労働条件通知書とは?必ず書く項目と2024年分
目次
採用が決まって、労働条件通知書を作ろうとした。ひな形はあるけれど、いつのものか分からない。数年前から項目が増えたと聞いたことはあるが、どこが増えたのかは覚えていない。人を採るたびに、同じところで止まります。
この記事では、労働条件通知書を、必ず書く項目・2024年に増えた項目・渡し方の3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社のひな形を直せる状態を目指します。
結論:書面で明示する項目が決まっている
労働条件通知書とは、労働契約を結ぶときに、労働条件を書面で示す書類のことです。労働基準法にもとづいて、明示することが求められています。
明示の方法は書面の交付が原則です。労働者が希望した場合は、電子メールなど、出力して書面にできる方法でもよいとされています。
ポイントはここです。明示すべき項目のうち、書面で示さなければならないものが決まっています。口頭でよいものと、書面が必要なものが分かれます。
雇用契約書と兼ねている会社が多くあります。1枚で兼ねること自体は問題ありませんが、兼ねるなら必要な項目が全部入っているかを確かめます。
必ず書面で示す項目
書面で明示することが求められている項目は、次のものです。
労働契約の期間。期間の定めがある場合は更新の基準。就業の場所と従事する業務。始業と終業の時刻、所定時間外労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制の場合の就業時転換。賃金の決定・計算・支払の方法、締切りと支払の時期、昇給に関する事項。退職に関する事項(解雇の事由を含む)。
昇給に関する事項は書面でなくてもよいとされている一方、他の賃金の項目は書面が必要です。ひな形によっては昇給の欄が無いものがありますが、明示自体は求められます。
パートやアルバイトについては、これに加えて昇給・退職手当・賞与の有無、相談窓口を明示することが求められています。短時間労働者向けの様式を使うほうが早く済みます。
2024年4月に増えた項目
2024年4月から、明示する項目が増えています。増えたのは4つです。
1つ目は、就業場所と業務の変更の範囲です。入社したときの場所と業務だけでなく、将来の配置転換でどこまで変わりうるかを書きます。
2つ目は、更新上限の有無と内容です。有期契約の場合、通算の契約期間や更新回数に上限があるなら書きます。
3つ目は、無期転換申込機会の明示です。無期転換の申込みができるようになる契約更新のときに、その旨を明示します。
4つ目は、無期転換後の労働条件の明示です。転換後にどんな条件になるかを示します。
古いひな形を使い続けている会社は、1つ目が抜けています。入社時の場所と業務しか書いていないのが、いちばん多い形です。変更の範囲を書く欄を足すところから始めます。
変更の範囲は、実態に合わせて書きます。転勤が無い会社が「全国」と書く必要はありません。逆に、実際には転勤があるのに「本社のみ」と書くと、後で動かせなくなります。
就業規則との関係
労働条件通知書と就業規則は、役割が違います。
就業規則は、事業場の全員に共通するルールです。常時10人以上を使用する事業場では作成と届出が求められます。
労働条件通知書は、その人1人の条件です。入社の日、賃金額、就業の場所など、人によって違うものを書きます。
通知書で「詳細は就業規則による」と書ける項目があります。始業と終業の時刻や休日が、就業規則の条文どおりである場合などです。ただし、その場合でも就業規則を渡すか、いつでも見られる状態にしておく必要があります。
就業規則を作っていない事業場では、この逃げ道が使えません。通知書に全部書くことになります。9人以下の事業場ほど、通知書が厚くなります。
いつ渡すか
渡すのは、労働契約を結ぶときです。入社してから数日後に渡す形は、明示のタイミングとしては遅くなります。
実務では、内定を出して条件が固まった時点で渡す会社が多くあります。初日に渡すより前にしておくと、条件の食い違いが入社前に見つかります。
契約を更新するときも、そのつど明示します。同じ条件で更新するから何も渡さないという形は取れません。更新の回数が多い有期契約では、ここが抜けやすくなります。
労働条件が途中で変わったときも明示します。異動、職種の変更、賃金の改定。変わった内容を書面で渡し、控えを残します。
控えと保存
渡した通知書は、控えを残します。労働者名簿や賃金台帳と同じつづりに入れている会社もあります。
保存の期間について、通知書そのものに年数が定められているわけではありません。ただし、労働関係に関する重要な書類として扱われるものは、一定の期間保存することが求められています。
本人が署名した写しを残す形にしておくと、渡したことを示せます。電子メールで送った場合は、送信の記録を残します。
退職した人の分も、すぐには捨てません。在職中の条件について後から問われることがあります。他の労務の書類と同じ年数で残しておくと、判断が要りません。
ひな形を直す手順
古いひな形を使っている場合、直す手順は4つです。
1つ目は、いまのひな形の項目を、明示が求められる項目と突き合わせることです。抜けている欄が見つかります。
2つ目は、2024年の追加分を足すことです。就業場所と業務の変更の範囲、更新上限、無期転換に関する2つ。
3つ目は、パート用の様式を別に作ることです。昇給・退職手当・賞与の有無と相談窓口が加わります。
4つ目は、就業規則との対応を確かめることです。「就業規則による」と書いている項目が、実際の条文と合っているかを見ます。
厚生労働省が様式を公開しています。自社のひな形より、公開されている様式のほうが新しいことが多いので、そこから作り直すのが早く済みます。
通知書から始まる労務の書類
労働条件通知書は、入社の手続きの最初に作る書類です。ここから他の書類につながります。
