民泊の宿泊者名簿|旅館業との違いと3年の保存
目次
住宅宿泊事業を始めるにあたって、宿泊者名簿を備えることになった。旅館業の様式を見つけたものの、民泊でも同じでよいのか分からない。国籍と旅券番号の欄があるが、日本人の客にも要るのかで止まります。
この記事では、民泊の宿泊者名簿を、旅館業との違い・書く項目・保存の3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社の名簿の形を決められる状態を目指します。
結論:住宅宿泊事業法で、備え付けと3年の保存が求められる
民泊の宿泊者名簿とは、住宅宿泊事業者が、宿泊する人について記録して備える名簿のことです。住宅宿泊事業法にもとづくものです。
備え付けるのは、届出住宅その他の国土交通省令・厚生労働省令で定める場所とされています。宿泊させる住宅そのものか、事業者の営業所などに置く形になります。
ポイントはここです。保存の期間は3年とされています。旅館業法の宿泊者名簿も同じく3年です。年数は同じですが、根拠になる法律が違います。
自社がどちらの制度で営業しているかを、まず確かめます。旅館業の許可なのか、住宅宿泊事業の届出なのかで、従う条文が変わります。
書く項目
名簿に記載する事項として挙げられているのは、次のものです。
宿泊者の氏名、住所、職業、宿泊した日。
日本国内に住所を有しない外国人については、これに加えて国籍と旅券番号を記載することとされています。
日本人の宿泊者に旅券番号は要りません。様式に欄があるからといって、全員に書かせる必要はありません。ここを取り違えると、要らない個人情報まで集めることになります。
日本国内に住所を有しない外国人については、旅券の呈示を求め、写しを保存することが求められる形があります。呈示を拒まれた場合の扱いも決めておきます。
職業の欄は、細かく書く必要はありません。会社員、学生、自営業といった区分で足ります。
誰の分を書くか
宿泊する全員を書くのが原則です。代表者1人だけを書く形は取れません。
家族やグループで泊まる場合も、人数分の氏名と住所を記録します。子どもを含むかどうかは、運用で迷うところです。宿泊者である以上は対象と考えるのが安全です。
宿泊の日ごとに記録します。連泊する場合、チェックインの日だけでよいのか、泊まった日をすべて書くのかは、様式の作り方で決めます。期間で書く形にしておくと扱いやすくなります。
無人で運営している場合でも、名簿の記録は必要です。対面での本人確認ができない場合の方法が案内されているため、それに従います。
本人確認のしかた
無人で運営する民泊では、本人確認の方法が問題になります。
案内されているのは、対面のほか、ビデオ通話などの映像を用いた方法です。宿泊者の顔と旅券などを確認できる形が求められます。
確認した記録も残します。いつ、どの方法で、誰が確認したか。名簿の欄外か、別の記録に残します。
鍵の受け渡しを宅配ボックスなどで行う場合でも、本人確認は別に必要です。鍵を渡せたことは、本人を確認したことにはなりません。
保存と閲覧
名簿は3年間保存します。起算は、記載した日からと考えるのが一般的な形です。
保存する場所は、届出住宅か、定められた場所です。複数の住宅を運営している場合、まとめて1か所に置ける扱いがあるため、案内を確かめます。
行政からの求めがあれば、閲覧に応じることになります。すぐに出せる形にしておきます。データで保存する場合も、求められたときに見せられるようにします。
宿泊者の個人情報が並ぶ名簿なので、見られる範囲を絞ります。清掃の委託先などが自由に見られる場所に置かないようにします。
名簿以外に要るもの
住宅宿泊事業では、名簿のほかにも記録や報告が求められます。
定期報告。宿泊日数、宿泊者数、延べ宿泊者数、国籍別の内訳などを、定められた期間ごとに報告することとされています。
標識の掲示。届出住宅に、定められた様式の標識を掲げます。
