資格取得届|5日以内と翌月10日は別の届出
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人を1人雇うと、届出は1つでは終わりません。社会保険と雇用保険で、出す先も期限も別々です。片方の感覚でもう片方を出すと、遅れます。
この記事では、資格取得届を、どちらの保険の話なのか、いつまでに出すのか、何を書くのか、遅れたらどうなるのかの順に整理します。読み終えたときに、入社の日から逆算した段取りを決められる状態を目指します。
結論:社会保険は5日以内、雇用保険は翌月10日まで
資格取得届と呼ばれるものは、2つあります。健康保険・厚生年金保険のものと、雇用保険のものです。
健康保険法施行規則24条は、健康保険の資格取得の届出について次のように定めています。
> 法第四十八条の規定による被保険者…の資格の取得に関する届出は、当該事実があった日から五日以内に、…健康保険被保険者資格取得届を機構又は健康保険組合…に提出することによって行うものとする。
一方、雇用保険のほうは期限が違います。雇用保険法施行規則6条です。
> 事業主は、法第七条の規定により、その雇用する労働者が当該事業主の行う適用事業に係る被保険者となつたことについて、当該事実のあつた日の属する月の翌月十日までに、雇用保険被保険者資格取得届…を…公共職業安定所の長に提出しなければならない。
5日と、翌月10日。同じ「資格取得届」という名前でも、この差があります。月初に入社した人なら雇用保険は40日ほど余裕がありますが、社会保険は5日です。
出す先も違います。社会保険は年金事務所(または健康保険組合)、雇用保険はハローワークです。まとめて1か所に出すものではありません。
根拠になる条は、健康保険法48条と厚生年金保険法27条です。どちらも、事業主が資格の取得・喪失と報酬月額・賞与額を届け出ることを定めています。届け出るのは本人ではなく事業主だ、というところが起点です。
5日をどこから数えるか
健康保険法施行規則24条は「当該事実があった日から五日以内」としています。入社の日が起点です。
ここでよく詰まるのが、入社の手続きが終わるのを待ってしまう形です。マイナンバーの提出、扶養の書類、通勤経路の届。これらがそろうのを待っていると、5日はすぐ過ぎます。
待たずに出せる情報は、入社の前に集まります。氏名・生年月日・報酬月額・資格取得年月日。この4つがあれば、届出の骨はできます。
内定から入社までの間に、書類を1枚渡して書いてもらう形にしておくと、入社日の翌日には出せます。入社日に初めて聞く項目が残っていると、そこで止まります。
5日の数え方そのものは、土日祝を除く形ではありません。暦の日で数えます。金曜が入社日なら、翌週の水曜が5日目です。
雇用保険の「翌月10日」は、月の途中で入社した人ほど余裕があります。ただし月末に入社した人は、実質10日ほどしかありません。同じ月にまとめて処理する運用にしていると、そこだけ厳しくなります。
4月のように入社が重なる月は、5日が並びます。1人ずつ順に処理していると、最後の人が期限を過ぎます。入社日が同じなら、まとめて1日で作ってしまうほうが確実です。
電子で申請できる形にしておくと、郵送の日数を見込まずに済みます。紙で出すなら、5日のうち1〜2日は郵送に消えます。期限は「届いた日」で見られるため、投函した日ではありません。
何を書くか
健康保険法施行規則24条は、記載する事項を号に分けて並べています。実務で手が止まるのは、そのうち3つです。
1つ目は、資格取得年月日です。入社日と一致するのが普通ですが、試用期間の扱いや、雇用契約の始まりの日と実際に働き始めた日が違う場合に迷います。
2つ目は、報酬月額です。まだ1円も払っていない時点で、これから支払う見込みの額を書きます。ここが実態とずれると、あとで随時改定の対象になります。
3つ目は、被扶養者の有無です。扶養する家族がいるなら、別の届出も一緒に出します。
報酬月額に入れるものは、基本給だけではありません。通勤手当、住宅手当、役職手当のように、毎月決まって支払うものは入ります。通勤手当を入れ忘れる形が多くあります。
残業手当のように月によって変わるものは、見込みの額を入れます。入社時点で見込みが立たないなら、0で出しておいて、実際の支払いが固まってから随時改定で直す形になります。
