
| 備える場所 | 施設または事務所 | 届出住宅または事業者の営業所等 |
保存期間はどちらも3年ですが、根拠の条文も、備える場所の考え方も別です。両方を営んでいる場合は、名簿を分けて持ちます。
なお、住宅宿泊事業では宿泊者名簿のほかに、定期的な報告(宿泊日数などの届出)が求められます。名簿だけでは足りないところが、旅館業と違う点になります。
記帳を止めないチェックインの流れ
宿泊者名簿は、チェックインの動線に乗っていないと崩れます。後から電話で聞き直すことになり、結局埋まりません。
| 段階 | やること |
|---|---|
| 予約のとき | 代表者の氏名・住所・連絡先を取る |
| 事前に | 同行者の氏名を入力してもらう(オンラインチェックイン) |
| チェックイン | 不足分を記入してもらう。本人確認の要否を確認 |
| 当日中 | 名簿を作成し、束に綴じる |
| 月末 | 束の表紙に作成日と処分できる年を書く |
予約の段階で連絡先を取っておくのが要点です。改正で連絡先が記載事項になったので、チェックインのときにゼロから聞くと時間がかかります。予約システムの必須項目に入れておけば、その場の記入は最小で済みます。
オンラインで入力してもらった内容が、そのまま名簿の記載事項を満たしているかを一度確かめておきます。予約システムの項目が「氏名・電話番号」だけだと、住所が抜けます。改正で連絡先が加わったぶん、項目の見直しが要る施設が多いところです。
非対面チェックインのとき
無人チェックインやスマートロックを使う施設が増えています。名簿の記載義務は変わりません。事前のオンライン入力で記載事項を満たす形にして、施設側で確認できる状態にしておきます。
自治体によっては、非対面で受け付ける場合の要件(本人確認の方法、緊急時の対応体制など)を案内していることがあります。導入の前に、施設の所在地を管轄する保健所に確認してください。
3年分をどう置くか
処分するときは、個人情報が並ぶ名簿であることに注意します。溶解処理か細断にして、処分した年月と対象を1行残しておくと、後から所在を聞かれたときに答えられます。
1日1束にすると、3年で1,000束を超えます。月ごとにまとめるのが現実的です。
| 単位 | 3年分の量 | 向いている規模 |
|---|---|---|
| 日ごと | 1,000束超 | 小規模でも重い |
| 月ごと | 36束 | 扱いやすい |
| 年ごと | 3束 | 探すのに時間がかかる |
月ごとの束にして、表紙に「2026年9月分/作成 2026-09-30/処分可 2029-10以降」のように書いておきます。起算日ではなく、処分できる年月を書くのがコツです。計算を最初の1回で済ませられます。
電子で持つ場合も同じ考え方で、月ごとのフォルダかファイルに分けておくと、期間が過ぎた分をまとめて処分できます。
書類ごとの保存年数をまとめた一覧の作り方は書類の保存年数一覧の作り方にまとめています。
よくある質問
宿泊者が記帳を断りました
旅館業法6条2項で、宿泊者は、営業者から請求があったときは告げなければならないとされています。法律上の根拠があることを説明したうえで、それでも応じない場合の対応は、施設の所在地を管轄する保健所に確認してください。
職業欄がある様式を使っています
2023年12月13日の改正で職業は削除されました。要らなくなった個人情報を集めている状態なので、様式を差し替えます。あわせて「連絡先」の欄があるかを確認してください。
名簿の様式は決まっていますか
法令上の決まった様式はありません。記載事項がそろっていれば自社の形で構いません。自治体がリーフレットに参考の様式を載せていることがあるので、施設の所在地の案内を見てから作ると早く済みます。
連絡先は何を書きますか
電話番号やメールアドレスなど、連絡が取れるものを記載します。細かい運用は自治体の案内によって異なるため、施設の所在地の保健所に確認するのが確実です。
3年はいつから数えますか
作成の日から3年です。宿泊日ではありません。日ごと・月ごとに束にして、束の表紙に作成日と処分できる年を書いておくと、判断が1回で済みます。
電子の予約システムで持ってよいですか
構わないと考えられます。都道府県知事の要求があったときに提出できることと、3年分が読める形で残っていることが条件になります。システムを乗り換える前に書き出しておきます。
名簿を紛失したらどうしますか
旅館業法には、古物営業法のような届出の義務は定められていません。ただし個人情報が含まれるため、漏えいの場合は個人情報保護法に基づく対応が必要になることがあります。まず保健所へ相談するのが確実です。
警察から名簿の提示を求められました
旅館業法6条1項は都道府県知事の要求について定めています。警察からの照会については、根拠となる手続きが別にあります。その場で判断せず、施設の所在地を管轄する保健所か、顧問の専門家に確認してから対応するのが安全です。
まとめ
宿泊者名簿は、旅館業法6条に基づいて施設または営業者の事務所に備える名簿です。軸になる記載事項は氏名・住所・連絡先で、2023年12月13日の改正で「連絡先」が追加され「職業」が削除されました。
手元の様式に職業欄があるなら、2023年12月より前のものです。要らなくなった項目を集めたまま、要る項目が抜けている状態になるので、差し替えます。
保存は作成の日から3年間です。起算日が「宿泊日」ではないところが間違えやすい点で、同じ3年でも古物台帳(最終の記載をした日)とは違います。日ごと・月ごとに束にして、表紙に作成日と処分できる年を書いておくのが扱いやすい形です。
団体や家族の場合は、同行者も含めて記載するのが原則という整理になります。乳幼児や同行者の連絡先の扱いは自治体で案内が違うため、施設の所在地のリーフレットを一度見ておきます。
そして、宿泊者の側にも告げる義務があります(法6条2項)。記帳を求めるのは協力のお願いではなく、法律に根拠のある行為です。
記帳を止めないコツは、予約の段階で連絡先まで取っておくことです。改正で連絡先が記載事項になったぶん、チェックインの場でゼロから聞くと時間がかかります。3年分は月ごとの束にして、表紙に処分できる年を書いておくと管理が軽くなります。
運用は自治体で細かく違います。自社の扱いは、施設の所在地を管轄する保健所に確認してください。