つながるのは4つです。労働者名簿、賃金台帳、社会保険の手続き、年次有給休暇管理簿。
名簿には氏名・生年月日・住所・雇入れの年月日などが入ります。通知書を作るときに集めた情報が、そのまま使えます。
賃金台帳には賃金の額が入ります。通知書で示した賃金と台帳の金額がずれていると、どちらかが間違っています。入社の月に突き合わせると、早く見つかります。
有給の管理簿は、雇入れの日から6か月後に最初の付与が起こります。通知書を作った時点で、基準日を管理表に入れておくと、後から拾う作業が要りません。
入社の手続きを1枚のチェックリストにして、通知書を起点に並べておくと、抜けが出ません。
パートと有期の追加項目
パートタイムや有期雇用の人については、明示する項目が増えます。
加わるのは、昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無、相談窓口です。「有無」なので、無いなら「無し」と書きます。空欄にすると明示したことになりません。
相談窓口は、部署名や担当者名、連絡先を書きます。名前を書くなら、その人が代わったときに直す必要があります。部署名にしておくほうが、直す回数が減ります。
有期契約では、更新の基準と、更新上限の有無も書きます。「更新する場合がある」だけでは足りず、何をもって判断するかまで書く形が求められます。
無期転換に関する項目も、対象になる契約更新のときに明示します。5年を超える更新が見えてきたら、この手続きが必要になる時期が来ます。
変更が起きたときの明示
入社のときだけでなく、条件が変わるたびに明示が要ります。実務で起きるのは4つです。
1つ目は、異動です。就業の場所が変わります。変更の範囲に書いた中での異動なら、範囲の明示は済んでいますが、実際の場所が変わったことは伝えます。
2つ目は、職種の変更です。従事する業務が変わります。
3つ目は、賃金の改定です。昇給、手当の新設や廃止。
4つ目は、契約の更新です。有期契約では、更新のたびに明示します。
変更のたびに全項目を書き直す必要はありませんが、変わった部分がいつから変わったかが追える形にしておきます。差分の紙が積み重なると、現在の条件が分からなくなるため、年に1回は現在の条件をまとめた1枚を作る会社もあります。
まとめ
労働条件通知書は、労働契約を結ぶときに労働条件を書面で示す書類です。明示すべき項目のうち、書面が必要なものが決まっています。
2024年4月から4つの項目が増えました。就業場所と業務の変更の範囲、更新上限の有無と内容、無期転換申込機会、無期転換後の労働条件です。古いひな形は1つ目が抜けています。
就業規則がある事業場では「就業規則による」と書ける項目がありますが、就業規則を見られる状態にしておく必要があります。9人以下で就業規則が無い事業場は、通知書に全部書くことになります。
渡すのは契約を結ぶときで、更新のたび、条件が変わるたびに明示します。控えは他の労務の書類と一緒に残します。自社の記載で迷う点は、所轄の労働基準監督署か社会保険労務士に確かめるのが確実です。
よくある質問
Q. 雇用契約書と労働条件通知書は、どちらが要りますか。 A. 法令で求められているのは労働条件の明示です。通知書を渡す形でも、雇用契約書に条件を書いて双方が署名する形でも足ります。1枚で兼ねる場合は、明示すべき項目が全部入っているかを確かめます。
Q. 電子メールで渡してもよいですか。 A. 労働者が希望した場合に限り、出力して書面にできる方法での明示が認められています。本人が希望したことを記録に残しておきます。一方的にメールだけで送る形は取れません。
Q. 変更の範囲は、どこまで広く書けばよいですか。 A. 実態に合わせます。広く書いておけば動かしやすくなりますが、実際には無い異動まで書くと、本人の理解とずれます。いま想定している範囲を書くのが基本の考え方です。
Q. 短期のアルバイトにも渡しますか。 A. 期間の長さに関わらず、労働契約を結ぶなら明示が必要です。1日だけの契約でも同じです。短期用の簡潔な様式を用意しておくと、そのつど作らずに済みます。
Q. 派遣で受け入れる人にも渡しますか。 A. 労働契約を結んでいるのは派遣元なので、通知書を渡すのは派遣元です。受け入れる側は、派遣先として別に定められた手続きを行います。
Q. 条件が変わるたびに全項目を書き直しますか。 A. 変わった部分だけを明示する形でもかまいません。ただし、どの条件がいつから変わったかが後から追える形にしておきます。差分だけの紙が積み重なると、現在の条件が分からなくなります。
Q. 本人が署名を拒んだ場合は。 A. 通知書は明示するための書類なので、署名が無くても渡した事実があれば足りる形になります。渡した記録を残します。内容に納得していないなら、そこを話し合うのが先です。
Q. ひな形はどこで手に入りますか。 A. 厚生労働省が様式を公開しています。改正のたびに更新されるため、自社で保管しているひな形より新しいことが多くあります。使う前に、公開されているものと項目を突き合わせます。
Q. 内定の段階で渡してもよいですか。 A. 条件が固まっているなら、早く渡すほうが食い違いを防げます。内定の通知と一緒に渡している会社もあります。契約が成立するまでに明示されていればよい形です。
Q. 通知書の内容と就業規則が違っていたら。 A. どちらが有利かなどによって扱いが変わります。そもそもずれが出ないように、就業規則を変えたら通知書のひな形も見直す形にしておきます。
Q. パート用の様式は別に作るべきですか。 A. 項目が増えるため、別に作るほうが早く済みます。正社員用の様式に追加の欄を足す形でもかまいませんが、正社員に使うときに空欄が残ると見栄えが悪くなります。
Q. 変更の明示も書面が要りますか。 A. 明示すべき事項が変わるなら、明示の方法は入社のときと同じ考え方になります。辞令や通知の書面で示す形が一般的です。口頭だけで済ませないのが安全です。