宅建業の従業者名簿|2025年4月改正後の6項目
目次
宅建業の従業者名簿は、2025年(令和7年)4月1日に様式が変わりました。性別と生年月日の欄が無くなっています。ところが、いまも検索すると「記載事項は氏名・従業者証明書の番号・生年月日・主たる職務内容」と書いてある解説が上位に出てきます。
この記事では、宅建業の従業者名簿を、改正後の記載事項、労働者名簿との違い、10年という保存期間、閲覧の求めへの応じ方の順に整理します。運用は都道府県によって細かく違います。自社の扱いは免許を受けた都道府県の宅建業担当課に確認してください。
結論:いまの記載事項は6つ
宅建業の従業者名簿の記載事項は、宅地建物取引業法48条3項と、同法施行規則17条の2第1項を合わせたものです。現行の条文では次の6つになります。
| 記載事項 | 根拠 | |
|---|---|---|
| 1 | 氏名 | 法48条3項 |
| 2 | 従業者証明書の番号 | 法48条3項 |
| 3 | 主たる職務内容 | 規則17条の2第1項1号 |
| 4 | 宅地建物取引士であるか否かの別 | 同2号 |
| 5 | 当該事務所の従業者となった年月日 | 同3号 |
| 6 | 当該事務所の従業者でなくなったときは、その年月日 | 同4号 |
生年月日も性別も住所も、いまの規定には入っていません。様式は規則17条の2第2項により様式第八号の二とされています。
一般には、古い様式を使い続けている事業者が多くあります。罰則の話というより、不要になった個人情報を集め続けている状態になるのが問題です。プライバシー保護の観点から削除された経緯なので、様式を差し替えるのが素直な対応になります。
削除は2回に分けて起きている
「住所が消えた」「生年月日が消えた」という話が混ざりやすいのは、削除が2回あったからです。
| 時期 | 削除された欄 |
|---|---|
| 2017年(平成29年)4月1日 | 住所 |
| 2025年(令和7年)4月1日 | 性別・生年月日 |
2017年の改正は全日本不動産協会などが会員向けに案内していて、そのとき様式から住所欄が外れました。そして2025年4月1日の改正で、性別と生年月日も外れています。鹿児島県、愛知県宅地建物取引業協会、大分県、滋賀県など、各地の案内でも令和7年4月1日からの様式変更として告知されています。
2回あったことを知らないと、古い記事を読んだときに「どっちが正しいのか」が判断できません。いま手元の様式に生年月日欄があるなら、2025年3月以前のものです。
古い様式を配っているサイトがまだ残っています。ダウンロードしたExcelに生年月日欄があったら、2025年3月以前のものです。改正日より前に作られた解説記事も同じで、記載事項として生年月日を挙げたままになっているものがあります。様式を拾うときは、性別と生年月日の欄が無いことを1回見てから使うと確実です。
標識も同じ日に変わっている
2025年4月1日には、宅地建物取引業者票(標識・様式第九号)も変わっています。従業者名簿と標識はセットで差し替える案内が各地から出ています。
事務所に備えるもの・掲げるものは、まとめて見直すのが確実です。名簿だけ直して標識が古いままという状態が起きやすいところです。
労働者名簿とは別の書類
いちばん混同されるのがここです。従業者名簿(宅建業法)と労働者名簿(労働基準法)は、まったく別の書類です。片方があればもう片方が要らない、ということはありません。
| 従業者名簿 | 労働者名簿 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 宅地建物取引業法48条3項 | 労働基準法107条 |
| 様式 | 様式第八号の二 | 様式第19号 |
| 対象 | 宅建業に従事する従業者 | 雇用している労働者 |
| 生年月日 | 記載事項ではない | 記載事項 |
| 性別 | 記載事項ではない | 記載事項 |
| 住所 | 記載事項ではない | 記載事項 |
| 保存期間 | 最終の記載から10年 | 5年(当分の間3年) |
| 閲覧 | 取引の関係者の求めに応じる | 閲覧の定めなし |
生年月日は、労働者名簿には要って、従業者名簿には要りません。同じ会社で両方を作るので、1枚にまとめたくなりますが、まとめると従業者名簿の側に不要な項目が載ることになります。
不動産会社なら、この2つに加えて賃金台帳と出勤簿も必要です。労働基準法の側は法定三帳簿とはにまとめています。
この違いは、同じ人の情報を2か所で別々に持つことを意味します。1枚にまとめたくなりますが、まとめると従業者名簿の側に生年月日や住所が載ることになり、閲覧の求めに応じたときにそのまま見せることになります。別々に持つほうが安全です。
