タイムスタンプとは?電子帳簿保存法で要る場面
目次
電子帳簿保存法の話になると、必ずタイムスタンプが出てきます。何かを押すものらしい、有料らしい、とは分かるものの、自社に本当に要るのかが判断できないまま、資料だけが増えていきます。
この記事では、タイムスタンプを、何をするものか・どの場面で要るか・要らない場合の3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社に必要かどうかを判断できる状態を目指します。
結論:いつ存在し、その後変わっていないことを示す仕組み
タイムスタンプとは、電子データがある時刻に存在していたことと、その後に変更されていないことを証明する仕組みのことです。
押すのは、時刻認証業務認定事業者などが提供するサービスです。データに時刻の情報と、データから計算した値を組み合わせたものを付けます。後からデータを変えると、その値が合わなくなるため、変更されたことが分かります。
ポイントはここです。タイムスタンプは、真実性を確保するための手段の1つにすぎません。電子帳簿保存法では、他の方法でも真実性を満たせる場面があります。
つまり、「電帳法に対応する=タイムスタンプを買う」ではありません。どの区分のどの要件を満たすために要るのかを先に決めます。
要るのはスキャナ保存の場面
タイムスタンプが要件として出てくるのは、主にスキャナ保存です。
紙で受け取った請求書や領収書を読み取って電子で保存する場合、読み取った後、一定の期間内にタイムスタンプを付すことが求められる形があります。
入力の期間には2つの方式があります。速やかに行う方式と、業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに行う方式です。後者を取る場合は、事務処理規程を備え付けることになります。
スキャナ保存は任意の制度なので、紙を紙のまま保存し続けるなら、この要件はかかりません。タイムスタンプが要るかどうかは、スキャナ保存をするかどうかで決まります。
電子取引では代わりの方法がある
義務である電子取引データ保存でも、真実性の確保が求められます。ただし、タイムスタンプ以外の方法が用意されています。
真実性を満たす方法として挙げられているのは4つです。
1つ目は、送る側がタイムスタンプを付したデータを受け取ること。 2つ目は、受け取った側が一定の期間内にタイムスタンプを付すこと。 3つ目は、訂正や削除ができない、または訂正削除の履歴が残るシステムで授受と保存を行うこと。 4つ目は、訂正削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用すること。
4つ目が、いちばん費用のかからない道です。国税庁がひな形を公開しているので、そこから作れます。中小の事業者の多くはこの方法を取っています。
3つ目は、クラウドのサービスを使っている場合に当てはまることがあります。使っているサービスが訂正削除の履歴を残すなら、それで満たせることがあります。
費用と契約の形
タイムスタンプは、サービスを契約して使います。費用は、押した回数で決まる形と、月額や年額の定額の形があります。
自社で押す枚数を見積もると、必要かどうかが見えます。月に数枚なら、規程で満たす道のほうが安く済みます。月に数百枚を読み取るなら、仕組みとして入れる価値が出てきます。
会計ソフトや経費精算のサービスに、タイムスタンプの機能が含まれていることがあります。すでに使っているサービスに入っていないかを先に確かめると、二重に契約せずに済みます。
契約するときは、認定を受けた事業者のサービスかを確かめます。要件として、時刻認証業務の認定を受けたものが求められる形があるためです。
押したあとにやること
押して終わりではありません。押したデータを、要件を満たす形で保存するところまでが1つの流れです。
保存の側では、検索できること、見やすい画面と書面で出力できること、システムの関係書類を備え付けることが求められます。
押す期間を守れているかも、後から確かめられます。読み取った日と押した日が離れていると、要件を満たしていないことになります。作業の手順を決めて、受け取りから読み取りまでの間隔を短くします。
紙の原本をいつ捨てるかも決めておきます。要件を満たして保存できていることを確かめてから処分する形にしないと、両方が無くなる事故が起きます。
よくある勘違い
タイムスタンプについて、実務でよく出る勘違いを並べます。
1つ目は、電子取引にも必ず要るという思い込みです。事務処理規程で満たせます。義務の区分だからといって、タイムスタンプが義務になるわけではありません。
2つ目は、電子署名と同じものだという思い込みです。電子署名は「誰が」を示すもの、タイムスタンプは「いつ」と「その後変わっていない」を示すものです。目的が違います。
3つ目は、押せば何でも証明されるという思い込みです。示せるのは、その時刻にそのデータが存在したことと、その後に変わっていないことだけです。書かれている内容が正しいことを証明するものではありません。
この3つを押さえておくと、ベンダーの説明を聞くときに、自社に要るものと要らないものを切り分けられます。
自社の判断のしかた
要るかどうかは、3つの問いで決まります。
1つ目は、スキャナ保存をするかです。するなら、要件として出てきます。しないなら、この道は消えます。
2つ目は、電子取引の真実性をどう満たすかです。規程で満たすなら、タイムスタンプは要りません。
3つ目は、すでに使っているサービスに機能があるかです。あるなら、追加の契約は要りません。
この3つを順に見れば、多くの中小の事業者では「要らない」という答えになります。紙を大量に読み取って捨てたい会社だけが、契約を検討する形です。
導入を検討するときに聞くこと
タイムスタンプのサービスを検討するなら、聞くことを決めておくと比べやすくなります。
1つ目は、認定を受けたサービスかです。要件として求められる形があるため、ここは最初に確かめます。
