特別管理産業廃棄物管理責任者|置く条件と資格
目次
廃棄物の話で「特別管理産業廃棄物管理責任者を置いてください」と言われた。名前が長く、資格が要るらしいことは分かるものの、自社が本当に対象なのかが判断できない。総務に回ってきて止まる、典型的な書類の1つです。
この記事では、特別管理産業廃棄物管理責任者を、置く条件・資格の要件・仕事の中身の3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社に必要かどうかを判断できる状態を目指します。
結論:特別管理産業廃棄物を出す事業場に置く
特別管理産業廃棄物管理責任者とは、特別管理産業廃棄物を生ずる事業場ごとに置くことが求められている担当者のことです。廃棄物の処理及び清掃に関する法律にもとづくものです。
対象になるのは、特別管理産業廃棄物を生ずる事業場です。産業廃棄物を出しているだけでは対象になりません。
ポイントはここです。「特別管理」に当たるかどうかで決まります。普通の産業廃棄物なら、この責任者を置く必要はありません。
自社が出しているものが特別管理に当たるかを、まず確かめます。ここが判断の入口になります。
特別管理に当たるもの
特別管理産業廃棄物として挙げられているのは、爆発性、毒性、感染性その他の人の健康または生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるものです。
具体的に挙がるものを並べます。廃油(引火点が低いもの)、廃酸・廃アルカリ(強い酸性・アルカリ性のもの)、感染性産業廃棄物、特定有害産業廃棄物(廃PCB等、廃石綿等、有害な重金属等を含むものなど)。
事務所中心の会社では、当たらないことがほとんどです。一方、製造、医療、建設、整備の現場では当たるものが出てきます。
分かりやすいのは、廃石綿等です。建物の解体や改修で石綿を扱うと、ここに入ります。廃PCB等も、古い変圧器やコンデンサを保管している会社で出てきます。
判断に迷うものは、都道府県や政令市の廃棄物の担当窓口に、現物と使い方を示して確かめるのが確実です。
資格の要件
責任者になれる人の要件が定められています。区分によって違います。
感染性産業廃棄物を生ずる事業場では、医師、歯科医師、薬剤師、獣医師、保健師、助産師、看護師、臨床検査技師、衛生検査技師、または一定の学歴と実務経験を持つ人などが挙げられています。
それ以外の特別管理産業廃棄物を生ずる事業場では、一定の学科を修めて卒業し、実務の経験を持つ人などが挙げられています。講習を修了した人も対象になります。
実務では、講習を受けて要件を満たす形が多く取られています。一般財団法人などが講習を実施しています。
講習には申込みの期限と定員があります。年に数回しか開かれない地域もあるため、必要になると分かった時点で日程を調べます。
届出は要るのか
責任者を置いたことについて、届出が求められる場合があります。自治体の条例によって扱いが分かれます。
国の法律としては、置くことと、氏名などを事業場に備え置くことが中心になります。一方、都道府県や政令市の条例で、届出を求めているところがあります。
自社の事業場がある自治体の案内を確かめます。複数の都道府県に事業場がある会社は、それぞれで確かめることになります。
責任者が代わったときも、届出が要る場合があります。人が入れ替わったのに届け出ていない状態は、指摘の対象になります。
仕事の中身
置いたあと、何をするのかも決めておきます。挙げられているのは、特別管理産業廃棄物の排出の状況の把握、処理計画の立案、適正な処理の確保といった業務です。
実務に落とすと、次のようになります。
1つ目は、何がどれだけ出ているかを把握することです。種類ごとに量を記録します。
2つ目は、保管の状態を見ることです。保管の基準が定められているため、掲示、容器、区分、飛散や流出の防止を確かめます。
3つ目は、委託と契約を確かめることです。許可を持つ業者に委託しているか、契約書があるか、マニフェストが回っているかを見ます。
