技能講習と特別教育の違い|数字で分かれる境目
目次
現場から「フォークリフトの資格を取らせたい」と言われた。調べてみると、技能講習と特別教育の2つが出てくる。どちらを受けさせればよいのか、値段も日数も違うのに、決め手が分からない。総務でよく止まるところです。
この記事では、技能講習と特別教育の違いを、境目の数字・受けさせ方・記録の3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社の機械にどちらが要るかを自分で判断できる状態を目指します。
結論:違いは3つ。誰が行うか、記録は誰が持つか、境目は数字
技能講習と特別教育の違いとは、労働安全衛生法にもとづく2つの教育の、行う主体と対象になる業務の範囲の違いのことです。名前が似ているので混ざりますが、中身はかなり違います。
1つ目の違いは、誰が行うかです。技能講習は都道府県労働局長の登録を受けた登録教習機関が行うとされています。特別教育は事業者が行うもので、社内で実施できます。
2つ目の違いは、証明の形です。技能講習は修了証が交付され、本人が携帯します。特別教育には決まった様式の修了証がなく、事業者が記録を作って保存する形になっています。
3つ目の違いは、対象になる業務の範囲です。同じ機械でも、重量や荷重の大きさで分かれます。
総務の側から見ると、いちばん効いてくるのは2つ目です。特別教育は記録を会社が持たなければならないので、やりっぱなしにすると何も残りません。
境目になる数字
どちらが要るかは、機械の大きさで決まります。よく出てくるものを並べます。
フォークリフト。最大荷重1トン以上は技能講習、1トン未満は特別教育です。
車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)。機体重量3トン以上は技能講習、3トン未満は特別教育です。
高所作業車。作業床の高さ10メートル以上は技能講習、10メートル未満は特別教育です。
クレーン。つり上げ荷重5トン以上は運転士免許、5トン未満で0.5トン以上は技能講習または特別教育の区分に分かれます。
玉掛け。つり上げ荷重1トン以上のクレーン等で行う玉掛けは技能講習、1トン未満は特別教育です。
見るのは「機械の能力」であって、実際に扱う荷物の重さではありません。1トン未満の荷物しか運ばないとしても、最大荷重1トンのフォークリフトを使うなら技能講習が要ります。ここを取り違えると、資格が足りないまま作業させることになります。
カタログで確かめる
自社の機械がどちらに当たるかは、カタログか銘板で確かめます。現場の人の記憶や、見た目の大きさで決めません。
フォークリフトなら最大荷重、建設機械なら機体重量、高所作業車なら作業床の高さ。銘板に書かれている数字がそのまま判断の材料になります。
レンタルの機械を使う場合も同じです。借りるたびに大きさが変わるなら、技能講習を受けさせておくほうが安全です。技能講習を持っていれば、その範囲の小さい機械も扱えます。逆は成り立ちません。
社内の機械の一覧に、この数字の列を足しておくと、毎回調べずに済みます。機械が入れ替わったときに列を埋めるだけで、要る資格が分かる形になります。
特別教育は社内でできるが、決まりがある
特別教育は事業者が行うものですが、好きなように行ってよいわけではありません。科目と時間が定められています。
一般には、学科と実技に分かれ、それぞれ科目ごとの時間が決まっているとされています。フォークリフトの特別教育であれば、走行に関する装置の構造、荷役に関する装置の構造、運転に必要な力学、関係法令といった科目が挙げられています。
社内に教えられる人がいるかどうかが、自前でやるかどうかの分かれ目になります。定められた科目と時間を満たせないなら、外部の機関に頼む形になります。特別教育を行っている機関は多くあります。
省略できる科目が定められている場合もあります。すでに関連する資格を持っている人は、一部の科目を省けることがあります。ただし、省略できる範囲は決まっているので、勝手に短くすることはできません。
記録に残すこと
特別教育を行ったら、記録を作って保存します。保存の期間は3年とされています。
残すのは、受けた人の氏名、実施した年月日、科目ごとの内容と時間、講師の氏名です。学科と実技のそれぞれについて残します。
抜けやすいのは科目ごとの時間です。「フォークリフト特別教育を実施」とだけ書いてある記録では、定められた時間を満たしたかどうかが分かりません。科目名と時間を並べた表を、記録の中に入れておきます。
技能講習のほうは、教習機関が修了証を交付するので、会社が作る記録はありません。ただし、誰が持っているかを一覧にしておくのは会社の仕事です。
費用と日数の違い
受けさせる側から見ると、費用と日数も判断の材料になります。
技能講習は、資格によって2日から5日ほどかかります。費用も、特別教育より高くなるのが一般的です。現場を空ける日数が長いので、配置の調整が要ります。
特別教育は1日から2日で済むものが多く、費用も抑えられます。社内で行えば費用はほとんどかかりませんが、教える人の時間と、科目を満たす準備が必要になります。
判断の目安はこうなります。将来その人に大きい機械を扱わせる見込みがあるなら、最初から技能講習。当面は小さい機械だけで、人数も多いなら特別教育を社内で回す。機械が入れ替わる可能性を見て決めるのが実務的です。
混ざりやすい言葉
現場では、どちらも「資格」「講習」と呼ばれます。会話の中では区別が付かないので、書類の上では分けて書きます。
「フォークリフトの資格を持っている」では足りません。技能講習なのか特別教育なのか、最大荷重の範囲はどこまでか。一覧表にはそこまで書きます。
