被扶養者異動届|入れるときより外すときが抜ける
目次
被扶養者異動届は、結婚や出産のときに出す書類として知られています。ところが実務で困るのは、入れるときではありません。外すときです。本人から言われないと分からないため、気づいたときには何か月も過ぎています。
この記事では、被扶養者異動届を、いつ出すか・何を添えるか・どうやって外れる人に気づくかの3つに分けて整理します。読み終えたときに、社内で拾う仕組みを作れる状態を目指します。
結論:事実が起きてから5日以内に出す
被扶養者異動届とは、健康保険の扶養に入る人・外れる人を届け出る書類のことです。正式には、健康保険被扶養者異動届と呼ばれます。
提出の期限は、事実が発生した日から5日以内とされています。結婚した日、生まれた日、就職した日。届出を書いた日ではなく、事実が起きた日から数えます。
提出先は、協会けんぽに加入している場合は年金事務所、健康保険組合に加入している場合はその組合です。加入している先で提出先が変わります。
配偶者を扶養に入れる場合は、国民年金の第3号被保険者の手続きも同じ用紙でできます。別々に出す必要はありません。ここを知らないと、二度手間になります。
ポイントはここです。5日以内という期限は、実際にはよく過ぎます。本人が会社に言うのが遅れるからです。だから、期限を守らせることより、早く知る仕組みを作るほうが効きます。
扶養に入れる条件
誰でも扶養に入れられるわけではありません。続柄と収入の2つで判断します。
続柄の条件は、被保険者の直系の親族、配偶者、子、孫、兄弟姉妹であれば、同居していなくても対象になる形があります。それ以外の親族は、同居していることが条件になります。
収入の条件は、年間の収入が一定の額より少ないこととされています。60歳以上の人や障害のある人には、別の線が示されています。
同居しているかどうかでも判断が変わります。同居している場合は、被保険者の収入の半分より少ないこと。別居している場合は、仕送りの額より少ないこと。
収入の数え方も、税の扶養とは違います。通勤手当や失業給付、年金なども含めて数えるとされています。税の年末調整で扶養に入れているかどうかと、健康保険の扶養は別の判断になります。
ここが社内で混ざるところです。年末調整の扶養控除等申告書と、健康保険の被扶養者は同じではありません。片方だけ直して、もう片方が残っていることがあります。
住んでいる場所についての条件もあります。国内に住んでいることが原則とされていて、留学などの例外が示されています。海外にいる家族については、加入先に確かめます。
外れる人をどう見つけるか
実務でいちばん問題になるのがここです。扶養から外れる事実は、会社からは見えません。
外れる形は主に4つです。
1つ目は、家族が就職した場合です。自分の勤め先で健康保険に入るので、扶養から外れます。
2つ目は、収入が増えた場合です。パートの時間を増やした、年金の額が変わった。線を超えた時点で外れます。
3つ目は、離婚や死亡です。続柄が無くなります。
4つ目は、子が独立した場合です。就職して別に住むようになると、条件から外れることがあります。
どれも、本人が会社に言わないと分かりません。言い忘れるというより、届出が要ると思っていない場合がほとんどです。
拾う方法は3つあります。1つ目は、年末調整のときに家族の状況を聞くこと。年に1回は必ず確かめる機会になります。
2つ目は、健康保険の加入先が行う確認です。毎年、扶養の状況を確かめる書類が送られてくる形があります。ここで発覚することがあります。
3つ目は、社内の案内です。入社のときや年に1回、どんなときに届出が要るかを1枚で伝えます。「家族が働き始めたら教えてください」という言い方のほうが伝わります。
外れるのが遅れるとどうなるか
扶養から外れる事実があったのに届出をしていないと、その人は健康保険を使える状態のままになります。
後から分かると、さかのぼって外れることになります。外れた日以降に使った医療費については、加入先から返すよう求められる形があります。
本人にとっての負担が大きくなるのはここです。何か月も経ってから、まとまった額の請求が来ます。会社が拾う仕組みを作るのは、本人を守るためでもあります。
