勤怠と労務解説2026.05.28 公開KK-42

労働条件通知書とは?必ず書く項目と2024年分

目次

採用が決まって、労働条件通知書を作ろうとした。ひな形はあるけれど、いつのものか分からない。数年前から項目が増えたと聞いたことはあるが、どこが増えたのかは覚えていない。人を採るたびに、同じところで止まります。

この記事では、労働条件通知書を、必ず書く項目・2024年に増えた項目・渡し方の3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社のひな形を直せる状態を目指します。

労働者名簿のほうから確かめたい方は、こちらを読むと早いです。→ 労働者名簿の書き方

結論:書面で明示する項目が決まっている

労働条件通知書とは、労働契約を結ぶときに、労働条件を書面で示す書類のことです。労働基準法にもとづいて、明示することが求められています。

明示の方法は書面の交付が原則です。労働者が希望した場合は、電子メールなど、出力して書面にできる方法でもよいとされています。

ポイントはここです。明示すべき項目のうち、書面で示さなければならないものが決まっています。口頭でよいものと、書面が必要なものが分かれます。

明示の2段書面で示す期間・場所・時間・賃金・退職定めがあれば示す昇給や制度に関するものパート・有期4項目が加わる
書面で示す項目と、定めがある場合に示す項目の関係を示した層の図

雇用契約書と兼ねている会社が多くあります。1枚で兼ねること自体は問題ありませんが、兼ねるなら必要な項目が全部入っているかを確かめます。

必ず書面で示す項目

書面で明示することが求められている項目は、次のものです。

労働契約の期間。期間の定めがある場合は更新の基準。就業の場所と従事する業務。始業と終業の時刻、所定時間外労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制の場合の就業時転換。賃金の決定・計算・支払の方法、締切りと支払の時期、昇給に関する事項。退職に関する事項(解雇の事由を含む)。

書面で明示する項目中身契約の期間更新の基準・更新上限場所と業務変更の範囲も書く労働時間始業終業・休憩・休日・休暇賃金と退職計算と支払・解雇の事由
書面で明示する項目を5つの塊に分けて並べた表

昇給に関する事項は書面でなくてもよいとされている一方、他の賃金の項目は書面が必要です。ひな形によっては昇給の欄が無いものがありますが、明示自体は求められます。

パートやアルバイトについては、これに加えて昇給・退職手当・賞与の有無、相談窓口を明示することが求められています。短時間労働者向けの様式を使うほうが早く済みます。

2024年4月に増えた項目

2024年4月から、明示する項目が増えています。増えたのは4つです。

1つ目は、就業場所と業務の変更の範囲です。入社したときの場所と業務だけでなく、将来の配置転換でどこまで変わりうるかを書きます。

2つ目は、更新上限の有無と内容です。有期契約の場合、通算の契約期間や更新回数に上限があるなら書きます。

3つ目は、無期転換申込機会の明示です。無期転換の申込みができるようになる契約更新のときに、その旨を明示します。

4つ目は、無期転換後の労働条件の明示です。転換後にどんな条件になるかを示します。

2024年4月に増えた4つ増えた項目要点就業場所の変更の範囲古い様式は欄が無い業務の変更の範囲同上更新上限の有無有期契約が対象無期転換の機会と条件対象の更新のときに
2024年4月に増えた4つの項目を並べた表

古いひな形を使い続けている会社は、1つ目が抜けています。入社時の場所と業務しか書いていないのが、いちばん多い形です。変更の範囲を書く欄を足すところから始めます。

変更の範囲は、実態に合わせて書きます。転勤が無い会社が「全国」と書く必要はありません。逆に、実際には転勤があるのに「本社のみ」と書くと、後で動かせなくなります。

就業規則との関係

労働条件通知書と就業規則は、役割が違います。

就業規則は、事業場の全員に共通するルールです。常時10人以上を使用する事業場では作成と届出が求められます。

労働条件通知書は、その人1人の条件です。入社の日、賃金額、就業の場所など、人によって違うものを書きます。

書く範囲が違う就業規則事業場の全員に共通常時10人以上で作成と届出ルールそのもの労働条件通知書その人1人の条件入社日・賃金額・就業の場人ごとに違うもの
就業規則と労働条件通知書で、書く範囲が違うことを並べた比較の図

通知書で「詳細は就業規則による」と書ける項目があります。始業と終業の時刻や休日が、就業規則の条文どおりである場合などです。ただし、その場合でも就業規則を渡すか、いつでも見られる状態にしておく必要があります。