対象になる範囲も違う
従業者名簿に載せるのは「宅建業に従事する従業者」で、代表者・役員も、パート・アルバイトも含まれます。従業者証明書を交付した人はすべて載る、と考えると分かりやすい形です。
一方、労働者名簿は「雇用している労働者」なので、役員は原則として対象外です。同じ会社でも、載る人の顔ぶれが違います。
保存期間は10年
従業者名簿の保存期間は、施行規則17条の2第4項で、最終の記載をした日から10年間とされています。
これは労働基準法の帳簿(5年、当分の間3年)とも、宅建業の帳簿(閉鎖後5年)とも違う数字です。同じ事務所に、年数の違う書類が並ぶことになります。
| 書類 | 保存期間 | 起算日 |
|---|---|---|
| 従業者名簿 | 10年 | 最終の記載をした日 |
| 宅建業の帳簿 | 5年(自ら売主の新築住宅は10年) | 各事業年度の末日に閉鎖した後 |
| 労働者名簿 | 5年(当分の間3年) | 退職・解雇・死亡の日 |
| 賃金台帳 | 5年(当分の間3年) | 最後の記入をした日 |
「最終の記載をした日」が起算日なので、名簿に1行でも追記があれば、そこからまた10年です。事務所が続いているあいだは、事実上ずっと保存し続けることになります。
退職者の行だけを消す、という扱いはできません。従業者でなくなった年月日を書いて残すのが記載事項です。詳しい期間の数え方は法定帳簿の保存期間にまとめています。
閲覧の求めに応じる
従業者名簿には、他の帳簿には無い義務があります。取引の関係者から請求があったときは、閲覧に供しなければならないとされています(法48条4項)。
| 閲覧の求め | |
|---|---|
| 従業者名簿 | 応じる義務がある |
| 帳簿(法49条) | 応じる義務の定めはない |
帳簿と扱いが違うところが要点です。取引の相手方から「担当者は本当にこの会社の人か」と問われたときに見せるのが、この名簿の役割になります。
閲覧に供する以上、見せられない情報を書き込まないほうが安全です。備考欄に人事評価や個人的な事情を書いていると、そのまま見せることになります。記載事項の6つに絞っておくのが実務上の安全策になります。
電子データで持ってよい
施行規則17条の2第3項で、記載事項が電子計算機のファイルや電磁的記録媒体に記録され、必要に応じてその事務所で明確に紙面に表示されるときは、記録をもって記載に代えることができるとされています。
そして同項後段で、閲覧は画面に表示する方法で行ってよいことも明記されています。Excelやシステムで持っていても、その場で画面に出せれば足ります。
- 事務所ごとに、その場で画面に出せるか印刷できる
- 10年分が読める形で残っている
- 記載事項の6つがそろっている
3つ目の「10年分が読めるか」が、システムを乗り換えたときに問題になります。解約する前に書き出しておきます。
6つの欄に何を書くか
記載事項は6つと少ないのですが、3と4の書き方で手が止まります。欄ごとに見ていきます。
| 欄 | 書く内容 | つまずきどころ |
|---|---|---|
| 氏名 | 戸籍上の氏名 | 旧姓併記の運用を決めておく |
| 従業者証明書の番号 | 交付した番号をそのまま | 先頭4桁は入社年月 |
| 主たる職務内容 | 売買仲介、賃貸仲介、管理、総務など | 「営業」だけだと粗い |
| 宅地建物取引士であるか否かの別 | 「有」「無」など | 登録しただけの人の扱い |
| 従業者となった年月日 | その事務所に配属された日 | 入社日と異なることがある |
| 従業者でなくなった年月日 | 退職・異動の日 | 空欄のまま放置されやすい |
「主たる職務内容」は、あとで自分が読んで分かる粒度にします。全員が「営業」だと、名簿から何も分かりません。売買仲介・賃貸仲介・賃貸管理・総務のように、社内で使っている区分をそのまま書くのが自然です。
「宅地建物取引士であるか否かの別」は、資格登録の有無を書きます。専任の宅地建物取引士かどうかは別の話なので、専任であることを示したいなら備考ではなく職務内容の側で表します。
従業者となった年月日は「その事務所に来た日」
ここが入社日とずれます。条文が「当該事務所の従業者となつた年月日」としているためです。
- 本店に入社して、半年後に支店へ異動した
- 本店の名簿 … 入社日を記入し、異動日を「従業者でなくなった年月日」に記入 - 支店の名簿 … 異動日を「従業者となった年月日」として新しい行を作る
事務所ごとに名簿があるので、異動は2つの名簿に書くことになります。片方だけ直すと、どちらの事務所にも在籍しているか、どちらにもいないか、という状態になります。
