タイムスタンプ不要の要件|規程で満たす道
目次
タイムスタンプが要らない場合がある、と聞いた。ただ、どういう条件で要らなくなるのかがはっきりしない。ベンダーの資料は自社のサービスを勧める書き方になっていて、要らない道の説明は短くしか書かれていません。
この記事では、タイムスタンプ不要の要件を、電子取引の場合・スキャナ保存の場合・自社で選ぶ順番の3つに分けて整理します。読み終えたときに、契約せずに済むかどうかを判断できる状態を目指します。
結論:真実性は4つの方法のどれかで満たせばよい
タイムスタンプ不要の要件とは、タイムスタンプを使わずに真実性の確保を満たす条件のことです。
電子帳簿保存法では、真実性を満たす方法が複数示されています。タイムスタンプはそのうちの1つで、どれか1つを満たせば足ります。
電子取引データ保存で示されている方法は4つです。送る側が付したものを受け取る、受け取った側が付す、訂正削除ができないか履歴が残るシステムを使う、訂正削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用する。
ポイントはここです。後ろの2つが、タイムスタンプを使わない道です。規程で満たす道と、システムで満たす道の2つがあります。
規程で満たす道
いちばん費用がかからないのが、訂正削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用する方法です。
規程に書くのは、どのデータを対象にするか、誰が保存するか、訂正や削除を行う場合の手続き、訂正削除を行った場合の記録の残し方などです。
国税庁がひな形を公開しています。法人用と個人事業者用があり、担当者名や部署名を自社のものに書き換えて使う形が一般的です。
作って終わりではなく、運用することが条件です。規程に「訂正する場合は申請書を出す」と書いてあるのに、実際には誰も出していない状態だと、運用していることになりません。
規程は短いほうが守られます。自社にない手続きまで書き込むと、そのとおりに動けません。ひな形から、自社で回せない部分を削る作業が要ります。
システムで満たす道
もう1つが、訂正や削除ができない、または訂正削除の履歴が残るシステムで授受と保存を行う方法です。
クラウドのサービスを使っている場合、この条件を満たしていることがあります。請求書の受領サービス、経費精算のサービス、電子契約のサービスなどです。
確かめるのは3つです。授受と保存の両方をそのシステムで行っているか。訂正削除ができない、または履歴が残るか。その仕組みの説明が公開されているか。
JIIMA認証を受けているかどうかが目安の1つになります。認証を受けたソフトの一覧が公開されているので、そこで確かめられます。
メールで受け取ったものを、そのシステムに手で入れ直す形の場合、授受の部分はシステムの外になります。この場合、規程で補う必要が出てきます。
スキャナ保存の場合
スキャナ保存でも、タイムスタンプが不要になる場合があります。
条件として示されているのは、入力した日時の情報を確認できるシステムを使い、かつ訂正や削除を行った場合にその事実と内容を確認できるシステムで保存する場合などです。
つまり、スキャンから保存までを、履歴の残るシステムの中で完結させる形です。読み取ったファイルを共有フォルダに置くだけの運用では、この条件は満たせません。
スキャナ保存は要件が多いので、対応をうたっているソフトを使うのが現実的です。JIIMA認証を受けたソフトの一覧から選ぶと、要件の確認にかかる時間が減ります。
紙を減らしたいという目的が無いなら、スキャナ保存に手を付けないという選択もあります。義務ではありません。
検索要件の緩和と混ざりやすい
タイムスタンプ不要の話と、検索要件の緩和の話が混ざることがあります。別の要件なので、分けて覚えます。
真実性の確保は、データが変わっていないことを担保する要件です。タイムスタンプ、システム、規程のどれかで満たします。
可視性の確保は、後から見られることを担保する要件です。検索できること、見やすい画面と書面で出力できること、システムの概要を備え付けることが入ります。
検索要件については、基準期間の売上高が一定以下の事業者などについて、税務職員のダウンロードの求めに応じることを条件に不要になる場合があります。これは可視性の側の話で、タイムスタンプとは関係しません。
2つを混ぜると、「うちは小規模だからタイムスタンプも要らない」という誤解が生まれます。売上高による緩和は検索の話です。
自社で選ぶ順番
どの道を取るかは、3つの順番で決めます。
1つ目は、いま使っているサービスを確かめることです。会計ソフト、経費精算、請求書の受領。すでに履歴が残る仕組みを使っているなら、そこで満たせることがあります。
2つ目は、足りない部分を洗い出すことです。メールで受け取るものだけシステムの外、という形になりがちです。
3つ目は、足りない部分を規程で補うことです。全部をシステムに寄せなくても、規程と組み合わせれば満たせます。
最初から全部をシステムで満たそうとすると、費用も入れ替えの手間も大きくなります。規程は1日で作れるので、そこを先に固めてから、必要な部分だけ仕組みを入れるのが順番として軽くなります。
規程を運用に乗せる
規程を作っただけで止まると、条件を満たしていることになりません。乗せるためにやることが3つあります。
1つ目は、保存の場所を決めることです。規程に書いた場所と、実際に置いている場所を合わせます。
2つ目は、訂正や削除の手順を回すことです。間違ったファイルを差し替えるとき、規程に書いた手続きを取ります。記録を1行残すだけの形にしておくと続きます。
3つ目は、担当が代わったときに引き継ぐことです。規程に担当者名を書いている場合、代わったら直します。
年に1回、規程と実際の運用が合っているかを見ます。合っていないなら、規程のほうを実態に寄せるほうが続きます。守れない規程を残しておくより安全です。
