法定帳簿解説2026.03.12 公開HC-32

健康診断の記録の保存|5年と30年が分かれるところ

目次

健康診断の結果は5年保存、と覚えている。ところが調べ直すと、30年というものも出てくる。どれが5年で、どれが30年なのかが分からないまま、全部を同じ棚に入れている。総務でよくある状態です。

この記事では、健康診断の記録の保存を、種類ごとの年数・起算日・置き方の3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社の健診の記録をどう分けて置くかを決められる状態を目指します。

健康診断個人票そのものの書き方から確かめたい方は、こちらを読むと早いです。→ 健康診断個人票の書き方

結論:基本は5年。特殊なものだけ長くなる

健康診断の記録の保存とは、事業者が行った健康診断の結果を、一定の期間残しておくことです。労働安全衛生法にもとづくもので、健康診断個人票を作成して保存するとされています。

一般には、一般健康診断の個人票は5年間保存するとされています。雇入時の健康診断も、定期健康診断も、深夜業などの特定業務従事者の健康診断も、この5年に入ります。

ポイントはここです。長くなるのは、特定の化学物質や作業に関わる健康診断だけです。すべてが30年になるわけではありません。5年が基本で、そこから例外的に長いものがある、という順番で覚えます。

5年が基本、長いのは例外一般健康診断個人票は5年特定化学物質5年と30年に分かれる石綿40年とされている
一般健康診断5年と、長くなるものの関係を示した層の図

自社に長いものがあるかどうかは、どんな作業をさせているかで決まります。事務所しかない会社であれば、5年だけで足りることがほとんどです。

長くなるのはどんな健診か

保存の期間が長くなるものとして挙げられているのは、特定の物質を扱う作業に関わるものです。代表的なものを並べます。

特定化学物質健康診断。扱う物質によって5年のものと30年のものに分かれます。発がんのおそれが指摘されている物質では30年とされているものがあります。

石綿健康診断。石綿を扱う作業に従事する労働者について、40年という長い期間が定められているとされています。

電離放射線健康診断。放射線業務に従事する労働者について、30年とされています。

有機溶剤健康診断、鉛健康診断、四アルキル鉛健康診断。これらは5年とされているものが中心です。

健診の種類と保存の年数健診年数一般健康診断5年有機溶剤・鉛5年が中心特定化学物質物質により5年か30年石綿40年
一般・有機溶剤・特定化学物質・石綿で保存期間がどう分かれるかを並べた表

同じ「特殊健康診断」でも年数が違います。まとめて「特殊健診は30年」と覚えると間違えます。自社が該当する作業をさせているかどうかを先に確かめ、そのうえで物質ごとに年数を見ます。判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署に作業の内容を示して確かめるのが確実です。

起算日は「作成した日」

年数の数え方でつまずくのが、いつから数えるかです。健康診断個人票は、作成した日から数えるのが基本の形になります。

退職した日から数えるのではありません。労働者名簿のように「退職の日から3年」というものと混ざりやすいので、ここは分けて覚えます。

起算日が違う健康診断個人票作成した日から5年毎年1枚ずつ増える年度ごとに綴じると楽労働者名簿退職の日から3年在職中は減らない数え方が別の書類
個人票の作成日から数える形と、退職日から数える書類の違いを並べた比較の図

毎年の定期健康診断であれば、1年に1枚ずつ個人票が増えていきます。5年経ったものから順に処分できる形です。1人分をまとめて綴じていると、どこまでが期限切れか分かりません。

実務では、年度ごとにつづりを分ける形が扱いやすくなります。2021年度のつづりは2026年度に処分できる、という形にしておけば、1枚ずつ見なくて済みます。

点検表テンプレート
様式をさがす

実際に使える様式が必要な方へ

書類の保存年数をまとめた一覧表が、点検板のテンプレートのページにあります。この記事は健診の記録に絞った話です。

この様式をひらく

個人票に何を残すか

個人票には、決められた項目が並んでいます。残しておく内容としては、次のものが挙げられます。

受診した人の氏名と生年月日、健康診断の種類、実施した年月日、検査の項目と結果、医師の診断、医師の意見、事業者が講じた措置。

個人票で抜けやすい3つ項目抜けると起きること医師の意見就業の判断が残らない事業者が講じた措置何もしていないと見られる検査項目と結果届いた紙のまま綴じている共通転記して初めて完成する
個人票の項目のうち、抜けやすい3つを並べた表

