就業規則の届出|10人になったら何をいつまでに
目次
従業員が10人になった。就業規則を作らないといけないらしい、とは聞いている。けれど、何を書けばよいのか、どこへ出すのか、いつまでなのかが分からない。ひな形を探し始めて、そのまま数か月が過ぎる。よくある形です。
この記事では、就業規則の届出を、いつ必要になるか・何を書くか・手続きの3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社の段取りを組める状態を目指します。
結論:常時10人以上の事業場で、作成と届出が要る
就業規則の届出とは、作成した就業規則を所轄の労働基準監督署へ提出する手続きのことです。労働基準法にもとづくものです。
対象になるのは、常時10人以上の労働者を使用する事業場です。会社単位ではなく事業場ごとに数えます。
ポイントはここです。数えるのはパートやアルバイトも含みます。正社員だけで数えて「まだ9人」と判断すると、実際には対象になっていることがあります。
10人未満の事業場に作成の義務はありません。ただし、作ってはいけないわけではなく、作って届け出ることもできます。ルールがはっきりするので、人数が少ないうちから作っている会社もあります。
必ず書く項目と、定めるなら書く項目
就業規則に書く項目は、2つに分かれます。
必ず書く項目(絶対的必要記載事項)は3つです。始業と終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、交替制の就業時転換に関する事項。賃金の決定・計算・支払の方法、締切りと支払の時期、昇給に関する事項。退職に関する事項(解雇の事由を含む)。
定めるなら書く項目(相対的必要記載事項)は、制度を設けるなら書かなければならないものです。退職手当、臨時の賃金や賞与、食費や作業用品の負担、安全衛生、職業訓練、災害補償、表彰と制裁、その他全労働者に適用される定め。
制裁(懲戒)の定めは、後者に入ります。就業規則に書いていないと、懲戒処分ができないとされています。ここが抜けている規則を使っている会社があります。
退職手当も同じです。制度があるのに書いていないと、支給の基準が示せません。制度があるかどうかで書く項目が変わるので、自社の制度を一度洗い出します。
意見を聴く手続き
作ったものをそのまま出すことはできません。労働者の過半数を代表する者の意見を聴くことが求められています。
労働組合があり、それが労働者の過半数で組織されているなら、その組合の意見を聴きます。無い場合は、過半数代表者を選びます。
代表者の選び方には決まりがあります。管理監督者でないことと、投票や挙手など、民主的な方法で選ばれることです。会社が指名する形は取れません。
意見を聴いた結果は、意見書にまとめて届出に添えます。意見の内容が反対であっても、届出そのものは受理される形になっています。同意を得ることまでは求められていません。
意見書には、代表者の署名か記名押印が入ります。選び方が分かる記録も社内に残しておくと、後から問われたときに示せます。
届出の手続き
届け出るのは、所轄の労働基準監督署です。提出するのは3点になります。
就業規則本体。就業規則届(届出の書面)。意見書。
提出の方法は、窓口への持参、郵送、電子申請から選べます。持参する場合は2部持っていき、1部に受付の印をもらって控えにする形が一般的です。
いつまでという期限は、「遅滞なく」とされています。作成したらすぐ、が原則です。人数が10人になってから何か月も経っているのに届け出ていない状態は、指摘の対象になります。
事業場が複数ある会社では、事業場ごとに届け出るのが原則です。本社でまとめて届け出られる仕組みもありますが、条件があるため、所轄の労働基準監督署に確かめます。
周知しないと効力がない
届け出て終わりではありません。労働者に周知することが求められています。
周知の方法として挙げられているのは、見やすい場所への掲示または備え付け、書面の交付、電子機器で常時確認できるようにすることです。
金庫にしまってある就業規則は、周知したことになりません。「見たければ総務に言ってください」という運用も、常時確認できる状態とは言いにくくなります。
周知していない就業規則は、効力が認められないことがあります。懲戒処分や労働条件の根拠として使えなくなるため、届出より周知のほうが実務では重い場面があります。
社内の共有フォルダに置く場合は、全員がアクセスできるか、権限が絞られていないかを確かめます。
変えるときも同じ手続き
一度作ったら終わりではありません。変更するときも、意見を聴いて届け出ます。
変える場面は多くあります。法改正への対応、休暇制度の追加、賃金規程の見直し、ハラスメント防止の規定。法改正のたびに見直すことになります。
変更した部分だけを届け出る形も取れますが、どこがいつ変わったかを社内で追える形にしておきます。新旧の対照表を作っておくと、周知のときにも使えます。
不利益な変更にあたる場合は、手続きだけでは足りません。変更の必要性や、労働者が受ける不利益の程度などが問われます。賃金や退職金を下げる変更は、専門家に相談してから進めます。
作るときに社内で決めること
ひな形から作り始める前に、社内で決めておくことがあります。決めずに条文を書き始めると、途中で止まります。
決めるのは4つです。休日をどう置くか、賃金の締めと支払日、退職の申し出の期限、懲戒の種類。
休日は、法定休日をどの曜日にするかまで決めます。決めていないと、休日労働の割増の判断ができません。
賃金の締めと支払日は、実際の運用に合わせます。ひな形の日付をそのまま残すと、実際とずれます。
退職の申し出の期限は、引き継ぎに要する期間から考えます。長すぎる期間を書くと、実際には守られません。
懲戒の種類は、書いていないものは使えません。譴責、減給、出勤停止、諭旨解雇、懲戒解雇。どれを置くかを決めます。
