技能講習修了証とは?会社で預かってよいのか
目次
現場から「修了証をなくした」と言われた。会社で預かっていたはずなのに、どこにあるか分からない。そもそも会社が預かってよいものなのかも、はっきりしないまま来ている。総務でよくある詰まり方です。
この記事では、技能講習修了証を、何の証明なのか・誰のものなのか・会社は何を持っておくのかの3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社の管理のしかたを決められる状態を目指します。
結論:技能講習修了証は本人のもの。会社が持つのは写し
技能講習修了証とは、労働安全衛生法にもとづく技能講習を修了したことを示す証明書のことです。登録教習機関が交付するもので、修了した本人に渡されます。
一般には、就業制限のかかる業務では、技能講習を修了した人でなければその業務に就かせてはならないとされています。業務に従事するときは修了証を携帯することも求められているとされています。
ポイントはここです。修了証は本人のものです。会社が原本を金庫に入れておく運用にしていると、本人が携帯できません。転職したときも本人が持っていくものなので、返してほしいと言われたら返すことになります。
会社が持っておくのは写しです。写しがあれば、誰がどの資格を持っているかを確かめられますし、再発行のときに番号や交付した機関も分かります。
技能講習はどの業務にかかるか
技能講習が要る業務は、法令で決められています。総務から見て出てくる頻度が高いのは、次のようなものです。
車両系建設機械の運転。機体重量3トン以上のものが対象になります。3トン未満は特別教育です。
フォークリフトの運転。最大荷重1トン以上が技能講習で、1トン未満は特別教育です。
玉掛け。つり上げ荷重1トン以上のクレーンなどで行う玉掛けが対象です。
高所作業車の運転。作業床の高さ10メートル以上が技能講習になります。
分かれ目はどれも数字です。重量、荷重、高さ。同じ「フォークリフトの資格」でも、機械の大きさで要る講習が変わります。一覧表を作るときは、資格の名前だけでなくどの範囲まで運転できるかまで書いておくと、配置のときに迷いません。
修了証に書いてあること
修了証には、いくつかの項目が印字されています。写しを取るときは、全部が読める形で取ります。
書かれているのは、氏名、生年月日、修了した講習の名称、修了の年月日、交付した登録教習機関の名称、修了証の番号です。裏面や別の欄に、限定の内容(機体重量の範囲など)が書かれていることもあります。
写しで見落としやすいのが、番号と交付した機関です。ここが読めないと、再発行を頼む先が分かりません。コピーを取るときは、濃度を上げて番号が潰れていないか確かめます。
複数の資格を1枚のカードにまとめている機関もあります。その場合、1枚の写しで複数の講習が確かめられますが、逆に1枚なくすと全部が分からなくなります。写しは1人1つのつづりにまとめておきます。
会社は何を保存しておくのか
会社の側で残しておくものは、目的で分けると3つになります。
1つ目は、修了証の写しです。誰がどの資格を持っているかの根拠になります。保存の期間についての決まりが置かれているわけではありませんが、在職中は持っておく形が自然です。
2つ目は、資格の一覧表です。人ごと・資格ごとに行を持ち、修了の年月日と、更新や再教育の予定を入れておきます。
3つ目は、教育の記録です。技能講習そのものは教習機関が行いますが、おおむね5年ごとの能力向上教育が案内されている資格があります。社内で行った教育の記録は、会社が残すものになります。
このうち、いちばん抜けやすいのが3つ目です。修了証があれば足りると考えていると、能力向上教育の記録が1枚も無い状態になります。
入社したときに確かめること
中途で採用した人が「フォークリフトは乗れます」と言った場合、そのまま乗せることはできません。確かめるのは3つです。
1つ目は、修了証の原本を見せてもらうことです。写しだけでは、本人のものかどうかも、有効なものかどうかも分かりません。
2つ目は、限定の有無です。「小型車両系建設機械」のように範囲が限定されている場合があります。自社で使う機械がその範囲に入るかを見ます。
3つ目は、氏名です。結婚などで氏名が変わっていると、修了証と現在の氏名が一致しません。氏名の変更の手続きができる機関もあるので、本人に確かめてもらいます。
見せてもらったその場で写しを取り、一覧表に行を足します。入社の手続きの中に組み込んでおくと、後から集める作業が要りません。
現場に携帯させる
修了証は、業務に従事するときに携帯することが求められているとされています。原本をそのまま持たせると、汚れたり無くしたりします。
対応として取られているのは、カード型の修了証をそのまま財布に入れる形と、縮小した写しをラミネートして持たせる形です。携帯が求められているのは原本なので、写しで足りるかどうかは確かめる必要があります。判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署に確かめるのが確実です。
現場によっては、入場のときに修了証の確認を求められます。元請から提出を求められる書類に、資格者の一覧と修了証の写しが入っていることがあります。入場の書類に使うぶんの写しは、別に1部まとめておくと、そのつど集めずに済みます。
総務が持つ一覧表の列
資格の一覧表は、列の決め方で使えるかどうかが変わります。入れておきたいのは6つです。
氏名、資格の名称、限定の範囲、修了の年月日、交付した機関、修了証の番号。このうち後ろの2つが入っていない一覧表が多く、いざ再発行というときに使えません。
限定の範囲は、そのまま書き写します。「小型車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)」のように長くなりますが、略すと自社の機械が入るかどうかが判断できなくなります。