抜けやすいのは、後ろの3つです。医師の意見は、所見があった人について聴くこととされています。事業者が講じた措置は、就業の場所を変えた、作業を転換した、労働時間を短くしたといった対応を書く欄です。

健診機関から届いた結果の紙を、そのままファイルに綴じているだけでは、この3つが空になります。届いた結果を個人票に転記し、意見と措置まで埋めてはじめて完成という順番になります。

結果の扱いは、他の書類より慎重に

健康診断の結果は、機微な情報です。他の労務の書類と同じ棚に置くと、見る必要のない人の目に入ります。

置き方で決めておくのは3つです。保管する場所、鍵を持つ人、見られる範囲。

置き方で決める3つ保管する場所鍵のかかるところへ鍵を持つ人担当を決めておく見られる範囲可否と条件だけ
保管する場所・鍵を持つ人・見られる範囲の3つを決める図

見られる範囲は、必要に応じて分けます。数値そのものを見るのは事業者と担当者だけにして、配置を決める人には就業の可否と条件だけを伝える形にしている会社があります。

データで持つ場合も同じです。共有のフォルダに置くのではなく、権限を絞った場所に分けます。「誰でも開ける場所に置かない」が最低線になります。

結果を報告する義務もある

保存とは別に、報告が求められる場合があります。定期健康診断を行ったとき、常時50人以上の労働者を使用する事業者は、結果の報告書を所轄の労働基準監督署に提出することとされています。

特殊健康診断については、人数にかかわらず報告が求められるものがあります。「50人以上だから関係ない」と考えていると、特殊健診の報告が抜けます。

報告書の控えも、社内に残しておきます。いつ提出したかが分かる形にしておくと、次の年の作業が早くなります。

保存と報告は別の義務保存個人票を5年残す報告50人以上は定期健診を報告特殊健診人数によらず報告
保存と報告という2つの義務を分けて並べた層の図

報告の要否や様式は、所轄の労働基準監督署の案内で確かめます。事業場ごとに人数を数えるため、複数の事業場がある会社は、事業場ごとに判断することになります。

処分するときにやること

期間が過ぎたものは処分できます。ただし、健康の情報なので、捨て方まで決めておきます。

紙であれば、溶解か裁断です。そのまま古紙として出す形は取れません。データであれば、復元できない形で消します。

処分するときは、何をいつ処分したかを1行残します。後から「あの年の結果はどこにあるか」と聞かれたときに、処分済みであることを説明できます。

進行中の労災の請求や、健康に関する相談がある人の記録は、期間が過ぎていても残しておくほうが安全です。期限が来たから機械的に捨てるという運用にはしないことです。

年に1回やる作業にまとめる

健診の記録は、毎年同じ作業のくり返しです。年に1回の型を決めてしまえば、そのつど考えなくて済みます。

1つ目は、受診の管理です。誰が受けたか、未受診の人がいないかを名簿で確かめます。未受診のまま年をまたぐと、翌年に2回分が重なります。

2つ目は、結果の転記です。届いた結果を個人票に写し、所見のあった人を抜き出します。ここで医師の意見を聴く人が決まります。

3つ目は、措置の記録です。就業の条件を付けた人について、内容と日付を残します。何もしなかった人については、意見を聴いた結果として問題が無かったことを残します。

4つ目は、報告と処分です。報告が要る事業場は報告書を出し、5年が過ぎたつづりを処分します。

この4つを同じ月に回すと、記録の抜けが減ります。健診の実施月の2か月後あたりに作業の日を置いておくと、結果が出そろってから動けます。

年数がばらつく書類をどう並べるか

健診の記録だけでなく、労務の書類は年数がばらばらです。同じ棚に入れていると、短いほうに合わせて捨ててしまうことが起きます。

防ぎ方は単純で、つづりの表紙に年数と処分の予定年を書くことです。「健康診断個人票 2021年度分/5年/2026年度に処分」のように書いておけば、中を見なくても判断できます。

特殊健診のつづりは、一般健診とは別の棚に置きます。年数が違うものを隣に置くと、いつか混ざります。棚の段ごとに年数を分けている会社もあります。

年に1回の処分の作業のときに、この表紙だけを見て回れる形になっていれば、作業は数十分で終わります。中身を開かずに判断できるのが、いちばんの時短になります。

まとめ

健康診断の記録の保存は、一般健康診断の個人票が5年が基本です。雇入時も定期も、深夜業などの特定業務従事者のものもここに入ります。

長くなるのは、特定の物質や作業に関わるものだけです。特定化学物質では30年とされているもの、石綿では40年とされているものがあります。「特殊健診は全部30年」ではありません。