2つ目は、料金の形です。押した回数で決まるのか、定額か。自社の枚数で1年分を計算してもらいます。
3つ目は、使っているソフトとつながるかです。会計ソフトや経費精算のサービスから直接押せるなら、作業が増えません。別々だと、手作業が増えます。
4つ目は、検証の方法です。押されているか、その後に変わっていないかを、どう確かめるか。調査のときに求められることがあります。
5つ目は、保存の期間との関係です。7年や10年の保存の間、検証できる形が保たれるか。
この5つを聞けば、自社に合うかどうかが分かります。「電帳法に対応しています」という説明だけでは、どの区分のどの要件かが分かりません。
紙を減らしたい場合の順番
タイムスタンプを検討する会社の目的は、多くの場合「紙を減らしたい」ことです。その目的から逆に見ると、順番が決まります。
1つ目は、何の紙を減らしたいかを決めることです。請求書か、領収書か、契約書か。量がいちばん多いものから手を付けます。
2つ目は、その紙が電子で受け取れないかを確かめることです。取引先に頼めば、メールやウェブでの受け取りに変えられることがあります。電子で受け取れれば、スキャナ保存そのものが要りません。
3つ目は、それでも紙で来るものだけを、スキャナ保存の対象にすることです。ここで初めて、タイムスタンプが要るかどうかの検討に入ります。
2つ目を飛ばすと、要らない仕組みを入れることになります。取引先の3社に頼むだけで紙が半分に減る、ということが実際にあります。
まとめ
タイムスタンプは、電子データがある時刻に存在し、その後変わっていないことを示す仕組みです。電子帳簿保存法では、真実性を確保するための手段の1つとして出てきます。
要件として出てくるのは主にスキャナ保存です。スキャナ保存は任意の制度なので、紙を紙のまま保存するなら要りません。
義務である電子取引データ保存でも、真実性は事務処理規程で満たせます。国税庁がひな形を公開しています。
電子署名とは目的が違います。示せるのは「いつ」と「その後変わっていない」ことだけで、内容が正しいことを示すものではありません。自社に要るかは、スキャナ保存をするか、規程で満たすか、既存のサービスに機能があるかの3つで判断します。判断に迷う点は、顧問の税理士に確かめるのが確実です。
よくある質問
Q. タイムスタンプの有効期間はありますか。 A. 証明に使う技術の関係で、有効な期間が定められているものがあります。長期に保存する場合の扱いはサービスによって違うため、契約の前に確かめます。保存期間が7年や10年になることを前提に見ます。
Q. 押し忘れたデータはどうすればよいですか。 A. 期間内に押していないと、要件を満たさない形になります。気づいた時点で、他の方法で真実性を満たせないかを確かめます。スキャナ保存については、原本が残っているなら紙で保存し直す選択もあります。
Q. 無料のタイムスタンプはありますか。 A. 要件として求められるのは、認定を受けた事業者によるものなどとされています。無料のサービスがその条件を満たすかは個別に確かめる必要があります。安いことより、要件を満たすかで選びます。
Q. スキャンした画像に、日付を書き込むのではだめですか。 A. 書き込んだ日付は、後から変えられます。タイムスタンプが求められているのは、変えられないことを示すためです。画像に文字を入れる形では代わりになりません。
Q. 事務処理規程を作れば、スキャナ保存でもタイムスタンプは要りませんか。 A. 入力の期間について規程を備え付ける場合と、真実性の確保の方法としての規程は別のものです。スキャナ保存の要件は電子取引より多いため、個別に確かめます。
Q. 電子契約サービスを使っている場合はどうですか。 A. サービスの側でタイムスタンプが付されていることがあります。付されているなら、受け取った側で改めて押す必要はない形になります。サービスの説明で確かめます。
Q. 押したかどうかは、後から見て分かりますか。 A. サービスによって、検証の仕組みが用意されています。押されているか、その後に変わっていないかを確かめられます。調査のときに検証を求められることがあるため、手順を控えておきます。
Q. 社内で作った書類にもタイムスタンプが要りますか。 A. 自分で作って自分で保存する電子帳簿等保存の区分では、タイムスタンプは要件として挙げられていません。訂正削除の履歴が残ることなどで真実性を満たす形になります。
Q. タイムスタンプを押したデータを、後から別の場所に移してもよいですか。 A. データそのものが変わらなければ、保存の場所を移すこと自体は問題になりません。ただし、移すときに形式を変換すると、検証できなくなることがあります。そのままの形で移すのが安全です。
Q. 押す期間を過ぎてしまったら、やり直せますか。 A. 期間内に押すことが要件なので、後から押しても要件を満たしません。原本が残っているなら紙で保存し直す選択があります。原本を捨てた後だと、取り返しがつきません。
Q. 取引先に電子での送付を頼んでもよいですか。 A. 頼むこと自体は自由です。応じてもらえるかは相手によりますが、相手の側も紙を減らしたいことが多くあります。請求書の送付方法を変えたい旨を、年度の変わり目に伝える形が進めやすくなります。
Q. タイムスタンプの費用は、どの科目で処理しますか。 A. サービスの利用料として処理するのが一般的です。契約の形によって扱いが変わることがあるため、顧問の税理士に確かめます。
Q. 押した記録は、どこに残りますか。 A. サービスによって、押した履歴を確かめられる仕組みが用意されています。データそのものに情報が埋め込まれる形と、サービス側に記録が残る形があります。検証の方法を手順書に書いておきます。
Q. 契約を途中でやめたら、過去に押したものはどうなりますか。 A. 契約の形によって、検証ができなくなる場合があります。解約の前に、過去のデータの検証がどうなるかを確かめます。保存の期間が7年や10年になることを前提に見ます。