保険証の扱いも変わっています。マイナンバーカードを健康保険証として使う形が進んでいて、返却の手続きも加入先の案内によって違います。加入先に確かめます。
外れた人が国民健康保険に入る場合、扶養から外れたことが分かる書類が要ります。届出を出したときに交付される書類がそれにあたる形があるので、本人に渡します。
添付する書類でつまずかない
被扶養者異動届が差し戻される原因の多くは、添付する書類です。
必要になるのは、続柄が分かるものと、収入が分かるものです。
続柄が分かるものは、戸籍の謄本や抄本、住民票の写しなど。マイナンバーを書くことで省略できる場合があります。
収入が分かるものは、課税や非課税の証明書、退職したことが分かる書類、年金の額が分かる書類など。どの書類が要るかは、その人の状況で変わります。
別居している家族を扶養に入れる場合は、仕送りの事実が分かるものも要ります。振込の記録などです。手渡しだと記録が残らないため、振込にしてもらう案内が必要になります。
書類の有効期限にも気をつけます。発行から何か月以内、という条件が付いているものがあります。本人に取ってきてもらってから時間が経つと、取り直しになります。
社内では、状況ごとに必要な書類の一覧を作っておくと差し戻しが減ります。結婚のとき、出産のとき、親を入れるとき。場面ごとに並べると、本人にもそのまま渡せます。
入るときの手続きで、先に決めておくこと
入れるときの届出は、本人から連絡が来るので動きやすい形です。そのときに一緒に決めておくと、後が楽になります。
決められるのは3つです。
1つ目は、次に確かめる時期です。子であれば、就職する年齢に近づいたとき。親であれば、年金の額が変わる時期。先の予定が読める人は、あらかじめ確認の時期を書いておけます。
2つ目は、収入の見通しです。パートで働いている配偶者なら、いまの収入と、線までどれくらいの余裕があるか。線に近い人は、翌年に外れる可能性があると分かった状態になります。
3つ目は、連絡の約束です。働き方が変わったら教えてほしい、と入るときに1回伝えます。手続きが終わった直後がいちばん伝わる場面です。
この3つを、届出の控えと一緒に残しておきます。名簿に1列足すだけでも足ります。扶養に入っている人の一覧に、次の確認時期を書いておく形です。
一覧があると、年末調整のときに確かめる相手を絞れます。全員に同じことを聞くより、線に近い人に重ねて聞くほうが、拾える率が上がります。
出産で扶養に入れる場面では、続けて起きる手続きがあります。健康保険の給付、育児休業の手続き、住民票と続柄の書類。このときに一度にそろえておくと、後から取り直しになりません。
社内の案内を1枚にする
被扶養者異動届は、本人が動かないと始まらない手続きです。案内が1枚あると、拾える率が上がります。
書くのは5つです。
1つ目は、どんなときに連絡が要るかです。結婚、出産、家族の就職、収入の変化、離婚、死亡、同居や別居の変化。生活の言葉で書きます。
2つ目は、連絡先です。誰に、どうやって伝えるか。メールでも口頭でもよい形にしておくと、連絡が増えます。
3つ目は、必要な書類です。場面ごとの一覧。取りに行く場所も書いておきます。
4つ目は、期限です。事実が起きてから5日以内。遅れても出すことを書いておきます。遅れたから出さない、が最悪の形です。
5つ目は、遅れたときに起きることです。さかのぼって外れること、医療費を返すよう求められることがあること。本人のための情報として書きます。
この1枚を、入社のときと年末調整のときに配ると、届出が来るようになります。知らないから言わないだけという場面がほとんどです。
まとめ
被扶養者異動届は、健康保険の扶養に入る人・外れる人を届け出る書類です。事実が発生した日から5日以内に、年金事務所または健康保険組合へ出します。
扶養に入れる条件は、続柄と収入の2つで判断します。同居か別居かで収入の見方が変わり、通勤手当や年金なども含めて数えます。税の扶養とは判断が別です。
実務でいちばん抜けるのは、外れるときの届出です。家族の就職、収入の増加、離婚。どれも会社からは見えないので、年末調整や社内の案内で拾う仕組みを作ります。
