高齢者就労報告書とは?現場に出す前に書く1枚
目次
元請から「65歳以上の人を入れるなら報告書を出してください」と言われた。様式はもらったけれど、何を書けばよいのか、そもそも法令で決まっているものなのかも分からない。総務でよくある詰まり方です。
この記事では、高齢者就労報告書を、何のための書類か・欄ごとの書き方・出す先の3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社の1枚を埋められる状態を目指します。
結論:法定の様式ではなく、現場が求める安全書類
高齢者就労報告書とは、一定の年齢以上の作業員を現場に入れるときに、元請へ提出する書類のことです。建設の現場でよく求められます。
法令で様式が定められた書類ではありません。労働安全衛生法に「高齢者就労報告書を作成せよ」という条文があるわけではなく、元請が自主的な安全管理の一環として求めているものです。
ポイントはここです。根拠が法令ではなく、現場の取り決めにあります。だから様式も、求められる年齢の線も、現場によって違います。55歳以上とする現場もあれば、65歳以上とする現場もあります。
出す前にまず確かめるのは、どの年齢から対象かと、どの様式を使うかの2つです。ここを聞かずに自社の様式で出すと、差し戻されます。
何のために求められるのか
現場が求める理由は、安全の管理です。年齢が上がると、体力や視力、聴力の面で配慮が要る場面が増えるとされています。
元請から見ると、誰が高齢者で、どんな作業に就くのか、健康状態はどうかが分かっていないと、配置の判断ができません。報告書は、その判断の材料になります。
もう1つの側面が、事故が起きたときの説明です。配慮が要る人を把握していたか、健康診断を受けさせていたか、本人の同意を取っていたか。ここが残っていないと、管理していなかったものとして見られます。
つまり、報告書は「出せば入れる」ための紙ではなく、送り出す側が確かめたことを示す紙という位置づけになります。
欄ごとの書き方
様式は現場によって違いますが、並んでいる欄はおおむね共通しています。
氏名・生年月日・年齢。生年月日から年齢を出します。現場の入場時点の年齢で書きます。
所属と職種。自社の社員か、下請の社員かが分かる形にします。
就業させる作業の内容。具体的に書きます。「作業員」では足りません。高所での作業があるか、重量物を扱うかが判断の材料になります。
健康診断の受診日と結果。直近の健診をいつ受けたか、所見があったかを書きます。
本人の申告と同意。体調の申告と、就業について本人が同意していることを書く欄がある様式があります。
書き落としやすいのは、作業の内容と健診の日付の2つです。作業の内容が具体的でないと、配慮の判断ができません。健診が1年以上前だと、その時点で差し戻されることがあります。
出す前に自社で確かめること
報告書を書く前に、自社の中で確かめておくことが3つあります。
1つ目は、健康診断を受けているかです。直近の健診が済んでいないと、報告書の欄が埋まりません。現場に入る予定が決まった時点で、受診の状況を見ます。
2つ目は、所見があった人の扱いです。所見があった場合、医師の意見を聴いて就業の可否を判断することが求められています。報告書に「所見あり」とだけ書いて出すと、元請から意見の内容を聞かれます。
3つ目は、本人への説明です。報告書には氏名・生年月日・健康の情報が入ります。誰に何のために出すのかを本人に伝え、同意を得ておきます。
この3つは、報告書を書く作業より前にあります。書く段になって健診が済んでいないと気づくのが、いちばん時間を失う形です。
年齢の線は現場ごとに違う
「高齢者」と呼ぶ線が統一されていないため、現場ごとに確かめる必要があります。
よく使われるのは、55歳以上、60歳以上、65歳以上の3つです。元請の安全衛生管理の方針によって決まります。
線が低い現場では、対象になる人数が増えます。自社の名簿に生年月日が入っていないと、誰が対象か分からないまま現場に向かうことになります。
労働者名簿には生年月日を書くことが求められているので、そこから拾えます。名簿が最新でないと拾えないので、入退社の手続きで更新する形にしておきます。
年に1回、名簿から年齢の一覧を出しておくと、線が変わっても拾い直せます。誕生日で対象に入る人が毎年出るので、年度の初めに出す形にしておくと取りこぼしません。
同じ人が複数の現場に出る会社では、現場ごとに線が違うことがあります。「A現場は60歳以上、B現場は65歳以上」といった形です。現場ごとの線を控えた一覧を持っておくと、そのつど問い合わせずに済みます。
提出の流れ
提出は、現場に入る前です。当日に持っていく形では間に合わないことがあります。
流れは4つです。現場から様式と年齢の線をもらう、対象者を名簿から拾う、健診と医師の意見を確かめる、報告書を書いて提出する。
提出したものは、控えを社内に残します。どの現場に、いつ、誰の分を出したかが分かる形にしておくと、次の現場で使い回せます。
内容が変わったら出し直します。健診を受け直した、作業の内容が変わった、体調に変化があった。変わったことを伝えないほうが、後で問題になります。
報告書を書いたあとにやること
出して終わりにすると、書いた内容が現場の動きに反映されません。書いたあとにやることが2つあります。
1つ目は、作業の配置に反映することです。報告書に「高所での作業あり」と書いたなら、その人に高所作業をさせるということです。配慮が要ると判断したなら、配置を変えます。書いた内容と実際の作業がずれていると、報告書の意味がなくなります。
2つ目は、現場での確認です。朝の点呼やKY活動のときに、体調を聞く相手に入れておきます。報告書は入場のときの1回きりですが、体調は毎日変わります。
