在職証明書|提出先の様式に合わせて書く
目次
在職証明書は、従業員から急に頼まれる書類です。保育園の入園、住宅ローン、賃貸の審査。用途もばらばらで、提出先から様式を渡されることもあれば、自由に作ってくださいと言われることもあります。
この記事では、在職証明書を、どんな場面で要るか・何を書くか・どうやって受け付けるかの3つに分けて整理します。読み終えたときに、社内の受付の流れを1枚にまとめられる状態を目指します。
結論:法令の義務ではなく、会社が任意で出す書類
在職証明書とは、その人が自社に在籍していることを、会社が証明する書面のことです。就業証明書、勤務証明書と呼ばれることもあります。
ここが退職証明書との大きな違いです。退職証明書は労働基準法にもとづく義務のある書類ですが、在職証明書は法令に定めのある書類ではありません。会社が任意で発行します。
義務ではないからといって、断るものでもありません。本人の生活にかかわる手続きで求められることがほとんどです。保育園に入れるか、住む家を借りられるか。出さないと本人が困ります。
一般には、社内に1つ様式を持っておいて、提出先が様式を指定してきたらそちらを使う形が取られています。様式を1つに決めきれないのが、この書類の特徴です。
求められる場面
在職証明書が必要になる場面は、だいたい決まっています。先に知っておくと、頼まれたときに慌てません。
多いのは5つです。
1つ目は、保育園や学童の手続きです。保護者が働いていることを確かめるために求められます。自治体の様式が決まっていることがほとんどです。
2つ目は、住宅ローンや賃貸の審査です。勤務先と収入の安定を確かめるために使われます。
3つ目は、在留資格の手続きです。外国籍の従業員の更新や変更のときに求められます。
4つ目は、配偶者の勤務先での手続きです。扶養の確認や、家族手当の支給の判断で求められることがあります。
5つ目は、副業や兼業の届出です。別の会社に提出する形です。
場面によって、書く内容の重みが変わります。保育園の手続きでは勤務の時間と日数が中心になり、ローンの審査では在籍の期間と収入が中心になります。
だから、本人に用途を聞くのが最初の一歩になります。用途が分かれば、どの様式でどこまで書くかがすぐ決まります。
保育園向けは自治体の様式が来る
在職証明書で件数がいちばん多いのが、保育園の手続きです。ここだけは、少し事情が違います。
自治体が様式を決めていることがほとんどです。就労証明書という名前で、国が示した標準的な様式にならっている自治体が多くあります。
書く内容も細かく決まっています。雇用の形、勤務の開始日、1週間の勤務日数、1日の勤務時間、直近の給与、産前産後や育児休業の予定。社内の様式では足りません。
時期も偏ります。入園の申込みが集中する秋から冬にかけて、依頼がまとまって来ます。1人ずつ対応していると、この時期だけ業務が膨らみます。
対策は2つです。1つは、依頼の締切を社内で決めること。提出の期限から逆算して、いつまでに出してもらうかを先に伝えます。
もう1つは、書く材料をまとめておくこと。勤務の日数と時間は出勤簿から、給与は賃金台帳から取ります。毎年同じ材料を使うので、どこから取るかを決めておけば繰り返せます。
電子で申請できる自治体も増えています。会社が直接オンラインで入力する形もあるので、依頼を受けたときに提出の方法を確かめます。
何を書くか
提出先の様式が無い場合は、社内の様式で作ります。書く項目は次のとおりです。
本人の情報は、氏名、生年月日、住所。提出先によっては住所が要らないこともあります。
在籍の情報は、入社の年月日、所属、役職、雇用の形。契約社員やパートであれば、その旨を書きます。
勤務の情報は、1週間の勤務日数、1日の勤務時間、始業と終業の時刻。保育園の手続きではここが中心になります。
収入の情報は、直近の給与の額。月額か年額か、税込みか手取りかを確かめて書きます。
会社の情報は、所在地、名称、代表者名、連絡先。社印を押している例が多くあります。
書く内容は、記録から取ります。記憶や本人の申告で書かないのが原則です。入社日は労働者名簿から、勤務の時間は出勤簿から、給与は賃金台帳から。