名前だけ置いて何もしていない状態がいちばん多く見つかります。月に1回、保管の場所を見て記録を1行残すだけでも、動いている証拠になります。
帳簿と報告
特別管理産業廃棄物を出す事業者には、帳簿の備え付けが求められます。
書くのは、種類ごとの発生量、運搬や処分の委託先、委託の年月日、運搬先、処分の方法などです。1年ごとに閉鎖し、閉鎖後5年間保存することとされています。
あわせて、マニフェストの交付等状況報告書を、毎年度、前年度の交付の状況について提出することになります。提出先は都道府県知事などです。
責任者を置くことと、帳簿や報告は別の義務です。責任者を置いただけで帳簿が要らなくなるわけではありません。
置くまでの段取り
必要だと分かってから置くまでに、時間がかかります。段取りは4つです。
1つ目は、自社が出しているものを確かめることです。産業廃棄物の種類を洗い出し、特別管理に当たるものがあるかを見ます。処理を委託している業者に聞くと、区分が分かることがあります。
2つ目は、資格を満たす人を決めることです。社内に該当する学歴や実務の経験を持つ人がいるかを見ます。いなければ講習を受けてもらいます。
3つ目は、講習の日程を押さえることです。年に数回しか開かれない地域があります。必要と分かった時点で日程を調べるのが要点です。
4つ目は、届出の要否を確かめることです。自治体によって扱いが違います。置いたあとに届け出が要るなら、様式と期限を確かめます。
この4つで、1か月から3か月かかることがあります。「置いてください」と言われてから動くと間に合わない場面が出ます。
置いたあとに回す1年
責任者を置いたら、年間で何をするかを決めておきます。名前だけの状態を避けるためです。
毎月は、保管の場所を見ることです。掲示があるか、容器が破損していないか、区分されているか、飛散や流出のおそれがないか。見た日と気づいたことを1行残します。
四半期ごとは、帳簿の確認です。種類ごとの発生量、委託の内容、マニフェストの回収。帳簿に抜けがないかを見ます。
年に1回は、委託先の確認です。許可証の写しをもらい、許可の期限と取り扱える廃棄物の種類を確かめます。契約書の内容が実態と合っているかも見ます。
年度が変わったら、報告書です。マニフェスト交付等状況報告書を6月末までに提出します。
この4つで1年が回ります。毎月の1行が、いちばん効きます。何かあったときに、見ていた記録が残っているかどうかで説明が変わります。
まとめ
特別管理産業廃棄物管理責任者は、特別管理産業廃棄物を生ずる事業場ごとに置くことが求められています。普通の産業廃棄物だけなら対象になりません。
特別管理に当たるのは、廃油、廃酸・廃アルカリ、感染性産業廃棄物、特定有害産業廃棄物です。建設では廃石綿等、古い設備を持つ会社では廃PCB等が出てきます。
資格の要件は、感染性の場合とそれ以外で分かれます。実務では講習を受けて要件を満たす形が多く取られています。講習は年に数回しか開かれない地域があります。
届出の要否は自治体の条例によって分かれます。置いたあとは、排出の把握、保管の確認、委託と契約の確認が業務になります。自社が対象かは、都道府県や政令市の廃棄物の窓口に確かめるのが確実です。
よくある質問
Q. 事業場ごとに置くとは、どの単位ですか。 A. 特別管理産業廃棄物を生ずる事業場ごとです。本社と工場が別の場所なら、特別管理を出しているほうに置きます。複数の工場で出しているなら、それぞれに置くことになります。
Q. 兼務してもよいですか。 A. 他の業務と兼ねること自体は取れます。ただし、その事業場に所属していて、業務を行える状態である必要があります。名前だけ置いて実態が無い形は避けます。
Q. 講習はどこで受けられますか。 A. 一般財団法人などが実施しています。地域ごとに開催の日程が決まっているため、必要になった時点で日程を確かめます。定員があるので、早めに申し込みます。
