保有資格一覧表の作り方|期限を切らさない列の決め方
目次
保有資格一覧表は、法令で作成が義務づけられた書類ではありません。それでも総務がこれを作るのは、資格の有効期限を切らすと仕事が止まるからです。免許が切れた人に作業をさせてしまうと、会社の責任になります。
この記事では、保有資格一覧表を、何のために作るのか、入れる列の決め方、期限を切らさない仕組み、どこまで管理するかの順に整理します。そして、「切れたら何が止まるか」を1列書いておく**と、表が現場で使われるようになります。資格名だけが並んだ表は開かれません。選任の人数に下限がある資格は、下限と現在の人数を欄外に書いておくと、退職の相談が来たときにその場で判断できます。
Excelで作るなら、日付は日付型で入れることと、資格名はリストから選ばせることの2つだけ守れば壊れません。日付を文字列にすると期限で並べ替えられず、資格名が自由入力だと表記が揺れて絞り込みから漏れます。
どの資格に更新が必要かは制度ごとに違います。個別の資格の要件は、それぞれの所管や実施機関に確認してください。**
結論:目的は3つ。どれを取るかで列が変わる
保有資格一覧表は、一般に次の3つのどれか(または複数)のために作られます。目的が違うと、必要な列も違います。
| 目的 | 見たいこと | 効く列 |
|---|---|---|
| 期限を切らさない | いつ更新が来るか | 有効期限、次回更新の予定 |
| 配置を決める | その作業をやれる人が何人いるか | 資格名、所属、取得年月日 |
| 法令の要件を示す | 選任の要件を満たしているか | 資格名、免状番号、選任の有無 |
いちばん多いのは1つ目です。そして1つ目だけなら、列は5つで足ります。全部やろうとすると列が20を超えて、更新されない表になります。
まずどれを取るかを決めて、足りなくなったら列を足す順番が現実的です。
最小の5列
期限を切らさないことだけを目的にするなら、必要なのは次の5つです。
| 列 | 内容 |
|---|---|
| 1. 氏名 | |
| 2. 所属 | 部署・事業場 |
| 3. 資格名 | 制度の正式名称で書く |
| 4. 取得年月日 | 免状・修了証の日付 |
| 5. 有効期限 | 期限が無い資格は「なし」と書く |
5列目に「なし」と書くのが要点です。空欄にすると、期限が無い資格なのか、調べていないのかが区別できません。「なし」と書いてあれば、確認済みという意味になります。
資格名は制度の正式名称で書きます。「フォークリフト」ではなく「フォークリフト運転技能講習修了」のように書いておくと、元請や監督官庁へ出す資料へそのまま使えます。社内の呼び方は別の列に持たせれば足ります。
1人が複数持つので、縦に並べる
資格は1人が複数持ちます。1人1行にして資格を横に並べる形にすると、資格が増えるたびに列を足すことになります。
| 形 | 向いている場面 |
|---|---|
| 1行=1人1資格(縦長) | 期限管理。並べ替えと絞り込みができる |
| 1行=1人(横長・資格マップ) | 配置を決める。誰が何をやれるか一覧で見る |
期限管理をするなら縦長です。有効期限の列で並べ替えれば、近いものが上に来ます。配置を見たいときは、そこからピボットで横に組み替えられます。
最初から横長で作ると、期限で並べ替えられません。これが「表はあるのに期限を切らす」いちばん多い原因です。
期限を切らさない仕組み
表を作っただけでは切れます。見る日を決めるところまでが仕組みです。
一般には、次の形が取られています。
- 有効期限の列で並べ替える
- 3か月以内に期限が来る行を抜き出す
- 本人と上司へ知らせる
- 更新の講習を申し込む
- 新しい期限に書き換える
2の「3か月前」が要点です。更新講習は定員があり、直前では取れないことがあります。3か月あれば日程を選べます。
更新の費用と時間も、この段階で分かります。3か月前に抜き出せば、講習料と受講で抜ける日数を予算と勤務の予定に反映できます。直前に気づくと、両方が調整できません。
見る日を月に1回に固定する
毎日見る必要はありません。月初に1回、期限の列を見るだけで足ります。
- 月初に、期限が3か月以内の行を抜き出す
- 該当が無ければそれで終わり
- 該当があれば、本人へ連絡して申込みまで進める
「該当が無ければ終わり」という形にしておくと続きます。毎月全員分を見直す運用にすると、そのうちやらなくなります。
Excelなら条件付き書式で、期限が3か月以内のセルに色を付けておくと、開いた瞬間に分かります。人が判断する前に、色が教える形にするのがコツです。
どこまで管理するか