そのうえで、能力向上教育をいつ受けたかの列を1つ足しておきます。おおむね5年ごとという目安なので、前回の年月から次の予定が出せます。
一覧は人ごとに並べるのが基本ですが、資格ごとに並べ替えられる形にしておくと配置のときに使えます。「フォークリフトに乗れる人は誰か」を探す場面が実際には多くあります。
表計算ソフトで作るなら、1シート1表にします。人ごとにシートを分けると、資格で横断して見られなくなります。
受けさせるときの段取り
新しく技能講習を受けさせるときは、総務が段取りを持つことになります。決めるのは4つです。
1つ目は、どの講習を受けさせるかです。自社の機械の重量や荷重を確かめてから決めます。「フォークリフトの講習」とだけ頼むと、範囲の違うものを受けてくることがあります。
2つ目は、受講の日程です。技能講習は2日から5日かかるものが多く、現場を空けることになります。繁忙期を外し、複数人を同時に出さないように配車と調整します。
3つ目は、費用と時間の扱いです。業務に必要な資格として受けさせるなら、費用と受講の時間を会社が負担する形が一般的です。取ったあとに辞めたら返してもらうといった取り決めは、法令上の制約があるため慎重に決めます。
4つ目は、受けた後の登録です。修了証を受け取ったら、その日のうちに写しを取り、一覧表に行を足します。ここを後回しにすると、半年後に「持っているはずだが証拠が無い」状態になります。
この4つを1枚の手順にしておくと、担当が代わっても同じ形で回ります。講習の申し込みから一覧への登録までを1つの流れとして見るのが要点です。
まとめ
技能講習修了証は、登録教習機関が交付する証明書で、原本は本人のものです。会社が金庫にしまい込む運用にすると、本人が携帯できません。会社が持つのは写しです。
技能講習と特別教育の分かれ目は、機体重量・最大荷重・高さといった数字です。一覧表には、資格の名前だけでなくどの範囲まで扱えるかを書いておきます。
会社が残すのは、修了証の写し・資格の一覧表・教育の記録の3つです。抜けやすいのは3つ目で、おおむね5年ごとの能力向上教育が案内されている資格があります。
中途採用のときは、原本・限定の有無・氏名の3つを確かめます。自社の業務にどの資格が要るかは、所轄の労働基準監督署に確かめるのが確実です。
よくある質問
Q. 技能講習修了証に有効期限はありますか。 A. 修了証そのものに期限が定められているわけではありません。ただし、おおむね5年ごとに能力向上教育を受けることが案内されている資格があります。免許証のような更新の手続きとは別のものです。
Q. 会社が修了証の原本を預かってもよいですか。 A. 本人のものなので、預かるのであれば本人の同意が要ります。業務のときに携帯することが求められている以上、預かったままだと本人が携帯できません。写しを会社が持つ形にしておくのが無難です。
Q. 退職する人の修了証の写しは、いつまで残しますか。 A. 保存の期間が定められているわけではありません。ただし、在職中にその人が就いていた業務について後から問われる可能性があるため、他の労務の記録と同じ年数で残している会社があります。
Q. 修了証を無くした場合、会社が再発行を頼めますか。 A. 再発行の申請は、交付した登録教習機関に本人が行うのが基本です。会社が手続きを代わりに進める場合も、本人の情報が要ります。番号と交付した機関が分かる写しがあると早く進みます。
Q. 修了証の写しを現場に提出しても問題ありませんか。 A. 氏名と生年月日が入っているため、個人情報として扱います。提出先と目的を決めて、必要な範囲で渡します。不要になった写しの扱いも、あらかじめ決めておくと安心です。
Q. 技能講習は社内で行えますか。 A. 技能講習は登録教習機関が行うものとされています。社内で行えるのは特別教育や、その後の能力向上教育です。どちらに当たるかは業務によって変わるため、所轄の労働基準監督署に確かめるのが確実です。
Q. 一覧表は法令で作成が義務づけられていますか。 A. 一覧表そのものに作成の義務が定められているわけではありません。ただし、就業制限のかかる業務に資格の無い人を就かせないためには、誰が何を持っているかを会社が把握している必要があります。そのための道具として作ります。
Q. 派遣で来ている人の資格も一覧に入れますか。 A. 就業制限のかかる業務に就かせるなら、資格の有無を確かめる必要があります。管理の責任の所在は契約の形で変わるため、派遣元と確認のしかたを取り決めておきます。一覧に入れる場合は、自社の従業員と区別が付く列を足しておきます。
Q. 講習の費用を会社が出した場合、経理はどう処理しますか。 A. 業務に必要な資格の取得費用として処理するのが一般的です。ただし、資格が本人に帰属するものであることから、扱いが分かれる場面があります。自社の処理については、顧問の税理士に確かめるのが確実です。
Q. 修了証の写しを電子データで保存してもよいですか。 A. 保存の方法が定められているわけではないので、データで持つ形も取れます。氏名と生年月日が入っているため、権限を絞った場所に置きます。原本の携帯が求められる場面では、データの写しでは足りないことがあります。
Q. 一覧表と修了証の写しは、同じ場所に置くべきですか。 A. 探す手間を考えると、同じつづりにまとめておくほうが早くなります。一覧表を先頭に置き、その後ろに人ごとの写しを並べる形にしておくと、資格の確認を求められたときにそのまま出せます。
Q. 修了証の写しを、本人の同意なく現場に出してもよいですか。 A. 氏名と生年月日が入る個人情報なので、何のために誰へ出すかを本人に伝えておくのが基本です。入場の手続きで提出することが分かっているなら、入社のときにまとめて説明し、記録に残しておくと毎回の確認が要りません。