就業規則を作っていない事業場では、この逃げ道が使えません。通知書に全部書くことになります。9人以下の事業場ほど、通知書が厚くなります。

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実際に使える様式が必要な方へ

労務の様式は、商い屋の配布ページにあります。この記事は明示の項目の話です。

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いつ渡すか

渡すのは、労働契約を結ぶときです。入社してから数日後に渡す形は、明示のタイミングとしては遅くなります。

実務では、内定を出して条件が固まった時点で渡す会社が多くあります。初日に渡すより前にしておくと、条件の食い違いが入社前に見つかります。

渡す時期内定条件が固まった契約の成立までここまでに明示入社初日より前が望ましい更新・変更そのつど明示同じ条件で更新するから何も渡さない、という形は取れない
内定から入社までの、通知書を渡す時期を示した時系列の図

契約を更新するときも、そのつど明示します。同じ条件で更新するから何も渡さないという形は取れません。更新の回数が多い有期契約では、ここが抜けやすくなります。

労働条件が途中で変わったときも明示します。異動、職種の変更、賃金の改定。変わった内容を書面で渡し、控えを残します。

控えと保存

渡した通知書は、控えを残します。労働者名簿や賃金台帳と同じつづりに入れている会社もあります。

保存の期間について、通知書そのものに年数が定められているわけではありません。ただし、労働関係に関する重要な書類として扱われるものは、一定の期間保存することが求められています。

本人が署名した写しを残す形にしておくと、渡したことを示せます。電子メールで送った場合は、送信の記録を残します。

退職した人の分も、すぐには捨てません。在職中の条件について後から問われることがあります。他の労務の書類と同じ年数で残しておくと、判断が要りません。

ひな形を直す手順

古いひな形を使っている場合、直す手順は4つです。

1つ目は、いまのひな形の項目を、明示が求められる項目と突き合わせることです。抜けている欄が見つかります。

2つ目は、2024年の追加分を足すことです。就業場所と業務の変更の範囲、更新上限、無期転換に関する2つ。

3つ目は、パート用の様式を別に作ることです。昇給・退職手当・賞与の有無と相談窓口が加わります。

4つ目は、就業規則との対応を確かめることです。「就業規則による」と書いている項目が、実際の条文と合っているかを見ます。

ひな形を直す4つ1突き合わせ明示が要る項目と22024年分を足す変更の範囲など3パート用を作る4項目が加わる4就業規則と照らす条文と合っているか
ひな形を直す4つの手順を並べたフロー

厚生労働省が様式を公開しています。自社のひな形より、公開されている様式のほうが新しいことが多いので、そこから作り直すのが早く済みます。

通知書から始まる労務の書類

労働条件通知書は、入社の手続きの最初に作る書類です。ここから他の書類につながります。

つながるのは4つです。労働者名簿、賃金台帳、社会保険の手続き、年次有給休暇管理簿。

名簿には氏名・生年月日・住所・雇入れの年月日などが入ります。通知書を作るときに集めた情報が、そのまま使えます。

賃金台帳には賃金の額が入ります。通知書で示した賃金と台帳の金額がずれていると、どちらかが間違っています。入社の月に突き合わせると、早く見つかります。

有給の管理簿は、雇入れの日から6か月後に最初の付与が起こります。通知書を作った時点で、基準日を管理表に入れておくと、後から拾う作業が要りません。

入社の手続きを1枚のチェックリストにして、通知書を起点に並べておくと、抜けが出ません。

パートと有期の追加項目

パートタイムや有期雇用の人については、明示する項目が増えます。

加わるのは、昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無、相談窓口です。「有無」なので、無いなら「無し」と書きます。空欄にすると明示したことになりません。

相談窓口は、部署名や担当者名、連絡先を書きます。名前を書くなら、その人が代わったときに直す必要があります。部署名にしておくほうが、直す回数が減ります。

有期契約では、更新の基準と、更新上限の有無も書きます。「更新する場合がある」だけでは足りず、何をもって判断するかまで書く形が求められます。

無期転換に関する項目も、対象になる契約更新のときに明示します。5年を超える更新が見えてきたら、この手続きが必要になる時期が来ます。

変更が起きたときの明示

入社のときだけでなく、条件が変わるたびに明示が要ります。実務で起きるのは4つです。

1つ目は、異動です。就業の場所が変わります。変更の範囲に書いた中での異動なら、範囲の明示は済んでいますが、実際の場所が変わったことは伝えます。

2つ目は、職種の変更です。従事する業務が変わります。

3つ目は、賃金の改定です。昇給、手当の新設や廃止。

4つ目は、契約の更新です。有期契約では、更新のたびに明示します。

変更のたびに全項目を書き直す必要はありませんが、変わった部分がいつから変わったかが追える形にしておきます。差分の紙が積み重なると、現在の条件が分からなくなるため、年に1回は現在の条件をまとめた1枚を作る会社もあります。

