業法の帳簿解説2026.09.17 公開TK-60

重要事項説明書とは?宅建士が説明して記名する

目次

重要事項説明書の様式はある。けれど、どこまで書けばよいのか、誰が説明して誰が記名するのかが、担当が代わるとあいまいになります。物件概要書との違いも、社内で説明できる人が限られています。

この記事では、重要事項説明書を、誰が何をするか・書く内容・渡す時期の3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社の手順を確かめられる状態を目指します。

物件概要書のほうから確かめたい方は、こちらを読むと早いです。→ 物件概要書の書き方

結論:契約の前に、宅建士が説明して記名する

重要事項説明書とは、宅地建物取引業者が、契約が成立するまでの間に、相手方へ交付して説明する書面のことです。宅地建物取引業法にもとづくものです。

説明するのは宅地建物取引士です。業者の誰でもよいわけではありません。説明のときは、宅地建物取引士証を提示します。

書面には、宅地建物取引士が記名します。

宅建士が説明して記名する宅地建物取引士取引士証を提示説明する書面に記名する重要事項説明書
誰が説明し、誰が記名するかを示した関係の図

ポイントはここです。契約の前に行います。契約と同時や、契約の後では成り立ちません。買う側・借りる側が、契約するかどうかを判断するための材料だからです。

物件概要書との違い

社内で混ざりやすいのが、物件概要書との違いです。目的が違います。

物件概要書は、営業のために物件の内容をまとめた資料です。法令で作成が義務づけられたものではありません。

重要事項説明書は、法令にもとづく書面です。記載すべき事項が定められていて、宅建士が説明します。

物件概要書との違い物件概要書営業のための資料法令の義務ではないそのままでは使えない重要事項説明書法令にもとづく書面記載すべき事項が定められている宅建士が説明し記名する
物件概要書と重要事項説明書で、目的と根拠が違うことを並べた比較の図

物件概要書をそのまま重要事項説明書に使うことはできません。記載すべき事項が足りず、宅建士の記名もありません。

実務では、物件概要書を作るときに調べた内容が、重要事項説明書の材料になります。調査を1回にまとめると手戻りが減ります。

書く内容

記載すべき事項は多くあります。塊で見ると整理しやすくなります。

1つ目は、物件そのものに関する事項です。登記された権利、法令にもとづく制限、私道の負担、飲用水・電気・ガスの供給と排水の施設。

2つ目は、取引の条件に関する事項です。代金や賃料以外に授受される金銭、契約の解除、損害賠償額の予定、手付金等の保全措置、支払金または預り金の保全。

3つ目は、建物に関する事項です。建物の維持修繕の状況、区分所有建物の場合の規約や管理の委託先。

4つ目は、災害や環境に関する事項です。造成宅地防災区域、土砂災害警戒区域、津波災害警戒区域、水害ハザードマップにおける所在地。

記載する事項の4つの塊中身物件権利・法令の制限・私道・インフラ取引の条件金銭・解除・損害賠償・保全建物維持修繕・規約・管理の委託先災害と環境区域の指定・水害ハザードマッ
記載する事項を4つの塊に分けて並べた表

水害ハザードマップにおける所在地の説明は、比較的新しく加わったものです。古い様式を使い続けていると、この欄がありません。

賃貸か売買か、宅地か建物か、区分所有かで、書く項目が変わります。取引の類型ごとに様式を分けておくと、要らない欄を消す作業が減ります。

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実際に使える様式が必要な方へ

物件概要書の様式は、商い屋の不動産向けページにあります。この記事は重要事項説明の側の話です。

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調査してから書く

書く前に調査が要ります。ここに時間がかかります。

登記の内容は、登記事項証明書で確かめます。所有者、抵当権などの権利、地積。

法令の制限は、役所で確かめます。都市計画、建築基準法の制限、条例。窓口が複数にまたがることがあります。

インフラは、水道局やガス会社などに確かめます。前面道路の配管の状況、私設管の有無。

災害の区域は、自治体のハザードマップや、指定の状況で確かめます。

調査する4方向調査先確かめること登記権利・所有者・地積役所都市計画・建築の制限・条例水道・ガス配管の状況・私設管自治体ハザードマップ・区域の指定
登記・法令・インフラ・災害という4つの調査先を並べた表

