支払調書とは?出す範囲を金額で見分ける
目次
支払調書は、年が明けてから急に出てくる書類です。外部に報酬を払った先がいくつもあると、どこまで出すのかで手が止まります。相手から送ってほしいと言われることもあり、義務なのかどうかも分かりにくいところです。
この記事では、支払調書を、どの支払いが対象か・いくらから出すか・いつどこへ出すかの3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社の対象先を一覧にできる状態を目指します。
結論:支払いの種類ごとに、金額の線が決まっている
支払調書とは、誰にいくら払ったかを税務署へ知らせる書類のことです。所得税法などにもとづく法定調書の一つとされています。
法定調書はたくさんの種類がありますが、一般の会社で出てくるのは限られます。報酬・料金、不動産の使用料、不動産の譲受けの対価、あっせん手数料の4つを押さえておくと、たいていの場面が収まります。
ポイントはここです。種類ごとに、出すかどうかの金額の線が違います。全部を5万円で考えると、出しすぎたり出し漏れたりします。
一般には、会計ソフトの支払先のデータから年間の合計を出して、線を超えた先だけを拾う形が取られています。支払いのたびに種類を付けておくと、年明けの作業がほぼ自動で終わります。
提出の期限は、翌年の1月31日までとされています。給与の源泉徴収票や、市区町村へ出す給与支払報告書と同じ時期です。1月は行き先の違う紙が同時に動きます。
いくらから出すか
報酬・料金の支払調書で、いちばん多く使われる線は5万円です。
弁護士・税理士・司法書士などへの報酬、原稿料、講演料、デザインの報酬などは、1人につき年間5万円を超えて支払った場合に提出するものとされています。5万円以下は提出を省略できる基準です。
これとは別に、50万円の線があるものもあります。外交員や集金人の報酬、プロボクサーの報酬、バーやキャバレーのホステスなどの報酬、広告宣伝のための賞金、社会保険診療報酬。こちらは年間50万円を超える場合とされています。
迷いやすいのが、消費税の扱いです。提出する範囲の金額基準は、消費税等を含めて判断するのが原則とされています。ただし、消費税の額がはっきり区分されている場合には、含めないで判断してもよい取扱いが示されています。
会社の中で、どちらで判断するかを1つに決めておきます。年によって判断を変えると、去年出した先と今年出した先が理由なく入れ替わります。
税抜きで5万円ちょうどの支払いは、税込みで判断すると線を超えます。この境目にいる先が毎年いくつか出てくるので、判断の基準を書き残しておく価値があります。
本人に渡す義務はあるか
年明けに、報酬を受け取った側から「支払調書を送ってください」と言われることがあります。
報酬・料金の支払調書について、本人へ交付する義務は法令に定められていないとされています。税務署へ出す書類だからです。給与の源泉徴収票が本人に渡されるのとは、成り立ちが違います。
とはいえ、求められたら渡している会社は多くあります。受け取った側は確定申告の材料にできるため、関係を保つうえでも渡す意味があります。義務ではないので、渡すかどうかを社内で決めておきます。
決めるときに一緒に決めておくとよいのが3つです。渡す相手の範囲、渡す時期、渡す方法。相手から言われるたびに判断すると、人によって対応が変わります。
注意したいのは、渡す書面にマイナンバーを書かないことです。税務署へ出すものには本人の番号を書きますが、本人へ渡す控えには書かない取扱いが案内されています。同じデータから作るので、うっかり残りやすいところです。
出す前にそろえる材料
支払調書に書くのは、支払いを受ける人の情報と、金額です。材料は4つあります。
1つ目は、住所と氏名です。個人なら住所と氏名、法人なら所在地と名称。支払いのときに把握していないと、年明けに聞いて回ることになります。
2つ目は、マイナンバーまたは法人番号です。税務署へ出すものには書きます。個人から番号を受け取るときは、本人確認の手順が決められています。
3つ目は、年間の支払金額です。その年に支払った額の合計。支払った日で数えるのか、請求のあった月で数えるのかを社内でそろえておきます。