もう1つ混ざるのが、免許です。クレーンや移動式クレーンのように、つり上げ荷重が大きいものは労働局が交付する免許になります。技能講習・特別教育・免許の3つがあると考えておくと、取り違えが減ります。
年に1回、資格の一覧を見直すときに、区分の列が埋まっているかを確かめます。空欄のままだと、配置のときにまた調べ直すことになります。
受けさせる順番を決める
人数が多いと、全員に同じ資格を取らせるわけにはいきません。順番を決める材料は3つです。
1つ目は、いま止まっている作業です。その資格が無いせいで回せていない作業があるなら、そこが最優先になります。誰が受けるかより、何が止まっているかから決めます。
2つ目は、人の偏りです。1人しか持っていない資格は、その人が休むと作業が止まります。2人目を作ることが、実際にはいちばん効きます。
3つ目は、本人の意向です。大きい機械を扱いたい人と、そうでない人がいます。嫌がる人に取らせても、結局は使われません。
年間の教育計画に、この順番で並べておきます。計画があると、予算を取るときにも説明しやすくなります。「必要だから」ではなく「この作業が回らないから」と言えると、話が通ります。
受けた後にやること
受けさせて終わりにすると、記録が残りません。戻ってきたその日にやることを決めておきます。
技能講習なら、修了証の原本を見せてもらい、写しを取ります。番号と交付した機関が読めるかを確かめ、一覧表に行を足します。
特別教育なら、その日の記録を作ります。科目ごとの時間と、講師の氏名を書きます。外部で受けた場合は、機関からもらった資料を一緒に綴じます。
どちらの場合も、配置を組む人に伝えます。資格を取ったことが現場に伝わっていないと、せっかく受けさせても使われません。
この3つを、教育の計画表の「完了」の欄とつなげておくと、受けさせただけで止まることがなくなります。
まとめ
技能講習と特別教育の違いは3つです。技能講習は登録教習機関が行い修了証が交付される。特別教育は事業者が行い、記録を事業者が3年保存する。対象になる業務の範囲は、機械の能力を示す数字で分かれます。
境目は、フォークリフトなら最大荷重1トン、車両系建設機械なら機体重量3トン、高所作業車なら作業床の高さ10メートル、玉掛けならつり上げ荷重1トンです。見るのは機械の能力で、実際に運ぶ荷物の重さではありません。
自社の機械がどちらに当たるかは、カタログか銘板の数字で確かめます。機械が入れ替わる見込みがあるなら、技能講習を受けさせておくほうが融通が利きます。
特別教育の記録には、氏名・年月日・科目ごとの内容と時間・講師の氏名を残します。抜けやすいのは科目ごとの時間です。自社の業務にどちらが要るかは、所轄の労働基準監督署に確かめるのが確実です。
よくある質問
Q. 特別教育を受けた人が、後から技能講習を受ける必要はありますか。 A. 扱う機械が技能講習の範囲に入るなら受けることになります。特別教育を受けていることで、技能講習の一部が省略される扱いがある場合もあります。教習機関に、持っている特別教育の内容を伝えて確かめます。
Q. 技能講習を持っていれば、特別教育の範囲も扱えますか。 A. 上位にあたる技能講習を修了していれば、その範囲に含まれる小さい機械も扱えるのが一般的な考え方です。ただし、機械の種類が違えば別の資格になります。同じ「建設機械」でも用途が違えば別です。
Q. 特別教育の講師に資格は要りますか。 A. 講師そのものの資格が一律に定められているわけではありませんが、その科目について十分な知識と経験を持つ人が行うこととされています。社内で行う場合は、誰がどの科目を担当したかを記録に残します。
Q. 他社で特別教育を受けた人を採用した場合、記録はどうなりますか。 A. 記録は実施した事業者が保存するものなので、前の会社にあります。採用した側では、受けたことを確かめて自社の一覧に記載します。心配であれば、自社で改めて実施している会社もあります。
Q. 特別教育の記録の3年は、いつから数えますか。 A. 実施した日から数える形が一般的です。年ごとにつづりを分けて、表紙に実施した年と保存の期限を書いておくと間違えません。
Q. 外部の機関で特別教育を受けさせた場合も、記録は会社が持ちますか。 A. 特別教育を行う義務は事業者にあるため、外部に委託した場合でも、受けたことの記録は会社が残します。機関が発行する修了の証明や、科目と時間が分かる資料を一緒に綴じておきます。
Q. 一覧表に、技能講習と特別教育をどう書き分けますか。 A. 区分の列を1つ作って「技能講習」「特別教育」「免許」と入れます。あわせて、扱える範囲(最大荷重1トン以上、など)の列を作っておくと、配置のときに見るだけで判断できます。
Q. 能力向上教育は、技能講習と特別教育のどちらにかかりますか。 A. おおむね5年ごとの能力向上教育が案内されているのは、主に技能講習を修了した人などです。対象と内容は業務によって変わるため、所轄の労働基準監督署に確かめるのが確実です。
Q. 技能講習と特別教育で、受講できる年齢に違いはありますか。 A. 年少者については、就かせてはならない業務が定められています。18歳未満の人に運転させられない機械があるため、資格の前に年齢の要件を確かめます。年少者を雇う場合は、年齢を証明する書類を事業場に備える必要もあります。
Q. 教育の計画表には、技能講習も書きますか。 A. 書いておくほうが管理しやすくなります。特別教育は自社で実施するので計画に載せやすい一方、技能講習は外部に出すぶん抜けやすくなります。同じ計画表に並べておくと、予算と日程をまとめて見られます。
Q. 自社の機械が境目ちょうどの数字だった場合は。 A. 「以上」と「未満」のどちらに当たるかで変わります。最大荷重1トンちょうどのフォークリフトは「1トン以上」に当たるため、技能講習の側になります。銘板の数字をそのまま読み、迷うときは所轄の労働基準監督署に確かめます。