衛生・安全の措置。清掃や、非常用照明器具の設置などが求められます。
定期報告の材料は、名簿から作ります。国籍別の人数を集計するため、名簿の側で国籍が分かる形になっている必要があります。
報告の期限を逃すと、年に数回のことなので気づきにくくなります。期限の管理表に入れておくのが確実です。
名簿を作るときの実務
名簿の形を決めるときに、押さえておくことが4つあります。
1つ目は、入力の方法です。タブレットで入力してもらう形、紙に書いてもらう形、予約のときに事前に入力してもらう形。チェックインの流れに合う方法を選びます。
2つ目は、外国人向けの案内です。国籍と旅券番号の欄があることを、多言語で案内しておくとやり取りが減ります。
3つ目は、旅券の写しの取り方です。その場で撮るのか、送ってもらうのか。保存の場所と期間も決めておきます。
4つ目は、集計のしやすさです。定期報告で国籍別の人数が要るため、国籍を選択式にしておくと集計が楽になります。自由入力だと、同じ国が違う表記で混ざります。
この4つを決めてから様式を作ると、後から作り直す作業が減ります。報告のことまで見て設計するのが要点です。
旅館業との使い分け
同じ建物で、旅館業と住宅宿泊事業のどちらで営業するかを選ぶ場面があります。名簿の扱いも変わるため、違いを押さえておきます。
旅館業は許可です。構造や設備の基準があり、日数の制限がありません。
住宅宿泊事業は届出です。基準は緩やかですが、年間の提供日数に上限があります。
名簿の記載事項は重なりますが、根拠になる法律が違うため、様式は分けて持つほうが説明しやすくなります。
自治体によっては、条例で独自の制限を設けているところがあります。区域や期間の制限、近隣への説明の義務など。始める前に、届出先の条例を確かめます。
どちらで営業するかは、提供したい日数と、建物の構造で決まります。名簿の作り方は、その後に決める順番になります。
保存と処分の形を決める
名簿は3年分が積み上がります。置き場所と処分の形を先に決めておきます。
紙で運用する場合は、月ごとにつづりを分け、表紙に年月と処分の予定年を書きます。3年が過ぎたつづりから処分します。
データで運用する場合は、年ごとにファイルを分けます。共有の場所に置く場合、権限を絞ります。清掃や管理を委託している先が見られる状態になっていないかを確かめます。
処分は、個人情報が含まれるため、復元できない形で行います。紙は溶解か裁断、データは確実に消去します。
処分した日と対象を1行残します。「2023年度分を2026年◯月に処分」といった記録があれば、後から探されたときに説明できます。
定期報告の材料として使う集計は、名簿とは別に残しておくと、名簿を処分した後も数字を追えます。
まとめ
民泊の宿泊者名簿は、住宅宿泊事業法にもとづいて備え、3年間保存します。旅館業法の名簿と年数は同じですが、根拠になる法律が違います。
書くのは、氏名、住所、職業、宿泊した日です。日本国内に住所を有しない外国人については、国籍と旅券番号が加わり、旅券の呈示と写しの保存が求められる形があります。
日本人の宿泊者に旅券番号は要りません。様式に欄があっても、全員に書かせる必要はありません。
宿泊する全員を記録します。代表者1人だけを書く形は取れません。無人で運営する場合も本人確認は必要で、映像を用いた方法などが案内されています。名簿は定期報告の材料にもなるため、国籍が分かる形にしておきます。自社の運営で迷う点は、届出先の自治体に確かめるのが確実です。
よくある質問
Q. 旅館業の名簿の様式を、そのまま民泊に使えますか。 A. 記載する事項が重なるため、様式としては使えることが多くあります。ただし、根拠が違うため、住宅宿泊事業法で求められる項目が入っているかを確かめます。届出先の自治体が様式を示していることもあります。
