物件概要書の作り方|入れる項目と重説との違い
目次
物件概要書は、法令で様式が決まっていない書類です。宅建業法にも施行規則にも「物件概要書」という言葉は出てきません。だからこそ、作る側は毎回「何を入れればいいのか」で迷います。
検索すると出てくる解説の多くは、投資家が受け取った概要書をどう読むかという話です。この記事は逆で、不動産会社の事務が作る側として、何を必ず入れるか、重要事項説明書とどう違うか、どこで事故が起きるかを整理します。記載内容に法令の定めはありませんが、書いた内容には責任が伴います。取扱いに迷う点は免許を受けた都道府県の宅建業担当課や所属する協会に確認してください。
結論:様式は自由。ただし責任は自由ではない
物件概要書は、物件の基本情報を1枚にまとめて、業者間や見込み客へ渡すための書類です。呼び方も「マイソク」「販売図面」「物件資料」など会社によって違います。
| 内容 | |
|---|---|
| 法令上の位置づけ | 定めなし(宅建業法の法定書面ではない) |
| 様式 | 自由 |
| 渡す相手 | 他の宅建業者、見込み客 |
| 作る人 | 物件を預かった宅建業者 |
| 責任 | 書いた内容には責任が伴う |
様式が自由なことと、内容に責任が無いことは別です。物件概要書に書いた数字が事実と違っていれば、誤った情報を提供したことになります。宅建業法47条は、重要な事項について故意に事実を告げず、または不実のことを告げる行為を禁じています。
そのため、実務では「分かっていることだけを、出どころとともに書く」のが基本の形になります。
「物件概要書」という言葉が法令に無いので、社内で呼び方がそろっていないこともあります。マイソク、販売図面、物件資料。どれでも構いませんが、ファイル名の付け方だけは統一しておくと、過去の版を探すときに効きます。
決まりが無いからこそ順番を固定する
受け取る側は、いくつもの概要書を見比べます。項目の並び順が毎回違うと、それだけで読む時間が増えます。
一般には、次の順に固定している会社が多くあります。
- 物件種目(売マンション、売土地、貸事務所など)
- 所在地
- 交通(最寄駅と徒歩分数)
- 価格(または賃料)
- 土地面積・建物面積
- 建物の構造・築年月
- 用途地域・建ぺい率・容積率などの法令制限
- 現況・引渡し時期
- 取引態様
- 情報提供元(社名・担当者・連絡先)
順番を決めておくと、埋め忘れも見つけやすくなります。空欄が同じ位置に出るので、目で拾えます。
必ず入れる4つ
どの項目も大事ですが、抜けると相手が動けなくなるのは次の4つです。
| 項目 | 抜けると何が起きるか |
|---|---|
| 取引態様 | 相手が報酬の見込みを立てられない |
| 情報提供元と担当者 | 問い合わせ先が分からず、そのまま流れる |
| 面積(土地・建物) | 価格の妥当性を判断できない |
| 作成日または情報の時点 | いつの情報か分からず、古い資料が出回る |
4つ目がいちばん抜けます。日付の無い概要書は、価格が変わったあとも同じ顔で出回り続けます。物件概要書は業者間で転送されるので、古い価格のまま客付け業者の手元に残るという事故が起きます。
取引態様は必ず書く
取引態様(売主・代理・専任媒介・媒介など)は、宅建業法34条の広告の規制でも明示が求められている項目です。物件概要書そのものは広告に当たらない場面もありますが、そのまま広告に転用されることを考えると、最初から入れておくほうが安全です。
| 態様 | 受け取る側が読み取ること |
|---|---|
| 売主 | 仲介手数料がかからない可能性がある |
| 代理 | 売主側の代理。手数料の扱いを確認する |
| 専任媒介・専属専任媒介 | 窓口はこの1社 |
| 媒介(一般) | 他社も扱っている可能性がある |
取引態様は、自社が売主なのか、預かって仲介しているのかを相手に伝える欄です。ここが空欄だと、受け取った業者は自社の手数料がどうなるかを判断できず、確認の電話を1本入れることになります。書いておけばその1本が消えます。
情報の出どころを分けて書く
面積・築年月・法令制限は、登記簿、現地調査、行政への照会など出どころが違います。登記簿上の数字なのか、実測なのかが分かる形にしておくと、あとで食い違ったときに説明できます。
- 土地面積 … 「登記簿 120.55㎡/実測 未」
- 建物面積 … 「登記簿 98.12㎡」
- 築年月 … 「登記簿 1998年3月」
「実測 未」と書いてあることに意味があります。空欄だと、調べていないのか、実測と一致しているのかが分かりません。
重要事項説明書との違い
物件概要書と重要事項説明書(重説)は、まったく別の書類です。混同すると、片方に書いたから大丈夫、という判断をしてしまいます。