4つ目は、源泉徴収した税額です。支払いのときに差し引いた所得税の額の合計。
このうち、いちばん時間を取られるのが番号の取得です。新しい取引先と契約したときに一緒に受け取る形にしておくと、年明けの作業から消えます。
番号を受け取れなかった場合は、その旨を記録に残します。受け取れなかったことと、受け取ろうとした経緯を残しておくと、後から説明ができます。
1月の段取り
支払調書は、単体では出しません。法定調書合計表という表紙を付けて、まとめて税務署へ出します。
1月に動く紙は3つの行き先に分かれます。ここを混ぜると迷います。
税務署へは、法定調書合計表と、それに付ける支払調書・源泉徴収票。
市区町村へは、給与支払報告書。従業員が住む市区町村ごとです。
本人へは、給与の源泉徴収票。報酬の支払調書は、渡すと決めた場合だけです。
段取りとしては、年末のうちに対象先の一覧を作るのが効きます。支払先ごとの年間合計を出し、種類と金額の線で並べ替えれば、出す先が確定します。
電子で提出する方法もあります。提出する枚数が一定以上になる場合は、電子での提出が求められるとされていて、その枚数の基準は見直されています。自社が対象になるかは、提出する年の基準を所轄の税務署に確かめます。
出す先の一覧を作る
支払調書は、年に1回しか触らない業務です。前の年の記憶が無い状態から始まります。一覧があると、その年の判断が残ります。
一覧に書くのは5つです。
1つ目は、支払先の名前です。個人か法人かも書きます。
2つ目は、支払いの種類です。報酬・料金なのか、不動産の使用料なのか。ここが決まらないと金額の線が決まりません。
3つ目は、年間の支払金額です。税込みと税抜きの両方を持っておくと、判断の基準を変えたときに作り直さずに済みます。
4つ目は、出すか出さないかの判断と、その理由です。線を超えていないから出さない、という判断も書きます。
5つ目は、番号を受け取っているかです。未取得なら、いつ依頼したか。
この一覧があると、去年と今年で判断が変わっていないかを並べて見られます。税務調査で聞かれたときの説明の材料にもなります。
不動産まわりの3つは見落としやすい
報酬・料金の支払調書は意識されやすい一方、不動産にかかわる3つは見落とされがちです。払っている部署が経理でないことが多いからです。
見落としやすいのは3つです。
1つ目は、不動産の使用料等です。事務所や駐車場、倉庫の賃料。法人に払っている場合でも、権利金や更新料などは対象になる形があります。同じ相手への年間の合計で判断します。
2つ目は、不動産等の譲受けの対価です。土地や建物を買ったときの代金。何年かに一度しか起きないので、起きた年に気づけるかが勝負になります。
3つ目は、あっせん手数料です。不動産の売買や貸付けを仲介してもらったときの手数料。
この3つに共通するのは、支払いが経理以外の部署で起きることです。総務が事務所を借り、営業が物件を探す。支払いの理由を知っているのが経理ではない場面があります。
防ぎ方は単純です。不動産に関する契約を結んだら、経理に写しを回すという流れを1本作ります。年間の金額の線を超えるかどうかは後から集計すれば分かるので、契約の存在さえ届いていれば拾えます。
金額の線は種類ごとに決められていて、報酬・料金の5万円とは別の基準になります。所轄の税務署の案内か、国税庁の手引きで、その年の基準を確かめます。
支払いのときに決めておくこと
年明けの作業が重くなるのは、支払いのときに決めていないことを、後からまとめて決めているからです。
支払いのときに決めておけるのは3つです。
1つ目は、支払いの種類です。報酬なのか、外注費なのか、不動産の使用料なのか。勘定科目だけでは種類が決まらないことがあります。
2つ目は、源泉徴収の要否です。個人への報酬で源泉徴収が必要な種類かどうか。ここを間違えると、後から差額の精算が起きます。
3つ目は、相手の情報です。住所、氏名、番号。契約書や請求書と一緒に受け取ります。
この3つが支払いのたびに埋まっていれば、1月の作業は集計して線で切るだけになります。年に1回の重い作業を、月々の軽い作業に分けるのが要点です。
まとめ