まとめ

労働条件通知書は、労働契約を結ぶときに労働条件を書面で示す書類です。明示すべき項目のうち、書面が必要なものが決まっています。

2024年4月から4つの項目が増えました。就業場所と業務の変更の範囲、更新上限の有無と内容、無期転換申込機会、無期転換後の労働条件です。古いひな形は1つ目が抜けています。

就業規則がある事業場では「就業規則による」と書ける項目がありますが、就業規則を見られる状態にしておく必要があります。9人以下で就業規則が無い事業場は、通知書に全部書くことになります。

渡すのは契約を結ぶときで、更新のたび、条件が変わるたびに明示します。控えは他の労務の書類と一緒に残します。自社の記載で迷う点は、所轄の労働基準監督署か社会保険労務士に確かめるのが確実です。

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実際に使える様式が必要な方へ

労務の様式が、商い屋の配布ページにあります。名簿や台帳と合わせてそろえられます。

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よくある質問

Q. 雇用契約書と労働条件通知書は、どちらが要りますか。 A. 法令で求められているのは労働条件の明示です。通知書を渡す形でも、雇用契約書に条件を書いて双方が署名する形でも足ります。1枚で兼ねる場合は、明示すべき項目が全部入っているかを確かめます。

Q. 電子メールで渡してもよいですか。 A. 労働者が希望した場合に限り、出力して書面にできる方法での明示が認められています。本人が希望したことを記録に残しておきます。一方的にメールだけで送る形は取れません。

Q. 変更の範囲は、どこまで広く書けばよいですか。 A. 実態に合わせます。広く書いておけば動かしやすくなりますが、実際には無い異動まで書くと、本人の理解とずれます。いま想定している範囲を書くのが基本の考え方です。

Q. 短期のアルバイトにも渡しますか。 A. 期間の長さに関わらず、労働契約を結ぶなら明示が必要です。1日だけの契約でも同じです。短期用の簡潔な様式を用意しておくと、そのつど作らずに済みます。

Q. 派遣で受け入れる人にも渡しますか。 A. 労働契約を結んでいるのは派遣元なので、通知書を渡すのは派遣元です。受け入れる側は、派遣先として別に定められた手続きを行います。

Q. 条件が変わるたびに全項目を書き直しますか。 A. 変わった部分だけを明示する形でもかまいません。ただし、どの条件がいつから変わったかが後から追える形にしておきます。差分だけの紙が積み重なると、現在の条件が分からなくなります。

Q. 本人が署名を拒んだ場合は。 A. 通知書は明示するための書類なので、署名が無くても渡した事実があれば足りる形になります。渡した記録を残します。内容に納得していないなら、そこを話し合うのが先です。

Q. ひな形はどこで手に入りますか。 A. 厚生労働省が様式を公開しています。改正のたびに更新されるため、自社で保管しているひな形より新しいことが多くあります。使う前に、公開されているものと項目を突き合わせます。

Q. 内定の段階で渡してもよいですか。 A. 条件が固まっているなら、早く渡すほうが食い違いを防げます。内定の通知と一緒に渡している会社もあります。契約が成立するまでに明示されていればよい形です。

Q. 通知書の内容と就業規則が違っていたら。 A. どちらが有利かなどによって扱いが変わります。そもそもずれが出ないように、就業規則を変えたら通知書のひな形も見直す形にしておきます。

Q. パート用の様式は別に作るべきですか。 A. 項目が増えるため、別に作るほうが早く済みます。正社員用の様式に追加の欄を足す形でもかまいませんが、正社員に使うときに空欄が残ると見栄えが悪くなります。

Q. 変更の明示も書面が要りますか。 A. 明示すべき事項が変わるなら、明示の方法は入社のときと同じ考え方になります。辞令や通知の書面で示す形が一般的です。口頭だけで済ませないのが安全です。