Q. 名簿を電子データで持ってもよいですか。 A. データで持つ形も取れます。3年間保存でき、求めがあれば閲覧に応じられる状態にしておきます。個人情報が含まれるため、権限を絞った場所に置きます。
Q. 予約サイトの情報をそのまま使えますか。 A. 予約者の情報と、実際に宿泊する人が違うことがあります。予約者=宿泊者とは限りません。宿泊する全員の情報を、改めて記録する必要があります。
Q. 子どもの分も書きますか。 A. 宿泊者である以上は対象と考えるのが安全です。職業の欄は「小学生」などで足ります。扱いに迷う場合は、届出先の自治体に確かめます。
Q. 旅券の写しはどこまで残しますか。 A. 日本国内に住所を有しない外国人について、写しの保存が求められる形があります。保存する場合は、名簿と同じ期間、同じ管理のもとで残します。
Q. 宿泊者が記載を拒んだらどうしますか。 A. 名簿への記載は事業者の義務なので、記載できないまま宿泊させる形は避けます。予約の段階で、記載が必要であることを伝えておくと、当日のやり取りが減ります。
Q. 定期報告はいつ出しますか。 A. 定められた期間ごとに報告することとされています。期限と提出の方法は届出先の案内で確かめます。年に数回のことなので、期限の管理表に入れておきます。
Q. 名簿の3年が過ぎたら、どう処分しますか。 A. 個人情報が含まれるため、復元できない形で処分します。処分した日と対象を1行残しておくと、後から説明できます。年ごとにつづりを分けておくと、期限が来たものだけを取り出せます。
Q. 名簿の様式は自治体が配布していますか。 A. 配布しているところがあります。届出先の案内を確かめます。様式が示されていれば、それを使うほうが確実です。
Q. 宿泊者が複数の国籍を持つ場合は。 A. 旅券に記載されている国籍で記録します。判断に迷う場合は、届出先に確かめます。
Q. 宿泊者名簿を、予約サイトの記録で代えられますか。 A. 代えられません。予約者と宿泊者が違うことがあり、記載すべき項目も足りません。名簿は別に作ります。
Q. 清掃の委託先が名簿を見られる状態でも問題ありませんか。 A. 個人情報が並ぶ書類なので、見られる範囲は絞ります。住宅に置く場合は、施錠できる場所にするか、データにして権限を絞る形にします。
Q. 定期報告の数字は、名簿から出せますか。 A. 出せます。宿泊日数、宿泊者数、延べ宿泊者数、国籍別の内訳。名簿に国籍の欄を選択式で作っておくと、集計がそのまま使えます。
Q. 年間の提供日数の上限を超えるとどうなりますか。 A. 住宅宿泊事業としては営業できません。超える見込みがあるなら、旅館業の許可を検討することになります。日数の管理も、名簿から出せる形にしておきます。
Q. 管理を業者に委託している場合、名簿は誰が作りますか。 A. 住宅宿泊管理業者に委託している場合、実際の記録は業者が行うことがあります。ただし、義務の所在と、名簿をどこに備えるかは契約で決めておきます。
Q. 宿泊者名簿を、複数の住宅でまとめて1か所に置けますか。 A. 備え付ける場所について定めがあり、まとめられる扱いがある場合があります。届出先の案内で確かめます。まとめる場合も、住宅ごとに分かる形にしておきます。
Q. 名簿を見せるよう求められるのは、どんな場面ですか。 A. 行政の立入や報告の求めがあったときです。すぐ出せる形にしておきます。求められてから探す状態だと、備えていないと見られかねません。
Q. 宿泊者から名簿の記載内容について問い合わせがあったら。 A. 本人に関する情報であれば、確かめて答えます。他の宿泊者の情報は示しません。1枚に複数人を書く様式だと、この対応が難しくなります。
Q. 民泊の名簿に、宿泊料金を書く欄は必要ですか。 A. 記載すべき事項として求められているのは、氏名・住所・職業・宿泊した日などです。料金は求められていません。要らない情報まで集めないようにします。