Q. 責任者が辞めたらどうしますか。 A. 速やかに次の人を置きます。届出が求められる自治体では、変更の届出も必要になります。1人しか要件を満たす人がいない状態は、辞めた瞬間に体制が崩れます。
Q. 廃石綿等はどんな場合に出ますか。 A. 建物の解体や改修で、石綿を含む建材を除去した場合などに出ます。飛散するおそれのあるものが特別管理に当たります。扱いの区分は、工事の内容によって変わるため、自治体の窓口に確かめます。
Q. 少量しか出ない場合も置く必要がありますか。 A. 量による除外は一般に示されていません。生ずる事業場であることが要件になります。たまにしか出ない場合の扱いは、自治体の窓口に確かめるのが確実です。
Q. 産業廃棄物管理責任者という名前の役職もありますか。 A. 自治体の条例で、産業廃棄物を多く出す事業場に責任者や管理者の設置を求めているところがあります。名前が似ていて別の制度なので、どちらの話かを確かめます。
Q. 委託先が許可を持っているか、どう確かめますか。 A. 許可証の写しをもらい、許可の種類と期限、取り扱える廃棄物の種類を確かめます。許可の期限が切れていないかは毎年見ます。契約書と一緒に綴じておくと確かめやすくなります。
Q. 特別管理産業廃棄物を出さなくなったら、責任者は不要になりますか。 A. 生ずる事業場でなくなれば、置く義務はなくなります。ただし、一時的に出ていないだけなのか、今後も出ないのかで扱いが変わります。届出をしている自治体では、変更の届出が要ることがあります。
Q. 講習を受けた証明は、どれくらい残しますか。 A. 責任者として選任している間は残します。届出が要る自治体では、届出に添えることがあります。他の資格の証明と同じつづりに入れておくと探しやすくなります。
Q. 責任者と、産業廃棄物の帳簿の担当は同じ人ですか。 A. 同じ人が担うことが多くありますが、決まりではありません。責任者は選任が求められるもの、帳簿は備え付けが求められるもので、別の義務です。担当を分ける場合は、情報のやり取りを決めておきます。
Q. 保管の基準には、どんなものがありますか。 A. 掲示板の設置、飛散・流出・地下浸透・悪臭の防止、容器の破損の防止、他の廃棄物との区分などが定められています。特別管理産業廃棄物では、区分が特に重要になります。
Q. 委託の契約書は何年残しますか。 A. 契約の終了の日から一定の期間の保存が求められています。帳簿と同じつづりに入れておくと、まとめて管理できます。
Q. 責任者を置いていないことは、どう見つかりますか。 A. 立入検査や、報告書の提出のときに確かめられることがあります。置いていないこと自体が違反になるため、該当すると分かった時点で動きます。
Q. 廃石綿等が出る工事では、他にどんな手続きがありますか。 A. 事前の調査と報告、作業の届出、作業基準の順守など、別の法令にもとづく手続きがあります。廃棄物の側の手続きだけでは足りません。工事の計画の段階で、労働基準監督署と自治体の両方に確かめます。
Q. 少量の廃PCBを保管している場合も届出が要りますか。 A. 保管の届出が求められる形があります。処分の期限が定められているものもあるため、保管しているものがあると分かった時点で、自治体の窓口に相談します。
Q. 責任者を置くだけで、他の義務は果たせますか。 A. 果たせません。帳簿の備え付け、マニフェストの交付と保存、報告書の提出、保管の基準の順守。責任者はこれらを回すために置くもので、置いたこと自体が義務の履行ではありません。
Q. 責任者の氏名を掲示する必要はありますか。 A. 事業場に備え置くことが求められる形があります。掲示まで求められるかは自治体の運用によります。他の管理者の掲示と同じ場所にまとめておくと、分かりやすくなります。
Q. 産業廃棄物と一般廃棄物の区別がつきません。 A. 事業活動に伴って生じたもののうち、法令で定められた種類のものが産業廃棄物です。それ以外は一般廃棄物になります。同じ「ごみ」でも、出所と種類で区分が変わります。自治体の窓口に確かめます。