法定帳簿解説2026.08.27 公開HO-01

給与支払報告書|提出先が市区町村ごとに分かれる

目次

給与支払報告書は、年末調整が終わった後に控えている仕事です。書く内容そのものは源泉徴収票とほとんど同じなのに、手間がかかります。理由は、提出先が1か所ではないからです。

この記事では、給与支払報告書を、誰の分を・どこへ・いつまでにという3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社の提出先の一覧を作れる状態を目指します。

税務署へ出す側の書類から確かめたい方は、こちらを読むと早いです。→ 法定調書合計表の書き方

結論:従業員の住む市区町村ごとに、1月31日までに出す

給与支払報告書とは、前年に支払った給与の額を、従業員が住む市区町村に報告する書類のことです。地方税法にもとづくものとされています。

市区町村は、この報告をもとに住民税の額を計算します。計算された額が、6月からの給与天引きの金額になります。

ポイントはここです。提出先は、税務署ではなく市区町村です。しかも1か所ではありません。従業員が住んでいる市区町村の数だけ提出先があります。

市区町村ごとに分かれる1住所を確かめる1月1日の住所地2束に分ける市区町村ごとに31月31日までにそれぞれへ出す
会社から複数の市区町村へ分かれて提出される流れを示した図

一般には、給与計算のソフトが市区町村ごとに束を作る形になっています。手作業で分ける場合は、年末調整の前に住所を確かめておくと作業が減ります。

期限は、翌年の1月31日までとされています。年末調整、源泉徴収票、法定調書、給与支払報告書が同じ時期に重なります。段取りを決めておかないと、いちばん後ろの給与支払報告書が押し出されます。

源泉徴収票との違い

社内で混ざりやすいのが、源泉徴収票との違いです。書いてある内容はほとんど同じで、出す先が違います。

源泉徴収票は、税務署へ出すものと、本人に渡すものがあります。税務署へ出すのは全員分ではなく、金額などの基準を満たす人の分とされています。

給与支払報告書は、市区町村へ出します。こちらは原則として全員分です。正社員だけでなく、契約社員・パート・アルバイトも含みます。

出す先と範囲が違う源泉徴収票税務署と本人へ税務署へは基準あり全員ではない給与支払報告書市区町村へ原則として全員住民税の計算に使う
源泉徴収票と給与支払報告書で、出す先と対象の範囲が違うことを並べた比較の図

同じ内容の紙が、行き先ごとに名前を変えていると考えると分かりやすくなります。個人別明細書の部分は、源泉徴収票とほぼ同じ様式です。

違いが出るのは、束ねる紙のほうです。税務署には法定調書合計表、市区町村には総括表を付けます。この総括表が、実務でいちばん引っかかるところになります。

総括表は市区町村ごとに様式が違う

個人別明細書は全国で同じ形です。ところが総括表は違います。

総括表は、市区町村がそれぞれの様式を作っています。欄の並びも、書く内容も、微妙に違います。同じ様式を全部の市区町村に使い回すことはできません。

多くの市区町村では、前年に提出した会社に対して、年末に総括表を送ってきます。届いたものをそのまま使うのが確実です。

共通の紙と、ばらばらの紙個人別明細書全国で同じ様式総括表市区町村ごとに違う新しい提出先自分で取りにいく
個人別明細書は全国共通で、総括表は市区町村ごとに違うことを示した層の図

問題になるのは、今年から新しく提出する市区町村です。総括表が届きません。この場合は、その市区町村のホームページから様式を取ります。

総括表に書くのは、会社の情報、提出する人数、特別徴収と普通徴収の内訳などです。人数が合っているかが確かめられるので、個人別明細書の枚数を数えてから書きます。

新しい提出先が出てくるのは、引っ越した従業員がいるときです。年末調整のときに住所の変更を拾っておくと、様式の手配が間に合います。

総括表には、特別徴収を続ける人と、普通徴収にする人の内訳を書く欄があります。普通徴収にできる人の基準は市区町村ごとに示されていて、理由を符号で書く形が多く使われています。該当する人がいる年は、提出先の案内を先に読んでおきます。

誰の分を出すか

対象は、前年の1月1日から12月31日までに給与を支払ったすべての人とされています。ここでよく迷うのが3つの形です。

1つ目は、退職した人です。年の途中で辞めた人も、その年に給与を払っていれば対象になります。ただし、退職した人で支払額が一定の金額以下の場合は、提出を省略できる取扱いがあるとされています。判断は市区町村によって違うので、提出先に確かめます。

2つ目は、短い期間だけ働いた人です。アルバイトや日雇いも、給与を支払っていれば対象です。金額が小さくても、原則は提出します。

3つ目は、乙欄で計算した人です。他に本業がある人の分も、給与を支払った側が報告します。

迷いやすい3つどんな人扱い退職した人省略の基準を確かめる短期の人金額が小さくても出す乙欄の人支払った側が報告
退職者・短期の人・乙欄の人という3つの迷いやすい形を並べた表

