勤怠と労務解説2026.09.10 公開SR-03

労災の様式5号|出す先は病院で、労基署ではない

目次

労災の様式5号は、けがが起きてから初めて触ることが多い書類です。急いでいる場面なので、どこに出すのか、誰が書くのかを調べる時間がありません。しかも薬局の分が別に要ることは、後から気づきます。

この記事では、労災の様式5号を、どんなときに使うか・どこへ出すか・誰が何を書くかの3つに分けて整理します。読み終えたときに、けがが起きたときの流れを1枚にできる状態を目指します。

出勤簿や勤務の記録のほうから確かめたい方は、こちらを読むと早いです。→ 出勤簿の書き方

結論:労災指定の病院に出す書類

労災の様式5号とは、仕事が原因のけがや病気で治療を受けるときに、病院へ出す請求書のことです。正式には、療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の給付請求書と呼ばれます。

ここがいちばん間違いやすいところです。出す先は、労働基準監督署ではありません。受診した労災病院または労災指定医療機関に出します。

様式5号が向かう先本人が状況を書会社が証明する労災指定の病院へ出す様式5号
会社・本人・病院・労基署の関係と、様式5号が向かう先を示した図

病院に出すと、窓口で治療費を払わずに治療が受けられます。病院が労働基準監督署へ請求する流れになるためです。健康保険証は使いません。

ポイントはここです。仕事が原因のけがに、健康保険は使えません。最初に健康保険で受診してしまうと、後から切り替える手続きが必要になり、手間が増えます。

一般には、けがが起きた時点で、労災指定の病院かどうかを確かめてから向かう流れが取られています。指定かどうかは、都道府県労働局のホームページで探せます。

指定の病院でないときは様式7号

労災指定でない病院で受診することもあります。夜間や休日、現場の近くに指定の病院が無い場合です。

このときは様式5号ではありません。いったん治療費を全額払って、後から様式7号で請求します。費用を立て替える形になります。

指定の病院かどうかで変わる労災指定の病院様式5号を出す窓口の支払いなし病院へ出す指定でない病院いったん全額払う様式7号で請求労基署へ出す
指定の病院と指定でない病院で、使う様式と流れが違うことを並べた比較の図

様式7号の提出先は、所轄の労働基準監督署です。ここで様式5号と提出先が変わります。5号は病院へ、7号は労基署へ。

立て替えた場合、本人が一時的にお金を出すことになります。金額が大きいと本人の負担になるので、会社が立て替える扱いを決めている例もあります。社内でどうするかを先に決めておきます。

領収書は必ず残します。請求のときに要ります。本人に伝えておかないと、受診してから何日も経ってから捨てられていたと分かることがあります。

薬局の分は別に要る

見落としがいちばん多いのが、薬局です。処方された薬をもらう分は、病院の分とは別に様式が要ります。

薬局が労災指定であれば、薬局用の様式5号を出します。指定でない薬局であれば、様式7号で後から請求する形になります。

通う先ごとに1枚病院の分受診したところへ薬局の分処方を受けたところへ転院した先移ったらまた1枚
病院の分と薬局の分で、それぞれ様式が要ることを並べた層の図

同じ様式を2枚用意すると覚えておくと確実です。病院に1枚、薬局に1枚。病院で処方箋をもらった時点で、薬局の分が必要になります。

通院が続く場合、別の病院に移ったらまた1枚要ります。転院したときは、転院した先へ出します。

会社側の準備としては、様式を数枚まとめて用意しておくと早く動けます。けがが起きてから印刷する形でも間に合いますが、夜間や休日は誰も対応できないことがあります。

置き場所も決めておきます。事務所の決まった引き出しと、現場の車の中。どちらか一方だと、必要なときに手が届きません。様式そのものは何枚あっても困らないので、多めに置いておく形が使われています。

様式の版が新しくなることがあります。年に1回、厚生労働省のホームページで最新のものを確かめて入れ替えると、古い様式を使い続ける形を防げます。

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実際に使える様式が必要な方へ

労働者名簿や出勤簿の様式は、商い屋にそろっています。事業主が証明する内容は、この記録から取ります。

商い屋で様式をさがす

誰が何を書くか

様式5号は、本人が書く部分と、会社が証明する部分に分かれています。

本人が書くのは、氏名・生年月日・住所などの情報と、けがをした状況です。いつ、どこで、何をしていて、どうなったか。ここが後の判断の材料になります。

会社が書くのは、事業の名称と所在地、そして事業主の証明です。書かれた内容に相違ないことを証明します。

誰が何を書くか書く人書く内容本人氏名と住所本人けがをした状況会社事業の名称と所在地会社事業主の証明
本人が書く欄と事業主が証明する欄を分けた表

けがをした状況の欄は、できるだけ具体的に書きます。抽象的に書くと、後から確かめられません。作業の内容、使っていた道具、体のどこをどうしたか。

副業や兼業をしている人の場合、他に勤務先があるかどうかの欄があります。無ければ無いと丸を付けます。複数の会社で働いている人については、扱いが別に定められています。