全部の資格を載せると、表が使われなくなります。線を引きます。
| 載せる | 載せない |
|---|---|
| 業務に必要で、更新があるもの | 本人が趣味で取ったもの |
| 選任の要件になるもの | 業務に関係しない語学・検定 |
| 会社が費用を出したもの | 更新の無い民間資格で業務に使わないもの |
| 法令で有資格者でなければできない作業に関わるもの |
判断の基準は「切れたら業務が止まるか」です。止まらないものは載せなくて構いません。載せるほど更新の手間が増えるので、迷ったら載せない側に倒します。
更新があるものだけ別表にする
載せる資格が多い会社では、更新があるものだけを抜いた別表を作るのが実務的です。
- 本表 … 全員の保有資格(配置を見るため)
- 期限表 … 有効期限がある資格だけ(切らさないため)
期限表のほうを月初に見ます。本表は人が動いたときに触るだけになります。1つの表で両方やろうとすると、どちらの用途にも中途半端になります。
なお、免状や修了証の原本は本人が持つものが多くあります。会社が預かるのではなく、写しを取って保管し、一覧表には番号と期限を転記する形が一般的です。
他の書類との関係
保有資格一覧表は法定の書類ではありませんが、法定の書類と数字が一致している必要があります。
| 関係する書類 | 一致させるところ |
|---|---|
| 労働者名簿 | 氏名の表記、在籍しているか |
| 従業者名簿(宅建業) | 宅地建物取引士であるか否かの別 |
| 選任の届出 | 選任している人の資格と免状番号 |
| 年間教育計画表 | 更新講習・法定教育の予定 |
労働者名簿に載っていない人が資格一覧表にいるという状態が起きます。退職者の行を消し忘れているためです。退職の手続きで、資格一覧表からも外すことを決めておきます。
法定教育と更新講習は、年間の計画に載せておくと予算も取りやすくなります。計画表の作り方は年間教育計画表の作り方にまとめています。労働者名簿は労働者名簿の書き方にまとめています。
更新がある資格と、無い資格
期限管理をするうえで、まず押さえておきたいのがそもそも更新がある資格は多くないということです。
| 区分 | 例 |
|---|---|
| 有効期限があり、更新が要る | 宅地建物取引士証(5年)、運転免許、危険物取扱者の保安講習、防火管理者の再講習、フォークリフトなどの技能講習修了証(原則期限なしだが記載事項の変更届が要る) |
| 期限は無いが、定期の教育が求められる | 安全衛生の特別教育(再教育の通達があるもの) |
| 期限が無い | 多くの国家資格(登録が続くかぎり有効) |
「更新が要る」と「定期の教育が求められる」は別です。免状は切れないが、一定期間ごとに再教育を受けることが通達で求められているもの(能力向上教育など)があります。
一覧表に列を足すなら、「更新の有無」と「再教育の有無」を分けると混ざりません。
期限の出どころを書いておく
有効期限は、免状に印字されているものと、制度の側で決まっているものがあります。どこで確認した期限かを残しておくと、あとで疑わしくなったときに調べ直せます。
- 免状に印字 … 「免状記載」
- 実施機関の案内 … 「◯◯協会の案内による」
- 講習の受講から起算 … 「受講日から3年」
列を1つ足すだけですが、担当者が変わったときに効きます。前任者がどう判断したかが残るためです。
資格が要る作業に紐づける
期限管理の一歩先として、その資格が無いとできない作業を並べておくと、表が現場で使われるようになります。
| 資格 | できなくなる作業 |
|---|---|
| 宅地建物取引士 | 重要事項説明 |
| フォークリフト運転技能講習修了 | 最大荷重1トン以上のフォークリフトの運転 |
| 危険物取扱者 | 危険物の取扱いと立会い |
| 防火管理者 | 消防計画の作成、防火管理業務 |
| 衛生管理者 | 衛生管理者としての選任 |
「切れたら何が止まるか」が書いてある表は捨てられません。逆に、資格名だけが並んでいる表は、誰も開かなくなります。
人数の下限を書いておく
選任が要る資格は、何人いなければならないかが決まっているものがあります。その人数を表の欄外に書いておくと、退職の相談が来たときにすぐ判断できます。
- 専任の宅地建物取引士 … 事務所ごとに業務に従事する者5人に1人以上
- 衛生管理者 … 事業場の規模に応じた人数
- 防火管理者 … 建物・事業所ごと
退職が決まってから探すと間に合いません。下限に対して余裕が1人しかない資格が分かっていれば、早めに育成の計画に載せられます。年間の計画は年間教育計画表の作り方にまとめています。