提出先は、その年の1月1日現在の住所地の市区町村とされています。前年の12月に引っ越した人がいると、去年とは違う市区町村へ出すことになります。

年末調整のときに、住民票のある場所を確かめる欄を作っておくと拾えます。実際に住んでいる場所と住民票が違う人がいるので、どちらで判断するかも決めておきます。

点検表テンプレート
様式をさがす

実際に使える様式が必要な方へ

賃金台帳の様式は、商い屋にそろっています。報告する金額は、この台帳から取ります。

商い屋で様式をさがす

提出先の一覧を先に作る

給与支払報告書の作業が重くなるのは、提出先の数が読めないからです。先に一覧を作ると、あとは流れ作業になります。

一覧に書くのは4つです。

1つ目は、市区町村の名前です。従業員の住所から拾います。同じ市区町村に複数人いれば、1つの束にまとめます。

2つ目は、人数です。その市区町村へ出す個人別明細書の枚数。総括表に書く数字になります。

3つ目は、総括表が手元にあるかです。届いているか、ホームページから取る必要があるか。

4つ目は、提出の方法です。紙で郵送するか、電子で送るか。市区町村によって受け付ける形が違うことがあります。

この一覧は、年末調整の住所の確認と同時に作れます。12月のうちに作っておくと、1月に慌てません。

一覧は毎年作り直すのではなく、前年のものに増減を書き足す形が楽です。去年出した市区町村、今年から増えた市区町村、今年は該当が無くなった市区町村。この3つが分かれば、総括表の手配も郵送の準備も先に進みます。

人数の少ない会社ほど、提出先が1つか2つで終わることがあります。逆に、通勤の範囲が広い会社は、10を超える市区町村へ出すことになります。件数が増えるほど、一覧の効き目は大きくなります。

電子で送る方法もあります。提出する枚数が一定以上になる場合は、電子での提出が求められるとされています。自社が対象になるかは、枚数と年分で決まるので、税務署や市区町村に確かめます。

出した後に起きること

給与支払報告書を出して終わりではありません。5月ごろに、市区町村から通知が返ってきます。

返ってくるのは、特別徴収税額の決定通知書です。会社用と本人用の2種類があります。本人用は従業員に渡します。

1月から6月まで1月提出する5月決定通知が届く6月天引きを始める翌年5月ここまで同じ額6月だけ金額が違うことが多い
1月の提出から6月の徴収開始までを並べた時系列の図

この通知に書かれた金額を、6月から翌年5月までの給与から天引きします。6月だけ金額が違うことが多いので、給与計算の設定を変えるときに気をつけます。

通知が届かない市区町村があれば、提出が届いていない可能性があります。一覧と突き合わせて、返ってきていない先を確かめます。ここで一覧が効きます。

年の途中で退職した人がいれば、給与支払報告に係る給与所得者異動届出書を出します。天引きを止める手続きです。これを出さないと、会社に請求が来続けます。

出した後に間違いが見つかったとき

提出した後で、金額や扶養の内容が違っていたと分かることがあります。年末調整のやり直しが起きた場合も同じです。

直す手順は3つです。

1つ目は、どこが違うかを特定することです。支払金額なのか、社会保険料の額なのか、扶養親族の数なのか。賃金台帳と突き合わせて、直す前の数字と直した後の数字を書き出します。

2つ目は、市区町村へ訂正したものを出すことです。訂正した給与支払報告書を提出します。様式や書き方は市区町村によって案内が違うので、提出先のホームページを見るか、電話で確かめます。

3つ目は、税務署側も合わせることです。同じ内容の源泉徴収票を税務署へ出している場合や、法定調書合計表に含めている場合は、そちらも直します。片方だけ直すと数字が合わなくなります。

訂正するときの3段1どこが違うか台帳と突き合わせ2市区町村へ訂正したものを出3税務署側も片方だけ直さない
特定・市区町村への訂正・税務署側の訂正という3段の流れの図

時期によって影響が変わります。5月の通知が出る前に直せば、最初の通知に反映されます。通知が出た後だと、住民税の額が変わり、本人にも会社にも連絡が行きます。

だからこそ、出す前の突き合わせに時間を使う価値があります。賃金台帳の年間の支払額と、個人別明細書の支払金額。この2つが合っていれば、大きな間違いはほぼ起きません。