調査した日と、調査先を記録に残します。後から内容が変わることがあるため、いつ時点の情報かがはっきりしていると説明できます。

古い調査の結果を使い回すのは危険です。都市計画や区域の指定は変わります。同じ物件でも、時間が経てば調べ直します。

渡す時期と方法

契約が成立するまでの間に交付します。当日に渡して、その場で説明して契約する形は、判断の時間が取れません。

実務では、契約日の前に渡して、説明の日を別に設ける形が取られることがあります。相手が内容を読む時間ができます。

3つの順番交付前もって渡す説明取引士証を提示して契約成立するまでの間に記録控えと調査の資当日に渡してその場で契約する形では、判断の時間が取れない
交付・説明・契約という3つの順番を示した時系列の図

電磁的方法による交付が認められる場合があります。相手方の承諾を得ることや、出力して書面にできることなどの条件があります。

オンラインでの説明も認められる形があります。画面と音声のやり取りができること、書面をあらかじめ送っておくこと、取引士証を提示して相手が確認できることなどが条件になります。

記録として残すもの

説明が終わった後に残すものが3つあります。

1つ目は、交付した重要事項説明書の控えです。宅建士の記名が入ったものです。

2つ目は、説明した日と、説明した宅建士の記録です。誰がいつ説明したかを残します。

3つ目は、調査の資料です。登記事項証明書、役所で取得した資料、ハザードマップの写し。

残す3つ交付した控え宅建士の記名が入ったもの説明の記録日付と説明した宅建士調査の資料登記・役所・地図
控え・説明の記録・調査資料という3つを並べた層の図

これらは、宅建業の帳簿や取引の書類と一緒に保管します。帳簿には保存の期間が定められているため、それに合わせて残す形が扱いやすくなります。

後から「聞いていない」と言われたときに、説明した記録と調査の資料が説明の材料になります。

調査を1回にまとめる

重要事項説明書のために調査した内容は、他の書類にも使えます。調査を1回にまとめると、手間がかなり減ります。

使える先は3つです。

1つ目は、物件概要書です。営業の資料として使う内容が、調査の結果から作れます。

2つ目は、契約書です。物件の表示、権利の内容、引渡しの条件など、重なる部分があります。

3つ目は、社内の記録です。宅建業の帳簿や、取引の記録に残す内容の材料になります。

まとめるコツは、調査の結果を1枚のシートに集めることです。登記、法令、インフラ、災害。項目ごとに、調べた日・調べた先・結果を書きます。

このシートがあると、重要事項説明書を作るときも、契約書を作るときも、同じシートを見れば済みます。調べ直しが要らなくなるのがいちばんの効果です。

社内で手順を残す

重要事項説明は、担当によって手順が変わりやすい業務です。1枚にまとめておくと、質がそろいます。

書くのは5つです。

1つ目は、調査する先の一覧です。登記、役所のどの課、水道局、ガス会社、ハザードマップ。窓口の名前と連絡先まで書いておきます。

2つ目は、取引の類型ごとの様式です。賃貸か売買か、宅地か建物か、区分所有か。使う様式を決めておきます。

3つ目は、記載の例です。判明しなかった事項の書き方、私道の負担の書き方。迷いやすいところの例文を残します。

4つ目は、説明の段取りです。いつ渡して、いつ説明するか。オンラインで行う場合の手順。

5つ目は、残す記録です。控え、説明した日と宅建士、調査の資料。

この1枚があると、担当が代わっても同じ形で回せます。調査の抜けは、後から見つかると大きな問題になります。

まとめ

重要事項説明書は、契約が成立するまでの間に交付して説明する書面です。説明するのは宅地建物取引士で、取引士証を提示し、書面に記名します。

物件概要書とは目的も根拠も違います。物件概要書をそのまま使うことはできません。ただし、調査した内容は両方の材料になります。

記載する事項は、物件そのもの、取引の条件、建物、災害や環境の4つの塊で見ると整理できます。水害ハザードマップにおける所在地は比較的新しく加わったもので、古い様式には欄がありません。

書く前に、登記・法令・インフラ・災害の4方向を調査します。調査した日と調査先を記録に残します。渡す時期は契約の前で、判断の時間が取れる形にします。自社の様式と手順は、所管の窓口や専門家に確かめるのが確実です。

