勤怠と労務解説2026.04.06 公開KK-35

年5日の時季指定|対象になる人と足りないとき

目次

年5日は取らせないといけない、とは知っている。けれど、誰が対象で、いつまでに5日なのかが曖昧なまま1年が過ぎ、年度末に「あと4日残っている人がいます」と分かって慌てる。総務でくり返される形です。

この記事では、年5日の時季指定を、対象になる人・数え方・足りないときの動き方の3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社で誰が危ないかを月ごとに見られる状態を目指します。

そもそもの付与日数から確かめたい方は、こちらを読むと早いです。→ 有給休暇の付与日数

結論:10日以上付与された人に、1年で5日取らせる

年5日の時季指定とは、年次有給休暇が10日以上付与された労働者について、そのうち5日を、使用者が時季を定めて取得させる仕組みのことです。労働基準法にもとづくもので、2019年4月から始まっています。

対象になるのは、その年に10日以上付与された人です。正社員に限られません。週4日勤務のパートでも、勤続年数が進んで10日以上になれば対象に入ります。

ポイントはここです。「取らせる」のは会社の義務です。本人が取らないから仕方ない、では済みません。取らせられなかった場合、罰則の対象になるとされています。

対象は10日以上付与された人有給がある人6か月と8割を満たした人10日以上付与ここから年5日の対象取らない人時季指定が要る
10日以上付与された人だけが対象になる関係を示した層の図

期間は、付与した日から1年です。会社の年度ではありません。基準日をそろえていない会社では、人によって期限が違います。

5日の数え方

5日には、本人が自分で取った日も含まれます。会社が時季を指定した日だけを数えるわけではありません。

含まれるのは、労働者が請求して取得した日、計画的付与で取得した日、そして会社が時季指定して取得させた日です。

5日に数えられるもの取得のしかた5日に数えるか本人が請求して取得数える計画的付与で取得数える会社が時季指定数える時間単位で取得数えない
5日に数えられる3つの取得のしかたを並べた表

含まれないものもあります。時間単位で取得した分は、年5日には含めない扱いとされています。半日単位については、0.5日として数える形が案内されています。

つまり、自分でどんどん取る人については、会社が何もしなくても5日を超えます。時季指定が必要になるのは、取らない人だけです。全員に対して一律に指定する必要はありません。

誰が危ないかを月ごとに見る

年度末に気づくと手が打てません。月ごとに残りを見る形にしておくと、余裕をもって動けます。

見るのは、人ごとに「期限までの残りの月数」と「あと何日取らせる必要があるか」の2つです。期限の3か月前で3日以上残っている人は、そのままだと間に合わない可能性が高くなります。

期限までの月数で危なさが変わる期限まで9か月・残り4日まだ間に合う月に1日ずつで届く期限まで3か月・残り4日危ない月に2日近く取らせないと届かない
期限までの月数と残り日数から、危ない人を見つける図
点検表テンプレート
様式をさがす

実際に使える様式が必要な方へ

年次有給休暇管理簿のExcelの様式が、点検板のテンプレートのページにあります。この記事は5日をどう回すかの話です。

この様式をひらく

基準日をそろえていない会社では、期限が人ごとにばらつきます。管理簿に期限の列を作り、期限の早い順に並べ替えられるようにしておくと、毎月見るのが数分で済みます。

「取らない人」には理由があります。人手が足りない、引き継ぎができない、休むと仕事が溜まる。日数を伝えるだけでは動きません。なぜ取れないのかを聞いて、そこを外す必要があります。

時季指定のしかた

会社が時季を指定するときは、あらかじめ本人の意見を聴くこととされています。一方的に日を決めて通知する形ではありません。

聴いたうえで、できる限りその意見を尊重して時季を定めるとされています。実務では、「この月のどこかで2日取ってください」と伝えて候補を出してもらい、そのうえで日を決める形が取られています。

時季指定を行うには、就業規則に定めておくことも求められます。休暇に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項に当たるため、時季指定の対象になる労働者の範囲と、指定の方法を書いておきます。