ここでよく問題になるのが、勤務時間が一定でない人です。シフト制やパートの場合、1日の勤務時間が日によって違います。直近の何か月かの平均で書くか、契約上の時間で書くか、社内でどちらにするかを決めておきます。
同じように迷うのが、育児のための短時間勤務をしている人です。契約上の所定の時間と、実際に働いている時間が違います。提出先の様式に、短時間勤務の欄があることもあります。欄があればそこに書き、無ければ備考に事実を書く形が分かりやすくなります。
入社したばかりの人も判断が要ります。まだ給与の実績が1か月分しか無い場合、直近の給与をそのまま書くと実態と離れることがあります。契約上の月額を書いたうえで、実績がまだ短いことを備考に書く形が取られています。
どの場合も共通するのは、事実と違うことを書かないという一点です。書きにくい事情があるときほど、備考の欄が使えます。空欄にするより、事情を1行書いたほうが提出先も判断できます。
受け付ける流れを決める
在職証明書は、依頼の受け方が決まっていないと止まります。誰に頼めばよいか分からず、上司づてに来ることが多いからです。
流れは3つに分けられます。
1つ目は、依頼の受付です。誰が受けるか、どの様式で依頼するか。用途と提出の期限を書く欄を作っておくと、聞き返しが減ります。
2つ目は、作成です。提出先の様式があるか、無ければ社内の様式を使うか。材料をどこから取るか。
3つ目は、交付と控えです。いつ、どの方法で渡すか。控えをどこに残すか。
交付までの目安の日数を決めておくと、本人が予定を立てられます。提出先には期限があるので、間に合うかどうかがいちばん気にされます。
控えは残します。同じ人から毎年依頼が来ることがあり、前回どう書いたかが分かると作業が早くなります。保育園の手続きは毎年続くことが多い形です。
書きすぎないこと
在職証明書で気をつけるのは、提出先が求めていない情報まで書かないことです。
証明書は、本人が第三者に渡す書面です。書いたことは提出先に伝わります。給与の額、家族の情報、健康に関することなど、用途に必要ない情報は書きません。
退職証明書には、請求されていない事項を書いてはならないという定めがあるとされています。在職証明書に同じ定めはありませんが、考え方は同じものを使うのが安全です。
本人の同意をどう取るかも決めておきます。本人が依頼している時点で同意はありますが、どの項目を書くかまで確かめておくと行き違いが起きません。依頼の様式に、書く項目のチェック欄を作る形が使えます。
判断の目安はここです。提出先の様式に欄があるかどうか。欄があるなら、提出先はその情報を必要としています。欄が無いのに社内の様式で書き足している項目があれば、いったん外して考えます。
社内の様式を作るときも、項目を多くしすぎないほうが扱いやすくなります。項目が多いと、用途に応じて消す作業が増え、消し忘れが起きます。基本の項目だけを持ち、足りない分は提出先の様式で補う形が回ります。
社外の人から直接「この人は在籍していますか」と問い合わせが来ることもあります。本人の依頼なしに答えないという線を、社内で決めておきます。答えてよい範囲を決めておかないと、電話を受けた人が判断することになります。
社内で1枚にまとめる
在職証明書は、件数が読めない業務です。手順が1枚あると、誰が受けても同じ形で回せます。
書くのは5つです。
1つ目は、依頼の窓口と様式です。用途、提出先、期限、書く項目のチェック欄。
2つ目は、材料の置き場所です。労働者名簿、出勤簿、賃金台帳。どこを見ればよいか。
3つ目は、勤務時間の書き方の決めごとです。シフト制の人をどう書くか。平均か契約上の時間か。
4つ目は、交付までの目安の日数です。秋から冬の繁忙期は、別の目安を決めておきます。
5つ目は、控えの保管場所です。前回の内容を見られる形にしておきます。
この1枚があると、繁忙期に依頼が重なっても、順番に処理するだけで済みます。
まとめ
在職証明書は、在籍していることを会社が証明する書面です。退職証明書と違い、法令に定めのある書類ではなく、会社が任意で発行します。
求められる場面は、保育園の手続き、住宅ローンや賃貸の審査、在留資格、扶養の確認、副業の届出など。場面によって、書く内容の重みが変わります。まず本人に用途を聞きます。