| 物件概要書 | 重要事項説明書 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 定めなし | 宅地建物取引業法35条 |
| 様式 | 自由 | 記載事項が法定 |
| 説明する人 | 定めなし | 宅地建物取引士 |
| 交付の時期 | いつでも | 契約が成立するまでの間 |
| 記名 | 定めなし | 宅地建物取引士の記名 |
| 目的 | 物件を知ってもらう | 契約の判断材料を法定の形で示す |
物件概要書に法令制限を書いたから重説で省ける、ということはありません。重説は35条で記載事項が決まっているので、別に作ります。
逆に、物件概要書に書いていない不利な事実を、重説まで出さないという運用も危険です。宅建業法47条の不告知・不実告知の禁止は、契約の前段階から効いています。心理的瑕疵や境界の未確定といった事情は、早い段階で相手に伝えるほうが結果的にもめません。
契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士が記名した書面を交付して説明するのが重説です。時期と人が決まっているところが、物件概要書といちばん違います。概要書はいつ誰が作って渡してもよく、そのぶん法定の効力もありません。
概要書の段階で伝えておくもの
一般には、次のような事情は概要書の段階から書いておくのが安全とされています。
- 再建築不可、接道の状況
- 市街化調整区域である旨と、立地の可能性
- 越境、境界未確定
- 現況賃貸中(オーナーチェンジ)
- 心理的瑕疵に関する告知事項の有無
「あとで説明すればいい」と考えて伏せると、内見や申込みの手間が全部無駄になります。早く伝えるほど、双方の時間が減ります。
投資用の概要書で見られる数字
収益物件の概要書には、居住用には無い欄が入ります。作る側として押さえておくところです。
| 項目 | 補足 |
|---|---|
| 満室想定年収 | 空室を埋めた前提の年間賃料 |
| 現況年収 | いま実際に入っている賃料 |
| 表面利回り | 年収 ÷ 価格 |
| 実質利回り | (年収 − 経費)÷(価格 + 購入諸費用) |
| 現況入居率 | 稼働している戸数の割合 |
| 構造・築年数 | 融資期間の判断に使われる |
満室想定と現況を分けて書くのが要点です。1つの「年収」だけを載せると、受け取る側はどちらか判断できません。空室があるなら現況を併記します。
利回りも、表面か実質かを明記します。計算の前提(経費に何を含めたか)を注記しておくと、比較するときに誤解されません。
1枚に収める
物件概要書は、A4で1枚に収めるのが実務の慣習です。2枚になると、業者間でFAXやPDFで回ったときに片方だけが残ります。
1枚に収めるための割り切り方を挙げます。
| 入れる | 別紙にする |
|---|---|
| 所在地・交通・価格・面積・構造・築年月 | 登記事項証明書の写し |
| 用途地域・建ぺい率・容積率 | 公図・測量図 |
| 取引態様・情報提供元 | 設備の一覧 |
| 現況・引渡し時期 | 管理規約・修繕積立金の詳細 |
| 告知事項の有無 | 賃貸借契約書の写し(収益物件) |
告知事項は「有無」だけでも1枚に入れます。内容は別紙でも、あることが分かる状態にしておくのが要点です。
別紙を付ける場合も、概要書の側に「別紙あり」と書いておきます。転送の途中で別紙が落ちることがあるため、受け取った側が足りないことに気づける状態にしておきます。
レイアウトで迷わないための決めごと
- 価格は右上など、毎回同じ位置に置く
- 面積は「㎡」と「坪」を併記する(受け取る側で換算させない)
- 徒歩分数は80mを1分として算出する(不動産の表示に関する公正競争規約の基準)
- 作成日と改定日を同じ場所に置く
徒歩分数は基準があります。80mを1分として計算し、端数は切り上げる扱いです。感覚で書くと、表示のルールから外れます。
事故が起きるのは転記のとき
物件概要書でいちばん多い間違いは、別の資料から数字を写すときに起きます。
| 転記元 | よくある間違い |
|---|---|
| 登記事項証明書 | 地積を建物面積の欄に入れる |
| 賃貸借契約書 | 共益費を含む・含まないが混ざる |
| 前回の概要書 | 価格だけ直して作成日が古いまま |
| 販売図面 | 方位が反転したまま貼る |
| 管理会社の資料 | 修繕積立金の改定前の額 |
3つ目が最も多い形です。前回のファイルを開いて価格を書き換えて保存すると、作成日が前のまま残ります。作成日をファイル名にも入れておくと気づけます。
方位の反転は、間取図を画像として貼り付けたときに起きます。回転や反転をかけたまま保存すると、現地と合わない図面が出回ります。貼ったあとに方位マークだけ見る、と決めておくと止まります。