指定したことは記録に残します。年次有給休暇管理簿に、取得した日と、それが時季指定によるものかどうかが分かる形にしておきます。

計画的付与という別の道

年5日を確実にする方法として、計画的付与があります。労使協定を結んで、有給のうち5日を超える部分について、あらかじめ取得する日を決めておく仕組みです。

やり方は3つあります。事業場全体を一斉に休みにする方式、班やグループごとに交替で休む方式、個人ごとに計画表を作る方式です。

計画的付与の3つの方式方式向いている会社事業場を一斉に休む取引先も休む時期がある班ごとに交替で休む現場を止められない個人ごとに計画表働き方がばらばら共通充てられるのは5日を超える分
一斉・交替・個人別という3つの計画的付与の方式を並べた表

一斉休業の方式は、製造業や、取引先も休む時期がある会社で使いやすい形です。夏季や年末年始に固めて充てると、年5日の大半が自動的に消化されます。

注意点は、5日を超える部分しか計画的付与に充てられないことです。10日付与された人なら、計画的付与に回せるのは5日までです。有給が少ない人を一斉休業に含めると、日数が足りません。

足りないと分かったときの動き方

期限が近いのに残っている人が出たら、順番に手を打ちます。

1つ目は、本人と日を決めることです。「いつなら取れるか」と聞くだけで進むことがあります。理由が業務であれば、そこから先へ進みます。

2つ目は、業務の手当てです。その人が休むと止まる仕事を、誰かに引き継げる形にします。引き継ぎの資料を作る時間も、業務として確保します。

3つ目は、時季指定です。意見を聴いたうえで、会社が日を定めます。ここまで来たら、指定した日を書面で伝え、管理簿に残します。

足りないと分かったら3段1声をかけるいつなら取れるか聞く2業務を手当てする引き継ぎの時間も業務3時季を指定する意見を聴いたうえ
声をかける・業務を手当てする・時季を指定するという3段のフロー

1人だけ取れていない状態は、その人の問題ではなく配置の問題であることが多くあります。毎年同じ人が残るなら、業務の分け方を見直す時期に来ています。

取れない理由を外す

声をかけても残る人には、たいてい共通の理由があります。実務でよく出てくるのは3つです。

1つ目は、代わりがいないことです。その人しかできない作業があると、休めません。手順を書き出して、他の人でも回せる形にするところから始まります。1日で終わる話ではないので、期限の半年前から動きます。

2つ目は、休むと後で自分に返ってくることです。休んだ日の分の仕事が、翌日に溜まる。これだと有給が「前借り」になります。その日の仕事を誰かが受ける形にしないと、取得は進みません。

3つ目は、言い出しにくさです。周りが取っていないと、自分だけ取りにくくなります。管理職から先に取る、部署ごとに取得率を出す、といった形で空気を変えている会社があります。

この3つは、どれも制度の話ではありません。年5日が回らない会社は、たいてい配置と引き継ぎの問題を抱えています。制度を説明するより、そちらを外すほうが早く効きます。

管理簿にどう書くか

年次有給休暇管理簿には、時季、日数、基準日を記載し、対象の期間が終わってから3年間保存するとされています。年5日を回すには、ここに少し足しておくと使えます。

足すのは2つです。期限の列と、取得のしかたの列です。期限は基準日から1年後。取得のしかたは、本人の請求か、計画的付与か、時季指定かを分けます。

管理簿に足す2つの列足す列何が見えるか期限基準日から1年後の日取得のしかた請求・計画・指定の別時間単位5日には数えない分共通期限の早い順に並べ替える
管理簿に足しておくと年5日が回る2つの列を並べた表

この2つがあると、月ごとに「期限が近くて残りが多い人」を並べ替えられます。時間単位で取った分は5日に数えないため、日数の列とは別に持つようにします。

管理簿は、労働者名簿や賃金台帳と一緒に調製してもよいとされています。1人1枚の形にして、名簿の後ろに綴じている会社もあります。

まとめ

年5日の時季指定の対象になるのは、その年に10日以上付与された人です。正社員に限られず、パートでも勤続年数が進めば対象に入ります。

5日には、本人が自分で取った日も、計画的付与で取った日も含まれます。時季指定が必要になるのは、取らない人だけです。時間単位で取った分は含まれません。

期間は付与した日から1年です。基準日をそろえていない会社では人ごとに期限が違うため、管理簿に期限の列を作って並べ替えられるようにしておきます。

時季を指定するときは、あらかじめ本人の意見を聴き、できる限り尊重します。就業規則に定めておくことも求められます。自社の運用で判断に迷う点は、所轄の労働基準監督署か社会保険労務士に確かめるのが確実です。

