従業者証明書の作り方|番号の付け方と携帯義務
目次
従業者証明書は、宅建業者が自分で作って従業者に持たせる書類です。役所が発行するものではありません。ここを勘違いして「どこでもらうのか」を探してしまうのが、最初のつまずきどころです。
そしてもう1つ、番号の付け方に決まりがあります。先頭4桁は自由に決められません。この記事では、従業者証明書を、誰が作るのか、誰に持たせるのか、番号の付け方、書く項目、名簿との関係の順に整理します。運用は都道府県によって細かく違います。自社の扱いは免許を受けた都道府県の宅建業担当課に確認してください。
結論:自社で作って交付する。役所は発行しない
従業者証明書は、宅地建物取引業法48条1項に根拠があります。宅建業者は、その従業者に従業者証明書を携帯させなければ、その者を業務に従事させてはならないとされています。
| 内容 | |
|---|---|
| 根拠 | 宅地建物取引業法48条1項 |
| 様式 | 宅地建物取引業法施行規則17条により様式第八号 |
| 作る人 | 宅建業者(会社)自身 |
| 渡す相手 | 業務に従事する従業者 |
| 提示 | 取引の関係者から請求があったときは提示する(法48条2項) |
役所への届出も、役所からの交付もありません。会社が作って、社内で渡して終わりです。だからこそ、様式と番号のルールを自分で守る必要があります。
一般には、宅建協会が会員向けに書式を配っていたり、カード印刷業者に発注したりしている事業者が多くあります。自作でも構いません。様式第八号の項目が入っていれば足ります。
携帯させないと罰則がある
従業者証明書を携帯させずに業務に従事させた場合、宅地建物取引業法83条により罰金が定められているとされています。書類1枚の話に見えて、罰則つきの義務です。
そして、立入検査で最初に見られる書類の1つでもあります。事務所の標識、従業者名簿、帳簿とあわせて4点セットで確認される、という運用が一般的です。
誰に持たせるのか
ここがいちばん判断に迷うところです。「従業者」の範囲は、正社員だけではありません。
| 立場 | 従業者証明書 |
|---|---|
| 正社員(宅建業に従事) | 必要 |
| パート・アルバイト(宅建業に従事) | 必要 |
| 派遣・出向で受け入れている人 | 宅建業に従事するなら必要 |
| 代表者・役員(宅建業に従事する場合) | 必要 |
| 宅地建物取引士でない人 | 必要(資格の有無とは無関係) |
| 経理・総務だけで宅建業に従事しない人 | 対象外とされている |
「代表者は従業者ではないから要らない」は誤りです。埼玉県宅地建物取引業協会も、実務上の注意点として、代表者や役員であっても宅建業に従事する方には従業者証明書を発行して携帯させる必要がある、と案内しています。
もう1つの誤解が、宅地建物取引士の資格がある人は取引士証があるから不要というものです。取引士証(宅地建物取引士証)と従業者証明書は別の書類で、根拠も目的も違います。
| 従業者証明書 | 宅地建物取引士証 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 法48条 | 法22条の2 |
| 作る人 | 宅建業者 | 都道府県知事が交付 |
| 対象 | 宅建業に従事する従業者 | 宅地建物取引士の登録を受けた人 |
| 使う場面 | 取引の関係者から請求があったとき | 重要事項説明のとき |
両方持つことになります。重要事項説明の場面で提示するのは取引士証のほうです。
「従業者」に当たるかの線引き
国土交通省の解釈では、代表者を含み、非常勤の役員や単に一時的に事務の補助をする者も従業者に該当するという考え方が示されています。範囲は広めに取られている、と理解しておくのが安全です。
迷いやすいのは、宅建業と他の業種を兼業している会社です。兼業部門だけに従事していて宅建業には関わらない人は対象外とされていますが、繁忙期だけ手伝う、という形だと判断が分かれます。線引きに迷うときは、免許を受けた都道府県の宅建業担当課に聞くのが早くて確実です。
従業者証明書番号の付け方
従業者証明書でいちばん検索されているのがここです。番号は自由に振れません。様式第八号の備考に付し方が定められていて、国土交通省の各地方整備局や都道府県が同じ内容を案内しています。
| 桁 | 入れるもの |
|---|---|
| 第1桁・第2桁 | 従業者が雇用された年を西暦で表したときの下2桁 |
| 第3桁・第4桁 | 従業者が雇用された月(01〜12) |
| 第5桁以降 | 宅建業者が独自に設定する |
つまり、2021年4月に入社した人なら先頭は「2104」になります。東京都住宅政策本部の記入例も、令和3(2021)年4月入社の場合は【2104****】になる、という形で説明しています。