Excelで作るときの決めごと
保有資格一覧表は、Excelで作っている事業所がほとんどです。あとで壊れないための決めごとを挙げます。
| 決めること | なぜ |
|---|---|
| 日付は日付型で入れる(文字列にしない) | 並べ替えと期限の計算ができなくなる |
| 資格名はリストから選ぶ(自由入力にしない) | 表記が揺れて絞り込みができなくなる |
| 1シートに1つの表だけ置く | 表が2つあるとフィルタが効かない |
| 結合セルを使わない | 並べ替えで崩れる |
| 期限が近い行に条件付き書式で色を付ける | 人の判断より先に色が教える |
日付を文字列で入れてしまうのが、いちばん多い壊れ方です。「2027年3月」のように書くと、期限で並べ替えたときに順番になりません。日付として入れて、表示形式で年月だけ見せる形にします。
資格名の表記の揺れも同じくらい多いです。「フォークリフト運転技能講習」「フォークリフト技能講習」「フォークリフト」が混ざると、絞り込んだときに一部が漏れます。入力規則でリストから選ばせるのが確実です。
人数が増えたときの分け方
人数が増えると1シートでは扱いにくくなります。事業場ごとにシートを分けるより、1シートに「所属」の列を持って絞り込むほうが扱いやすくなります。
- 1シート+所属列 … 全社の人数を数えられる。異動が1セルの書き換えで済む
- 事業場ごとにシート … 全社集計のたびに足し算が発生する。異動で行の移動が要る
異動のたびに行を移す運用は続きません。所属の列を1つ持つ形にしておきます。
よくある質問
法令で作成が義務づけられていますか
保有資格一覧表そのものに作成義務の定めはありません。ただし、特定の資格者の選任や、有資格者でなければできない作業については、それぞれの法令で要件が定められています。要件を満たしていることを示す材料として使われます。
有効期限の無い資格はどう書きますか
「なし」と書きます。空欄にすると、期限が無いのか調べていないのかが分かりません。「なし」は確認済みという意味になります。
免状の写しは必要ですか
法令上の一律の定めはありません。実務では、選任の届出や元請への提出で写しを求められることがあるため、取っておく事業所が多くあります。原本は本人が持つものが多いので、入社時か取得時に写しをもらいます。
保存期間はありますか
法定の書類ではないため、期間の定めはありません。ただし、選任の届出や作業の記録と結びつく場合は、その書類の保存期間に合わせて残すのが安全です。
退職した人の行はどうしますか
退職の手続きの中で外します。残したままだと、有資格者の人数を数えたときに実際より多くなります。過去の在籍を追いたいなら、別のシートへ移します。
元請から有資格者一覧の提出を求められました
建設業などでは、元請が作業員の資格を確認するために一覧の提出を求めることがあります。社内の期限管理用の表をそのまま出すと、業務に関係のない資格や個人的な情報まで渡ります。提出用は必要な資格だけを抜いた別の表にするのが安全です。
派遣で来ている人の資格も載せますか
その作業をやってもらうために資格が必要なら、確認した記録を残しておく必要があります。ただし雇用しているのは派遣元なので、社内の保有資格一覧表に混ぜると在籍者の人数が合わなくなります。受け入れている人の分は別のシートに分けるのが扱いやすい形です。
資格手当と連動させてよいですか
連動させている会社もあります。ただし、手当の判断に使うと、本人からの申告が増えて表の性質が変わります。期限管理が目的なら、手当の管理は別の表にしておくほうが運用が安定します。
まとめ
保有資格一覧表は法定の書類ではありませんが、資格の有効期限を切らすと業務が止まるため、総務が作ることになります。
目的は、期限を切らさない・配置を決める・法令の要件を示す、の3つです。どれを取るかで必要な列が変わります。期限管理だけなら、氏名・所属・資格名・取得年月日・有効期限の5列で足ります。
形は縦長(1行=1人1資格)にします。横長で作ると有効期限で並べ替えられず、「表はあるのに期限を切らす」状態になります。
仕組みとして要るのは、月初に1回、期限が3か月以内の行を抜き出すことだけです。該当が無ければそれで終わりという形にしておくと続きます。条件付き書式で色を付けておけば、開いた瞬間に分かります。
載せる資格は「切れたら業務が止まるか」で線を引きます。有効期限が「なし」の資格も「なし」と書いて残すのが、調べたことを示す唯一の方法です。
どの資格に更新が必要かは制度ごとに違います。個別の資格の要件は、それぞれの所管や実施機関に確認してください。