自社の職長や、送り出し教育の担当に、誰が対象者かを伝えておきます。総務が書いて総務が出して終わり、という形だと現場には何も伝わりません。
高齢の作業員を受け入れる側の備え
報告書を出す側だけでなく、受け入れる側になることもあります。自社が元請のとき、何を見るかを決めておきます。
見るのは3つです。作業の内容と本人の状態が合っているか。健診が直近のものか。所見があった場合に意見が添えられているか。
書式が埋まっていることより、中身が具体的かどうかが判断の材料になります。「作業員」「異常なし」とだけ書かれた報告書は、配置の判断には使えません。
受け取った報告書は、現場ごとに綴じて保管します。作業員が入れ替わったときに、誰の分が届いているかをすぐ確かめられる形にしておきます。
報告書を機会にして体制を見る
報告書は1枚の紙ですが、書こうとすると自社の体制が見えてきます。見えるのは3つです。
1つ目は、名簿が最新かどうかです。生年月日から対象者を拾うので、名簿が古いと拾えません。入退社のたびに更新できているかが分かります。
2つ目は、健診の受診の状況です。直近の健診が済んでいない人が見つかります。現場の要求とは別に、健診は事業者の義務です。
3つ目は、所見があった人への対応です。医師の意見を聴いていない、条件を付けたが記録がない。報告書を書く段になって気づく形です。
年に1回、報告書を出す時期に合わせてこの3つを確かめると、労務の基本の部分がそろいます。現場から言われたから書くのではなく、自社の点検の機会として使うと、同じ手間で得られるものが増えます。
出す相手ごとに控えを分ける
現場ごとに様式が違うので、控えの持ち方を決めておきます。人ごとに1つのつづりを作り、その中に現場ごとの控えを時系列で入れる形が扱いやすくなります。
この形にすると、次の現場で出すときに前回の内容を写せます。健診の日付、作業の内容、本人の同意。変わった部分だけを書き換えれば済みます。
もう1つの利点は、その人がどの現場でどんな作業に就いてきたかが1か所で分かることです。事故が起きたときの説明にも使えますし、配置を考えるときの材料にもなります。
年に1回、つづりを見直します。退職した人の分は別の場所へ移し、健診の日付が古くなっている人には受診の案内を出します。
まとめ
高齢者就労報告書は、法令で様式が定められた書類ではなく、元請が安全の管理のために求める書類です。年齢の線も様式も現場によって違うため、まず確かめるところから始まります。
書く欄は、氏名・生年月日・年齢、所属と職種、作業の内容、健診の受診日と結果、本人の申告と同意です。書き落としやすいのは作業の内容と健診の日付です。
書く前に、健康診断が済んでいるか、所見があった人について医師の意見を聴いているか、本人に説明して同意を得ているかを確かめます。書く作業より前にあるこの3つが、いちばん時間のかかるところです。
提出は現場に入る前に行い、控えを社内に残します。自社にどの範囲の義務がかかるかは、所轄の労働基準監督署に確かめるのが確実です。
よくある質問
Q. 高齢者就労報告書を出さないと、現場に入れませんか。 A. 元請が入場の条件としている場合は、出さないと入れません。法令上の義務ではないため、求めていない現場もあります。入場の手続きの案内で確かめます。
Q. 自社の様式で出してもよいですか。 A. 元請が様式を指定している場合は、それに従います。指定が無い場合は自社の様式でかまいませんが、必要な欄が入っているかを確かめます。差し戻されると日程に響きます。
Q. 健康診断を受けていない人はどうしますか。 A. 受けさせるのが先です。事業者には健康診断を受けさせる義務があるため、現場の要求とは別に必要です。受診の予定を伝えて入場の時期を調整することになります。
Q. 所見があった人は現場に出せませんか。 A. 所見があることと就業できないことは別です。医師の意見を聴いたうえで、就業の可否と条件を判断します。条件を付けて出す場合は、その内容を報告書にも書きます。
Q. 本人が高齢であることを知られたくないと言った場合は。 A. 提出が入場の条件になっている以上、出さずに入ることはできません。何のために誰へ出すのかを説明し、必要な範囲に絞って書きます。納得が得られない場合は、その現場への配置を見直すことになります。
Q. 報告書の控えは何年残しますか。 A. 保存の期間が定められた書類ではありません。ただし、事故が起きたときに配慮していたことを示す材料になります。現場ごと・年ごとにつづりを分けて、他の安全書類と同じ年数で残している会社が多くあります。
Q. 一人親方の場合も報告書が要りますか。 A. 元請が求めていれば出すことになります。雇用されている労働者かどうかで、健康診断の義務の有無は変わりますが、入場の条件としての提出は別の話です。現場の案内で確かめます。
Q. 同じ人を複数の現場に出す場合、毎回書きますか。 A. 現場ごとに提出するのが基本です。ただし、健診の内容など変わらない部分は使い回せます。控えを1人1枚のつづりにしておくと、次の現場では作業の内容だけ書き換えて済みます。
Q. 高齢者の定義を社内で決めてもよいですか。 A. 社内の基準として決めること自体は自由です。ただし、現場が求める線とずれていると、報告書の対象者が合いません。現場ごとの線を確かめてから、社内の一覧を作る順番にしておきます。
Q. 報告書に健康診断の結果をどこまで書きますか。 A. 受診日と、所見の有無が中心になります。数値そのものまで書く必要は通常ありません。機微な情報なので、必要な範囲に絞ります。
Q. 報告書の様式を社内で1つにまとめられませんか。 A. 現場が指定する様式がある以上、1つにまとめることはできません。ただし、社内の控えは1つの形にそろえられます。控えの様式に必要な項目を全部入れておけば、どの現場の様式にも書き写せます。