点検表テンプレート
様式をさがす

実際に使える様式が必要な方へ

年次有給休暇管理簿のExcelの様式が、点検板のテンプレートのページにあります。期限と取得のしかたの列を足せば、そのまま年5日の管理に使えます。

この様式をひらく

よくある質問

Q. 10日に満たない人には、何もしなくてよいですか。 A. 年5日の時季指定の義務はかかりません。ただし、有給が発生している以上、取得できる状態にしておく必要はあります。日数が少ない人ほど取りにくい傾向があるため、声をかける対象からは外さないほうが安全です。

Q. 5日を取らせられなかった場合、どうなりますか。 A. 罰則の対象になるとされています。対象になる労働者1人ごとに問われる形が案内されているため、人数が多いと影響が大きくなります。期限の前に気づける仕組みを作るのが要点です。

Q. 本人が「取りたくない」と言った場合も指定しますか。 A. 取らせることが会社の義務なので、指定することになります。意見を聴いたうえで、できる限り尊重しつつ日を定めます。取りたくない理由が業務にあるなら、そこを手当てします。

Q. 退職する人にも年5日は必要ですか。 A. 期間の途中で退職する場合の扱いは、在籍している期間に応じて考えることになります。取得させられる日が残っていないまま退職日を迎えることが無いよう、申し出を受けた時点で残日数と期限を確かめます。

Q. 計画的付与と時季指定は、両方使えますか。 A. 使えます。計画的付与で3日、残り2日を時季指定、という形も取れます。計画的付与で取得した日数は年5日に数えられるため、足りない分だけ指定すれば足ります。

Q. 半日で取った場合、何日と数えますか。 A. 半日単位で取得した分は0.5日として数える形が案内されています。管理簿では日数の列を小数で持てるようにしておきます。時間単位のものと混ざらないよう、列を分けておきます。

Q. 基準日をそろえると、年5日の管理は楽になりますか。 A. 期限が全員同じになるため、月ごとの確認が1本で済みます。人数が多く、入社の時期がばらついている会社ほど効果があります。移行のときに前倒しの付与が発生する点だけ、先に見込んでおきます。

Q. 管理簿を作っていないと、どうなりますか。 A. 年次有給休暇管理簿の作成は求められているものです。作っていなければ、年5日を満たしているかどうかも示せません。出勤簿とは別に、有給だけを追える形にしておきます。

Q. 部署ごとの取得率を出すのは、何のためですか。 A. 誰が取れていないかは個人の話になりますが、部署ごとに並べると配置の偏りが見えます。同じ部署だけ毎年低いなら、人数か業務量の問題です。個人を責めずに手を打てる材料になります。

Q. 管理職にも年5日はかかりますか。 A. 労働基準法上の管理監督者に当たる人も、年次有給休暇そのものは発生します。10日以上付与されていれば年5日の対象になります。労働時間の規定が適用されないことと、有給の扱いは別です。

Q. 年5日の対象になるかどうかは、いつ判断しますか。 A. その年に10日以上付与された時点で判断します。前の年の繰り越し分を足して10日になった場合は対象になりません。その年に新しく付与された日数で見ます。

Q. 期限が年度をまたぐ人の管理はどうしますか。 A. 基準日から1年が期間なので、会社の年度とはずれます。管理簿に期限の列を作り、年度ではなく期限で並べ替えるようにします。年度末にまとめて確かめる運用だと、期限が年度の途中に来る人を取りこぼします。

Q. 5日を超えて取らせても問題ありませんか。 A. 問題ありません。年5日は下限で、上限ではありません。取得が進んでいる会社では、時季指定そのものが要らなくなります。

Q. 時季指定を書面で伝える必要はありますか。 A. 伝え方が法令で決められているわけではありませんが、いつ誰に何日を指定したかが残る形にしておくと確実です。メールでも社内の通知でもかまいません。管理簿に指定した日を書いておけば、記録としては足ります。

Q. 5日に届かないまま期限が来た人がいた場合、あとから何ができますか。 A. 期限を過ぎた分をさかのぼって取らせることはできません。起きてしまった事実は残るので、同じことをくり返さないための手を打つことになります。翌年の期限を管理簿に入れ、半年の時点で確かめる形にします。

Q. 育児休業などで長く休んでいた人はどうなりますか。 A. 休業している期間は労働の義務が無いため、時季指定の対象になる日が少なくなります。扱いが分かれる場面があるため、所轄の労働基準監督署か社会保険労務士に、休業の期間を示して確かめるのが確実です。