書く材料は、労働者名簿と雇用契約書にそろっています。新しく調べるものはありません。名簿を先に作っておけば、届出はそこから写すだけになります。
氏名の読みも、届出では要ります。漢字だけ受け取って読みを聞き忘れる形がよくあります。名簿の欄に読みを置いておけば、そこで止まりません。
個人番号または基礎年金番号も要ります。前の勤め先で厚生年金に入っていた人なら基礎年金番号があり、年金手帳や基礎年金番号通知書で確かめます。本人が番号を覚えていることは、まずありません。
遅れたらどうなるか
期限を過ぎても、届出は受け付けられます。ただし、遅れたことによる不都合は本人に出ます。
いちばん分かりやすいのが保険証です。資格取得届を出さないと、保険証が交付されません。その間に病院にかかると、本人がいったん全額を払うことになります。
入社してすぐ体調を崩す人はいます。そのときに保険証が無いと、窓口で10割を払い、あとから手続きで返してもらう流れになります。手間も時間もかかります。
保険料の徴収も遅れます。さかのぼって徴収する形になるので、1回の給与から2か月分を引くことになり、本人にとっては手取りが急に減ります。
事情を説明する紙を求められることもあります。遅れた理由を書いて出す形です。その場で用意するより、そもそも遅れないほうが早く済みます。
雇用保険のほうが遅れると、離職したときの手続きにも響きます。被保険者だった期間が正しく記録されていないと、本人が受けられるものの計算が変わります。
辞めるときになって初めて気づくのが、この形のいやなところです。入社から何年も経ってから、記録が無いことが分かります。そのときに直すのは、入社直後に出すより何倍も手間がかかります。
雇用保険の資格取得届を出すと、本人あてに通知が出ます。この通知を本人に渡すところまでを段取りに入れておくと、渡し忘れが残りません。
社会保険に入る人・入らない人
届出の前に決めるのが、その人が被保険者になるのかどうかです。全員が入るわけではありません。
判断の材料は、労働時間と日数、雇用の見込み期間、賃金、学生かどうか、そして会社の規模です。このうち会社の規模による線は、法改正で動いてきました。
自社に適用される線がどこにあるかは、年金事務所に確かめます。改正の経過措置が続いている項目なので、数年前の資料をそのまま使うと違っていることがあります。
雇用保険のほうにも別の線があります。週の所定労働時間と、雇用の見込み期間で見ます。社会保険には入らないが雇用保険には入る、という人は普通にいます。
2つの保険で判断が分かれることを前提に、入社のたびに両方を見ます。片方だけ確かめて、もう片方を忘れる形が起きやすいところです。
判断した結果も、記録に残しておきます。「入らない」と決めた人ほど、あとで理由を聞かれます。そのときに、いつ・何を見て決めたかが残っていないと、もう一度最初から調べ直すことになります。
労働時間が途中で増える人もいます。入社のときに入らなかった人が、あとから対象になる形です。契約を変えたときに見直す決まりにしておかないと、誰も気づきません。
70歳以上の人は、厚生年金の扱いが変わります。健康保険は続いていても厚生年金の被保険者ではなくなるので、別の届出になります。
入社の段取りに組み込む
資格取得届は、入社のたびに出すものです。その都度考える形にすると、毎回同じところで止まります。
段取りにするなら、日付を基準にします。内定のとき、入社の1週間前、入社日、入社の翌日。この4つの節目に何をするかを決めておきます。
内定のときに書類を1枚渡します。氏名の読み、生年月日、基礎年金番号または個人番号、扶養する家族。入社日に初めて聞く項目を残さないのが要点です。
入社の1週間前に、報酬月額を確定させます。雇用契約書の金額に、通勤手当と各種手当を足します。ここを入社後に決める形にしていると、5日が足りません。
入社日に本人から書類を受け取り、翌日には社会保険の届出を出します。雇用保険は月内にまとめて出す形でも間に合いますが、忘れないよう同じ日に作っておくほうが確実です。
出したあとは、控えを労働者名簿と同じ場所に綴じます。次に何かあったときに、最初に見るのがこの控えです。