起算日は、個人票を作成した日です。退職の日から数える労働者名簿とは違います。年度ごとにつづりを分けておくと、期限が来たものだけを取り出せます。

個人票で抜けやすいのは、医師の意見と事業者が講じた措置の2つです。健診機関から届いた紙を綴じるだけでは埋まりません。自社に長い年数のものがあるかどうかは、所轄の労働基準監督署に作業の内容を示して確かめるのが確実です。

点検表テンプレート
様式をさがす

実際に使える様式が必要な方へ

書類の保存年数をまとめた一覧表が、点検板のテンプレートのページにあります。健診の記録も同じ表で管理できます。

この様式をひらく

よくある質問

Q. 健診機関から届いた結果の紙は、そのまま個人票として使えますか。 A. 様式が個人票の項目を満たしていれば使える形もありますが、医師の意見と事業者が講じた措置の欄が無いことが多くあります。足りない欄を別に作って一緒に綴じるか、個人票に転記する形にします。

Q. 退職した人の個人票は、いつまで残しますか。 A. 作成した日から5年という期間は、退職しても変わりません。ただし、在職中の健康状態が後から問われる可能性があるため、他の労務の記録と合わせて残している会社もあります。

Q. 健康診断の結果を人事評価に使ってもよいですか。 A. 健康情報は、就業上の措置を決めるために必要な範囲で扱うこととされています。評価や配置の不利益な取り扱いに使う形は取れません。扱いの範囲は社内で定めて、周知しておきます。

Q. 本人から結果を見せてほしいと言われたら。 A. 健康診断の結果は本人に通知することとされています。本人が自分の結果を確かめられるようにしておきます。過去の分についても、残っている範囲で示せる形にしておくと親切です。

Q. 個人票を電子データで保存してもよいですか。 A. データで保存する形も取れます。保存の期間中、いつでも確かめられること、改ざんされていないことが分かる形にしておきます。権限を絞った場所に置くことは紙以上に大事になります。

Q. 産業医がいない事業場では、医師の意見はどうしますか。 A. 産業医の選任義務が無い事業場でも、所見のあった人について医師の意見を聴くこととされています。健診を行った医療機関や、地域の産業保健の窓口に相談する形が取られています。

Q. 事業場が複数ある場合、記録は本社にまとめてよいですか。 A. 事業場ごとに備えることが求められる書類があるため、まとめる前に扱いを確かめます。本社で一括して管理する場合も、事業場から求められたときにすぐ出せる形にしておきます。

Q. 5年が過ぎた個人票を、念のため残しておいても問題ありませんか。 A. 残すこと自体が禁じられているわけではありません。ただし、機微な情報を必要以上に持ち続けることになります。残すなら理由をはっきりさせ、置き場所と見られる範囲を決めておきます。

Q. 健診の費用は会社が負担しますか。 A. 事業者が行うこととされている健康診断は、費用も事業者が負担する形が一般的です。受診に要した時間の賃金の扱いは労使で決めることとされていますが、就業時間内に受けられるようにしておくと受診率が上がります。

Q. 未受診の人がいる場合、どう記録しますか。 A. 受診していないこと自体を記録に残します。名簿に未受診の欄を作り、いつ声をかけたか、次にいつ受ける予定かを書いておきます。空欄のままだと、受けさせようとしたかどうかも分からなくなります。

Q. 健診の結果を、産業医以外の医師に見せてもよいですか。 A. 就業上の措置を決めるために医師の意見を聴くことが求められているため、産業医がいない事業場では他の医師に相談する形になります。渡す範囲は必要な項目に絞り、誰にいつ相談したかを記録に残しておきます。

Q. 健診を受けた医療機関が結果を保管していれば、会社は持たなくてよいですか。 A. 事業者が個人票を作成して保存することが求められているため、医療機関にあることをもって足りるとはなりません。届いた結果をもとに、会社が個人票を作って保存します。

Q. 健診の結果に「要再検査」とあった人には、受診を強制できますか。 A. 再検査を受けるよう勧めることはできますが、受診そのものを強制する形は取りにくくなります。勧めた記録と、本人の意向を残しておきます。就業上の措置が要るかどうかは、医師の意見を聴いて判断します。