共益費を含む・含まないは、賃貸の概要書で混ざります。賃料の欄に含めるかどうかを社内で1つに決めて、欄の名前に書いておきます(「賃料(共益費別)」など)。
作ったあとに見る3点
出す前に3つだけ見ます。これで転記の事故はほぼ止まります。
- 作成日が今日になっているか
- 価格と面積が、元の資料と一致しているか
- 取引態様と情報提供元が埋まっているか
3点なので、30秒で終わります。担当者以外がもう一度見る運用にすると、さらに減ります。
社内で回した記録を残すなら、宅建業法49条の帳簿と紐づけておくと、あとで経緯をたどれます。帳簿のほうは宅建業の帳簿の書き方にまとめています。
業者間で回る前提で作る
物件概要書は、渡した相手の手元で止まりません。元付から客付へ、客付から顧客へと転送されます。この前提が、他の書類と違うところです。
| 経路 | 起きること |
|---|---|
| 元付 → 客付 | 客付が自社の体裁に作り直すことがある |
| 客付 → 顧客 | 手数料や連絡先を差し替えて渡される |
| 客付 → 別の客付 | さらに転送される |
| 過去の資料 → 現在 | 古い価格のまま残る |
作り直される前提なので、元の数字が正確であることが何より効きます。転送の過程で数字が変わることは防げませんが、出発点が正しければ食い違いに気づけます。
一般には、PDFにして編集できない形で渡す運用が取られています。Excelのまま渡すと、他社で数字を書き換えたものが自社の物件として流通することがあります。
改定の履歴を1行残しておくと、どの版が出回っているかを追えます。「2026-09-10 価格改定(4,980万→4,780万)」のように概要書の隅に入れておくと、古い版を持っている相手と話すときに早く噛み合います。
自社の情報をどこまで出すか
情報提供元の欄には社名・担当者・電話番号を入れます。ただし、顧客へそのまま渡ると困る場合があります。
- 業者間用 … 自社を情報提供元として明記し、取引態様も書く
- 顧客用 … 渡す側の会社名に差し替えたものを、客付業者が作る
2種類を用意している会社が多くあります。1種類で兼ねるなら、業者間用に「業者間限定」と明記しておくと、そのまま顧客に渡るのを減らせます。
よくある質問
物件概要書は誰が作るのですか
物件を預かった宅建業者(元付業者)が作るのが一般的です。法令で作成者が決まっているわけではありません。客付業者が自社の体裁に作り直して顧客へ渡すこともあります。
決まったテンプレートはありますか
法令上の様式はありません。宅建協会が会員向けに書式を配っていることがあります。自社で作る場合は、項目の並びを固定して使い回すのが実務的です。
写真や間取図は必要ですか
法令上の定めはありませんが、実務ではほぼ必須です。写真がないと問い合わせが減ります。間取図を載せる場合は、方位と縮尺の扱いを社内で決めておきます。
価格が変わったらどうしますか
新しい日付で作り直して、古いものを回収するのが基本です。日付が入っていないと、古い価格の資料が出回り続けます。業者間で転送される前提の書類なので、改定日を目立つ位置に置きます。
広告の規制はかかりますか
物件概要書がそのまま広告として使われる場合は、宅建業法32条(誇大広告等の禁止)や34条(取引態様の明示)の対象になり得ます。広告に転用される前提で作ると安全です。
重要事項説明書と内容が食い違いました
重説のほうが法定の書面です。食い違いに気づいた時点で相手に伝え、概要書を直します。食い違いを放置すると、どちらを信じたかで争いになります。
まとめ
物件概要書は、宅建業法に根拠のない任意の書類です。様式は自由ですが、書いた内容には責任が伴います。宅建業法47条の不告知・不実告知の禁止は、契約の前段階から効いています。
決まりが無いからこそ、項目の並び順を固定するのが実務の要点です。受け取る側が見比べやすくなり、作る側も空欄を目で拾えるようになります。
抜けると相手が動けないのは、取引態様・情報提供元・面積・作成日の4つです。とくに作成日は抜けやすく、日付の無い概要書は価格が変わったあとも同じ顔で出回り続けます。
重要事項説明書とは別の書類です。概要書に書いたから重説で省ける、ということはありません。逆に、不利な事実を重説まで伏せるのも危険で、早く伝えるほど双方の手間が減ります。
そして、物件概要書は渡した相手の手元で止まらない書類です。元付から客付、客付から顧客へと転送され、途中で作り直されます。出発点の数字が正しいことと、作成日が入っていることが、いちばん効く2つになります。
記載内容に法令の定めはありませんが、扱いに迷う点は免許を受けた都道府県の宅建業担当課や所属する協会に確認してください。