規程で満たす場合の年間の作業
規程で満たす道を選んだ場合、年に何をするかを決めておくと続きます。
年の初めは、規程の見直しです。担当者が代わっていないか、保存の場所が変わっていないか。実態と合っていない部分を直します。
毎月は、保存の確認です。その月に受け取った電子取引のデータが、決めた場所に置かれているか。件数を数えるだけでも、抜けに気づきます。
訂正や削除が起きたときは、台帳に1行。これが唯一の随時の作業になります。
年の終わりは、まとめての確認です。1年分のファイルがそろっているか。取引先ごとに、毎月あるはずのものが抜けていないかを見ます。
この4つは、どれも数十分で終わります。システムを入れるより、この習慣を作るほうが安く確実です。担当が代わるときは、この4つを引き継ぎます。
まとめ
タイムスタンプ不要の要件とは、タイムスタンプ以外の方法で真実性の確保を満たす条件のことです。電子取引データ保存では、真実性を満たす方法が4つ示されていて、そのうち2つがタイムスタンプを使わない道です。
いちばん費用がかからないのは、訂正削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用する方法です。国税庁がひな形を公開しています。作るだけでなく、運用することが条件です。
もう1つは、訂正削除ができない、または履歴が残るシステムで授受と保存を行う方法です。JIIMA認証が目安になります。メールで受け取る部分はシステムの外になりやすいので、規程で補います。
検索要件の緩和とは別の話です。売上高による緩和は可視性の側で、真実性とは関係しません。自社の適用は、顧問の税理士に確かめるのが確実です。
よくある質問
Q. 事務処理規程は、届け出る必要がありますか。 A. 届出は求められていません。事業所に備え付けておき、調査のときに提示できる形にしておきます。作った日と、改定した日が分かるようにしておくと説明しやすくなります。
Q. 規程は誰が作りますか。 A. 社内で作れます。国税庁のひな形をもとに、自社の担当と手続きに合わせて書き換えます。内容に迷う部分があれば、顧問の税理士に見てもらうと安心です。
Q. 規程を作れば、データを自由に直してよいのですか。 A. 直してよいわけではありません。訂正や削除を行う場合の手続きを定め、そのとおりに運用することが条件です。誰がいつ何を直したかが残る形にします。
Q. 共有フォルダに保存するだけでも大丈夫ですか。 A. 真実性を規程で満たし、可視性(検索・出力・概要の備え付け)も満たせば、保存の場所が共有フォルダであること自体は問題になりません。ファイル名の規則を決めて、検索できる形にします。
Q. システムで満たす場合、どこを確かめればよいですか。 A. 授受と保存の両方をそのシステムで行っているか、訂正削除ができないか履歴が残るか、その仕組みの説明が公開されているかの3つです。JIIMA認証の一覧も目安になります。
Q. 複数の方法を組み合わせてもよいですか。 A. 組み合わせられます。システムで受け取るものはシステムで、メールで受け取るものは規程で、という形が実務では多くあります。どのデータをどの方法で満たすかを規程に書いておきます。
Q. タイムスタンプを契約したほうがよいのはどんな場合ですか。 A. 紙を大量に読み取って原本を捨てたい場合です。スキャナ保存の要件を満たす必要が出てきます。月に数枚なら、規程で満たす道のほうが費用も手間も軽くなります。
Q. 規程と実際の運用がずれていたら、どうなりますか。 A. 運用していることが条件なので、ずれていると要件を満たしていないと見られる可能性があります。年に1回見直して、実態に合わせて規程を直すほうが安全です。
Q. 規程で満たす道は、いつまで使えますか。 A. 期限が区切られた仕組みではありません。要件として認められている方法なので、運用している限り使えます。猶予の措置とは別のものです。
Q. システムを入れた後も、規程は残しておくべきですか。 A. システムの外でやり取りするものが残るなら、残しておきます。全部がシステムの中で完結するなら、規程は要件としては不要になります。メールで受け取る分が残っていないかを確かめます。
Q. 規程に書いた保存の場所を変えたい場合は。 A. 規程を改定します。改定の日付を入れて、いつから場所が変わったかが分かる形にします。移す前と後の両方に一部が残る状態にしないよう、移し終わってから規程を直します。
Q. 複数の会社を経営している場合、規程は共通にできますか。 A. 法人ごとに定めるのが基本です。内容が同じでも、法人名と管理責任者を分けて作ります。1つの規程を複数の法人で使い回すと、どの法人のものか分からなくなります。
Q. 規程を作ったことを、税務署に知らせる必要はありますか。 A. 知らせる手続きはありません。備え付けて運用します。調査のときに提示できる状態にしておけば足ります。
Q. 事務処理規程と、社内の他の規程との関係は。 A. 独立した規程として作るのが一般的です。文書管理規程などがある場合は、内容が矛盾しないようにします。どちらが優先するかを決めておくと、運用のときに迷いません。
Q. 訂正削除の台帳は、どんな形でもよいですか。 A. 形は自由です。日付、対象のファイル、行ったこと、理由、承認した人の5つが残れば足ります。表計算ソフトのシート1枚で回ります。
Q. システムを乗り換えるときに気をつけることは。 A. 前のシステムに入っているデータを、保存の期間が終わるまで確かめられる形で移します。移した後に前のシステムを解約する順番にしないと、過去のデータが見られなくなります。
Q. 規程を作った後、実際に運用しているかを誰が確かめますか。 A. 決めておかないと誰も確かめません。年に1回、規程を作った担当か、その上司が見る形にします。保存の場所にファイルがあるかを数分見るだけでも、運用の確認になります。