更新のきっかけを決めておく
従業者名簿は、作ったあとに触るきっかけが少ない書類です。人が動いたときに触る、と決めておかないと止まります。
| 起きること | 名簿でやること | 証明書でやること |
|---|---|---|
| 入社 | 行を足す(氏名・番号・職務・資格・開始日) | 番号を決めて交付 |
| 異動 | 前の事務所で終了日、次の事務所で行を足す | 所属を直す |
| 資格を取った | 宅地建物取引士の別を直す | そのまま |
| 職務が変わった | 主たる職務内容を直す | そのまま |
| 退職 | 終了日を記入(行は消さない) | 回収する |
入社と退職は忘れませんが、異動と資格取得が抜けます。宅地建物取引士の登録が完了したときに名簿を直す、という手順を試験のあとの流れに入れておくと漏れません。
一般には、従業者証明書の交付台帳と名簿を同じファイルで持つのが扱いやすい形です。番号と氏名が両方に出てくるので、別々に持つと突き合わせの作業が発生します。
よくある質問
古い様式のまま使っていました
いまの記載事項は6つなので、新しい様式に差し替えるのが素直な対応です。過去の分を作り直す必要は通常ありませんが、扱いは免許を受けた都道府県に確認してください。差し替えたあとの名簿に、不要になった生年月日や性別を書き足さないようにします。
生年月日を書いてはいけないのですか
記載事項ではなくなった、というのが改正の内容です。プライバシー保護の観点から削除された経緯なので、あえて書き続ける理由はありません。なお、従業者証明書のほうには生年月日の欄が残っています。書き方は従業者証明書の作り方にまとめています。
アルバイトも載せますか
宅建業に従事するなら載せます。従業者証明書を交付した人はすべて載ると考えると判断しやすくなります。雇用形態で対象から外れることはありません。
事務所ごとに作るのですか
事務所ごとに備えるものとされています。本店と支店があるなら、それぞれの事務所に、そこの従業者の分を置きます。「当該事務所の従業者となった年月日」という記載事項があるとおり、事務所単位の名簿です。
退職した人の行は消せますか
消せません。従業者でなくなった年月日を記入して残すのが記載事項です。そのうえで、最終の記載をした日から10年間保存します。
従業者名簿を電子で持つとき、何に気をつけますか
その事務所で画面に出せることと、10年分が読める形で残っていることの2つです。施行規則17条の2第3項で電磁的記録による代替が認められていて、閲覧も画面表示でよいとされています。クラウドの人事システムで持つ場合は、解約したあとに読めなくなるので、書き出しの方法を契約の前に確かめておきます。
派遣で来ている人も名簿に載せますか
その事務所で宅建業に従事するなら、従業者証明書を交付し、名簿にも載せるのが基本の考え方です。雇用主が別でも、従事の実態で判断されます。契約の形によって扱いが変わることがあるため、免許を受けた都道府県に確認してください。
誰でも見せてほしいと言えるのですか
法48条4項は「取引の関係者」からの請求としています。無関係の第三者に見せる義務までは定められていません。求めがあった場合の対応を決めておくと、窓口で迷わずに済みます。
まとめ
宅建業の従業者名簿の記載事項は、いま6つです。氏名、従業者証明書の番号、主たる職務内容、宅地建物取引士であるか否かの別、その事務所の従業者となった年月日、従業者でなくなったときはその年月日。
性別と生年月日は2025年(令和7年)4月1日の改正で外れました。住所はそれより前、2017年(平成29年)4月1日に外れています。削除が2回あったことを知っていると、古い解説を読んだときに判断できます。
労働基準法の労働者名簿とは別の書類です。生年月日は労働者名簿には要って、従業者名簿には要りません。対象になる人の範囲も違い、従業者名簿には代表者・役員も載ります。
保存期間は最終の記載をした日から10年で、宅建業の帳簿(閉鎖後5年)とも労働基準法の帳簿(5年・当分の間3年)とも違います。
そして、従業者名簿だけは取引の関係者から請求があったら閲覧に供する義務があります。見せる前提の書類なので、記載事項の6つに絞って、余計なことを書き込まないのが安全です。
欄は6つと少ないのですが、「主たる職務内容」を全員「営業」と書くと名簿から何も分からなくなります。社内で使っている区分をそのまま入れるほうが、あとで読める名簿になります。「その事務所の従業者となった年月日」は入社日ではなく配属日なので、異動のときは2つの事務所の名簿を直します。
運用は都道府県によって細かく違います。自社の扱いは、免許を受けた都道府県の宅建業担当課に確認してください。