退職証明書とは?請求された項目だけを書く
目次
退職証明書は、退職した人から急に求められることが多い書類です。様式が決まっていないので、社内に前例が無いと何をどこまで書けばよいのか迷います。離職票との違いも、聞かれてすぐに説明できる人は多くありません。
この記事では、退職証明書を、誰が何を書くか・何を書いてはいけないか・いつまで応じるかの3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社の手順を1枚にまとめられる状態を目指します。
結論:請求された項目だけを、遅滞なく書く
退職証明書とは、退職した人の請求に応じて、会社が交付する証明書のことです。労働基準法にもとづくものとされています。
証明できる事項は5つです。使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金、退職の事由。解雇の場合は、その理由も含みます。
ポイントはここです。この5つのうち、請求された項目だけを書きます。全部書くのが親切に見えますが、そうではありません。
一般には、請求の受付から交付までを社内の様式で回している会社が多くあります。どの項目を請求するかを、本人にチェックしてもらう形です。口頭のやり取りだけで進めると、後から食い違いが起きます。
交付の時期は「遅滞なく」とされています。具体的な日数は定められていません。社内では目安を決めておくと、担当者が判断に迷わずに済みます。
離職票との違い
社内でいちばん混ざるのが、離職票との違いです。出どころが違います。
離職票は、雇用保険の手続きで使う書類です。会社がハローワークに離職証明書を出し、ハローワークが交付します。失業給付の手続きに使います。
退職証明書は、会社が発行する証明書です。様式は定められていません。転職先への提出、国民健康保険や国民年金の手続き、賃貸の審査などで使われます。
使い分けの目安はここです。離職票が届くまでに時間がかかる場面で、退職証明書が求められます。離職票はハローワークを経由するため、退職の翌日にというわけにはいきません。
両方を求められることもあります。用途が違うので、どちらかで代えられるとは限りません。本人に用途を聞くと、必要なものが決まります。
書いてはいけないこと
退職証明書で、いちばん気をつけるところがここです。
請求されていない事項は書きません。これは労働基準法に定めがあるとされています。たとえば退職の事由を請求していない人の証明書に、自己都合と書いてはいけません。
秘密の記号を書いてはいけません。第三者と示し合わせて、その人の就業を妨げる目的で、国籍・信条・社会的身分・労働組合運動に関する記号を入れる形は認められていません。
実務で危ないのは、善意のひとことを足してしまう場面です。人柄を褒める文、次の職場への推薦の言葉。求められていなければ書きません。
逆に、退職の事由を請求された場合は書きます。解雇の場合は、その理由も含めて書くこととされています。事由を書くと決まった以上、諸事情によりといった書き方では証明になりません。
請求の受け方と控えの残し方
退職証明書は、退職した後に請求が来ます。在籍していないため、社内のどこに話が来るかが決まっていないと止まります。
受け方は3つの手順で決められます。
1つ目は、窓口です。誰が受けるかを決めます。人事か総務か。退職者は元の上司に連絡することが多いので、そこから先の流れまで書いておきます。
2つ目は、請求の記録です。どの項目を請求されたかを残します。本人にチェックしてもらう様式を作ると、記録がそのまま証拠になります。
3つ目は、交付の記録です。いつ、どの方法で渡したか。郵送なら送った日、手渡しなら受け取りの記録。
控えは必ず残します。同じ人から再び請求が来ることがあります。前回と内容が食い違うと、説明が難しくなります。
控えに添えておくとよいのが、請求の書面そのものです。どの項目を請求されたかが残っていれば、書かなかった項目について後から聞かれても答えられます。請求の書面と交付した証明書の写しを、同じつづりに入れておきます。
いつまで応じるか
退職した人からの請求は、退職の直後とは限りません。何年か経ってから来ることがあります。
労働基準法にもとづく請求権は、賃金以外は2年とされています。退職証明書の請求も、この期間で考えるのが一般的です。