会社が証明を拒むことはできません。事実と違うことを証明する必要はありませんが、事実であれば証明します。どうしても事実関係に食い違いがある場合は、所轄の労働基準監督署に相談します。

通勤中のけがは別の様式

同じ労災でも、通勤の途中のけがは別の様式になります。ここも取り違えやすいところです。

仕事が原因のけがは業務災害、通勤の途中のけがは通勤災害と呼ばれます。通勤災害で指定の病院にかかる場合は、様式16号の3を使います。

業務災害と通勤災害業務災害仕事が原因様式5号作業の内容を書く通勤災害通勤の途中様式16号の3経路と方法を書く
業務災害と通勤災害で使う様式が違うことを並べた比較の図

通勤災害では、通勤の経路や方法を書く欄があります。いつもの経路から外れていなかったか、寄り道をしていなかったかが問われる形になるためです。

判断が難しい場面もあります。寄り道の後に経路に戻った場合、途中で私用を挟んだ場合。このあたりは所轄の労働基準監督署に確かめるのが確実です。

社内では、通勤の経路を届け出てもらう仕組みがあると、いざというときに材料になります。通勤手当の計算のために取っている経路の届けが、そのまま使えます。

労働者死傷病報告とは別のもの

様式5号と混ざりやすいのが、労働者死傷病報告です。目的がまったく違います。

様式5号は、治療費を労災保険から出すための請求です。本人のための手続きです。

労働者死傷病報告は、労働災害が起きたことを国に知らせる報告です。会社の義務として、所轄の労働基準監督署に出します。

目的が違う2つ様式5号治療費の請求本人のため病院へ労働者死傷病報告災害の報告会社の義務労基署へ
治療の請求と、災害の報告という2つの目的を並べた比較の図

片方を出したから、もう片方が要らなくなるわけではありません。休業を伴うけがであれば、両方が必要になります。

労働者死傷病報告には、休業の日数によって提出の時期が分かれる形があります。休業が長いものは早く、短いものはまとめて報告する形です。

社内の流れとしては、けがの連絡を受けた時点で、両方の担当を決めるのが確実です。治療の請求は本人と一緒に、災害の報告は会社の側で。どちらかが抜けるのは、担当が決まっていないときに起きます。

休んだ日が出たら、その先がある

様式5号は、治療そのものにかかる手続きです。仕事を休んだ日が出ると、その先に別の手続きが続きます。

休業の分については、休業補償給付の請求があります。働けなかった日の収入を補うためのものです。請求には、賃金の額と、休んだ日が分かる記録が要ります。

ここで効いてくるのが、日ごろの記録です。出勤簿に休んだ日が残っていること、賃金台帳に支払った額が残っていること。どちらも普段から付けているものなので、新しく作る必要はありません。

待期の期間という考え方もあります。休み始めの数日分は会社が補償する形が定められていて、その後の分が労災保険から出ます。ここを知らないと、最初の数日の給与の扱いで迷います。