遅れると、さかのぼって外れ、医療費を返すよう求められることがあります。本人の負担が大きくなるため、早く知る仕組みが本人を守ります。自社の取扱いは、加入している健康保険の窓口や年金事務所、社会保険労務士などの専門家に確かめるのが確実です。
よくある質問
Q. 提出の期限はいつですか。 A. 事実が発生した日から5日以内とされています。届出を書いた日ではなく、結婚した日や生まれた日から数えます。
Q. 期限を過ぎてしまいました。 A. 遅れても出します。出さないままにするのがいちばん影響が大きくなります。遅れた理由を聞かれることがあるので、事実が分かった日を記録に残しておきます。
Q. 提出先はどこですか。 A. 協会けんぽに加入している場合は年金事務所、健康保険組合に加入している場合はその組合です。加入先で変わります。必要な添付書類の案内も加入先ごとに違うので、そちらの案内を見ます。
Q. 保険証はどうなりますか。 A. マイナンバーカードを健康保険証として使う形が進んでいて、返却や切り替えの手続きは加入先の案内によって違います。加入先に確かめます。
Q. 配偶者を入れるときは、年金の手続きも別に要りますか。 A. 同じ用紙で国民年金の第3号被保険者の手続きもできる形になっています。別々に出す必要はありません。
Q. 税の扶養に入れていれば、健康保険も自動で入りますか。 A. 別の判断です。収入の数え方が違います。健康保険では通勤手当や失業給付、年金なども含めて数えるとされています。
Q. 収入の線はいくらですか。 A. 年間の収入が一定の額より少ないことが条件とされていて、60歳以上の人や障害のある人には別の線が示されています。加入先の案内で確かめます。
Q. 別居している親を扶養に入れられますか。 A. 続柄の条件を満たしていれば対象になる形があります。仕送りの額より収入が少ないことが条件になり、仕送りの事実が分かる記録が要ります。
Q. 仕送りを手渡ししています。 A. 記録が残らないため、確認が難しくなります。振込にしてもらうと、そのまま記録になります。
Q. 家族が就職しました。何をしますか。 A. 扶養から外れるので、届出を出します。保険証の扱いは加入先の案内で確かめます。就職した日が事実の発生日になるので、入社した日を本人に確かめておきます。
Q. 扶養から外れた証明を求められました。 A. 国民健康保険に入るときなどに要ります。届出を出したときに交付される書類がそれにあたる形があるので、本人に渡します。
Q. 外れる届出が遅れるとどうなりますか。 A. さかのぼって外れることになり、その間に使った医療費を返すよう求められる形があります。本人にまとまった額の請求が来ます。
Q. 海外に住んでいる家族はどうなりますか。 A. 国内に住んでいることが原則とされていて、留学などの例外が示されています。加入先に確かめます。
Q. 添付する書類は何が要りますか。 A. 続柄が分かるものと収入が分かるものです。マイナンバーを書くことで省略できる場合があります。状況によって変わるので、場面ごとの一覧を作っておくと確実です。
Q. 書類に有効期限はありますか。 A. 発行から何か月以内という条件が付いているものがあります。本人に取ってきてもらってから時間が経つと取り直しになるので、届出の直前にそろえます。
Q. 社内で気づく方法はありますか。 A. 年末調整のときに家族の状況を聞くのがいちばん確実です。加入先が行う扶養の確認でも分かります。入社時と年1回、案内を配ると連絡が増えます。
Q. 扶養に入っている人の一覧は、どこに持ちますか。 A. 労働者名簿に列を足す形が扱いやすくなります。次に確かめる時期を1列書いておくと、年末調整のときに聞く相手を絞れます。
Q. 収入が線に近い家族がいます。 A. 翌年に外れる可能性がある人として、先に見ておきます。働き方が変わったら教えてほしいと、扶養に入れた時点で1回伝えておくと連絡が来ます。
Q. 出産で子を扶養に入れます。ほかに要る手続きはありますか。 A. 健康保険の給付や育児休業の手続きが続きます。書類を一度にそろえておくと、後から取り直しになりません。