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実際に使える様式が必要な方へ

物件概要書の様式が、商い屋の不動産向けページにあります。調査した内容を両方に使える形で整えられます。

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よくある質問

Q. 重要事項説明は、宅建士以外が行えますか。 A. 行えません。宅地建物取引士が、取引士証を提示して説明することとされています。書面への記名も宅建士が行います。業務の分担を決めるときの前提になります。

Q. 買主が説明は不要と言った場合はどうしますか。 A. 交付と説明は業者の義務なので、省略できません。相手の意向にかかわらず行います。時間が取れない場合は、日程を調整します。

Q. 契約と同じ日に説明してもよいですか。 A. 契約が成立するまでの間であれば形としては成り立ちますが、判断の時間が取れません。前もって渡しておくほうが、後のトラブルが減ります。

Q. オンラインで説明できますか。 A. 条件を満たせば認められる形があります。書面をあらかじめ送っておくこと、画面と音声のやり取りができること、取引士証を相手が確認できることなどが条件です。

Q. 調査の結果、分からない事項があった場合は。 A. 調査したが判明しなかったことを、その旨として記載する形が取られます。空欄のままにしないのが要点です。何を調べて分からなかったかを残します。

Q. 古い様式を使い続けても問題ありませんか。 A. 記載すべき事項が追加されていることがあります。水害ハザードマップにおける所在地のように、後から加わった項目が欄に無いと、説明が漏れます。最新の様式で作り直します。

Q. 控えは何年残しますか。 A. 宅建業の帳簿や取引の書類の保存期間に合わせて残す形が扱いやすくなります。帳簿には年数が定められているため、同じつづりに入れておくと判断が要りません。

Q. 賃貸と売買で様式を分けるべきですか。 A. 記載する事項が違うため、分けておくほうが実務は楽になります。1つの様式に全部の欄を入れると、使わない欄が多くなり、消し忘れが起きます。

Q. 調査の結果は、いつまで使えますか。 A. 都市計画や区域の指定は変わります。同じ物件でも、時間が経てば調べ直します。調査した日を必ず記録するのは、このためです。

Q. 重要事項説明書の控えは、誰が保管しますか。 A. 業者が保管します。宅建士が記名したものの写しを、取引の書類と一緒に綴じます。説明した日と説明した宅建士も記録に残します。

Q. 調査した内容が後から変わっていた場合、責任はどうなりますか。 A. いつ時点の情報かを示していることが大事になります。調査した日と調査先を記録に残すのは、このためです。説明のときにも、いつ時点のものかを伝えます。

Q. 宅建士が複数いる場合、誰が説明してもよいですか。 A. 宅地建物取引士であれば説明できます。記名する宅建士と説明する宅建士が同じである必要があるかは、運用で分かれます。誰が説明したかを記録に残します。

Q. 買主が法人の場合、説明の相手は誰になりますか。 A. 契約の当事者である法人の、権限のある人が相手になります。担当者が出席する場合は、権限を確かめておきます。

Q. ハザードマップの記載は、どこまで書きますか。 A. 水害ハザードマップにおける対象物件の所在地を示すこととされています。その市町村が配布しているものを用い、所在地を示す形になります。作成されていない場合の扱いも確かめます。

Q. 重要事項説明書の作成を外部に頼めますか。 A. 調査や作成の補助を頼むことはあっても、説明と記名は自社の宅地建物取引士が行います。責任の所在は業者にあります。

Q. 説明の時間はどれくらい見ておきますか。 A. 物件や取引の内容によりますが、30分から1時間ほど見ておくと、質問にも答えられます。契約の直前に駆け足で行う形は避けます。

Q. 記載すべき事項は、いつ変わりましたか。 A. 改正が重ねられている分野です。水害ハザードマップにおける所在地のように、後から加わったものがあります。年に1回、様式を最新のものと突き合わせる日を決めておきます。

Q. 重要事項説明書と契約書を1枚にまとめられますか。 A. 目的が違うため、別の書面として作るのが原則です。重要事項説明は契約の前に行うもので、契約書は契約の内容を示すものです。時点が違います。

Q. 説明を受ける人が高齢や、日本語が不自由な場合は。 A. 理解できる形で説明することが求められます。時間をかける、書面を事前に渡す、通訳を介するといった配慮が取られます。説明した状況も記録に残します。