休業が長引く場合は、同じ請求を続けて出していくことになります。1回で終わるものではありません。担当者を決めておかないと、途中で止まります。

本人との連絡も続きます。治療の見通し、復帰の時期、通院の頻度。定期的に聞く形を決めておくと、本人も会社も予定が立ちます。聞く頻度は、けがの程度によって変えます。

この先の手続きについては、所轄の労働基準監督署が案内の窓口になります。最初の受診のときに、休業が出そうだと分かった時点で相談しておくと、後の流れが読めます。

けがが起きたときの流れを1枚にする

労災の手続きは、急いでいる場面で始まります。その場で調べる時間がありません。1枚にまとめておくと、誰が受けても同じ形で動けます。

書くのは5つです。

1つ目は、最初の連絡先です。現場からどこへ連絡するか。夜間と休日の連絡先も書きます。

2つ目は、労災指定の病院の一覧です。事業所の近く、現場の近く。地図と電話番号まで書いておきます。

3つ目は、持っていく様式です。病院の分と薬局の分。指定でない病院にかかったときの様式も。

4つ目は、書く内容の材料です。労働保険番号、事業所の名称と所在地。毎回同じものを書くので、控えを1枚作っておくと早くなります。

5つ目は、その後の手続きです。休業が出たときの給付、労働者死傷病報告。誰が担当するかを決めておきます。

この1枚を、現場にも置いておくと動きが早くなります。事務所が閉まっている時間にけがが起きることは珍しくありません。

まとめ

労災の様式5号は、仕事が原因のけがで治療を受けるときに、労災指定の病院へ出す請求書です。出す先は労働基準監督署ではなく、受診した病院になります。

指定でない病院にかかった場合は、いったん全額を立て替えて、様式7号で所轄の労働基準監督署に請求します。領収書を必ず残します。

薬局の分は別に要ります。病院に1枚、薬局に1枚。転院したら、その先にもう1枚。

通勤の途中のけがは通勤災害となり、指定の病院にかかる場合は様式16号の3を使います。労働者死傷病報告は目的の違う別の手続きで、休業を伴うけがでは両方が必要になります。自社の取扱いは、所轄の労働基準監督署や社会保険労務士などの専門家に確かめるのが確実です。

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実際に使える様式が必要な方へ

労働者名簿と出勤簿の様式が、商い屋にそろっています。証明する内容の材料を、日ごとに残しておけます。

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よくある質問

Q. 様式5号はどこに出しますか。 A. 受診した労災病院または労災指定医療機関です。労働基準監督署ではありません。病院が労働基準監督署へ請求する流れになります。

Q. 健康保険証を使ってしまいました。 A. 仕事が原因のけがに健康保険は使えません。切り替えの手続きが必要になります。加入している健康保険の窓口と、所轄の労働基準監督署に相談します。

Q. 薬局の分も要りますか。 A. 要ります。病院の分とは別に、薬局へ出す様式が必要です。労災指定でない薬局なら様式7号になります。

Q. 指定の病院が近くにありません。 A. 指定でない病院にかかり、いったん全額を払います。その後、様式7号で所轄の労働基準監督署に請求します。領収書を残します。

Q. 転院したらどうなりますか。 A. 転院した先にも様式が要ります。通っている病院ごとに1枚と考えると分かりやすくなります。

Q. 会社が証明を書いてくれない場合は。 A. 事実であれば証明することになります。事実関係に食い違いがある場合は、所轄の労働基準監督署に相談します。証明が無いままでも請求できる形が案内されています。

Q. 通勤中のけがも様式5号ですか。 A. 通勤災害は別の様式です。指定の病院にかかる場合は様式16号の3を使います。通勤の経路を書く欄があります。

Q. 労働者死傷病報告も出しますか。 A. 目的の違う別の手続きです。休業を伴うけがでは両方が必要になります。担当を分けて決めておきます。

Q. 治療費は本人が払いますか。 A. 労災指定の病院に様式5号を出していれば、窓口での支払いは要りません。指定でない病院では、いったん立て替えることになります。会社が立て替える扱いを決めている例もあります。

Q. 労働保険番号はどこに書いてありますか。 A. 労働保険の申告書や、成立の届出の控えに書かれています。控えを1枚作っておくと、毎回探さずに済みます。

Q. けがが軽く、1日で治りました。 A. 治療を受けたのであれば手続きの対象になります。軽いから使わない、という判断を本人に任せないほうが確実です。後から悪くなることもあるため、最初の受診を労災で通しておくほうが手続きが続けやすくなります。

Q. パートやアルバイトも対象ですか。 A. 労災保険は雇っている人が対象になります。働き方や時間の長さで外れるものではありません。入ったばかりの人でも同じです。

Q. 様式はどこで手に入りますか。 A. 厚生労働省のホームページから取れます。数枚まとめて用意しておくと、夜間や休日でも動けます。置き場所は、事務所と現場の車の両方に決めておくと手が届きます。

Q. 副業をしている人がけがをしました。 A. 他に勤務先があるかどうかの欄があります。複数の会社で働いている人については扱いが別に定められているので、所轄の労働基準監督署に確かめます。

Q. 休んだ日の給与はどうなりますか。 A. 休み始めの数日分は会社が補償する形が定められていて、その後の分について休業補償給付の請求ができます。出勤簿と賃金台帳が請求の材料になります。

Q. 休業が長引いています。請求は1回で済みますか。 A. 続けて出していくことになります。担当者を決めておかないと途中で止まります。所轄の労働基準監督署が案内の窓口になります。

Q. 本人が労災にしたくないと言っています。 A. 仕事が原因のけがであれば労災保険の対象です。健康保険で受診すると、後から切り替える手間が増えます。判断に迷う場合は所轄の労働基準監督署に相談します。

Q. 現場が別の会社の敷地でした。 A. 雇っている会社が手続きをします。元請と下請が関わる場面では扱いが分かれることがあるので、所轄の労働基準監督署に確かめます。