ここで問題になるのが、書く材料が手元に残っているかです。使用期間は労働者名簿から、賃金は賃金台帳から取ります。これらには保存の期間が定められているため、証明書を書ける期間は、記録が残っている期間でもあります。
社内では、退職者の記録をまとめて1か所に置いておくと早くなります。名簿、台帳、出勤の記録。退職の日で綴じておくと、請求が来たときに探す手間が減ります。
期間を過ぎた請求については、記録が残っていないことを伝える形になります。残っていないことを、残っていないと伝えるのが誠実な対応です。所轄の労働基準監督署に確かめると、判断の材料になります。
書く材料はどこから取るか
退職証明書は、書く内容そのものを新しく作るわけではありません。すでにある記録から写します。
材料は4つです。
1つ目は、労働者名簿です。氏名、雇入れの年月日、退職の年月日、従事する業務の種類。使用期間と業務の種類は、ここから取れます。
2つ目は、賃金台帳です。賃金の額。どの期間の賃金を書くかは、請求の内容で変わります。直近の月額なのか、年収なのか、本人に確かめます。
3つ目は、辞令や組織の記録です。その事業における地位。役職名を書くことになります。
4つ目は、退職の手続きの記録です。退職の事由。退職届が出ているか、期間の満了か、解雇か。
材料が4か所に散っていると、担当が代わったときに時間がかかります。退職のときに1枚にまとめておくと、後から楽になります。
賃金の欄は、いちばん確かめる手間がかかるところです。月額なのか年額なのか、税込みか手取りかで、書く数字が変わります。本人の用途によって求められる形が違うため、請求のときに確かめます。
地位の欄も、決め方を社内でそろえておくと迷いません。辞令に書かれた役職名をそのまま使うのが分かりやすい形です。社内でしか通じない呼び方だと、提出先で意味が伝わりません。
使用期間は、雇入れの年月日から退職の年月日までです。試用期間も在籍の期間に含みます。途中で契約の形が変わっている場合は、期間を分けて書くか、通しで書くかを決めておきます。
求められる場面ごとに、必要な項目が違う
退職証明書は、本人が何かの手続きで求められて請求してきます。場面によって、必要な項目が変わります。ここを聞いておくと、やり取りが1回で済みます。
多いのは4つの場面です。
1つ目は、転職先への提出です。前職の在籍期間と職務の内容を確かめるために求められます。使用期間と業務の種類、地位が中心になります。賃金まで求められることは多くありません。
2つ目は、国民健康保険や国民年金の手続きです。退職した日が分かるものとして、市区町村の窓口で求められます。使用期間があれば足りる場面が多くなります。
3つ目は、賃貸や融資の審査です。前職の勤務の実態を確かめるために使われます。賃金の証明を求められることがあります。
4つ目は、失業給付までのつなぎです。離職票が届くまでの間に、退職した事実を示すために使われます。
本人が用途を言いにくい場面もあります。用途を必ず聞き出す形にする必要はありません。請求の様式に項目のチェック欄を作っておけば、用途を聞かなくても必要な項目がそろいます。
逆に、こちらから項目を足すのは避けます。親切のつもりで賃金を書いたら、提出先に給与額を知らせることになったという形は起こりえます。書くのは請求された項目だけ、という決まりは、本人を守るためのものでもあります。
社内で手順を1枚にする
退職証明書は、年に何回かしか発生しない業務です。だからこそ、担当が代わると止まります。1枚にまとめておくと、質がそろいます。
書くのは5つです。
1つ目は、請求を受ける窓口です。連絡先と、担当が不在のときの代わり。
2つ目は、請求の様式です。5つの事項のうち、どれを請求するかを本人が選ぶ形。用途の欄も作っておくと、離職票との取り違えが防げます。
3つ目は、書く材料の置き場所です。名簿、台帳、辞令、退職の記録。それぞれどこにあるか。
4つ目は、交付までの目安の日数です。遅滞なくの中身を、社内では何日と決めるか。
5つ目は、控えの保管場所です。交付した証明書の写しを、どこにどれだけ残すか。
この1枚があると、退職者から連絡が来てもすぐ動けます。迷っている時間が、そのまま遅れになるのがこの書類の特徴です。
まとめ