年に何人も入社しない会社ほど、この段取りが要ります。前に出したのが1年前だと、手順を覚えていません。控えが1枚あれば、そこから思い出せます。
入社が続く時期は、チェック表を1枚作っておくほうが速く済みます。名前の行に、社会保険・雇用保険・扶養の3つの列を置いて、出した日を書きます。空欄が残っている人が、そのまま抜けです。
届出のあとに給与計算へつなぐ
届出を出したら終わり、ではありません。保険料をいつの給与から引くかが、そのあとに続きます。
保険料は月単位でかかります。資格を取得した月から発生します。日割りにはなりません。月末の1日だけ在籍していても、その月の保険料は1か月分です。
控除のしかたは会社によって2つに分かれます。翌月控除と当月控除です。どちらでも成立しますが、社内で混ざっていると間違えます。
翌月控除なら、入社した月の保険料は翌月の給与から引きます。入社の月の給与からは引きません。ここを取り違えると、初回の給与で引きすぎるか、引き忘れるかのどちらかになります。
入社してすぐ辞めた人のときに、この差がはっきり出ます。翌月控除で、給与が1回しか出ないまま辞めると、引くはずだった保険料を引けません。あとから本人に請求する形になり、話がややこしくなります。
どちらの方式かを、給与計算の手順書に1行書いておきます。担当が替わったときに、そこだけで判断できます。
雇用保険料のほうは、月単位ではありません。支払った賃金に料率をかけて計算します。社会保険料と同じ感覚で処理すると合いません。2つの保険で計算の仕方が違うことを、最初に押さえておきます。
まとめ
資格取得届は2つあり、社会保険は5日以内、雇用保険は翌月10日までです。同じ名前でも期限も出し先も違います。
書く材料は労働者名簿と雇用契約書にそろっています。入社日に初めて聞く項目を残さない段取りにすれば、5日は十分に足ります。
遅れると、保険証が出ないことと保険料のまとめ引きという形で、不都合が本人に出ます。会社が困るというより、雇った人が困ります。
よくある質問
Q. 資格取得届は本人が出しますか。 A. 事業主が出します。健康保険法48条と厚生年金保険法27条が、事業主の届出義務として定めています。本人がやることは、必要な情報を会社に渡すところまでです。
Q. 5日以内は、営業日で数えますか。 A. 暦の日で数えます。健康保険法施行規則24条は「当該事実があった日から五日以内」としています。金曜が入社日なら、翌週の水曜が5日目です。
Q. 社会保険と雇用保険を同じ日に出さないといけませんか。 A. 期限が別なので、同じ日である必要はありません。ただし、期限の短い社会保険に合わせて作っておくほうが、忘れません。
Q. 報酬月額に通勤手当は入りますか。 A. 毎月決まって支払うものは入ります。通勤手当を入れ忘れる形が多いところです。3か月分や6か月分をまとめて支給している場合の扱いは、年金事務所に確かめます。
Q. 残業代の見込みが立ちません。 A. 見込みが立たないなら0で出しておき、実際の支払いが固まってから随時改定で直す形になります。ただし、残業のような月によって変わるものだけでは随時改定の引き金にならないので、扱いを年金事務所に確かめます。
Q. 入社日と雇用契約の始まりの日が違います。 A. 資格取得年月日をどちらにするかで迷うところです。実際に使用され始めた日を基準に考えますが、判断に迷う形なら年金事務所に確かめ、確かめた日と相手を記録に残します。
Q. 期限を過ぎてしまいました。 A. 受け付けられます。遅れた理由を説明する紙を求められることがあります。保険証の交付と保険料の徴収が遅れるので、不都合は本人に出ます。気づいた時点ですぐ出します。
Q. 扶養する家族がいる場合はどうしますか。 A. 被扶養者異動届も一緒に出します。資格取得届だけでは、家族の分の保険証が出ません。
Q. 70歳以上の人を雇いました。 A. 厚生年金の扱いが変わります。健康保険は続いていても厚生年金の被保険者ではなくなるので、別の届出になります。厚生年金保険法27条は「七十歳以上の使用される者」についても届出の対象としています。
Q. 短時間で働く人は入りますか。 A. 労働時間と日数、雇用の見込み期間、賃金、学生かどうか、会社の規模で判断します。会社の規模による線は法改正で動いてきたので、自社に適用される線を年金事務所に確かめます。