保育園向けは自治体の様式が決まっていることがほとんどで、勤務の日数と時間を細かく書きます。秋から冬に依頼が集中するので、社内の締切を先に決めておきます。
書く内容は、労働者名簿・出勤簿・賃金台帳から取ります。用途に必要のない情報は書きません。自社の取扱いは、提出先の自治体や社会保険労務士などの専門家に確かめるのが確実です。
よくある質問
Q. 在職証明書を出す義務はありますか。 A. 法令に定めのある書類ではありません。会社が任意で発行します。ただし本人の生活にかかわる手続きで使われるため、断ると影響が大きくなります。
Q. 決まった様式はありますか。 A. 会社が作る場合は自由です。提出先が様式を指定してくることが多いので、まず本人に確かめます。保育園向けは自治体の様式がほとんどで、国が示した標準的な様式にならっている例が多くあります。
Q. 退職証明書との違いは何ですか。 A. 在職証明書は在籍していることの証明で、法令の義務はありません。退職証明書は退職した人の請求に応じて交付する、労働基準法にもとづく書類とされています。
Q. 給与の額は書きますか。 A. 用途によります。保育園やローンの審査では求められることが多く、転職先への提出では求められないことがあります。必要ない場面では書きません。
Q. シフト制の人の勤務時間はどう書きますか。 A. 直近の何か月かの平均で書くか、契約上の時間で書くかを社内で決めておきます。どちらで書いたかを控えに残すと、翌年も同じ形で書けます。
Q. 交付までどのくらいかかりますか。 A. 定めはありません。社内で目安を決めておきます。提出先の期限があるので、依頼のときに期限を聞きます。
Q. 社印は必要ですか。 A. 定めはありませんが、押している例が多くあります。会社の所在地、名称、代表者名と一緒に押します。提出先が押印を求めているかどうかは、様式の注意書きに書かれていることが多くあります。
Q. 産前産後休業や育児休業に入る予定も書きますか。 A. 保育園向けの様式には欄があることが多くあります。分かっている範囲で書き、未定なら未定と書きます。
Q. 外国籍の従業員から在留資格の手続きで求められました。 A. 求められる内容が決まっていることがあります。提出先の案内を確かめてから書きます。出入国在留管理庁の案内が確認先になります。
Q. 社外から電話で在籍を聞かれました。答えてよいですか。 A. 本人の依頼が無い問い合わせに答える範囲を、社内で決めておきます。電話を受けた人が判断する形にしないのが要点です。
Q. 毎年同じ人から依頼が来ます。 A. 保育園の手続きでは続くことが多い形です。控えを残しておくと、前回の内容を見て作れます。
Q. 退職した人から在職証明書を求められました。 A. 在籍していないので、退職証明書になります。用途によっては、在籍していた期間の証明で足りることがあるので、本人に確かめます。
Q. 依頼が繁忙期に集中します。 A. 保育園の申込みの時期に重なります。社内の締切を先に伝えておくと、分散します。材料の取り方を決めておくと、1件あたりの時間が短くなります。
Q. 育児のための短時間勤務中です。どの時間を書きますか。 A. 提出先の様式に短時間勤務の欄があれば、そこに書きます。無ければ、実際の勤務時間を書いて、備考に事情を1行書く形が分かりやすくなります。
Q. 入社したばかりで給与の実績が1か月しかありません。 A. 契約上の月額を書いたうえで、実績がまだ短いことを備考に書く形が取られています。空欄にするより、事情を書いたほうが提出先も判断できます。
Q. 電子で申請する形式の自治体でした。 A. 会社が直接オンラインで入力する形があります。依頼を受けたときに提出の方法まで確かめると、二度手間になりません。
Q. 控えはどのくらい残しますか。 A. 定めはありません。毎年依頼が来ることを考えると、直近の数年分があると作業が早くなります。保管の場所を決めておきます。
Q. 本人が退職した後に、在職していた期間の証明を求められました。 A. 在籍していないので退職証明書になります。使用期間の証明で足りる場面が多いので、本人に用途を確かめます。