支払調書は、誰にいくら払ったかを税務署へ知らせる法定調書です。一般の会社では、報酬・料金、不動産の使用料、不動産の譲受けの対価、あっせん手数料の4つが中心になります。
出すかどうかは金額で決まります。報酬・料金は年5万円超、外交員やホステスなどの報酬・広告宣伝の賞金などは年50万円超とされています。金額の判断には消費税等を含めるのが原則で、区分されている場合の取扱いも示されています。
本人へ交付する義務は法令に定められていないとされています。渡すかどうかを社内で決め、渡す場合はマイナンバーを書かない形にします。
提出は翌年1月31日までで、法定調書合計表を付けて税務署へ出します。支払いのときに種類と相手の情報を決めておくと、1月の作業が集計だけになります。自社の取扱いは、所轄の税務署や税理士などの専門家に確かめるのが確実です。
よくある質問
Q. 支払調書は必ず出さなければいけませんか。 A. 種類ごとに定められた金額を超えた支払いがあれば提出します。線を超えていなければ、提出を省略できる基準が示されています。
Q. 5万円は税込みですか、税抜きですか。 A. 提出範囲の金額基準は消費税等を含めて判断するのが原則とされています。消費税の額がはっきり区分されている場合は、含めないで判断してよい取扱いが示されています。社内で1つに決めておきます。
Q. 法人への支払いも対象ですか。 A. 種類によります。報酬・料金の支払調書は個人への支払いが中心ですが、法人への支払いが対象になる種類もあります。支払いの種類で判断します。
Q. 相手から送ってほしいと言われました。 A. 報酬・料金の支払調書について、本人への交付義務は法令に定められていないとされています。渡すかどうかは会社の判断です。渡す場合は、範囲と時期を社内で決めておきます。
Q. 本人に渡す控えにマイナンバーを書いてよいですか。 A. 本人へ渡すものには書かない取扱いが案内されています。税務署へ出すものとは分けて作ります。同じデータから作ると残りやすいので、出力の段階で分けます。
Q. マイナンバーを教えてもらえない場合は。 A. 受け取れなかったことと、受け取ろうとした経緯を記録に残します。提出そのものを止めない取扱いが案内されています。所轄の税務署に確かめると確実です。
Q. 期限はいつですか。 A. 翌年の1月31日までとされています。給与の源泉徴収票や給与支払報告書と同じ時期です。
Q. 支払調書だけを単体で出せますか。 A. 法定調書合計表を付けて、まとめて出す形になります。合計表が表紙の役割をします。
Q. 支払った日と請求の月、どちらで数えますか。 A. 社内でそろえておきます。年をまたぐ支払いで差が出るので、毎年同じ基準にします。
Q. 源泉徴収していない報酬も書きますか。 A. 支払いの種類が対象であれば、金額の線を超えていれば提出します。源泉徴収の有無とは別の判断です。
Q. 電子で出す必要がありますか。 A. 提出する枚数が一定以上になる場合は、電子での提出が求められるとされています。枚数の基準は見直されているので、提出する年の基準を確かめます。
Q. 出し忘れに気づいたらどうしますか。 A. 気づいた時点で所轄の税務署に相談して提出します。放置するより、早く出すほうが影響が小さくなります。
Q. 一覧には、出さないと判断した先も書きますか。 A. 書いておくほうが役に立ちます。なぜ出さなかったかの理由が残るので、翌年の判断がぶれません。
Q. 事務所の家賃も支払調書の対象ですか。 A. 不動産の使用料等として対象になる形があります。報酬・料金とは別の基準なので、その年の手引きで確かめます。支払っている部署が経理でないことが多く、見落としやすいところです。
Q. 支払調書を出すと、相手に何か知らせが行きますか。 A. 税務署へ出す書類なので、相手に通知が行くものではありません。本人へ渡すかどうかは会社の判断になります。
Q. 支払いが年に1回だけの先も対象ですか。 A. 回数ではなく、年間の合計金額で判断します。1回でも線を超えていれば対象です。
Q. 支払先が年の途中で個人から法人になりました。 A. 支払いを受けた主体が変わっているので、分けて考えます。契約の切り替わった日を記録に残しておくと、集計のときに迷いません。