第5桁以降は都道府県で運用が違う
第5桁以降は「宅建業者が独自に設定する」のが原則ですが、都道府県によって推奨する形が示されています。
- 大阪府 … 全部で7桁。5桁目に当初の所属を表す記号(本店は「A」など)を入れる案内
- 沖縄県 … 6桁以上とする案内
- そのほか … 連番だけ、という運用も多い
免許を受けた都道府県の手引きを1回見ておくのが確実です。全国共通なのは先頭4桁だけで、その後ろは地域差があります。
番号は入社日で決まるので、あとから変わらない
先頭4桁が雇用された年月なので、その人の番号は在職中ずっと同じです。部署が変わっても、昇格しても振り直しません。
逆に、一度退職して再入社した場合は、新しい雇用の年月になります。前の番号を使い回すと、名簿と突き合わせたときに在籍期間が合わなくなります。
証明書に書く項目
様式第八号に並んでいる項目は、おおむね次のとおりです。
| 項目 | 補足 |
|---|---|
| 従業者証明書番号 | 上のルールで付ける |
| 氏名 | 旧姓の併記を希望する場合の運用がある |
| 生年月日 | 証明書には残っている |
| 所属 | 事務所名など |
| 従業者となった年月日 | 番号の先頭4桁と整合させる |
| 写真 | 本人の顔写真を貼る |
| 宅建業者の商号または名称 | |
| 代表者氏名 | |
| 主たる事務所の所在地 | |
| 免許証番号 |
生年月日の欄があるのが、証明書のほうの特徴です。従業者名簿は2025年4月の改正で生年月日と性別の記載が外れましたが、証明書には生年月日が残っています。ここを混同して証明書の生年月日欄を消してしまわないよう注意してください。名簿のほうは宅建業の従業者名簿にまとめています。
免許証番号と代表者氏名が入るので、免許換えや代表者の交代があると証明書の記載が古くなります。更新の手続きをしたときに、証明書の刷り直しが要るかを一度見ておくと、古い番号のまま携帯させ続ける状態を防げます。
写真とカード化
写真を貼ることになっているため、紙で作ると運用が重くなります。一般には、カード型にして名札やケースに入れて携帯させる形が広く取られています。カード印刷を外注している事業者も多くあります。
有効期限の欄がある様式が使われることもあります。法令上の有効期限の定めはありませんが、期限を入れておくと更新のきっかけになるため、実務上は区切りを入れている事業者が多くあります。区切りを入れる場合は、切れたまま携帯させない運用にします。
名簿とセットで回す
従業者証明書は、単体では完結しません。従業者名簿に証明書の番号を書くことになっているため、2つは必ずセットで動きます。
| 場面 | 証明書 | 名簿 |
|---|---|---|
| 入社した | 番号を決めて作成・交付 | 氏名と番号を追記 |
| 部署が変わった | 所属を直す(番号は変えない) | 主たる職務内容を直す |
| 退職した | 回収する | 従業者でなくなった年月日を記入 |
| 再入社した | 新しい番号で作り直す | 新しい行として追記 |
退職のときに回収するのを決めておくのがポイントです。回収の記録が無いと、退職者が証明書を持ったままになっていないかを後から確かめられません。貸与物の一覧に入れておくと、返却のチェックに乗ります。
一般には、入社手続きの書類一式に従業者証明書の作成と名簿への追記を1行で入れておく運用が扱いやすい形です。片方だけ作って、もう片方が抜ける事故がいちばん多く起きます。
事務所に備える4点との関係
宅建業の事務所には、掲げるもの・備えるもの・持たせるものが決まっています。従業者証明書はそのうちの「持たせるもの」です。立入検査では4点まとめて見られるのが一般的なので、並べて把握しておくと抜けません。
| 何を | 根拠 | どこに | |
|---|---|---|---|
| 掲げる | 標識(宅地建物取引業者票) | 法50条1項 | 事務所の見やすい場所 |
| 備える | 従業者名簿 | 法48条3項 | 事務所ごと |
| 備える | 帳簿 | 法49条 | 事務所ごと |
| 持たせる | 従業者証明書 | 法48条1項 | 従業者が携帯 |
標識と従業者名簿は、2025年4月に様式が変わっています。従業者証明書の様式は変わっていませんが、同じタイミングで見直された書類が並んでいるので、まとめて差し替えたかを一度確認しておくと安心です。
報酬額の掲示(法46条4項)と、専任の宅地建物取引士の設置(法31条の3)も事務所の要件として並びます。書類だけでなく人の要件もあるところが、宅建業の事務所の特徴です。