この4つが決まっていれば、残りはひな形に沿って書けます。決めずに書き始めると、条文ごとに社内で相談することになります。
作った後に増えていくもの
就業規則を作ると、そこから派生する規程や協定が出てきます。まとめて見ておくと、次に何が要るかが分かります。
賃金規程・退職金規程。本則から分けて別冊にすることが多くあります。
育児・介護休業規程。法改正が多く、見直しの頻度が高い部分です。
ハラスメント防止の規定。方針の明確化と周知、相談体制の整備が求められています。
労使協定。36協定、賃金控除の協定、変形労働時間制の協定など、制度を取るなら必要になります。
全部を最初から作る必要はありません。自社にある制度に対応するものだけを順に足していきます。無い制度の規程を作ると、あるものとして扱われます。
年に1回、法改正の有無と、自社の制度の変化を確かめる日を決めておくと、まとめて見直せます。
周知の形を決める
届け出た後の周知は、方法を決めて記録に残します。
取りやすいのは3つです。事務所の見やすい場所に1部置く。入社のときに全員に写しを渡す。社内の共有フォルダに置いて、全員が開ける権限にする。
紙で置く場合は、最新版であることが分かる形にします。改定の日付を表紙に書き、古い版は別の場所へ移します。
データで置く場合は、権限を確かめます。部署ごとにフォルダの権限が分かれている会社では、全員が開けないことがあります。
周知したことを記録に残します。いつ、どの方法で、誰に伝えたか。入社のときに渡しているなら、入社の手続きのチェックリストに1行入れておけば足ります。
改定したときも周知が要ります。変えたことを伝えないと、変えた内容が効きません。新旧の対照表を添えると、どこが変わったかが伝わります。
まとめ
就業規則の届出は、常時10人以上の労働者を使用する事業場で必要になります。事業場ごとに数え、パートやアルバイトも含めます。
書く項目は、必ず書くものと、制度を定めるなら書くものに分かれます。懲戒と退職手当は後者で、書いていないと使えません。
作ったら、労働者の過半数を代表する者の意見を聴き、意見書を添えて所轄の労働基準監督署へ届け出ます。同意までは求められていません。代表者は民主的な方法で選びます。
届け出たあと、周知します。掲示、備え付け、書面の交付、電子機器での常時確認のいずれかです。周知していないと効力が認められないことがあります。変更のときも同じ手続きを踏みます。
よくある質問
Q. 10人を一時的に超えただけでも届出が要りますか。 A. 常時10人以上かどうかで判断します。繁忙期だけ一時的に増える場合の扱いは分かれるため、所轄の労働基準監督署に実態を示して確かめます。継続して超える見込みがあるなら、早めに作り始めます。
Q. 賃金規程を別に作ってもよいですか。 A. 本則と分けて、賃金規程・退職金規程などを別冊にする形は一般的です。別冊も就業規則の一部なので、作成や変更のときは同じ手続きが要ります。届出も一緒に行います。
Q. ひな形をそのまま使ってもよいですか。 A. 厚生労働省がモデル就業規則を公開しています。そのまま使うと自社に無い制度まで書いてしまうことがあるため、自社の実態に合わせて削る作業が要ります。書いてある制度は、あるものとして扱われます。
Q. 過半数代表者は誰でも選べますか。 A. 管理監督者は代表者になれません。また、会社が指名する形も認められません。投票や挙手など、民主的な方法で選ぶ必要があります。選出の過程を記録に残しておきます。
Q. 意見書に反対と書かれたら、届け出られませんか。 A. 届け出られます。意見を聴くことが求められているのであって、同意までは求められていません。ただし、反対の理由は内容を見直す材料になります。
Q. パート用の就業規則を別に作れますか。 A. 作れます。正社員用とパート用を分けている会社は多くあります。それぞれについて、意見を聴いて届け出ます。パートに適用される規則については、パートの代表者の意見を聴くよう努めることとされています。
Q. 電子申請はどう使いますか。 A. 電子政府の窓口から申請できます。複数の事業場がある会社では、まとめて申請できる仕組みがあります。初回は準備に時間がかかるため、次の変更に備えて整えておくと楽になります。
Q. 届出の控えはどれくらい残しますか。 A. 受付の印がある控えは、次に変更するまで必ず残します。過去の版も、いつどう変わったかを示す材料になるため、年ごとにつづりを分けて保管している会社が多くあります。
Q. 就業規則を作ると、後から変えにくくなりますか。 A. 変更の手続きは、作成のときと同じです。意見を聴いて届け出ます。不利益な変更にあたる場合は別の考慮が要りますが、制度を足す方向の変更は進めやすくなります。
Q. 10人未満でも作るべきですか。 A. 義務ではありませんが、ルールがはっきりします。人数が増えてから慌てて作るより、少ないうちに作っておくほうが負担は軽くなります。作ったら届け出ることもできます。
Q. 本社で作った就業規則を、支店でも使えますか。 A. 内容が同じなら使えます。ただし、届出は事業場ごとが原則で、それぞれの事業場で意見を聴くことになります。周知も事業場ごとに行います。
Q. 周知はいつまでに行いますか。 A. 届出と前後しても、労働者が知ることができる状態にすることが求められます。作ったらすぐが原則です。届け出てから周知までが空いていると、その間の扱いがあいまいになります。
Q. パートにも就業規則を周知しますか。 A. 適用される規則を周知します。パート用の規則を別に作っているなら、そちらを渡します。正社員用だけを渡すと、自分に適用される内容が分かりません。
Q. 就業規則の周知を、社内のイントラネットで行ってもよいですか。 A. 労働者が常時確認できる状態であれば取れる形です。全員がアクセスできる権限になっているか、端末が無い人がいないかを確かめます。現場に端末が無い会社では、紙も併用します。