社内で段取りを1枚にする

給与支払報告書は、1年に1回しか触らない業務です。担当が代わると、去年の記憶が無くなります。1枚にまとめておくと、質がそろいます。

書くのは5つです。

1つ目は、住所を確かめる時期です。年末調整のときに、住民票のある場所を確かめる。実際の居所と違う場合の扱いも決めておきます。

2つ目は、提出先の一覧です。市区町村、人数、総括表の有無、提出の方法。

3つ目は、退職者の扱いです。その年に辞めた人の分を出すか。省略できる基準は市区町村に確かめて、確かめた日と相手を書いておきます。

4つ目は、提出の締切から逆算した日程です。1月31日から逆算して、いつ束を作るか、いつ発送するか。

5つ目は、5月の通知の受け取りです。届いた通知をどこに保管し、本人用をいつ配るか。

この1枚があると、担当が代わっても去年と同じ形で回せます。1年に1回の業務ほど、手順を残す価値があります。

まとめ

給与支払報告書は、前年に支払った給与を、従業員が住む市区町村へ報告する書類です。市区町村はこれをもとに住民税を計算し、6月からの天引きの額が決まります。

提出の期限は翌年の1月31日までとされています。提出先は従業員が住む市区町村ごとで、1か所ではありません。その年の1月1日現在の住所地が基準になります。

個人別明細書は全国で同じ様式ですが、総括表は市区町村ごとに様式が違います。前年に出している先からは年末に届きますが、新しい提出先の分は自分で取りにいきます。

対象は原則として給与を支払ったすべての人です。退職者の省略の基準は市区町村によって違うので、提出先に確かめます。自社の取扱いは、所轄の市区町村や税理士などの専門家に確かめるのが確実です。

点検表テンプレート
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実際に使える様式が必要な方へ

賃金台帳の様式が、商い屋にそろっています。報告の材料を、月ごとに残しておけます。

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よくある質問

Q. 給与支払報告書と源泉徴収票は同じものですか。 A. 個人別明細書の部分はほぼ同じ内容です。出す先が違います。源泉徴収票は税務署と本人へ、給与支払報告書は市区町村へ出します。

Q. アルバイトの分も出しますか。 A. 給与を支払っていれば原則として対象です。金額が小さくても出します。退職者については省略できる取扱いがあるとされているので、市区町村に確かめます。

Q. 提出先はどうやって決まりますか。 A. その年の1月1日現在で、その人が住んでいる市区町村です。12月に引っ越した人は、去年と提出先が変わります。

Q. 総括表はどこで手に入りますか。 A. 前年に提出している市区町村からは、年末ごろに送られてくることが多くあります。届かない場合は、その市区町村のホームページから取ります。

Q. 総括表の様式は全国共通ですか。 A. 共通ではありません。市区町村ごとに独自の様式です。欄の並びも書く内容も違うので、提出先のものを使います。

Q. 期限に間に合わなかった場合はどうなりますか。 A. まず提出先の市区町村に連絡します。住民税の計算と通知の日程に影響するため、早く伝えるほど影響が小さくなります。

Q. 電子で提出できますか。 A. できます。提出する枚数が一定以上になる場合は、電子での提出が求められるとされています。自社が対象になるかは、枚数と年分で決まります。

Q. 普通徴収にできる人はいますか。 A. 給与が少ない人、退職した人、他の会社で特別徴収されている人など、普通徴収として扱う基準が市区町村ごとに示されています。該当する場合は理由の符号を書きます。

Q. 5月に通知が届かない市区町村があります。 A. 提出が届いていない可能性があります。提出先の一覧と突き合わせて、その市区町村に確かめます。

Q. 年の途中で退職した人の天引きはどうしますか。 A. 給与支払報告に係る給与所得者異動届出書を出します。出さないと、会社に請求が来続けます。

Q. 同じ市区町村に複数人いる場合は。 A. 1つの束にまとめて、総括表を1枚付けます。総括表に書く人数と、個人別明細書の枚数を合わせます。

Q. 住民票と実際に住んでいる場所が違う人がいます。 A. 提出先の判断が分かれる場面です。社内でどちらを基準にするかを決めたうえで、市区町村に確かめます。確かめた日と相手を記録に残します。

Q. 提出する前に、何を突き合わせておくとよいですか。 A. 賃金台帳の年間の支払額と、個人別明細書の支払金額です。ここがずれていると、後から訂正が必要になります。

Q. 出した後に間違いが見つかりました。 A. 訂正したものを市区町村へ出します。5月の通知が出る前なら、最初の通知に反映されます。税務署へ出した書類にも同じ内容があれば、そちらも直します。

Q. 従業員が1人もいない年はどうしますか。 A. 給与の支払いが無ければ報告するものがありません。ただし、前年に提出している市区町村から総括表が届くことがあるので、該当が無い旨を連絡する扱いを案内している市区町村があります。

Q. 役員の分も対象ですか。 A. 役員報酬も給与として支払っていれば対象になります。金額の大きさにかかわらず、住む市区町村へ報告します。

Q. 年末調整をしていない人の分も出しますか。 A. 出します。年末調整をしたかどうかと、報告の対象かどうかは別です。年末調整をしていないことが分かる形で書きます。