帳簿のほうは宅建業の帳簿の書き方にまとめています。
作るときの手順
はじめて作るときは、次の順で進めると迷いません。
- 対象者を洗い出す(宅建業に従事する人。役員・パートも含める)
- 一人ずつ、雇用された年月から先頭4桁を決める
- 第5桁以降の付け方を決める(免許を受けた都道府県の手引きを見る)
- 様式第八号の項目で台紙を作る
- 顔写真を集めて貼る(カードにするなら印刷に出す)
- 交付して、同じ日に従業者名簿へ番号を追記する
- 交付した記録を残す
6を同じ日にやるのが要点です。証明書だけ作って名簿への追記が翌月になると、そのまま忘れます。
途中から始めるとき
すでに営業していて、証明書を用意していなかった場合も、先頭4桁は実際に雇用された年月で付けます。作った日ではありません。10年前に入社した人なら、その年月が先頭になります。
まとめて作ると写真集めで止まりやすいので、先に番号と台紙だけ確定させて、写真は届いた人から順に貼る進め方が現実的です。
よくある質問
従業者証明書はどこでもらえますか
もらうものではありません。宅建業者が自分で作成して従業者に交付します。役所も宅建協会も発行はしません。宅建協会は会員向けに書式を配っていることがあります。
宅建の登録講習に使う証明書と同じものですか
登録講習(5問免除)の受講要件を示すために従業者証明書の写しを使う、という運用があります。書類そのものは同じ従業者証明書です。ただし講習実施機関が求める形式があるため、提出先の案内を確認してください。
有効期限は必要ですか
法令上の定めはありません。ただし実務では区切りを入れている事業者が多くあります。入れた場合は、切れたまま携帯させない運用にします。
アルバイトにも必要ですか
宅建業に従事するなら必要とされています。雇用形態で対象から外れることはありません。電話番だけ、清掃だけといった宅建業に従事しない業務であれば対象外とされていますが、線引きに迷う場合は免許を受けた都道府県に確認してください。
番号の第5桁以降はどう決めればよいですか
宅建業者が独自に設定してよいとされています。連番でも差し支えありません。ただし都道府県によって推奨の形が示されているので、免許を受けた都道府県の手引きを見てから決めます。
旧姓を使いたい場合は
旧姓の併記を希望する場合の取扱いがあるとされています。証明書と名簿で表記がずれないようにそろえてください。運用は都道府県で異なるため、担当課に確認するのが確実です。
事務所が複数あります。番号は事務所ごとに分けますか
先頭4桁は雇用された年月なので、事務所が違っても同じ規則です。第5桁以降で所属を表す運用が案内されている都道府県があります(大阪府は5桁目に本店「A」などを入れる案内)。分けるかどうかは、免許を受けた都道府県の手引きに従ってください。
証明書を紛失したと言われました
再交付して、同じ番号を使うのが一般的な扱いです。番号は雇用された年月から決まるので、紛失で変わるものではありません。紛失した旨と再交付した日を社内の記録に残しておくと、あとで説明できます。
出向で来ている人はどちらが作りますか
その事務所で宅建業に従事するなら、従事先の宅建業者が作るのが基本の考え方です。従業者名簿にも載ることになります。契約の形で判断が変わることがあるため、免許を受けた都道府県に確認してください。
まとめ
従業者証明書は、宅地建物取引業法48条1項に基づき、宅建業者が自分で作成して従業者に携帯させる書類です。役所は発行しません。様式は施行規則17条により様式第八号とされています。
持たせる相手は「宅建業に従事する従業者」で、パート・アルバイトも、代表者・役員も含まれます。宅地建物取引士の資格があるかどうかとは関係ありません。取引士証とは別の書類なので、両方持つことになります。
番号は自由に振れません。先頭2桁が雇用された年の西暦下2桁、次の2桁が雇用された月で、2021年4月入社なら「2104」から始まります。第5桁以降は独自に設定してよいものの、都道府県によって推奨の形があります。
そして、証明書には生年月日の欄が残っています。従業者名簿のほうは2025年4月の改正で生年月日と性別が外れたので、名簿に合わせて証明書の欄を消さないよう注意してください。
作る手順は、対象者の洗い出し → 先頭4桁の決定 → 台紙づくり → 写真 → 交付と名簿への追記、の順です。交付と名簿への追記を同じ日にやると決めておけば、片方だけ残る事故が消えます。写真集めで止まりやすいので、番号と台紙を先に確定させておくと進みます。
携帯させずに業務に従事させると罰則が定められているとされています。運用は都道府県によって細かく違うため、自社の扱いは免許を受けた都道府県の宅建業担当課に確認してください。