退職証明書は、退職した人の請求に応じて会社が交付する証明書です。使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金、退職の事由の5つが対象で、解雇の場合はその理由も含みます。
いちばん大事な決まりはここです。請求された項目だけを書きます。請求されていない事項を書いてはいけないとされています。秘密の記号を入れることも認められていません。
離職票とは別のものです。離職票は雇用保険の手続きでハローワークが交付するもので、退職証明書は会社が発行します。用途が違うため、両方を求められることがあります。
書く材料は、労働者名簿・賃金台帳・辞令・退職の手続きの記録から取ります。請求の記録と交付の控えを残すと、再び請求が来たときに食い違いません。自社の取扱いは、所轄の労働基準監督署や社会保険労務士などの専門家に確かめるのが確実です。
よくある質問
Q. 退職証明書に決まった様式はありますか。 A. 定められた様式はありません。会社が作ります。ただし書ける事項は5つに限られ、請求された項目だけを書くという決まりがあります。
Q. 退職者が全部の項目を請求してきたらどうしますか。 A. 5つとも書きます。請求された項目は書く必要があります。記録から材料をそろえて、確かめてから交付します。
Q. 退職の事由の欄に、自己都合と書いてよいですか。 A. 事由を請求されているなら書きます。請求されていなければ書きません。事由を書く場合、諸事情によりといった書き方では証明になりません。
Q. 解雇した人から請求された場合は。 A. 解雇の場合は、その理由も含めて証明することとされています。書き方が難しい場面なので、所轄の労働基準監督署や社会保険労務士に確かめるのが確実です。
Q. 退職する前に請求されることはありますか。 A. 解雇の予告がされた日から退職の日までの間に、解雇の理由についての証明書を請求できる形があります。退職証明書とは別の場面です。
Q. いつまでに渡さなければいけませんか。 A. 遅滞なくとされていて、日数の定めはありません。社内で目安を決めておくと、担当者が迷いません。数日から1週間を目安にしている会社があります。
Q. 何年前の退職まで応じますか。 A. 労働基準法にもとづく請求権は賃金以外で2年とされています。ただし実際に書けるかは、記録が残っているかで決まります。
Q. 郵送で送ってよいですか。 A. 方法の定めはありません。本人の希望に合わせます。送った日を記録に残すと、後から確かめられます。
Q. 手数料を取ってよいですか。 A. 一般には無償で交付している会社が多くあります。実費の扱いを決めるなら、先に社内で決めておきます。
Q. 同じ人から2回目の請求が来ました。 A. 応じます。前回の控えがあれば、同じ内容で交付できます。控えを残していないと、前回と食い違うことがあります。
Q. 在職中の人から求められたら、どの書類になりますか。 A. 在職証明書になります。こちらは労働基準法に定めのある書類ではなく、会社が任意で発行するものです。
Q. 退職証明書と離職票、どちらを出せばよいですか。 A. 用途で決まります。失業給付の手続きなら離職票、転職先や役所の手続きなら退職証明書が多くなります。本人に用途を聞くのが早道です。
Q. 退職者の記録は、どこに置いておくとよいですか。 A. 名簿・台帳・出勤の記録を、退職の日で1か所に綴じておくと探しやすくなります。証明書を書くときの材料が一度にそろいます。
Q. 賃金の欄は、月額と年額のどちらを書きますか。 A. 決まりはありません。提出先によって求められる形が違うので、請求のときに本人に確かめます。税込みか手取りかも同じです。
Q. 試用期間は使用期間に含めますか。 A. 在籍していた期間なので含めます。契約の形が途中で変わっている場合は、期間を分けて書くか通しで書くかを、社内で決めておきます。
Q. 電子メールで送ってもよいですか。 A. 方法の定めはありません。本人が希望し、内容が確かめられる形であれば使われています。送った記録が残る形にしておきます。
Q. 会社の印は必要ですか。 A. 定めはありませんが、一般には事業所の所在地と事業主名を書き、社印を押している例が多くあります。代表印である必要はありません。